民泊の衛生確保の措置|住宅宿泊事業法で求められること
住宅宿泊事業法の第5条は、住宅宿泊事業者に、各居室の床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃その他の宿泊者の衛生の確保を図るために必要な措置を講じることを求めています(e-Gov法令検索で条文を確認)。観光庁の民泊制度ポータルサイトは、この措置の具体的な内容を「事業者の業務」として説明しています。
観光庁の説明では、各居室の床面積は宿泊者1人当たり3.3平方メートル以上とし、届出住宅の設備や備品は清潔に保ち、ダニやカビが発生しないよう除湿を心がけ、定期的に清掃・換気を行う必要があります。シーツやカバーなど人に直接触れるものは、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替えます。事業の規模や実態に応じて、旅館業の衛生等管理要領を参考にするとも書かれています。
法令は害虫の名前を挙げていませんが、清掃・換気・除湿・寝具の取り替えは、トコジラミ、ダニ、ゴキブリの発生を抑える日常の作業と重なります。次の表は、観光庁が示す措置を、害虫対策の作業に置き換えた当サイトの整理です。
| 観光庁が示す衛生確保の措置 | 害虫対策としての作業の例(当サイトの整理) |
|---|---|
| 各居室の床面積を宿泊者1人当たり3.3平方メートル以上確保する | 定員を超えて受け入れない。人数が増えると寝具と荷物が増え、点検の見落としが出やすい |
| 設備や備品を清潔に保ち、定期的に清掃・換気を行う | 清掃の手順書に、ベッドまわり・排水口・ごみ置き場の害虫の確認を入れる |
| ダニやカビが発生しないよう、除湿を心がける | 湿度が高い時期に除湿し、寝具の湿りやカビの有無も点検する |
| シーツ・カバーなど直接人に触れるものを、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替える | 取り替えるときに縫い目と折り目の黒い点を目視する。外したリネンを客室の外へ広げない |
| 公衆衛生上の問題が発生し、またはそのおそれがあるときは、保健所に通報する | 害虫の発生を疑うとき、どこまでが通報の対象か、保健所に先に確認しておく |
参考:観光庁|民泊制度ポータルサイト 事業者の業務[1](宿泊者の衛生の確保・宿泊者名簿・苦情等への対応)
民泊で害虫が出たら、誰が対応しますか?
家主居住型は住宅宿泊事業者が行い、家主不在型や居室が5を超える住宅は、委託先の住宅宿泊管理業者が責任を持って行います。害虫の連絡と手配の範囲は、管理受託契約で確認してください。
家主居住型・家主不在型で変わる点検の担い手
観光庁は、宿泊者の衛生の確保、安全の確保、苦情等への対応といった業務について、事業者が住宅宿泊管理業者へ委託する場合は、管理業者の責任の下で担う業務になると説明しています。委託が必要にならない家主居住型では、事業者自身が担い手です。
管理業務の委託が必要になるのは、届出住宅の居室の数が5を超える場合と、人を宿泊させる間、届出住宅を不在にする場合です。ただし、生活の本拠が同じ建築物・敷地内か隣接していて、自ら管理する居室が5以下などの条件を満たす場合は除かれます。買い物などの一時的な不在は、原則1時間、事情によって2時間程度までとされています。
委託先は1社、害虫の範囲は契約で明確にする
観光庁は、委託する場合は、住宅宿泊管理業務の全部を一の管理業者に委託する必要があり、複数の者に分割して委託することは認められないと説明しています。届出住宅の維持保全に係る業務は、管理受託契約でその対象範囲を明確に定める必要があるともされています。
害虫の点検や、発生時の専門業者の手配が「維持保全」に含まれるかどうかは、契約書で確認します。害虫の連絡先、点検記録の保管者、駆除費用の負担者を決めておくと、発見時に判断が遅れません。定期契約の見方は害虫の定期防除契約で確認できます。
| 運営の形 | 衛生確保の担い手 | 害虫の連絡と記録で決めておくこと |
|---|---|---|
| 家主居住型(自ら管理できる範囲) | 住宅宿泊事業者 | 点検表を誰が記入するか。発見時に誰が客室の使用を止めるか |
| 家主不在型 | 住宅宿泊管理業者(委託が義務) | 管理受託契約に、害虫の点検・発見時の連絡・専門業者の手配の範囲を書く |
| 居室の数が5を超える住宅 | 住宅宿泊管理業者(委託が必要) | 部屋ごとの点検記録と、複数の客室へ広がったときの対応を決める |
