害獣の足跡が見つかりやすい場所と、見つけたときの撮り方

足跡が残るのは、動物の通り道に、泥や砂ぼこりのように跡がつく素材がある場所です。農林水産省の中型獣類マニュアルは、家屋の被害を特定する手がかりとして、ハクビシンの例に柱や雨どいに残された足跡、アライグマの例に柱やガラスに残された爪痕を挙げています。環境省九州地方環境事務所のパンフレットも、足跡が残りやすいのはぬかるみや砂地であり、そうした場所はどこにでもあるわけではないと説明しています。

下の表は、足跡を探す場所の候補です。雨どいや柱は農林水産省の資料に例があり、ベランダや室外機の上は、砂ぼこりがたまりやすい場所としてこの記事が挙げた候補です。どの場所でも、脚立やはしごで高いところに上らず、地上や床の上から見える範囲だけを確認します。

足跡を見つけたときの撮り方

環境省九州地方環境事務所のパンフレットは、写真を撮るときに、定規、ボールペン、たばこの箱など、大きさを比べられるものを横に置くよう案内しています。足跡は雨や掃除で消えやすいため、見つけた日のうちに残します。

  • 足跡は踏まず、ほうきで掃かず、触らずにそのままにして撮る。
  • 足跡の横に定規かボールペンを置き、真上から1枚撮る。
  • 懐中電灯を横から当てた写真を1枚足すと、指やつめの凹凸が見えやすい。
  • 足跡の列が続いているときは、列全体が分かる引きの写真と、日付・時間帯・場所のメモを残す。
害獣の足跡が見つかりやすい場所と、見つけたときの撮り方:確認項目
場所残りやすい跡確認するときの注意
雨どい・柱の周り足跡や爪痕(農林水産省の資料に例がある)高所は上らずに、地上から見える範囲を写真で拡大して確認する
ベランダ・室外機の上砂ぼこりや泥がたまった面についた小さな足跡身を乗り出さず、スマートフォンで撮ってから拡大して見る
床下換気口の前や基礎の周りの土湿った土や砂地についた足跡(環境省の資料はぬかるみや砂地を挙げる)床下には入らず、換気口の外側から確認する。穴や掘り返しがあれば位置を記録する
玄関先や勝手口の土間、側溝の近く建物の周囲を通った跡(筑波大学の資料は、ネズミの足跡が建物の周囲や側溝でも見られると説明)側溝のふたを開けて中に入らず、見える範囲だけを撮る
天井裏の点検口の付近ほこりの上の足跡(農林水産省の資料に天井裏の足跡の写真がある)点検口から上がらず、のぞくだけにとどめる。奥へ入る確認は専門家に任せる

参考:環境省九州地方環境事務所|アライグマ防除のパンフレット(足跡の見分け方と足跡トラップ、平成25年3月、PDF)

読者の疑問

足跡の写真だけで、何の動物か教えてもらえますか?

比較ガイド

写真だけでは候補止まりのことが多いです。環境省九州地方環境事務所は、疑わしい痕跡を見つけたらカメラで撮影して役所へ連絡するよう案内しています。足跡・フン・音を合わせた情報の方が、窓口や調査会社も判断しやすくなります。

動物別の足跡早見表|ネズミ・イタチ・テン・ハクビシン・アライグマ・タヌキ・アナグマ・ネコ

次の表は、農林水産省の中型獣類マニュアル、筑波大学山岳科学センターのアニマルトラッキング資料、東京都環境局、京都府農林水産技術センター、環境省九州地方環境事務所の資料から、足跡の記載を動物別に並べたものです。資料ごとに測り方や個体が違うため、大きさの数値は「資料に載っている値」として読み、数ミリの差で動物を決めないでください。

表の中の「記載なし」は、今回開いた資料に書かれていなかった項目で、他の資料から補っていません。ネズミの数値は野外のハタネズミの例で、家に入るクマネズミなどの数値は今回確認できていません。

