害獣マップは1つではない|目的別に使い分ける早見表
害獣の地図を探す人が知りたいことは、大きく分けて「この地域にその動物がいるか」「最近どこで見られたか」「被害はどのくらいか」の3つです。これを1つの地図で答えるものはなく、運営元と集め方が違う複数の地図や資料を使い分けます。
下の表は、2026年10月3日に開いて確認できた範囲で、公的な地図と情報の種類を、分かること・更新の目安・限界で比べたものです。県ごとの被害額は鳥獣被害の都道府県別データ、全国の動向は害獣が最近増えているかの記事で扱っています。なお、トコジラミやマダニなど害虫の発生情報は、この記事の地図とは別の公表資料を使います。
| 地図・情報 | 運営 | 分かること | 更新・単位の目安 | 限界 |
|---|---|---|---|---|
| 動物分布図集(自然環境保全基礎調査) | 環境省生物多様性センター | 中・大型哺乳類などの全国の分布。1978年度の第2回調査と、後の調査の比較 | 調査回ごと。図集は2010年3月刊 | 専門家の少なさや地域の偏りで、分布を的確に表せていない図がある。近縁種との誤認も含まれうる |
| いきものログ | 環境省 | 利用者が報告した生きものの観察情報を、名前で検索して地図で見る。データのダウンロードもできる | 報告のたび。誰でも利用できる | 報告された情報で、報告のない場所は「データがない」だけ |
| 侵入生物データベース | 国立環境研究所 | アライグマ・ハクビシンなど外来種の分布地図(都道府県単位)と、市区町村別の一覧(環境省の令和7年度アンケート) | 種ごとのページ。市区町村別は令和7年度のアンケート | 都道府県単位の地図と市区町村単位の地図は元データが違い、一致しない部分がある |
| シカの密度分布図 | 環境省 | 本州以南のシカの生息密度の濃淡(令和4年度当初) | 平成26年度版のあと、2024年3月に令和4年度版を公表 | 推定にもとづく地域の濃淡を見る地図で、庭先や住宅ごとの有無は分からない |
| 都道府県・市町村の出没情報 | 各自治体 | 最近の目撃の日時・場所・件数(大阪府、香川県、熊本市などの例) | 自治体ごとに違う(大阪府の令和8年度ページは2026年10月2日更新) | 情報が寄せられたものだけで、集め方や対象が自治体で違う |
参考:環境省生物多様性センター|日本の動物分布図集 はじめに・第1部 動物分布調査の概要(2010年3月・PDF)
害獣マップはどこで見られますか?
環境省の動物分布図集やいきものログ、国立環境研究所の侵入生物データベース、都道府県や市町村の出没情報のページで見られます。分布を知りたいか、最近の出没を知りたいかで使い分けます。
環境省の分布調査で分かること・分からないこと
環境省の自然環境保全基礎調査のうち、動物分布調査は1978年度の第2回調査から行われています。まず環境省が公表している調査の内容と、分布図を使うときの注意を確認します。
動物分布調査で分かること
環境省の資料によると、第2回調査(1978〜1982年度)では広域に生息する中・大型哺乳類8種の分布を調べ、第3回調査(1983年度〜)から哺乳類などの全種の分布を把握する調査が始まりました。第6回調査(1999〜2004年度)では、中・大型哺乳類の全国分布を調べて第2回調査の結果と比べ、第7回調査(2005年度〜)では、外来種のアライグマの分布情報を集め、ニホンジカやツキノワグマなど農林業や生態系への影響が大きい種の生息動向の把握も始まりました。
分布図の限界|環境省の図集が示す注意
動物分布図集は、専門家の少なさや地域的な偏り、調査期間の制約などの事情で、分布状況を的確に表現できなかった分布図も相当数あると書いています。また、近縁種との誤認と思われるものや、既存の知見からみて検討が必要な分布情報が含まれる場合があるため、活用するときに留意が必要だと注意しています。この図集は2010年3月に刊行されたもので、近年の変化を見るには、後年の調査や自治体の情報も合わせて見る必要があります。
