ニホンザルの法的な位置づけ|狩猟鳥獣ではなく、捕獲は許可制
ニホンザルは、環境省が示す狩猟鳥獣46種(獣類は20種)に含まれていません。鳥獣保護管理法では、狩猟として捕る場合を除き、鳥獣の捕獲または殺傷は原則として禁止されています。被害防止などの目的で捕獲するには、環境大臣または都道府県知事の許可が必要で、多くの都道府県では許可権限の一部を市町村長に移しています。
環境省のニホンザル向けガイドライン(令和6年度)は、ニホンザルはニホンジカやイノシシと異なり、狩猟鳥獣でも指定管理鳥獣でもないと明記し、捕獲数は許可捕獲によるものだけだと説明しています。シカやイノシシは狩猟の枠組みで捕る人がいますが、猿にはその枠組みがないため、被害防止の許可捕獲が中心になります。
| 動物 | 狩猟鳥獣か | 捕獲の位置づけ |
|---|---|---|
| ニホンザル | 含まれない(環境省の狩猟鳥獣46種の一覧にない) | 捕獲は許可捕獲のみ。許可なしの捕獲・殺傷は第8条で禁止 |
| ニホンジカ・イノシシ | 含まれる。指定管理鳥獣にも指定されている | 狩猟には免許・登録・猟法の定めがある。被害防止の捕獲は許可制で、指定管理鳥獣捕獲等事業の特例もある |
| タヌキ・ハクビシンなど | 含まれる(獣類20種) | 狩猟と許可捕獲の両方の制度がある |
参考:環境省|狩猟制度の概要
猿を個人で駆除してもいいですか?
ニホンザルは狩猟鳥獣ではなく、許可なく捕獲または殺傷すると鳥獣保護管理法の第8条に反し、罰則も定められています。個人の判断で駆除せず、市町村の担当課に相談してください。
猿の追い払いと捕獲等の違い|傷つけた場合は条文の問題になる
追い払いは、農地や集落に出る猿を、人がさまざまな手段で外へ出すことです。農林水産省の実践編は、猿の弱みを上手に使って追い払うことが基本としています。一方、法律が禁じる「捕獲等」は、鳥獣保護管理法の第2条で、捕獲または殺傷と定義されています。つまり、追い払いのつもりでも、当てて傷つけたり、結果的に死なせたりすれば、捕獲等の問題になり得ます。
条文で確認すること
第8条は、鳥獣と鳥類の卵を、捕獲等または採取等してはならないと定め、許可を受けた場合や狩猟鳥獣の狩猟などを例外としています。ニホンザルのように狩猟鳥獣以外の鳥獣を許可なく捕獲または殺傷した場合の罰則は、第83条に、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金と書かれています(許可が不要な場合などを除く。2026年10月時点のe-Gov法令検索の掲載)。実際に違反になるかは個別の事情で判断されるため、迷ったら都道府県や市町村の鳥獣担当に確認してください。
- 第2条:捕獲等とは、捕獲または殺傷をいう
- 第8条:鳥獣は、許可や狩猟などの例外を除き、捕獲等してはならない
- 第83条:狩猟鳥獣以外の鳥獣を第8条に違反して捕獲等した場合は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金
| 行為 | 位置づけ | 注意点 |
|---|---|---|
| 声や音で追う、傷つけない道具で追い払う | 追い払い。傷つけない限り、捕獲または殺傷には当たらない | 近づきすぎない。一人で行わない。花火などは火災に注意する |
| 餌や誘引物の除去、戸締まり | 予防(猿を寄せ付けない対策) | 放任果樹・収穫残さ・お供え物を片付ける |
| 当てて傷つける、殺す | 捕獲等(殺傷)に当たり得る | 許可なしでは禁止。追い払いのつもりでも傷つければ問題になり得る |
| わなや網で捕まえる | 捕獲に当たる | 許可が必要。市町村や委託を受けた捕獲実施者が行うのが基本 |
エアガンや花火を使う追い払いについて|公的資料と自治体の案内の例
「猿 被害 エアガン」などの語で検索する人がいます。公的資料には、追い払いの道具としてエアガンや花火を挙げるものがありますが、いずれも地域での追い払いの一手段として紹介されたものです。農林水産省の総合対策編は、ロケット花火やエアガン(モデルガン)などで追い払う方法もあるとしつつ、事故や怪我、火事に注意し、追い払う野生鳥獣に傷害を与えない配慮が必要としています。この記事も、道具の使い方は扱いません。