動物別の足跡早見表|ネズミ・イタチ・テン・ハクビシン・アライグマ・タヌキ・アナグマ・ネコ:確認項目
動物指の数と爪あと足跡1つの大きさ(資料の記載)歩き方・並び(資料の記載)
ネズミ後足は5指がはっきり見え、前足は4指に見える(筑波大学)前足は長さ・幅とも1cm強、後足は縦長で前足より少し大きい(野外のハタネズミの例)尾の跡が残ることがある。歩幅は走り方で15〜35cm。屋内の通り道は、脂分と汚れによる黒光りした跡になる(東京都)
イタチ指の数は記載なし。爪痕が鋭い(筑波大学)約2.5cm×2.5cm(筑波大学)前足がそろい、その上に少しかかって後足が残る跳ねるような足跡。間隔は約30cm(筑波大学)
テン5本。指が独立して丸く、中心のパッドは半月形(農林水産省)4cm以下(農林水産省)。筑波大学は約4.5cm×4.5cmと記載イタチと同じ跳ねるような足跡で、間隔は約50cm。疾走の足跡はウサギに似る(筑波大学)
ハクビシン5本。指が独立して丸く、中心のパッドは円形。爪あとは不明瞭(農林水産省・東京都)前足は長さ約5cm・幅約4cm。後足は約10cmと大きいが、歩くときは足先だけをつくので前足と同じような足跡になる(筑波大学)長い尾の跡がしばしばつく。歩幅は40〜50cm(筑波大学)。京都府は歩行跡が直線の左右につくと説明
アライグマ5本。指が長く(農林水産省)、爪あとは明瞭(東京都)。前足は子どもの手形のような形(環境省九州地方環境事務所)前足は5cm程度まで(環境省九州地方環境事務所)左右の足が横に並ぶ(農林水産省)。京都府は歩行跡が左右で対になると説明
タヌキ4本。全体に丸く猫に似るが、爪あとは明瞭(東京都)。各指球の間が開き、全体が扇形(筑波大学)約4cmで爪痕が4つ(筑波大学)肩幅があるため、一連の足跡は直線にならずジグザグになる(筑波大学)
アナグマ5本。爪が長い(東京都)。パッドは半月形(農林水産省)5cm以上(農林水産省)記載なし
ネコ指の数の記載はないが、タヌキとよく似ていて爪痕がない(筑波大学)記載なし前後の足跡が重なり、左右はジグザグ。足跡は専ら人家近くに残る(筑波大学)

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

5本指に見える動物と4本指に見える動物の違い

農林水産省の中型獣類マニュアルは、足跡からの見分け方を、最初に「指の数は何本か」で分けるフローチャートで示しています。この記事の早見表も、同じ順番で読むと迷いにくくなります。ただし、泥の深さや走っているかどうかで指の見え方は変わるため、足跡を1つだけでなく、前足と後足の両方、できれば数個の跡を見比べます。

5本指に見える動物|アライグマ・ハクビシン・アナグマ・テン

フローチャートでは、5本のうち指が長いものを、左右の足が横に並べばアライグマ、並ばず中央に尾の跡が残ればヌートリアに分けています。指が独立して丸いものは、中心のパッドが円形ならハクビシン、半月形なら大きさで分け、5cm以上をアナグマ、4cm以下をテンとしています。

アライグマの足跡は、前足が子どもの手形に似るのが特徴とされます。国内で外来種として扱われる動物なので、疑わしい足跡を撮ったら、アライグマの足跡は5本指?撮り方と見分けの限界も見ながら、市町村の窓口へ写真を渡す準備をします。

4本指に見える動物|タヌキ・ネコ・ネズミの前足

指が4本に見える足跡の代表はタヌキで、農林水産省のマニュアルは、イヌ科なので地面につく指は4本で、爪が目立つと説明しています。ネコの足跡は、筑波大学の資料でタヌキとよく似ているが爪痕がないとされ、爪あとの有無が区別の手がかりになります。ネズミの前足も4指に見えますが、資料の例では長さ1cm強と、約4cmとされるタヌキよりずっと小さい跡です。

農林水産省のフローチャートは、4本の足跡について、中央2本の指の根元に線を引いたとき、左右の指がその線に重なるかどうかでもタヌキとキツネを分けています。家の周りで線を引いて測るのは難しいため、写真に残して後から見比べる使い方が現実的です。

