害獣駆除の時期を考える理由|出産・子育て期の閉じ込めと法律

害獣駆除で時期が問題になるのは、追い出しや封鎖の作業が、幼獣や卵・ヒナを巻き込む可能性があるからです。浜松市は、コウモリの侵入口を封鎖するとき、家の中にコウモリが残っていると閉じ込めて殺してしまい、死体が臭気や害虫の発生源になると注意しています。封鎖は、まだ飛べない幼獣のいる時期(6〜8月)や、冬眠前後の時期を避けるよう案内しています。

農林水産省の資料は、ハクビシンが樹洞や家屋の天井裏を出産・子育ての場として使うこと、アライグマの出産が建物の壁のすき間や木の樹洞で行われることを説明しています。コウモリ以外でも、動物ごとの出産・子育ての月を知っておくと、現地調査で何を確かめるべきかが分かります。

鳥獣保護管理法|許可なく捕獲できず、卵やヒナのいる巣も撤去できない

環境省は、鳥獣保護管理法で、鳥獣や鳥類の卵を捕獲、殺傷、採取することは原則として禁止され、被害の防止などで必要な場合に、環境大臣または都道府県知事の許可を受けて行えると説明しています。許可を受けた捕獲は、許可された期間であれば年中いつでも可能とされています。違反して捕獲した場合の罰則は、法第83条で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と定められています(環境省のページは改正前の「懲役」の表記です)。

巣についても同じ考え方です。東京都は、ドバトの卵がある巣は許可なく撤去できず、ヒナが巣立つのを待ってから撤去するよう案内し、巣立つまでは1か月ほどかかるとしています。巣だけを撤去することに特別な許可は必要ありませんが、卵やヒナを含めた野生鳥獣は許可なく捕獲・殺傷できません。日本野鳥の会も、ツバメを例に、卵やヒナのいる巣を許可なく壊すことは違法だと説明しています。

家ネズミ3種と、アライグマなどの外来生物の扱い

鳥獣保護管理法施行規則は、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミを、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣として、法の適用除外としています。そのため、家ネズミ3種の対策に、鳥獣の捕獲許可は関係しません。一方、アライグマは外来生物法の特定外来生物で、同法は、飼養、栽培、保管、運搬を規制し、許可の枠組みの外で野外へ放つことも禁じています。捕獲した個体を持ち帰ったり、別の場所で放したりしてはいけません。

参考:環境省|捕獲許可制度の概要

読者の疑問

コウモリの駆除は、何月にすればよいですか?

比較ガイド

浜松市は、侵入口の封鎖を、まだ飛べない幼獣のいる時期(6〜8月)や冬眠前後の時期を避けて行うよう案内しています。月を決めるより、コウモリの出入りの様子と幼獣の有無を現地で確かめて、封鎖の日を決めます。捕獲には許可が必要で、封鎖時に中に残る個体がいないことの確認が前提です。

動物別の繁殖・出産・子育ての月早見表

下の表は、公的資料が示す繁殖・出産・子育ての月を、動物別に並べたものです。地域差があるため全国の目安として使い、実際の判断は現地調査で幼獣や巣の有無を確かめて行います。出産期が長い動物は、ほぼ一年を通して幼獣がいる可能性があります。動物ごとの詳しい記事は、コウモリ対策の時期、アライグマの親子を見かけたとき、巣に卵やヒナがあるときなどで扱っています。

