畑の害獣を見分ける|食べ跡・足跡・フン・時間帯の照合表

畑の対策で最初に迷うのは、荒らしているのがどの動物かという点です。農林水産省の中型獣類のマニュアルは、柵による対策の基本は「相手を知る」ことで、動物の侵入行動は「掘る」「登る」「破く」のパターンに分かれると説明しています。動物を絞り込めば、買う資材も変わります。

同じ省の旧マニュアルには、足跡だけでは獣種を特定できないことが多く、他の痕跡とあわせて総合的に判断するよう書かれています。下の表は、農水省の資料に載る特徴を足跡・手がかり・時間帯の順に並べた当サイトの照合表です。1つの項目で決めず、合う項目が多い動物を候補にしてください。

現場で記録する順番

被害を見つけたら、片付ける前に記録します。記録があれば、市町村の担当者や調査の担当者が動物を絞り込みやすくなります。フンは素手で触らず、離れた位置から撮影します。足跡の撮り方は泥の跡を見つけたときの撮り方と見分け方、似た動物の違いはアナグマとタヌキの見分け方でも確認できます。

  • 被害のあった作物・場所・日付を、全体と近くの2枚で撮影する
  • 足跡は、定規やペンを横に置いて大きさが分かるように撮る
  • フンは触らず、落ちていた場所と形が分かるように撮る
  • 夜間か昼間かを調べるため、数日間の変化をメモする

鳥類は食べ方の跡で見分ける

鳥類は足跡が残りにくく、食べ方が手がかりになります。農水省の鳥類編には、鳥類の被害を作物と時期ごとに同定する早見表があり、次のような特徴が載っています。

  • カラス類:出芽した苗を引き抜いて種子の部分だけを食べる。穂の先端から皮を引き裂くようにむく食べ方もある
  • ヒヨドリ:冬のキャベツ・ブロッコリー・こまつななどの葉を食べる。果実の収穫期はカラス類・ムクドリなどと重なる
  • スズメ:稲を食べたあとに、むいたもみ殻が落ちている
  • 小さい果実は、鳥に丸飲みされることが多い
畑の害獣を見分ける|食べ跡・足跡・フン・時間帯の照合表:確認項目
動物足跡の特徴フン・姿・食べ跡の手がかり活動の時間帯・行動
イノシシ全体に丸みがある。地面が柔らかいと後ろ側の副蹄の跡が出ることがある土の掘り起こし、稲の食害、体の泥を木や下草にこすりつけた跡、ヌタ場昼夜を問わず動くが、農作物の被害は夜間に出ることが多い
シカ副蹄の跡がつかない小さな粒状(俵型)のフン、角こすりによる立木の被害昼夜を問わず動く。森林と農地の境目の開けた場所を使う
サル足跡より、群れで現れる姿が手がかりメスを中心にした群れで行動し、多い時には100頭を超える日の出から日没まで活動する
アライグマ指は5本で長く、人の手のひらに似る目の周りの黒い部分と縞のある尾が識別点。雑食で作物以外も食べる夜間が中心だが昼間も動く
ハクビシン丸く短い5本指。爪の跡は残らない額から鼻先にのびる白い線と長い尾が識別点夜行性で、昼間は建物の中で休む
タヌキ5本指だが印されるのは4本。爪の跡が明瞭に残る同じ場所に残す「ため糞」。紐状のものを噛み切る癖がある夜間が中心で、まれに昼間も動く
アナグマ短い5本指で、前足のパッドは半月型。長い爪の跡が明瞭に残る斜面や竹林に複数の巣穴を掘る。顔に黒い縦線が2本ある穴を掘ることが得意で、冬季は穴ごもりをする
ヌートリア長い5本指で後ろ足に水かきがある。足跡の間に尾を引きずった跡が残る河川・ため池などの水辺に暮らし、堤防や地面に巣穴を掘る夜行性とされるが、朝夕にも活発に動く

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】令和5年3月版 第2章 鳥獣被害対策の基本的な考え方(PDF)

読者の疑問

畑を荒らしているのが何の動物か分からないときはどうしますか?