歩幅と並び方から分かること|足跡の列を見る

足跡は1つよりも、続いて残った列の方が、手がかりが多くなります。筑波大学の資料は、一つの足による跡を「足痕」、複数の足痕からなる一連の跡を「足跡」、前後の足痕の間隔を「歩幅」と整理しています。この記事では分かりやすさのため、一つの足の跡も含めて「足跡」と書き、列の間隔を指すときは「歩幅」「間隔」と書きます。

歩幅は動物の速さで変わるため、表の数値は目安です。列が短くて並びが読み取れないときは、無理に決めず、次の確認に進みます。

歩幅と並び方から分かること|足跡の列を見る:確認項目
並び方当てはまる動物の例資料の記載
左右の足が横に並ぶアライグマ農林水産省のフローチャートが、5本で指が長い足跡の分け目に挙げる。京都府は「左右が対になる」と説明
直線の左右につく・長い尾の跡がつくハクビシン京都府は歩行跡が直線の左右につくと説明。筑波大学は尾の跡がしばしばつき、歩幅は40〜50cmと記載
一直線にならず、ジグザグに続くタヌキ・ネコ筑波大学は、タヌキは肩幅があるため直線的でなくジグザグ、ネコは前後の足跡が重なりジグザグと説明
前足がそろい、後足が重なる跳ねるような足跡イタチ・テン筑波大学は、どちらもシャクトリムシが跳ぶような走り方で、間隔はイタチ約30cm、テン約50cmと記載
足跡の間に細い線(尾の跡)が続くネズミ・ハクビシン・ヌートリア筑波大学がネズミとハクビシンで尾の跡に言及。農林水産省はヌートリアを、左右が並ばず中央に尾の跡が残るものに分類

参考:筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所|アニマルトラッキング(足跡・糞の見分け方、2020年4月初版、PDF)

粉や砂で足跡を取る方法と、やってはいけない場所

足跡が見つからないときは、動物が通りそうな場所に、跡がつきやすい素材を用意する方法があります。新宿区の保健所リーフレットは、ネズミの侵入経路を探す方法の一つとして、床に小麦粉を薄くまき、ついた足跡から見つける方法を紹介しています。農林水産省のマニュアルは、被害現場に動物が今もいるかを確かめる足跡トラップとして、ベニヤ板、トタン板、石灰を通りそうな場所に置き、足跡を明瞭に残す方法を紹介しています。

環境省九州地方環境事務所のパンフレットには、誘引用の餌を使う方法も載っていますが、同じ資料は、果物などを使うと味をしめて作物を荒らすおそれがあると注意しています。家の周りで餌を置くと動物を呼び寄せることになるため、この記事では餌を使う方法を取り上げません。

家の周りで行う範囲と進め方

粉の用意は、自分の手が届き、足元が安定した平らな場所に限ります。粉の厚さや幅について資料に数値はないため、ここでも数値は示さず、「跡が残るのに十分で、掃除しやすい程度に薄く」を目安にします。

  • 玄関先の土間、ベランダの床、物置の床など、手が届く平らな場所だけにする。
  • 壁際や配管の周りなど、動物が沿って歩きそうなところに、帯状に薄く用意する。
  • 夕方に用意して翌朝に撮影し、その日のうちに拭き取る。粉を数日置かない。
  • 雨のかかる場所、食品や食器の近く、ペットや子どもが触れる場所は避ける。
  • 撮影は、足跡の横に定規を置いて真上から。ほうきで掃く前に撮る。

粉まきや確認をしない場所

天井裏の奥は、踏み抜きや転落の危険があります。東京都のねずみ防除指針は、天井裏や高所など危険な場所は専門業者に依頼した方がよい場合もあると説明し、農林水産省のマニュアルは、ハクビシンの糞尿が堆積して天井板が落ちた事例があると紹介しています。電気設備の周りも同じで、粉は用意しません。

NITE(製品評価技術基盤機構)は、小動物が製品の内部配線をかじってショートする事故を紹介し、平成24〜28年度のペット・小動物・害虫による事故78件のうち約72%の56件が火災に至ったと報告しています。配線のかじり跡が疑われる場合は、足跡取りより先に電気工事店へ相談します。