動物別の繁殖・出産・子育ての月早見表:確認項目
動物繁殖・出産・子育ての月(資料が示す範囲)建物との関わり主な出典
ネズミ(ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミ)最適条件では妊娠期間が約20〜21日で、年に5〜10回前後出産する(クマネズミとドブネズミは5〜6回、ハツカネズミは6〜10回)。札幌市は、春と秋の繁殖期の前の駆除が効果的と案内している家ネズミ3種は鳥獣保護管理法の適用除外大阪府、札幌市、鳥獣保護管理法施行規則
コウモリ飛べない幼獣のいる時期は6〜8月とされ、冬眠前後の時期とあわせて、侵入口の封鎖を避ける1cm程度のすき間があれば出入りできる浜松市
イタチニホンイタチの交尾期は4〜5月(九州では年2回)。チョウセンイタチは4〜5月に交尾し、6〜8月に育児をする資料は巣を土穴などと記載しており、屋根裏の利用は現地の痕跡で判断する国立環境研究所
ハクビシン繁殖期は1〜9月、出産期は3〜11月と推定され、ほとんど年間を通して繁殖する。1度に1〜4頭が生まれる樹洞や家屋の天井裏を出産・子育ての場に使う。6cm×12cmのすき間があれば侵入できる農林水産省(令和6年3月版)
アライグマ1〜3月ごろに交尾し、主に3〜5月に出産する(4月中旬がピークとする資料もある)。年1回、3〜6頭。6月上旬ごろから幼獣が野外で動き、10月に親離れする出産は建物の壁のすき間や木の樹洞で行われる。2月ごろの厳冬期に家屋へ入り繁殖場所を確保することが多くなる環境省(令和7年3月改訂)、農林水産省
タヌキ・アナグマタヌキは2月ごろから繁殖が始まり、5〜6月が出産のピーク。アナグマは冬眠し、冬眠明けに出産するタヌキは神社仏閣や空き家など、建築物の床下を休息に使う農林水産省(令和6年3月版)
ハト(ドバト)繁殖期は4〜10月で、暖かい地方では1年中繁殖する。巣立つまでは1か月ほどかかるビルや橋、マンションのベランダなど、雨のかからない所に巣を作る農林水産省、東京都
スズメ繁殖期は3〜9月で、年に1〜3回繁殖する人家の屋根や壁のすき間に巣を作る農林水産省
ムクドリ繁殖期は4〜7月で、年に1〜2回繁殖する。6月末ごろからねぐらを作る戸袋など建物のすき間に巣を作り、鳴き声、悪臭、ダニの発生が問題になる農林水産省
ツバメ春から夏に繁殖し、2回子育てすることもある。8月中旬から10月に東南アジアへ渡る人家や商店、駅などに泥の巣を作る日本野鳥の会

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

追い出し・封鎖を慎重にする時期と、その間に進める準備

月の表は、封鎖や追い出しを「やってはいけない月」と決めるものではありません。同じ月でも、幼獣がいるかどうかは建物ごとに違います。現地調査で、音や鳴き声、出入りの様子、痕跡を確かめ、幼獣や巣がいない(または移動した)と判断できてから、封鎖の日を決めます。

状況ごとの進め方は、次の表のとおりです。封鎖の工程そのものは、害獣の侵入口はいつ塞ぐ?で扱っています。

慎重にする時期の目印

次のような様子があるときは、封鎖や追い出しを急がず、現地調査で幼獣や巣の有無を確認してから進めます。

  • 出産期にあたる月に、天井裏や壁の中から小さな鳴き声や複数の足音がする
  • 鳥が巣材を運び、同じ場所へ出入りしている、または巣からヒナの声がする
  • コウモリが夏に同じすき間へ出入りしている(浜松市は6〜8月を幼獣のいる時期とする)
  • 冬眠の前後にあたる時期で、出入りが減っても、建物内に残っている可能性がある

封鎖を待つ間に進める準備

封鎖や追い出しを待つ間にも、できる準備があります。被害の記録と調査の準備を先に進めると、作業の日が決まったときに話が早くなります。

  • 音を日付と時刻つきで記録する(夜間の天井の音を記録する方法)
  • 地上や室内から見える侵入口の候補を、触れずに写真で記録する
  • 食べ物、ごみ、ペットフード、果実など、動物を引き寄せるものを減らす
  • 賃貸なら管理会社へ連絡し、調査の立ち入りの調整を始める
  • 複数の業者に、現地調査と時期の考え方を聞いて、見積もりを比べる
追い出し・封鎖を慎重にする時期と、その間に進める準備:確認項目
状況進めやすい作業慎重にする作業確認すること
幼獣・巣・卵やヒナの気配がない現地調査、侵入口の位置の特定、清掃や補修の計画封鎖の直前に、中に動物が残っていないかの確認音や痕跡が最近も続いているか
出産・子育ての月で、幼獣の可能性がある調査、記録、見積もり、餌を減らす対策出入り口の封鎖、追い出し幼獣の有無を、調査でどう確かめるか
卵やヒナのいる鳥の巣巣立ちを待つ、次の繁殖に備えた防止策の準備許可なく巣を撤去すること卵やヒナの有無、巣立ちの見込み
冬眠前後のコウモリ出入りの観察、調査封鎖地域の冬眠の時期と、建物内に残る個体の有無
特定外来生物(アライグマ)自治体の窓口への相談、被害の記録生きたままの運搬、飼養、野外へ放すこと捕獲の許可や届出が要るか、捕獲後の扱い

