鳥獣被害の都道府県別データは農林水産省の「参考2」が入口
農林水産省は、都道府県からの報告をもとに、全国の野生鳥獣による農作物被害を毎年まとめています。令和6年度の概要では、全国の被害金額は188億円(前年度から24.0億円の増加)、被害面積は4万4千ha、被害量は73万tで、シカ、イノシシ、ヒヨドリなどの被害が増えたと説明されています。都道府県別の表は、同じページの添付資料「参考2」にあります。
参考2は、47都道府県ごとの被害面積、被害量、被害金額を、鳥類、獣類、うちイノシシ・サル・シカに分けて載せています。都道府県は市町村からの報告をもとに数字を把握しており、金額の単位は万円です。この記事では、2026年10月3日に開いた令和6年度分を使います。令和6年度分は令和7年12月に公表され、東京都の数値の訂正(令和8年2月)を反映した資料が現在は掲載されています。令和7年度分は、この日の時点では確認できませんでした。
参考:農林水産省|全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和6年度)
鳥獣被害の都道府県別データはどこで見られますか?
農林水産省の「全国の野生鳥獣による農作物被害状況」ページの参考2に、令和6年度の都道府県別の被害面積・被害量・被害金額が載っています。県独自の詳しい数字は、同ページの都道府県リンク集から県の公表ページに進めます。
令和6年度の都道府県別被害金額|上位10都道府県と獣種別の内訳
令和6年度の被害金額が大きい上位10都道府県を、獣種別の内訳つきで並べます。金額は万円で、「シカ」「イノシシ」「サル」は獣類の内訳の一部、「鳥類」は鳥類の合計です。表中の0は、資料の注記で単位に満たないものとされています。
上位10都道府県の合計は約117.7億円で、全国の約63%にあたります。北海道を除く9県の合計は約48.2億円で、全国の約26%です。福岡県、熊本県、愛知県、長野県、鹿児島県、愛媛県、兵庫県、岩手県、茨城県の順に続き、1位の北海道との差は大きく、2位以下は約3.8億円から約6.9億円の範囲に収まっています。
| 順位 | 都道府県 | 被害金額(万円) | うち鳥類 | うちシカ | うちイノシシ | うちサル |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 北海道 | 695,314 | 27,738 | 582,767 | 0 | 0 |
| 2 | 福岡県 | 68,728 | 23,890 | 6,893 | 30,840 | 676 |
| 3 | 熊本県 | 68,249 | 20,828 | 6,939 | 34,958 | 781 |
| 4 | 愛知県 | 57,663 | 24,665 | 5,110 | 9,975 | 2,488 |
| 5 | 長野県 | 57,555 | 18,350 | 19,448 | 6,214 | 5,775 |
| 6 | 鹿児島県 | 54,022 | 25,264 | 3,998 | 18,283 | 3,270 |
| 7 | 愛媛県 | 50,845 | 10,965 | 2,314 | 26,239 | 5,505 |
| 8 | 兵庫県 | 45,395 | 5,345 | 12,382 | 15,510 | 276 |
| 9 | 岩手県 | 41,293 | 5,607 | 23,627 | 4,591 | 354 |
| 10 | 茨城県 | 37,769 | 21,594 | 0 | 11,269 | 0 |
被害の多い道県で目立つ獣種|北海道はシカ、九州・四国はイノシシ
同じ表から獣種ごとの割合を計算すると、被害の大きい道県ごとに目立つ獣種が分かれます。以下の割合は、この記事で表の数字から計算したものです。
北海道:シカが約84%で、全国のシカ被害金額の約74%
北海道の被害金額695,314万円のうち、シカは582,767万円で約84%を占めます。全国のシカの被害金額は別添1で約78.5億円で、北海道分はその約74%にあたります。被害面積でも、全国のシカ被害35,325haのうち北海道が33,249ha(約94%)で、全国の被害面積44,250haの約79%を北海道が占めますが、被害金額では全国の約37%にとどまります。
面積の割合と金額の割合がずれる背景には、被害を受けた作物の違いがあると考えられます。全国のシカ被害面積35,325haのうち、飼料作物は28,649ha(約81%)です。ただし、都道府県ごとの作物別の内訳は参考2に載っていないため、北海道の内訳は資料からは確認できません。