次の表は、2026年10月時点で確認できる公的資料と自治体の公式ページの記載を並べたものです。団体向けの貸出や補助が多く、条件が付いている点に注目してください。
道具の案内を読むときの注意
表の例はいずれも、自治体や研究機関が条件を付けて、団体向けや地域ぐるみの取り組みとして案内しているものです。個人が自分の判断で道具を購入して使うことを勧める内容ではありません。当てて傷つければ捕獲等に当たり得ること、火災や近隣への危害のおそれがあることを前提に、使う場合も自治体の案内と担当者の指示に従ってください。
- 貸出や補助の対象が個人か、自治会などの団体かを先に確認する
- 傷つけないこと、周囲の安全と火災に注意することが、案内に共通する条件
| 出典 | 道具・制度の内容 | 条件・注意 |
|---|---|---|
| 環境省 ニホンザル ガイドライン(令和6年度) | 追い払いの道具として、ロケット花火、電動エアーガン、パチンコなどを挙げる | 個別でなく、集落ぐるみで組織的に行うことが有効とされる。1頭でも集落や耕作地の外へ出るまで追い払う |
| 農林水産省 総合対策編(2023年) | ロケット花火やエアガン(モデルガン)などで追い払う方法もあると紹介 | 事故・怪我・火事に注意し、追い払う野生鳥獣に傷害を与えない配慮が必要 |
| 滋賀県長浜市(2025年6月20日更新) | 自治会へロケット花火等をお試し配布。花火や威嚇用電動ガン等の購入費の2分の1以内(限度額2万円)を補助 | 対象は自治会で、申請者は自治会長。使用時は火災等に十分注意する |
| 滋賀県米原市(2026年4月1日更新) | 猿追い払い用のスリングショットを無料貸し出し(先着順) | 自治会または農業関係団体が申込。保護メガネの準備や周囲の確認が案内され、事故は自己責任と明記されている |
| 兵庫県森林動物研究センター(2022年のパンフレット) | 追い払いの道具として、ロケット花火や電動ガンなどの活用を紹介 | 犬のリードを外して追い払う場合は、県のガイドラインに基づく訓練と市町長の認定など、一定の条件が必要 |
個人が独断で行う危険|反撃・近隣への危害・法令違反
農林水産省の総合対策編は、追い払いが有効な野生鳥獣を、警戒心が強く、学習能力が高く、クマやイノシシに比べて反撃の危険が低い種類とし、猿とカラスを挙げています。反撃される可能性が高い動物は、安易に追い払うことを控えた方がよいとも書いています。猿は反撃の危険が相対的に低いとされますが、危険がないという意味ではなく、環境省のガイドラインは威嚇されたときの動き方や、噛まれたときの受診を示しています。
市街地に出た猿について、同ガイドラインは追い払いを基本とし、人身被害が起きた場合や、威嚇されるなど危険が高い場合は、緊急捕獲を実施するとしています。捕獲は小型の捕獲檻を第一に検討し、麻酔銃猟は最終手段です。この判断は、市町村や関係機関が行うもので、個人が代わりに行う性質のものではありません。
追い払いを始める前に確認すること
環境省のガイドラインが示す注意に、個人の追い払いで共通する点があります。猿に気づいたときは近づかない、餌を与えない、大声や棒で興奮させない、追い払うときは一人でやらない、猿の目を見ない、といった内容です。法律面では、傷つければ捕獲等に当たり得るため、傷つけない方法にとどめることが前提になります。
- 一人でやらず、複数人で、猿との距離を保つ
- 傷つけない方法にとどめる。当てて傷つければ捕獲等に当たり得る
- 火気や器具は自治体の案内に従い、周囲の人やペット、燃えやすいものを確認する
- 威嚇されたら目をそらして後ずさりし、走って逃げない
事故が起きたとき
噛まれたり引っかかれたりしたときは、すぐ病院へ行くよう環境省のガイドラインは示しています。器具や花火の事故は、使用者の責任になり得ます。米原市の案内も、スリングショットの使用による事故は自己責任と明記しています。事故や被害が出たときは、市町村にも状況を伝えてください。
市町村の捕獲体制|被害防止計画・実施隊・加害群の管理
