害獣とは何か:言葉の意味と法律上の区分

「害獣」は、鳥獣保護管理法が定める「鳥獣」「狩猟鳥獣」といった区分にはない、人の暮らしに被害を出す野生動物をまとめた一般的な呼び方です。扱いを決めているのは動物の種類ごとの法律で、鳥獣保護管理法は「鳥獣」を鳥類または哺乳類に属する野生動物と定義しています。環境省の概要では、平成14年の法改正でネズミ・モグラ類もこの「鳥獣」に含まれるようになったと説明されています。

鳥獣と鳥類の卵は、狩猟による場合を除いて原則として捕獲・殺傷・採取が禁止され、被害防止などの目的で環境大臣または都道府県知事の許可を受けたときだけ認められます。多くの都道府県では許可の権限の一部を市町村長に移しているため、申請先は地域で違います(環境省の捕獲許可制度の案内)。動物がどの法律の枠に入るかは、次の3つに分けて見ると整理できます。

鳥獣保護管理法で、捕獲や卵の採取に許可が必要な動物

コウモリ、イタチ、テン、ハクビシン、アライグマ、タヌキ、アナグマのほか、ハト、ムクドリ、スズメなどの野鳥も「鳥獣」に当たります。免許や許可のないまま、自分で捕まえる、毒餌で駆除する、卵やヒナのいる巣を撤去するといったことはできません。巣に卵やヒナがある場合の考え方は、巣に卵やヒナがあるときの確認事項で別に整理しています。

家ネズミ3種は適用除外:ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミ

環境省は、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれがあるものとして、いえねずみ類3種が鳥獣保護管理法の対象外とされていると説明しています。法の施行規則では、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミが具体的に挙げられています。京都市のQ&Aでも、この3種は許可の手続きなしに捕獲・殺傷が許される一方、ネズミ用のわなにイタチなど別の野生鳥獣が入ったときは、殺傷せず放すよう案内されています。種類ごとの違いはネズミ3種の見分け方の記事で比べられます。

外来生物法:アライグマなど特定外来生物は運搬や飼養も規制される

外来生物法で特定外来生物に指定された動物は、飼育・保管・運搬が原則として禁止されます。環境省は、野外で捕まえたものを持ち帰ることは運搬に当たり禁止される一方、その場ですぐ放すことは規制の対象にならないと説明しています。哺乳類では、アライグマ、ヌートリア、クリハラリス(タイワンリス)、キョンなどが特定外来生物の一覧に載っています。

一覧に載っていない動物も多くあります。ハクビシンは外来種として日本に持ち込まれた動物とされますが、環境省の特定外来生物の一覧には見当たりませんでした。タヌキ、アナグマ、テンも同様です。イタチ科で一覧に載っているのはアメリカミンクで、家に入る例が多いニホンイタチやシベリアイタチ(チョウセンイタチ)は載っていません。外来生物法と鳥獣保護管理法の両方を意識する必要があるのは、この中ではアライグマだと整理しておくと、相談のときに話がかみ合いやすくなります。

参考:環境省|鳥獣保護管理法の概要

読者の疑問

害獣にはどんな種類の動物がいますか?

比較ガイド

建物で被害が出やすいのは、家ネズミ3種、コウモリ、イタチ、テン、ハクビシン、アライグマ、タヌキ、アナグマと、ハトやムクドリなどの野鳥です。害獣という分類は法律になく、動物ごとに扱いが違います。

家や屋根裏に出る害獣の一覧表:大きさ・入る場所・法律上の扱い

次の表は、建物で被害が出やすい動物を、公的資料に載っている大きさ、入りやすい場所、法律上の扱いでそろえたものです。数値は各資料の記載をそのまま写しており、体の測り方は資料ごとに違います。同じ動物でも個体差が大きいため、大きさだけで種類を決めず、後の痕跡の表と組み合わせて使ってください。

隙間の寸法は「その幅があれば通れた、または通れるとされる目安」であり、封鎖に必要な寸法ではありません。封鎖の位置や材料は、現地の構造を見たうえで決める必要があります。順序や時期は、調査の結果を踏まえて決めます。

家や屋根裏に出る害獣の一覧表:大きさ・入る場所・法律上の扱い:確認項目
動物大きさ・通れる隙間の目安入りやすい場所・活動の目安法律上の扱い
ドブネズミ体長22〜26cm植込み、下水管・下水溝、ビルの低層階。活動は主に夜鳥獣保護管理法の適用除外
クマネズミ体長15〜20cm。1.25cmの隙間でも通り抜けるとされるビルの高い所、壁の中、天井裏。電線や配管を伝って上る同上(適用除外)
ハツカネズミ体長6〜9cm畑に生息する農村型。都市近郊の駅ビル・マンション・食品工場にいる例もある同上(適用除外)
コウモリ(アブラコウモリなど)1cmほどの隙間から出入りできるとされる家の隙間に住み着く。糞が落ちている場所の近くが出入り口の目安鳥獣保護管理法の対象(捕獲に許可が必要)
イタチ(ニホンイタチ・シベリアイタチ)3〜4cmの隙間でも入る場合がある。尾が頭胴長の半分より長ければシベリアイタチ(旧称チョウセンイタチ)屋根の重なり、床下換気口、配管の引き込み部。西日本で多いのはシベリアイタチ鳥獣保護管理法の対象。特定外来生物ではない
テン(ニホンテン)頭胴長40cm前後、尾長20cm前後。体重はツシマテンの例でオス1.5kg前後、メス1kg前後。体重約1kgの個体が5cm角の網目を通り抜けた例がある中山間地域で、家屋の屋根裏や物置を利用することがある鳥獣保護管理法の対象
ハクビシン胴長50〜60cm前後、体重3〜4kg程度。6cm×12cmの隙間で侵入できる夜行性。夏は涼しい床下、寒くなると暖かい天井裏を休憩場所にする鳥獣保護管理法の対象。特定外来生物の一覧には載っていない
アライグマ胴長60cm前後木登りが得意で、屋根裏や壁の隙間をねぐらにする。夜間中心だが昼間も動く特定外来生物。生きたままの運搬や飼養も規制される
タヌキ胴長45〜55cm前後夜間中心だが昼間も動く。空き家などの床下を休息場所にする鳥獣保護管理法の対象。特定外来生物ではない
アナグマ鼻先から尾の先まで60〜90cm巣穴を掘る動物。地面の直径5cm程度の小さな穴は餌探しの痕跡の可能性がある。薄明薄暮に活発で、11〜4月ごろは冬眠する鳥獣保護管理法の対象。特定外来生物ではない
ハト・ムクドリ・スズメなどの野鳥種類で異なるベランダなどに居ついたり、巣を作ったりする鳥獣保護管理法の対象。卵の採取やヒナの捕獲も禁止