比較ガイド

足跡だけでは獣種を特定できないことが多いため、食べ跡・フン・足跡・出没の時間帯を組み合わせて候補を絞ります。写真と日付を記録し、絞れないときは市町村の農政担当に見てもらいます。

最初にする環境管理|収穫残さ・放任果樹・草刈り

柵より先に、動物を引き寄せている原因を減らします。農林水産省の総合対策編は、被害が発生する要因を取り除くことが被害軽減への近道で、柵や追い払い、捕獲と併せて、餌になるものと潜み場の状況を改善すると対策が効果を発揮すると説明しています。

餌場を減らす例として、同マニュアルはヒコバエや放任果樹を挙げ、これらを減らすと野生鳥獣を誘引している原因が除かれ、柵の補修回数も減ると説明しています。イノシシ対策の図では、野菜くずや放任果樹の処分が誘引物の除去として示されています。

潜み場の除去として、集落内の藪を取り除くことと、柵の周囲に緩衝帯を設けることが挙げられています。シカについては、森林と農地の境目の草を刈り払い、餌場として使わせない管理が重要とされています。個人の畑では、畑の縁の草を低く保ち、柵の外側に隠れ場所を作らないことが目安です。

ホームセンターなどで売られている匂い・光・音の忌避資材について、農水省のマニュアルは、公的機関で効果を検証したものではなく、置くだけで野生鳥獣を寄せつけない資材は見つかっていないと説明しています。忌避資材に頼る前に、害獣の忌避剤だけで解決する?で効果の確かめ方を確認してください。

  • 収穫しなかった野菜・果実や、規格外の作物を、畑や周辺に放置しない
  • 実を付けたまま放置している柿などの果樹を、収穫するか整理する
  • 畑の周りの藪や草を刈り、動物が隠れて近づける場所を減らす
  • 外に置いたままの餌や生ごみがあれば片付ける(外置きの餌とアライグマ)

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】令和5年3月版 第3章 鳥獣被害対策の3つの柱(PDF)

動物別に向く柵・ネット・電気柵の比較表

柵は、金網・ワイヤーメッシュ・ネットなどの物理柵、電気柵、両方を組み合わせた複合柵に分かれます。農水省の資料は、動物が柵に最初に行う行動を「優先行動」と呼び、掘る動物には裾の固定、登る動物には電気柵との組み合わせなど、動きに合わせて選ぶ考え方を示しています。

次の表の数値は、農水省のマニュアルに載る目安をまとめたものです。地形、作物、動物の大きさで条件は変わるため、購入や設置の前に市町村の農政担当や普及指導の窓口に確認してください。イノシシが庭に来たときの動き方はイノシシが庭に来たときの対応に整理しています。

地面との隙間と見回りの時期が成否を分ける

農水省の総合対策編は、イノシシやシカに柵から侵入される場合、多くは地面との隙間(電気柵では地面と1段目の隙間)から入られると説明しています。設置時に地面をならし、裾を固定することが重要です。積雪地域では、雪や氷で電気柵の通電性が下がるため、積雪時の管理も考える必要があります。

また、被害が発生する時期の前や農閑期に、見回りと補修を集中して行うことが勧められています。例として、シカは田植え直後から水稲苗の食害が出るため田植え前に、イノシシは乳熟期ごろの8月中下旬ごろ(品種による)に柵を点検するとされています。