いきものログ|報告された観察情報を地図で見る
環境省の「いきものログ」は、環境省をはじめさまざまな組織や個人が持つ生きもの情報を集めて共有するシステムです。誰でも利用でき、ユーザー登録をすると、生きものを見つけた場所と日付、写真などで情報を報告できます。生きものの名前で検索すると、観察された場所を地図で見たり、データをダウンロードしたりできます。報告された情報なので、報告のない場所は「データがない」だけで、いないとは言えません。
外来種の分布の調べ方|アライグマ・ハクビシン・キョン
外来種は、国立環境研究所の侵入生物データベースで、種ごとのページに分布情報が載っています。アライグマのページは、国内移入分布を「ほぼ全国」とし、都道府県単位の分布地図と、環境省が令和7年度に行った「特定外来生物の市区町村別侵入状況の把握のためのアンケート」の市区町村単位の分布地図と一覧を案内しています。都道府県単位の地図は、学術誌や記事、通報などをもとに、標本や画像データを確認して作成したもの、市区町村単位の地図は自治体へのアンケートをもとに作成したもので、両者の分布情報が一致しない部分があると注記されています。
環境省のアライグマ防除の手引き(2025年改訂版)は、2017年と2023年の市町村の分布を比べ、東北地方や中国地方、九州地方の南部などで分布が広がったとし、2024年にまとめた市町村アンケートで、沖縄県を除くすべての都道府県で生息が確認されたとしています。調べる先を使い分ける表を、下に示します。
アライグマなどの特定外来生物は、生きたままの運搬や飼養、野外へ放つことが外来生物法で原則禁止されています。見つけても捕まえて動かさず、市町村や都道府県の窓口へ連絡してください。
| 動物 | 調べる先 | 分かること(確認した範囲) |
|---|---|---|
| アライグマ | 国立環境研究所の侵入生物データベース、環境省のアライグマ防除の手引き | 国内は「ほぼ全国」。都道府県単位と市区町村単位の地図がある。2017年と2023年の比較では東北・中国・九州南部などで拡大 |
| ハクビシン | 国立環境研究所の侵入生物データベース | 日本列島のほぼ全域に分布し、宮城・福島から中部地方、四国で特に多いとされている |
| キョン | 千葉県のキョンのページ(2026年4月1日更新) | 県中南部の17市町で繁殖が確認され、外来生物法に基づく防除実施計画のもとで県と市町村が防除している |
シカの密度分布図|「鹿 被害 マップ」で探される地図の使い方
「鹿 被害 マップ」と探す人が求めているのは、多くの場合、シカがどこに多いかの地図か、県や市町村が出している目撃・被害の情報です。環境省は2024年3月に、本州以南のニホンジカの密度分布図(令和4年度当初、前回は平成26年度)を公表しました。この地図は、令和3年度末の個体数推定の結果と予測、分布調査と糞塊密度調査の結果、各都府県が集めている密度指標を使って作られています。
環境省は、シカの生息密度が北上高地、房総半島、八ヶ岳から南アルプスにかけての地域、近畿北部、紀伊山地、四国東部、九州北部や西部などで高いと推定し、東北地方の日本海側などの近年分布が広がった地域では密度が比較的低いと説明しています。同じ地方、同じ都府県の中でも、密度の高い場所と低い場所があります。被害額の県別の数字は、農林水産省と都道府県が別に公表しています。
自治体の出没マップ・目撃情報の探し方|都道府県と市町村の使い分け
最近どこで見られたかを知るには、自治体の出没情報が最も新しい手がかりです。県の情報は広い範囲を一度に見るのに向き、市町村の情報は自宅に近い場所の目撃を知るのに向きます。県の件数と市町村の件数は、集め方や対象が違うため、足し合わせたり並べたりして増減を判断しないでください。
