日本の害獣ランキング|令和6年度の農作物被害額を獣種別に並べる
農林水産省は、都道府県からの報告をもとに「全国の野生鳥獣による農作物被害状況」を毎年まとめています。2026年10月3日に確認できる最新は令和6年度分で、農水省の訂正通知には令和7年12月に公表したと書かれています。独自の危険度ではなく、この公式統計の被害金額を大きい順に並べたものが、この節の最後にある表です。
表の順位は、農水省の資料の数値を当サイトが被害金額の大きい順に並べ替えたもので、農水省が順位を付けているわけではありません。金額の単位は百万円で、資料の数値をそのまま転記しました。割合は令和6年度の合計(18,753百万円)で割った当サイトの計算で、小数第2位を四捨五入しています。「その他鳥類」「その他獣類」は個別の順位から外しました。
上位2種で全体の約66%、上位3種で約73%
シカ(7,851百万円)とイノシシ(4,456百万円)を合わせると12,307百万円で、全体の約66%です。これにカラスを加えると約73%になります。被害額の順位は「家に出やすい動物」の順位ではなく、農地を荒らす動物の順位だと分けて読むと、後の章の話がつながります。
鳥類は約17%、獣類が約83%
農水省の資料では、鳥類計が3,126百万円、獣類計が15,627百万円です。鳥類の中で最も大きいのはカラスで、令和6年度はヒヨドリが前年度の333百万円から806百万円へ大きく増えました。ムクドリ、スズメ、ハトはいずれも200百万円未満です。
前年度から増えた獣種と減った獣種
農水省は、令和6年度に被害が増えた主な獣種としてシカ、イノシシ、ヒヨドリを挙げています。表では、アライグマが+210百万円、ハクビシンが+113百万円と、中型獣の増加も目立ちます。一方でクマは-219百万円、カモは-34百万円と減りました。1年分の増減だけで傾向を決めず、次の章の推移とあわせて見ます。
| 順位 | 獣種 | 被害金額(百万円) | 前年度との差(百万円) | 全体に占める割合 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | シカ | 7,851 | +896 | 41.9% |
| 2 | イノシシ | 4,456 | +821 | 23.8% |
| 3 | カラス | 1,364 | +23 | 7.3% |
| 4 | ヒヨドリ | 806 | +473 | 4.3% |
| 5 | サル | 770 | +66 | 4.1% |
| 6 | アライグマ | 693 | +210 | 3.7% |
| 7 | クマ | 519 | -219 | 2.8% |
| 8 | ハクビシン | 478 | +113 | 2.5% |
| 9 | カモ | 351 | -34 | 1.9% |
| 10 | ムクドリ | 185 | +5 | 1.0% |
| 11 | スズメ | 162 | -15 | 0.9% |
| 12 | タヌキ | 159 | +14 | 0.8% |
| 13 | ウサギ | 134 | +35 | 0.7% |
| 14 | ハト | 80 | -9 | 0.4% |
| 15 | ヌートリア | 79 | +30 | 0.4% |
| 16 | ネズミ | 76 | +30 | 0.4% |
| 17 | カモシカ | 70 | -13 | 0.4% |
参考:農林水産省|野生鳥獣による農作物被害状況(令和6年度)別添1 獣種別(PDF)
日本で農作物被害額が最も大きい害獣はどれですか?