九州・四国:福岡・熊本・愛媛はイノシシが約45〜52%
福岡県はイノシシが30,840万円(約45%)、熊本県は34,958万円(約51%)、愛媛県は26,239万円(約52%)で、獣類の中でもイノシシが最大です。鹿児島県はイノシシが18,283万円(約34%)に加えて鳥類が25,264万円(約47%)と大きく、令和5年度からの増加額24,206万円のうち、鳥類が20,671万円を占め、イノシシの増加は846万円でした。
年度ごとに増減が大きい県もあるため、1年分の順位だけで「この県はイノシシが多い」と決めず、県の公表ページで複数年を見ます。
岩手・長野・群馬・京都はシカが3〜6割、愛知・茨城は鳥類が目立つ
岩手県はシカが23,627万円(約57%)、群馬県は17,003万円(約50%)、京都府は14,502万円(約42%)、長野県は19,448万円(約34%)を占めます。一方、愛知県は鳥類が24,665万円(約43%)、茨城県は鳥類が21,594万円(約57%)と、鳥類が最大の項目になっています。
表には、獣類のうちイノシシ・サル・シカ以外の内訳がありません。この残りは、別添1に載っているアライグマ、ハクビシン、クマ、タヌキなどの合計にあたります。例えば大阪府は、この残りが9,433万円で約36%を占めます。
都道府県の数字を比べる前の注意|面積・集計範囲・年度・単位の違い
都道府県別の表は順位を見るのに便利ですが、そのままでは県同士の優劣や努力の差を示しません。被害面積の広さ、作物の種類と価格、獣種ごとの被害の出方が県で違うためです。表の数字から計算すると、被害面積1haあたりの金額は、北海道が約20万円、大阪府が約350万円と大きく開きます。
また、県が独自に公表する数字は、農林水産省の表と範囲が違うことがあります。今回確認した違いの例を下の表にまとめます。農林水産省の表と、県の公表ページの数字を並べるときは、次の点をそろえてから比べてください。
| 違いの種類 | 今回確認した例 | 比べるときの確認 |
|---|---|---|
| 対象の範囲(農業のみか、林業を含むか) | 兵庫県は令和6年度の農業被害453,946千円に林業被害41,393千円を加えた495,339千円(約4億96百万円)を公表。農林水産省の表の兵庫県は農作物のみで45,395万円 | 「農林業」と「農作物」を並べない |
| 獣種の範囲 | 滋賀県の令和7年度の約9,900万円は、イノシシ・ニホンザル・ニホンジカの3獣種。農林水産省の令和6年度は鳥類と全獣類で8,567万円 | 対象の獣種が同じか確認する |
| 年度のずれと暫定値 | 農林水産省は令和6年度分まで。京都府は令和7年の暫定値(令和8年8月現在)、和歌山県と滋賀県は令和7年度の数字を公表している | 年度、暫定か確定かをそろえる |
| 単位と丸め | 農林水産省は万円、兵庫県は千円、京都府は百万円。京都府は国の公表方法に合わせて小数点以下を四捨五入している | 同じ単位に直し、合計が合わない場合は丸めの影響を疑う |
関西2府4県の被害状況と、府県の資料
関西2府4県の令和6年度の被害金額は、農林水産省の表で合計151,778万円(約15.2億円)、全国の約8%です。兵庫県が45,395万円で最も大きく、京都府、大阪府、和歌山県、奈良県、滋賀県の順です。府県のページには、国の表より新しい年度の数字や、獣種別の推移が載っている場合があります。
京都府は令和7年の暫定値が268百万円、和歌山県は令和7年度が約2億2,300万円(前年度比90.0%)です。兵庫県は令和6年度の農林業被害を、シカ、イノシシ、アライグマ、サル、鳥類などに分けて令和2年度から並べて公表しており、アライグマの農業被害は令和5年度の57,130千円から令和6年度は78,365千円になりました。奈良県の公表ページは農林水産省のリンク集に載っていますが、今回は開けなかったため、奈良県の数字は農林水産省の表のみを使っています。
地域ごとの相談は、兵庫の住宅地でイノシシに出会ったとき、奈良公園周辺でシカと暮らすとき、和歌山県のアライグマ被害相談、京都市のアライグマ相談で扱っています。
| 府県 | 農林水産省(令和6年度・万円) | うちシカ | うちイノシシ | 府県の公表ページで確認した数字(2026年10月3日確認) |
|---|---|---|---|---|