探し方|検索語と掲載場所
自治体の出没情報は、「県名(または市町村名)+動物名+出没」「目撃情報」「出没マップ」で探します。掲載場所は、環境や鳥獣を担当する課のページ、農政担当課のページ、お知らせなど自治体で違います。クマについては、環境省が都道府県が提供するクマ出没情報のリンク一覧を載せており、熊の出没マップを都道府県別に探す記事と関西の熊の出没情報で整理しています。
掲載の形式は自治体で違う|実例の表
同じ「出没情報」でも、地図、件数表、投稿フォームなど掲載の形式が違います。2026年10月3日に開いた例を、下の表に整理します。
| 自治体(掲載・更新日) | 対象 | 掲載の形式 | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|
| 大阪府(令和8年度のページ、2026年10月2日更新) | ツキノワグマ、ニホンザル、ニホンジカ、イノシシ | 目撃日・市町村・場所の一覧。クマは出没マップ付き | 府に情報が寄せられたものを掲載。サルやイノシシは通常は見かけない地域での出没が対象になる場合がある。クマは「クマらしきもの」も含めて掲載 |
| 香川県(令和8年8月31日現在) | 市街地でのイノシシ出没 | 年度別・月別・市町別の件数表(PDF) | 市街地での件数。令和6年度は371件、令和7年度は141件と、年度で大きく増減する |
| 熊本市(9月30日時点、2026年10月2日更新) | 市内のイノシシ出没(目撃) | 年度別のPDFで公開(令和6〜8年度) | 市内の目撃情報。年度ごとにファイルが分かれている |
| 豊橋市 | 野生イノシシの目撃情報 | 市民が目撃日・場所・数を投稿するフォーム | 生息場所の情報収集のための投稿。目撃した日、場所、数が必須入力 |
地図にない地域で見かけたときは|地図の読み方と連絡先
地図に載っていない地域でその動物を見かけても、不自然なことではありません。出没情報は、情報が寄せられたものを自治体が掲載する形が多く、報告がなければ地図には現れません。環境省の分布図集も、調査の偏りや誤認が含まれる場合があると注意しています。「地図にない=いない」「地図にある=いまもいる」とは読まないでください。
見かけた動物の連絡先は、基本的に市町村の鳥獣担当窓口です。大阪府は、鳥獣被害に関する相談や有害鳥獣の捕獲許可に関する事務の一部は市町村で行っていると案内し、府内市町村の担当課の一覧を載せています。大阪府の出没情報のページも、山中や山あいの住宅地を問わずクマを目撃した場合や痕跡を見つけた場合は、市役所・町村役場に連絡するよう案内しています。
どの動物か分からないときは、害獣の一覧と、音・フン・足跡の違いの早見表で手がかりを探せます。足跡を見つけたときの撮り方はアライグマの足跡の見分けと撮り方で整理しています。
家の周りで痕跡を見つけたときの記録|窓口に伝える項目
窓口へ連絡するときは、目撃した日時、場所、動物の数、大きさや特徴、写真を用意すると、状況が伝わりやすくなります。豊橋市のイノシシ目撃情報の投稿フォームも、目撃した日、場所、数を必須の入力項目にしています。痕跡の場合は、触らずに足跡や食べ跡、フンの位置を撮影し、同じ場所の変化を日付ごとに残します。
地図は、見つけたあとに答え合わせとして使います。環境省のいきものログや自治体の出没情報で、自分が見たものが近くで報告されているかを調べ、窓口へ伝えるときの参考にします。
- 日時(朝・夕・夜などの時間帯も)と、同じ場所での繰り返しの有無
- 場所(住所、目印になる建物、庭・屋根・道路の別)と、人や子どもが通る場所との近さ
- 動物の数、大きさ、色、尾や顔の特徴(遠くから撮った写真)
- 足跡・食べ跡・フン・においなど痕跡の位置(触らずに撮影し、大きさが分かるように物差しなどを添える)
- 餌になりそうなもの(果実、ごみ、野菜くず)が近くにあったか