チェックアウト後の清掃で確認する場所|寝具の縫い目・ベッド周り・荷物置き場
東京都のリーフレットによると、トコジラミは体長5〜8mmの褐色で扁平な虫で、夜に部屋の隙間から出て活動し、血を吸わなくても長期間生きられます。生息場所には血糞という黒いしみが多く見られ、ベッドの隙間や裏、マットレスの中、カーテンの折り目、カーペットの下、ソファの隙間、家具と壁の間などが例に挙がっています。
大阪府は、ベッドまわりやソファの隙間、壁の亀裂、カーテンの折り目、電気製品やコンセントの中など、暖かくて暗い場所に血糞やトコジラミの姿がないか確認するよう案内しています。畳の目、壁や柱の亀裂、ふすまの四隅も確認箇所に挙げ、木材の継ぎ目や割れ目、紙製のものはトコジラミに好まれるため特に注意するとしています。旅行先からの帰りに荷物を確認する考え方は、旅行・出張後の荷物にトコジラミ?も参考になります。
次の表は、これらの資料に載る生息場所の例を、チェックアウト後の清掃の順に並べた点検表です。全部屋で毎回すべてを行うのが理想ですが、時間が限られる民泊では、ベッドまわりと荷物置き場の2か所から始め、気になる痕跡があれば広げます。見分け方はトコジラミが疑わしいときで確認できます。
| 場所 | 見るもの | 記録のしかた |
|---|---|---|
| マットレスの縫い目、フレームの隙間、ヘッドボードの裏 | 黒い小さなしみ(血糞)、卵、虫の姿 | 部屋番号・日付・場所を、写真と一緒に点検表へ書く |
| シーツ、布団カバー、枕カバーの縫い目と折り目 | 縫い目に沿った黒い点 | 取り替え時に確認した旨をチェックし、異常があれば取り替え前に撮影する |
| ベッド脇の壁の亀裂、コンセントまわり、電気製品 | 壁の亀裂の中や、コンセントの中のしみ | 位置と日付を残し、コンセントの中は無理に分解しない |
| カーテンの折り目、カーペットの端、ソファの隙間 | 血糞や虫の姿 | 見つけた場所に印をつけ、写真を撮る |
| 荷物置き場(ラックやスーツケース置き)と、その周りの壁 | 隙間のしみ、虫の姿 | 宿泊者が替わるたびに同じ場所を確認し、記録する |
| 畳の目、ふすまの四隅、柱や木材の継ぎ目(和室) | 血糞、卵、虫の姿 | 和室のある客室だけ点検表に項目を足す |
トコジラミを疑ったときの客室の扱いと次の予約
黒いしみや虫を見つけたら、客室を次の予約に出す前に止め、状況を記録します。東京都のリーフレットは、一般的な殺虫剤はトコジラミに効果がない場合があり、くん煙殺虫剤を使うとかえって生息範囲が広がることもあり、家庭での対策だけで駆除することは困難なので、早急に専門業者に見てもらうよう案内しています。くん煙剤を使う前の確認事項はトコジラミにくん煙剤を使う前ににまとめています。
大阪府も、旅館・ホテル等の宿泊施設を経営する人に向けて、トコジラミが発見された場合は、効果のある薬剤による駆除や専門業者への相談など、必要に応じて早期に対応するよう案内しています。薬剤を使う場合は、成分と使い方を製品表示で確認し、効果がなければ専門業者へ相談します。
次の予約は、「もう見えないから大丈夫」と判断せず、専門業者の調査結果をもとに再開を決めます。東京都のリーフレットには、トコジラミは卵が約1週間でふ化し、1〜2か月で成虫になり、家中に広がると駆除が困難になると書かれています。寝具と清掃カートの動線は宿泊施設の客室で害虫を発見したときも参考にしてください。
| 段階 | 行うこと | 注意すること |
|---|---|---|
| 1 見つけた直後 | 該当客室の予約受付と入室を止め、場所と日時を写真つきで記録する | 虫を潰したり、寝具を広げたりしない |
| 2 周辺の確認 | 隣接する客室、同じリネンを使った客室、荷物置き場を点検する | 清掃用具やリネンが他の客室を回っていないかを確認する |
| 3 相談 | 保健所または自治体の民泊窓口、専門業者に連絡する | 自己判断でくん煙殺虫剤を使わない(生息範囲が広がることがある)。薬剤は製品表示に従う |
| 4 再開の判断 | 専門業者の調査・処置の結果と、再発の有無を確認してから決める | 再開日は、事業者と管理業者で決めて記録に残す |
| 5 宿泊者への説明 | 事実と今後の対応を、仲介サイトの規定に沿って伝える | 宿泊者が持ち込んだと決めつけない |
ゴキブリ・ネズミなど建物から出る害虫の予防