令和6年度はシカで、被害金額は7,851百万円(約79億円)です。2位はイノシシの4,456百万円で、2種で全体の約66%を占めます。平成12〜19年度はイノシシがシカを上回っており、年代で順位は変わっています。
被害額の推移|平成22年度から令和6年度までの増減の読み方
農水省は平成11年度から令和6年度までの推移も公表しています。合計の被害金額は、平成22年度の23,949百万円(約239億円)から、令和3年度の15,544百万円(約155億円)まで、約35%減りました。その後、令和4年度は約156億円とほぼ横ばいで、令和5年度に約164億円、令和6年度に約188億円と増えています。
下の表は、推移の資料から主な年度を抜き出したものです。シカの割合は当サイトが合計で割った値です。農水省ページに掲載された令和6年度までの資料を2026年10月3日に確認して転記しており、後日の訂正で値が変わる可能性があります。
長期は減少、近年はシカとイノシシが押し上げた
平成22年度から令和3年度にかけて、イノシシは6,799百万円から3,932百万円へ減りました。シカは7,750百万円から6,104百万円と減り方が小さく、その後は増加に転じています。令和6年度のシカは7,851百万円で、平成22年度とほぼ同じ水準に戻りました。合計に占めるシカの割合は、約32%から約42%へ上がっています。
推移の資料を見ると、平成12年度から平成19年度まではイノシシの被害金額がシカを上回り、平成20年度以降は毎年シカが上回っています。「害獣の1位」は年代によって入れ替わってきたため、古い記事の順位と食い違うことがあります。
数値の読み方|訂正と丸めに注意する
農水省は、令和6年10月の会計検査院の指摘を受けて報告値を確認し、令和5年度(15都県)と平成27年度から令和4年度(18道府県)の数値を訂正したと公表しています。令和6年度についても、東京都の数値の訂正が令和8年2月に出ています。年度を比べるときは、最新の掲載値を使います。
資料には、ラウンドの関係で合計が一致しない場合があると書かれています。この記事の「約79億円」のような億円の表記は、百万円の値を億円に直して四捨五入した丸めた値です。引用するときは、農水省の資料の数値と年度を一緒に書くと誤解が減ります。
| 年度 | 合計(百万円) | シカ(百万円) | イノシシ(百万円) | シカの割合 |
|---|---|---|---|---|
| 平成22年度 | 23,949 | 7,750 | 6,799 | 32.4% |
| 平成27年度 | 17,649 | 5,961 | 5,133 | 33.8% |
| 令和元年度 | 15,804 | 5,305 | 4,622 | 33.6% |
| 令和2年度 | 16,121 | 5,642 | 4,565 | 35.0% |
| 令和3年度 | 15,544 | 6,104 | 3,932 | 39.3% |
| 令和4年度 | 15,562 | 6,501 | 3,650 | 41.8% |
| 令和5年度 | 16,355 | 6,954 | 3,634 | 42.5% |
| 令和6年度 | 18,753 | 7,851 | 4,456 | 41.9% |
シカ・イノシシ・サル・カラスなど上位の獣種の被害の特徴
同じ被害額でも、獣種によって被害を受ける作物と地域が違います。次の4つは、農水省の令和6年度資料(獣種別・作物別・都道府県別)から読み取れる特徴です。数値を比べるときは、被害面積・被害量・被害金額の3つの単位が混ざらないようにします。
シカは面積と量が大きく、被害額の約74%が北海道
シカの被害面積は35.3千haで、全体の44.3千haの約8割です。被害量も631.7千tと、全体の約86%を占めます。被害金額で見ると、最大は飼料作物の約25.6億円で、続いてイネの約16.5億円、野菜の約13.4億円です。
農水省の都道府県別の資料では、北海道のシカの被害金額が約58.3億円で、全国のシカの被害金額約78.5億円の約74%にあたります。シカの被害額を全国一律の傾向として読まず、北海道とそれ以外を分けて見る必要があります。観光地のシカとの付き合い方は奈良公園周辺でシカと暮らすときに整理しています。