鳥獣被害防止特措法に基づき、市町村は被害防止計画を作成し、計画に基づく捕獲や侵入防止柵の設置を担う鳥獣被害対策実施隊を設置できます。農林水産省の関連制度編によれば、民間の実施隊員は非常勤の公務員として、公務で被害対策に従事します。令和4年4月時点で1,234市町村が実施隊を設置していました。捕獲の許可権限は都道府県知事が持ちますが、市町村が希望すれば市町村長に委譲できます。
環境省のガイドラインは、猿の捕獲を群れごとに考える方法を示しています。群れの出没頻度や被害の内容から加害レベルを0から5で判定し、レベルに応じて対応を選びます。レベル2の群れは捕獲より追い払い・追い上げ・集落環境整備を優先し、レベル4以上は全頭捕獲を含む計画的な捕獲を検討します。捕獲作業は猟友会など捕獲実施機関に依頼し、特殊な技術が要る捕獲は専門機関に依頼するとされています。
| 状況 | 公的資料が示す基本の対応 | 主な担い手 |
|---|---|---|
| 離れザル(単独で出る個体) | 誘引物がなければ時間がたてば立ち去る。餌を除去して追い払い、人家への侵入や人身被害があれば捕獲 | 地域住民と市町村 |
| 群れが季節的に出る(加害レベル2程度) | 捕獲より、追い払い・追い上げ・集落環境整備を優先する | 集落ぐるみの取り組みと市町村 |
| 群れ全体が通年で出没し被害が大きい(加害レベル4以上) | 全頭捕獲を含む計画的な捕獲を検討する | 市町村と、猟友会などの捕獲実施機関 |
| 市街地に出た個体(人身被害や威嚇のおそれ) | 追い払いやパトロールが基本。危険が高ければ緊急捕獲。捕獲は小型捕獲檻を第一に検討し、麻酔銃猟は最終手段 | 市町村・都道府県・警察・猟友会などの連携 |
「害獣駆除 猿」で業者を探す前に知っておきたいこと
「害獣駆除 猿」と検索して駆除業者を探す人も多いのですが、猿の捕獲は許可が前提で、民間業者に頼めば完結する種類の相談ではありません。公的資料が捕獲の担い手として挙げているのは、市町村、実施隊、猟友会などの捕獲実施機関です。業者が猿の捕獲に対応できるかは、その会社が許可の枠の中で動けるかによるため、見積もりの前に、許可の窓口と市町村の担当課に確認してください。
一方、建物の戸締まり、すき間や侵入口をふさぐ補修、庭の果樹や餌の整理など、許可が要らない予防の作業は、工事業者や造園業者などに頼める可能性があります。依頼先ごとの違いは害獣駆除の依頼先6つの違いで整理しています。畑の被害は畑の猿被害対策で、柵や餌の管理を確認できます。
業者に連絡する前に確認する質問
見積もりを取る前に、頼みたい作業が予防なのか捕獲なのかを分けて考えると、断られる無駄や、不要な契約を避けられます。次の質問を、許可の窓口や市町村、業者に投げてみてください。
- 猿の捕獲等に必要な許可は、どの窓口で、誰が取るのか
- 頼みたい作業は予防(戸締まり・補修)か、捕獲か
- 捕獲を含む場合、担い手と費用の負担者は市町村か個人か
- 追い払いや柵、餌の管理について、相談できる窓口があるか
相談先と、伝える情報
猿の相談先は、まず市町村の農林・鳥獣の担当課です。窓口の名前は自治体で異なり、たとえば米原市は山とみどり再生課、長浜市は農政課が案内ページの問い合わせ先になっています。市街地では、市町村が都府県、警察、学校などと連携して対応する体制を作るのが環境省のガイドラインの考え方です。住宅地で見かけたときの行動は、住宅地で猿を見かけたときの戸締まりと行動に整理しています。
環境省のガイドラインは、通報された出没情報を、いつ・どこで・どのような猿が・どんな状況だったか記録し、地図上に整理することで、出没の範囲や傾向が分かるとしています。相談するときも、この4点をそろえて伝えると、担当者が加害群か離れザルかを判断しやすくなります。小型鳥獣の相談のしかたは丹波市の小型鳥獣の捕獲相談、窓口の違いはイノシシの相談先と対応範囲が参考になります。
- 日時と場所(地図やおおよその住所)
- 頭数と様子(群れか単独か、子どもを背負う個体の有無、威嚇の有無)
- 被害の種類と範囲(作物、家屋、人への被害)
- これまでに誰がどんな追い払いをしたか
- 遠くからの写真や動画