民泊の住宅は、旅館とは規模も構造も違いますが、旅館業の衛生等管理要領が求める基本は参考になります。厚生労働省の要領は、ねずみの侵入を防ぐため排水口や吸排気口などに金網を設け、外部に開放される窓等にも金網などの防除設備を有すること、施設の周囲を定期的に清掃し、ねずみや衛生害虫の発生源が見つかれば直ちに撤去などの措置を講じることを示しています。
チャバネゴキブリについて、千葉市は、自然状態では越冬できないが、暖房設備のあるビルなどでは1年中生息すると説明しています。客室の暖房や台所まわりは、季節を問わず確認します。旅館業の要領は、施設設備の清掃・補修・消毒の記録を作成し、3年以上保存することも求めています。民泊でも、同じ期間を目安に記録を残すと、保健所や管理業者に説明しやすくなります。
- 網戸、換気口、排水口の金網に、破れや外れがないか
- ごみ置き場やごみ箱のふたが閉まり、周囲に生ごみが残っていないか
- 宿泊者が置いて帰った食品や飲み残しを、清掃時に残していないか
- 外壁の配管まわりや軒の隙間に、ネズミが通れる穴がないか(ごみ置き場のネズミ対策も参考)
宿泊者からの申告への対応と記録
宿泊者から「かゆい」「虫がいる」と連絡があったときは、最初の対応で記録の質が決まります。観光庁は、宿泊者が感染症に罹患し、またはその疑いがあるときや、その他公衆衛生上の問題が発生し、またはそのおそれがあるときは、保健所に通報する必要があると説明しています。害虫の発生がどこまで該当するかは、自治体の窓口に確認してください。
観光庁は、宿泊者名簿を3年間保存する必要があると説明しています。害虫の記録も、名簿と同じように、部屋と日付で後から探せる形にしておくと、再発や隣室への広がりを調べやすくなります。刺された跡の診断はせず、症状が強いときは医療機関の受診を案内してください。
受付で聞くこと
最初の連絡では、事実を短く聞き取ります。原因を宿泊者のせいにする質問は避け、確認できたことだけを書きます。
- 部屋番号、連絡を受けた日時、宿泊の開始日
- 虫や痕跡を見た場所(ベッド、荷物、壁など)
- 写真があれば提供を依頼し、虫は潰さず保存できるか確認する
記録として残すこと
対応後は、客室ごとの記録として、次の内容を同じ書式で残します。管理業者に委託している場合は、記録の写しを事業者も受け取れるよう、契約で決めておきます。
- 対応した日時と、使用を止めた期間
- 移動先の客室と、清掃・点検を行った担当者
- 専門業者の調査報告、処置の内容、再開日
旅館業(簡易宿所)との違いと、保健所・自治体の相談先
民泊として宿泊サービスを行うには、住宅宿泊事業法の届出か、旅館業法の許可(簡易宿所営業など)のどちらかが基本になります。観光庁は、住宅を使った民泊サービスでも、住宅宿泊事業の届出をしない場合は、簡易宿所営業で許可を取得するのが一般的と説明しています。害虫対策の出発点も、どちらの制度で営業しているかで変わります。
どの制度が適用されるかは、お近くの保健所に確認するよう観光庁は案内しています。住宅宿泊事業の届出の受理や監督は、都道府県に代わり、保健所設置市や特別区が行う場合もあり、窓口と条例の状況は観光庁の自治体窓口の一覧で確認できます。害虫の発生、客室の使用中止、再開の判断は、まず管轄の保健所または民泊の窓口に連絡し、必要な手続きを確認してください。なお、この記事は住宅宿泊事業法の届出住宅と旅館業の簡易宿所を比べる範囲で、特区民泊は扱いません。
| 項目 | 住宅宿泊事業(民泊新法) | 旅館業(簡易宿所営業) |
|---|---|---|
| 手続き | 都道府県知事等への届出。年間の提供日数は180日が上限 | 保健所に申請して営業許可を得る |
| 客室の広さ | 居室の床面積は宿泊者1人当たり3.3平方メートル以上 | 客室の延床面積は33平方メートル以上が基準。宿泊者が10人未満なら3.3平方メートルに人数を乗じた面積 |
| 寝具の取り替え | 宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替える | 宿泊者1人ごとに洗濯したものと取り替える。同じ宿泊者なら、シーツなどは3日に1回は少なくとも取り替える |
| ねずみ・衛生害虫 | 事業の実態に応じて、旅館業の衛生等管理要領を参考に適切な衛生措置を講じる | 要領に、防除設備(金網)、施設周囲の清掃と発生源の撤去、清掃・補修・消毒の記録(3年以上保存)が示されている |
| 運営の担い手 | 家主居住型は事業者、家主不在型や居室が5を超える住宅は管理業者へ委託 | 営業者。施設の衛生上の維持管理責任は営業者にある |
| 相談先 | 都道府県等の民泊窓口(保健所設置市・特別区を含む) | 管轄の保健所 |