イノシシは稲の被害が約54%を占める
イノシシの被害金額は約44.6億円で、このうちイネが約23.9億円と約54%を占めます。次いで果樹が約9.8億円、野菜が約5.1億円です。令和6年度は前年度より821百万円増えました。庭や住宅地に現れたときの動き方はイノシシが庭に来たときの対応にまとめています。
カラスとヒヨドリは果樹と野菜に集中する
カラスの被害金額は約13.6億円で、果樹が約7.7億円、野菜が約3.9億円、イネが約0.7億円です。ヒヨドリは約8.1億円で、野菜が約3.7億円、果樹が約3.6億円とほぼ同じ規模です。鳥類計の被害面積は2.4千haで、獣類計の41.8千haに比べると小さく、被害金額の多くが果樹と野菜に出ています。
サル・クマ・アライグマ・ハクビシンは果樹や野菜が中心
サルは約7.7億円で、果樹が約3.5億円、野菜が約2.5億円です。アライグマは約6.9億円のうち野菜が約3.9億円、果樹が約2.1億円で、ハクビシンは約4.8億円のうち果樹が約2.5億円、野菜が約2.2億円でした。果樹や野菜は家庭菜園でも育てる人が多い作物なので、庭先の被害の見分けにも参考になります。
クマは約5.2億円で、飼料作物が約2.2億円と最大です。住宅や畑で出会う中型獣の見分け方はハクビシンとアライグマの見分け方とアライグマを庭や家で見かけたときで確認できます。
作物別(稲・果樹・野菜など)の被害額の内訳
農水省の資料には、獣種ごとの被害金額が作物別(イネ、ムギ類、マメ類、雑穀、果樹、飼料作物、野菜、いも類、工芸作物、その他)にも載っています。令和6年度は、イネ、野菜、果樹の3つが約40〜45億円で並び、この3つで全体の約69%を占めました。
次の表は、作物ごとの被害金額と、金額の大きい獣種を示します。億円は万円の値を小数第1位で四捨五入した丸めた値で、割合は当サイトが全作物の合計で割った値です。獣種の欄は、農水省の資料の数字を大きい順に読んだものです。シカは飼料作物とイネだけでなく、ほぼすべての作物で首位か上位に入っています。
| 作物 | 被害金額(約・億円) | 全体に占める割合 | 金額が大きい獣種(約・億円) |
|---|---|---|---|
| イネ | 45.2 | 24.1% | イノシシ23.9、シカ16.5 |
| 野菜 | 43.9 | 23.4% | シカ13.4、イノシシ5.1、カラス3.9 |
| 果樹 | 39.8 | 21.2% | イノシシ9.8、カラス7.7、シカ5.3 |
| 飼料作物 | 29.8 | 15.9% | シカ25.6 |
| いも類 | 10.2 | 5.5% | シカ5.0、イノシシ3.2 |
| マメ類 | 5.9 | 3.2% | シカ4.3 |
| ムギ類 | 5.2 | 2.8% | シカ3.4 |
| 工芸作物 | 4.7 | 2.5% | シカ3.3 |
| その他 | 1.8 | 1.0% | シカ1.1 |
| 雑穀 | 1.0 | 0.5% | シカ0.7 |
森林被害は獣種別にどうか|林野庁の統計でシカが約6割
農作物とは別に、林野庁は野生鳥獣による森林被害面積を公表しています。令和6年度の全国の被害面積は約4千ヘクタールで、このうちシカによる枝葉の食害や剥皮被害が約6割を占めると林野庁のページに書かれています。民有林と国有林の合計で、都道府県等からの報告にもとづく数値です。
獣種別の資料では、令和6年度の合計は4,256haでした。表は、林野庁の獣種別面積を大きい順に並べ、割合を当サイトが計算したものです。林野庁のページには、令和7年12月に公表した令和6年度の面積に誤りがあり、令和8年3月25日に修正したとあります。古い資料を参照した記事とは数値が違う場合があります。
農作物の被害額で2位のイノシシは、森林被害では49haと小さく、代わりにノネズミとクマが上位に入ります。林野庁は、クマによる被害を壮齢木の樹皮を剥ぐ「クマ剥ぎ」と説明し、人工林では伐採間近の大径木の被害割合が多く、経済的な損失が大きい傾向があるとしています。被害の対象が作物か樹木かで、順位は大きく変わります。
| 獣種 | 被害面積(ha) | 割合(当サイト計算) |
|---|---|---|
| シカ | 2,680 | 約63% |