動物別に向く柵・ネット・電気柵の比較表:確認項目
動物向く柵の考え方資料に載る目安注意点
イノシシ電気柵、またはワイヤーメッシュ・金網。下から潜る習性があるため下部を補強する電気柵は電線の間隔20cm以下で2〜3段地面との隙間から入られやすい。草による漏電を防草シートで抑える
シカ電気柵、またはワイヤーメッシュ・金網。飛び越えと下からの侵入の両方を防ぐ電気柵は電線の間隔20cm以下で3〜5段。金網は2m近い高さの設置例があり、飛び越えられるなら高さを足す電線は通電しにくい舗装道から30cm以上離す。積雪地は雪や氷で通電が弱まる
サルワイヤーメッシュや金網の支柱に通電する構造を組み合わせた複合柵ワイヤーメッシュのマス目は10cm以下、1段目の電線はメッシュから10cm以内サルが登って支柱や電線をつかんだときに通電する仕組み。マス目が10cmより大きい網は防獣ネットで補強する
アライグマ・ハクビシン・テンなど登る中型獣電気柵とネットを組み合わせた複合柵高さ約40cmに通電線を通す方式がある。段張りの電気柵なら電線の間隔は10cm以下(種によっては5cm)物理柵だけでは効果が期待できない。草による漏電に注意し、電源装置は設置距離に合った能力を選ぶ
タヌキ・キツネ・アナグマなど掘る・破く動物物理柵(金網など)で囲み、裾を固定する目合いは5cm以下、高さは1m以上。裾を長めに埋めるか、鉄筋やパイプを巻き込む登る動物には効かない。ネット柵は噛まれてほつれやすく、早めに補修する
カラス・ヒヨドリ・ムクドリ・スズメ防鳥網で作物を覆い、鳥と作物を遮断する目合いはカラス75mm以下、ヒヨドリとムクドリ30mm以下、スズメ20mm以下網の上に乗られて網ごしに食べられることがある。糸の細い網は鳥が絡まりやすい

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】令和5年3月版 第3章 鳥獣被害対策の3つの柱(PDF)

電気柵を設置するときの安全上の決まり

電気柵には、感電事故を防ぐための決まりがあります。農林水産省は、鳥獣被害防止のために設置された電気さくに起因する死傷事案が起きたことを受け、電気設備に関する技術基準を定める省令にもとづく感電防止の措置を求めています。農水省のページに載る主な内容は次のとおりです。

農水省の課長通知(平成28年3月)では、電気工事士法施行規則の改正により、電気さく用電源装置を用いない電気さくは、電気工事士が技術基準に適合するよう設置する必要があり、違反した場合には罰則が適用されると周知されています。一方、市販の電気さく用電源装置を用いた電気さくは、従来どおり資格がなくても設置できるとされています。

自分で設置する場合も、市販の専用電源装置と説明書に従い、家庭用コンセントの電気を直接さく線に流すような組み方はしないでください。不安なときは、販売店や市町村の農政担当に確認します。子どもや通行人が触れやすい場所では、さく線の位置や囲いも見直します。

  • 電気さくを設けた場所には、人が見やすい間隔で、危険であることを示す表示をつける
  • 電気さく用電源装置は、電気用品安全法の適用を受けるもの、または出力電流が制限され、同法の適用を受ける直流電源装置や蓄電池・太陽電池などから電気を受けるものを使う
  • 電源装置が30ボルト以上の電源から電気を受け、人が容易に立ち入る場所に設けるときは、定格感度電流15ミリアンペア以下・動作時間0.1秒以下の電流動作型の漏電遮断器を電路に施設する
  • 電気を供給する電路に、容易に開閉できる専用の開閉器を設ける

参考:農林水産省|鳥獣による農作物等の被害の防止に係る電気さく施設における安全確保について

家庭菜園の規模でできる対策と、地域でまとまって行う対策

対策の規模は、畑の大きさと被害の範囲で変わります。小さな菜園では畑全体を高い柵で囲むより、作物を直接守る方が現実的な場合があります。一方で、近隣の畑や集落全体に被害が広がっているときは、個人の対策だけでは動物が別の畑へ移るだけになりかねません。

家庭菜園・小さな畑でできること

農水省の総合対策編は、防鳥網で作物を覆い、鳥と作物を遮断する方法を、小規模栽培や果樹栽培の基本技術と説明しています。設置や撤収の手間がかかり、作業の邪魔になる点が課題とされています。中型獣には、ネットと電気柵を組み合わせ、高さ約40cmに通電線を通す複合柵が紹介されています。草による漏電のリスクが比較的小さく、登る動物にも掘る動物にも対応できるとされています。

電気柵は、設置時に通電し、24時間通電し、収穫時に集中して使うことが基本とされています。庭の果実や菜園の被害の見分け方は庭にアライグマらしき動物とハクビシンに庭の果実を食べられるで確認できます。