  • 天井裏の奥や、天井板の強度が分からない場所。上がらず、点検口からのぞく範囲にとどめる。
  • 分電盤、コンセント、配線、照明器具、エアコンの周り。配線の傷や異音は電気工事店へ。
  • 脚立やはしごが必要な高所。NITEは、はしご・脚立の事故が10年間で398件あり、そのうち92%が人的被害を伴ったと報告している。足跡の確認のために高所へ上がらない。
  • 他人の敷地や、マンションの共用部。管理者の許可を得てから。

参考:新宿区保健所|ねずみの被害を減らすために(リーフレット、2023年1月、PDF)

足跡だけで決められないときの次の確認|フン・音・カメラ・被害の場所

足跡は、雨や掃除で消え、数も限られるため、最後の決め手にはなりません。同じ場所でフンが続くか、音がする時間帯はいつか、被害がどこに出ているかを組み合わせて、候補を絞ります。大きさや形から確かめるには害獣のフンの見分け方、音の特徴からは害獣の鳴き声一覧、動物全体の比較には家に出る動物の一覧と音・フン・足跡の違いが使えます。

農林水産省のマニュアルは、痕跡で判断がつかない場合や、現在も生息しているかを確かめたい場合に、足跡トラップやセンサーカメラを設置するとよいと説明し、センサーカメラなら生息している動物が確実に分かると述べています。家の外にカメラを向けるときは、通行人や隣家が映らない向きにします。

足跡だけで決められないときの次の確認|フン・音・カメラ・被害の場所:確認項目
確認の種類見るもの足跡と合わせた読み方の例
フン大きさ・形・落ちる場所。同じ場所に新旧がたまっているかタヌキは同じ場所に新旧のフンがまとまる「ためフン」が知られている(筑波大学)。足跡が4本指で爪あとがあれば候補が強まる
音時間帯・場所・足音か引っかく音か夜間に天井裏の足音が続く場合、足跡が5本指でアライグマやハクビシンの特徴に当てはまるなら、その旨を調査の依頼時に伝える
センサーカメラ写った姿と、通る時間・経路足跡で候補が2種類残ったときに、姿で確定できる。自分で設置が難しければ、調査の依頼時に相談する
被害の場所と形爪痕、食べ跡、天井のシミ、柱やガラスの跡農林水産省は、アライグマは壁に沿った糞尿のシミと柱の爪痕、ハクビシンはポツンと現れる糞尿のシミと柱や雨どいの足跡を例に挙げる

足跡の記録を自治体や調査に渡す|相談前にそろえる情報

環境省九州地方環境事務所のパンフレットは、アライグマの足跡や姿を見たら市町村役場に連絡するよう案内し、捕獲が必要になったときは、自治体の鳥獣害対策の担当部署に相談して指導を受けるよう求めています。アライグマは特定外来生物で、生きたままの運搬や飼養、野外に放すことが外来生物法で原則禁止されています。足跡からアライグマが疑われても、自分で箱わなを用意して捕まえるのではなく、まず相談します。相談先を自治体・専門業者などから選ぶときの違いは、害獣駆除の依頼先6つの違いで比べています。

ハクビシンなど、他の野生鳥獣も、許可なく捕獲することは鳥獣保護管理法で原則禁止されています。写真とメモをそろえて渡せば、窓口でも調査会社でも、候補をそこから絞り込めます。足跡が見つかった場所が出入りに使えそうかは、害獣の侵入経路を部位別に確認するチェック表で見比べられます。調査の範囲や費用の確認は「現地調査・見積もり無料」はどこまで?も参考になります。屋根裏に入られていて種類が決まらないまま業者へ頼むときの比べ方は、種類が不明でも比べられる屋根裏の動物駆除業者の選び方でまとめています。

  • 足跡の写真(定規を添えた真上の写真と、列全体の引きの写真)。
  • 見つけた日付、時間帯、家のどの面か(北側の壁沿い、ベランダ、庭など)。
  • 指の数、爪あとの有無、足跡の並び(横並び・ジグザグ・直線の左右)のメモ。
  • 同じ時期のフン・音・被害の写真と場所。
  • 自分でしたこと(粉を用意した日、置いたカメラ、使った製品)。

参考:環境省九州地方環境事務所|アライグマ防除のパンフレット(足跡の見分け方と足跡トラップ、平成25年3月、PDF)