| ノネズミ | 671 | 約16% |
| クマ | 631 | 約15% |
| ノウサギ | 125 | 約3% |
| カモシカ | 98 | 約2% |
| イノシシ | 49 | 約1% |
| サル | 3 | 0.1%未満 |
| 合計 | 4,256 | 全体 |
シカ・イノシシの捕獲頭数と被害額は連動するのか|環境省の速報値
被害額と並べて見られることが多いのが、環境省がまとめる捕獲頭数です。ニホンジカとイノシシは、狩猟と、被害防止や個体数調整などの許可捕獲等を合わせた頭数が速報値として公表されています。令和6年度は、シカが738,700頭、イノシシが643,000頭、合計1,381,700頭でした。
表の数値は令和7年9月25日現在の速報値で、十の位で四捨五入されています。許可捕獲等には、被害の防止、第二種特定鳥獣管理計画に基づく数の調整、指定管理鳥獣捕獲等事業による捕獲が含まれると資料に書かれています。速報値のため、確定値が公表されると数値が変わる可能性があります。
令和6年度は、イノシシの捕獲頭数が前年度の522,000頭から643,000頭へ約23%増え、被害金額も約23%増えました。捕獲を強めた年に被害額が増えることもあるため、この2つの数字だけで捕獲の効果を判断することはできません。
国の目標も確認しておきます。農水省の令和8年度予算の概要資料には、鳥獣被害防止総合対策交付金の事業目標として、野生鳥獣による農作物被害額を令和11年度までに140億円(総産出額に対する割合0.24%)にすると書かれています。令和8年度の予算額は9,900百万円です。目標の140億円と、令和6年度の約188億円との差も確認できます。
| 年度 | ニホンジカ(頭) | イノシシ(頭) | 合計(頭) |
|---|---|---|---|
| 令和4年度 | 716,800 | 590,100 | 1,306,900 |
| 令和5年度 | 722,700 | 522,000 | 1,244,700 |
| 令和6年度 | 738,700 | 643,000 | 1,381,700 |
統計に含まれない被害|家屋・生活被害と、届出のない被害
ランキングを家の対策に使う前に、この統計が数えていないものを確認します。農水省の資料は、都道府県の報告にもとづいてまとめられ、都道府県は市町村からの報告にもとづいて把握していると説明しています。農水省の資料で数えているのは作物別の被害面積・被害量・被害金額で、住まいの被害を数える欄はありません。
天井裏・庭・設備の被害は、この統計に入らない
天井裏の汚れ、断熱材の損傷、配線のかじり、悪臭、庭の掘り返しといった住まいの被害は、農作物被害の集計項目にありません。また、被害が報告されなかった農地や家庭菜園の被害は数字に出ません。統計の数字は「報告された農作物の被害」であり、実際の被害の全体ではないと読みます。
ネズミ・ハクビシン・アライグマは統計でどう見えるか
統計上のネズミの被害金額は76百万円、ハクビシンは478百万円、アライグマは693百万円で、いずれも農作物の被害額です。住宅でよく相談される屋根裏への侵入、フンや尿による汚れ、配線のかじりは含まれません。順位が低いからといって、住宅での被害が小さいとは言えません。
ネズミの対策はネズミの対策一覧、天井裏の音の見分け方は天井裏で音がするときから確認できます。
住宅の害獣を相談する先と、ランキングの使い方
ランキングの上位にいない動物でも、住宅では深刻な被害になります。農地や家庭菜園の被害は市町村の農政担当が窓口です。家の周りや天井裏の被害は、環境・衛生・農林など、自治体によって担当課が違います。市区町村の代表窓口か公式サイトの「有害鳥獣」「ねずみ・害虫」の案内で確認してください。
畑や菜園の被害を受けている場合は、畑の害獣対策で食べ跡や足跡から動物を見分け、柵と環境管理を選ぶ手順を確認できます。家の被害で調査会社に連絡する前は、害獣の現地調査を頼む前にで、音・フン・痕跡の記録の渡し方を整理しておくと説明が早く進みます。
- 比較するときは、同じ年度・同じ単位の数値を使う。
- 被害金額の順位と、被害面積・被害量の順位を分けて見る。
- 自分の地域の被害は、都道府県や市町村の公表資料で確認する。