集落・近隣でまとめて取り組むこと

同じ総合対策編には、Aさんが柵を張ると隣のBさんの畑にイノシシが出て、近隣農家が気まずくなった例が紹介されています。本来は近隣の農家や住民と連携し、各自の負担を減らしながら集落ぐるみで取り組むことが理想とされています。

柵の管理体制や見回りのルールは、設置の前に決めておくと効果が続きやすいとされています。被害の発生場所や対策の状況を地図に記して共有する方法も紹介されています。近所の畑の被害は、決めつけずに情報を出し合う形で確認します。

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】令和5年3月版 第3章 鳥獣被害対策の3つの柱(PDF)

わなによる捕獲には許可が必要|鳥獣保護管理法と外来生物法

畑を荒らす動物を捕まえたくなっても、野生鳥獣の捕獲は法律で原則禁止されています。環境省は、鳥獣または鳥類の卵を、狩猟以外で捕獲・殺傷・採取することは原則禁止で、生態系や農林水産業に被害がある場合などに、環境大臣または都道府県知事の許可を受けて捕獲できると説明しています。多くの都道府県では、許可権限の一部を市町村長に移しています。

狩猟として行うには、狩猟免許の取得と毎年度の猟期前の登録が必要で、方法は法定猟法に限られます。許可捕獲は申請が必要で、期間・区域・方法などの条件が付きます。箱わなやくくりわなを置く前に、自分の畑で使える制度を市町村の担当課に確認してください。許可捕獲でも危険猟法などには制限があり、方法を自由に選べるわけではありません。

アライグマやヌートリアは特定外来生物です。環境省は、特定外来生物の飼育・栽培・保管・運搬や、野外へ放つことなどを原則禁止とし、野外で捕まえた個体を持ち帰ることも運搬に当たると説明しています。捕獲後の扱いは自治体の案内に従い、生きたまま別の場所へ運んで放すことはしません。

わなによる捕獲には許可が必要|鳥獣保護管理法と外来生物法:確認項目
区分条件手続きの窓口の目安
狩猟(わな猟など)狩猟免許の取得と毎年度の猟期前の登録が必要。対象は狩猟鳥獣46種で、ひなと卵は除く。方法は法定猟法のみ都道府県。免許や登録の手続きを確認する
許可捕獲(被害防止など)許可の申請が必要。期間・区域・方法の条件が付く。狩猟鳥獣以外も対象になり得る都道府県知事、または権限を移された市町村長
特定外来生物(アライグマ・ヌートリアなど)飼育・保管・運搬、野外への放出は原則禁止。持ち帰りも運搬に当たる市町村・都道府県の担当課。野外で見つけた外来生物の問い合わせは環境省の地方環境局等

参考:環境省|捕獲許可制度の概要

市町村の農政担当・鳥獣対策の相談先と補助制度への案内

相談先の中心は、畑のある市町村の農政担当(鳥獣被害対策の担当課)です。農林水産省の調査によると、鳥獣被害防止特措法にもとづく被害防止計画を作成した市町村は令和7年4月末時点で1,525市町村、鳥獣被害対策実施隊を設置した市町村は1,266市町村です。お住まいの市町村が計画を作成しているかは、農水省のページの一覧表で確認できます。

国の鳥獣被害防止総合対策交付金は、被害防止計画にもとづく地域ぐるみの取り組みとして、侵入防止柵の設置、刈り払いなどの生息環境管理、捕獲機材の導入などを支援する仕組みです。個人の家庭菜園が対象になるかは、市町村や地域の協議会の運用で変わります。柵や資材を買う前に、対象になるかと手続きを市町村に問い合わせてください。

全国の被害額の順位や推移は、日本の害獣ランキングで確認できます。住宅の庭や家の周りが被害を受けている場合は、農政担当ではなく環境や生活衛生の窓口が案内する自治体もあります。窓口に伝える内容は、アライグマを庭や家で見かけたときにも整理しています。

参考:農林水産省|被害防止計画の作成及び実施隊の設置状況に関する調査結果の概要(令和7年4月末時点・PDF)