| 大阪府 | 26,217 | 3,912 | 6,414 | 令和6年度は被害面積約75ha、被害金額約2億6千万円(2025年11月18日更新) |
| 京都府 | 34,564 | 14,502 | 10,561 | 令和7年の暫定値は268百万円(2026年8月17日更新、令和8年8月現在) |
| 兵庫県 | 45,395 | 12,382 | 15,510 | 令和6年度の農林業被害は約4億96百万円で、うち農業被害は453,946千円(2026年1月21日更新) |
| 奈良県 | 12,318 | 4,344 | 5,539 | 県の公表ページは農林水産省のリンク集に掲載。数字は未確認 |
| 滋賀県 | 8,567 | 1,554 | 4,007 | 令和7年度のイノシシ・ニホンザル・ニホンジカで、被害面積約70ha、被害金額約9,900万円(2026年8月7日更新) |
| 和歌山県 | 24,717 | 5,060 | 9,139 | 令和7年度は約2億2,300万円で前年度比90.0%(令和7年4月〜令和8年3月の調査) |
自分の県の詳しい統計の探し方|県のリンク集・被害防止計画・管理計画
県の詳しい数字は、国の表より先に県のページに出ることがあり、市町村別や年度別の表が付くこともあります。探す順番は次の3つです。
1. 県の被害状況ページ:農林水産省の都道府県リンク集から
農林水産省の「令和6年度 野生鳥獣による農作物被害状況の各都道府県公表箇所」(令和8年1月21日時点)には、都道府県が公表する被害状況ページの一覧が載っています(秋田県と山形県は掲載先の記載がありません)。県によって、年度ごとに別のPDFで掲載する場合があるため、令和6年度と令和7年度の資料名を見比べます。例えば京都府は平成29年から令和7年(暫定値)までのPDFを並べています。
2. 市町村の被害防止計画:市町村ごとの対策の入口
鳥獣被害防止特措法に基づき、市町村は鳥獣被害防止計画を作成できます。農林水産省の調査では、令和7年4月末時点で計画を作成した市町村が1,525、鳥獣被害対策実施隊を設置した市町村が1,266、実施隊の隊員数は42,950人でした。自分の市町村が計画を作っているかは、市町村の農政担当課のページで確認します。計画の中身は市町村ごとに違うため、対象の獣種と被害の数値が載っているかを見ます。
3. 特定鳥獣の管理計画:シカ・イノシシ・サル・クマなどの方針
環境省の「特定計画の作成状況」(令和8年4月末日現在)では、47都道府県で166計画が報告されており、第一種が1計画、第二種が165計画です。獣種別の作成都道府県数は、ニホンジカ45、クマ類28、ニホンザル29、イノシシ45、ニホンカモシカ8、カワウ8です。近畿では、大阪府がニホンジカとイノシシ、京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県がニホンジカ・クマ類・ニホンザル・イノシシ、滋賀県がニホンジカ・ニホンザル・イノシシ・カワウとクマ類(第一種の欄)で記載されています。兵庫県はカワウも載っています。計画の本文は、都道府県の自然環境や鳥獣担当課のページで探します。
- 検索語の例:「県名 野生鳥獣 農作物被害」「県名 鳥獣被害防止計画」「県名 第二種特定鳥獣管理計画」
- 市町村の検索語の例:「市町村名 有害鳥獣 相談」「市町村名 鳥獣被害防止計画」
家庭菜園や住宅の被害は市町村の鳥獣担当窓口へ|統計に載らない被害の相談先
この統計は農作物被害の報告をまとめたもので、屋根裏や床下など住宅への侵入を数える表ではありません。庭の花壇や家庭菜園の被害が数字に入るかどうかは、市町村の報告の取り方によるため、この表からは判断できません。住宅や家庭菜園で困ったときは、市町村の鳥獣担当窓口に相談するのが基本です。大阪府は、鳥獣被害に関する相談や有害鳥獣の捕獲許可に関する事務の一部は市町村で行っていると案内しています。住宅の被害で、自治体と専門業者などの依頼先をどう使い分けるかは、害獣駆除の依頼先6つの違いで比べています。
野生の鳥獣は、狩猟の場合を除いて原則として捕獲や殺傷が禁止されており、被害があるときも環境大臣または都道府県知事の許可が必要です。多くの都道府県では、許可の権限の一部を市町村長に移しています(環境省)。自分でわなを仕掛ける前に、市町村の窓口で許可、箱わなの貸出し、駆除の方法を確認してください。
作物の被害は畑の害獣対策の記事、全国の獣種別の順位は日本の害獣ランキングの記事で扱っています。