参考:浜松市|家にコウモリが住み着いて困っている

冬眠・越冬期の注意|コウモリと、屋根裏で冬を過ごす動物

環境省のアライグマ防除の手引き(令和7年3月改訂)は、アライグマは年間を通じて捕獲できる一方、冬は活動が著しく低下して捕獲が難しくなり、2月ごろの厳冬期には家屋に侵入して繁殖場所を確保することが多くなると説明しています。冬に音が減っても、建物がその後の繁殖場所に選ばれている場合があることが示されています。

農林水産省の資料は、ハクビシンについて、夏場は涼しい床下を、気温が下がってくると暖かい天井裏を日中の休憩場所に使い、冬は活動を低下させて半休眠状態になると説明しています。アナグマは冬眠し、冬眠明けに出産するとされています。

冬に天井裏が静かになったことは、動物が出ていった根拠とは限りません。コウモリも冬眠前後の封鎖を避ける対象とされているため、封鎖の前には、調査で建物内に動物が残っていないかを確かめます。

参考:環境省|アライグマ防除の手引き(地域から構築する効果的な防除、2025年改訂版)

時期を待てない被害のとき|室内への侵入、配線のかじり跡、強い悪臭

時期を待たずに連絡した方がよいのは、被害が人の安全や設備に直結している場合です。室内へ動物が入り込んだ、配線にかじり跡がある、強い悪臭が続く、といった状況では、月の表より被害の進み方を優先して考えます。

家ネズミ3種は、鳥の巣のような法律上の時期の制約がないため、食品の保管、侵入口、通り道の調査を季節を待たずに進められます。配線のかじり跡は、駆除と電気設備の点検の両方が必要になることがあり、配線にネズミのかじり跡らしい傷を見つけたときで考え方を整理しています。薬剤や捕獲器は、製品の表示に従ってください。

強い悪臭には、建物の中で動物が死んでいる場合や、フンや尿が溜まっている場合など、複数の原因が考えられます。浜松市は、封鎖時に動物が残ると閉じ込めて死なせてしまい、死体が臭気や害虫の発生源になると注意しています。原因が分からないにおいは、天井裏のにおいが気になるときで確認する点を整理しています。動物に触れたり咬まれたりして体調に不安があるときは、医療機関へ相談してください。

現地調査で、幼獣や巣の有無を確かめる質問

現地調査の場で、時期についての質問をそのまま聞くと、調査の質が分かります。聞いた内容は、見積書や報告書に反映してもらいます。調査を頼む前の準備は、害獣の現地調査を頼む前に、作業の順番は、害獣の追い出し・封鎖・清掃の順番も参考になります。

  • この時期に、幼獣や巣がいる可能性をどう判断しますか。何を見て確かめますか
  • 出入り口を塞ぐ前に、中に残っている個体がいないことをどう確かめますか
  • 鳥の巣の場合、卵やヒナの有無を誰がいつ確認しますか。許可が必要な場合の手続きはどうなりますか
  • 幼獣が見つかった場合、作業をどの時点で止め、再訪の費用はどうなりますか
  • 特定外来生物の場合、捕獲後の運搬や処分は誰が行いますか
  • 封鎖を後ろにずらす場合、それまでに進める作業(調査、清掃、記録)は何ですか

自治体の捕獲器貸出・許可申請に受付期間がある場合

自治体の捕獲器の貸出や、専門業者による箱わなの設置事業には、期間、回数、予算の上限が決まっていることがあります。横浜市は、アライグマやハクビシンが住居内(屋根裏など)に侵入している被害に限り、専門業者による箱わなの設置と回収を実施できる場合があると案内しています。設置期間は、4月から翌3月までの1年間のうち一人あたり2週間まで、利用は1年間に1度限りで、予算の上限に達し次第終了となります。2026年9月16日更新のページには、今年度の事業を終了した旨が表示されています。

横浜市は、捕獲許可証と従事者証の有効期限が最長1年間であることも案内しています。自治体ごとに、期間、回数、対象となる被害の範囲が違うため、被害が出たら早めにお住まいの自治体の窓口へ確認します。わなを使う場合、環境省の手引きは、捕獲された動物が衰弱したり死亡したりしないよう、原則として1日1回の見回りが必要としています。

アライグマの捕獲個体について、環境省の手引きは、個人的な持ち帰りや野外への放置を厳に慎むよう求めています。捕獲後の運搬や処分は、自治体の案内と許可の内容に従います。

参考:横浜市|野生動物による生活被害について