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

音・フン・足跡・シミの早見表:痕跡から候補を絞る

痕跡の表は、見つけた手がかりから候補を2〜3種に絞るための道具です。1つの痕跡で動物が決まることはほとんどなく、音とフンの置き場所、シミの出方と足跡のように、別の種類の痕跡が同じ候補を指すかを確かめます。擬音の聞こえ方は人によって違うため、音そのものの比較は鳴き声の一覧記事に、フンの比較はフンの見分け方の記事にまとめました。

音・フン・足跡・シミの早見表:痕跡から候補を絞る:確認項目
痕跡見え方・聞こえ方候補として挙がる動物資料から言えること・言えないこと
夜の足音・走る音天井裏や壁の中を走る、歩くネズミ(活動は主に夜)、ハクビシン(足音が家屋侵入の被害として報告されている)、アライグマ足音だけで種類は決められません。時間帯・継続日数・他の痕跡と合わせます
子どもの鳴き声短い声が繰り返し聞こえるハクビシンの子(農水省が被害として報告)、アライグマの子(甲賀市は小鳥やカエルの鳴き声のイメージと案内)、ネズミの幼獣クマネズミの成獣はあまり鳴かず、幼獣はよく鳴くとされます。声の種類から動物は決められません
フンの置き場所同じ場所に積み重なるタヌキ(生活エリアの境界にためる)、ハクビシン(ねぐらの中で排泄して堆積する)ため糞は候補を絞る手がかりで、決め手にはなりません
フンの大きさ粒の長さドブネズミは1〜1.5cm、クマネズミは1cm前後、ハツカネズミは0.5cm(東京都の指針)。コウモリは5〜10mm(東京都ペストコントロール協会)中型の動物のフンの実寸は、確認した資料では分かりませんでした。比較表は別記事で出典つきで示します
足跡指の数と爪の跡アライグマは指5本で爪跡が明瞭、ハクビシンは指5本で爪跡が不明瞭、タヌキは指4本、アナグマは指5本で爪が長い泥や粉に残った跡が不鮮明なら、指の数は数えられないことがあります
黒い汚れ・こすり跡壁際、配管、出入り口の周りネズミ(体の脂分と汚れで黒光りする)侵入口の目印にもなりますが、動物の種類までは決められません
天井のシミ壁に沿って出る、点々と出る農水省は、壁に沿って現れる糞尿のシミをアライグマ、ポツンと現れるシミをハクビシンの被害例として示す雨漏りや結露との区別が必要です。判断を急がず写真で残します
においと爪痕悪臭、柱や壁の傷シベリアイタチは糞尿の悪臭が問題とされる。爪痕はアライグマに多いが、ハクビシン、イタチ類、ネコも残すことがある爪痕だけで種類は決められません
  • 音:聞こえた時刻と続いた長さを、日付つきで記録します。
  • フン:定規を添えて写真に残し、触らずに場所と大きさを控えます。
  • シミ・におい:天井や壁の位置と気づいた日付を、写真とメモで残します。

参考:東京都保健医療局|東京都ねずみ防除指針「防除の基本」(PDF)

取り違えやすい組み合わせ:ハクビシンとアライグマ、タヌキとアナグマ、イタチとテン、コウモリとヤモリ

似た動物の見分けは、1か所の特徴で決めず、尾、顔、足跡の3点を比べます。東京都環境局の資料は、アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマを全身・顔・尻尾・足跡の欄で並べて比較しています。農水省のマニュアルも、現場に残された足跡やフンの形などから獣種を絞るフローチャートを載せています。

アライグマとハクビシンを比べる

アライグマは尾に黒い縞が5〜7本あり、足跡は指が5本で爪の跡がはっきり残るとされます。ハクビシンは尾が長いことが特徴で、足跡は同じく指が5本でも爪の跡が不明瞭です。顔は、アライグマが目のまわりの黒い部分と白いヒゲ、ハクビシンが黒い頭部に白い鼻筋が目印とされています。

タヌキとアナグマを比べる

タヌキは尾が太くふさふさし、足跡は指が4本で全体に丸くネコに似ているとされます。アナグマは尾が短く、指は5本で爪が長いのが特徴です。農水省のマニュアルは、アナグマの顔は全体が白く、鼻筋が白い点でハクビシンと間違われることも多いと注意しています。地面に直径5cm程度の小さな穴が点々とある場合は、アナグマが餌を探した痕跡の可能性が挙げられています。

イタチ類とテンを比べる

農水省のコラムは、シベリアイタチ(旧称チョウセンイタチ)はニホンイタチよりやや大きく尾が長いとし、尾が頭胴長の半分より長ければシベリアイタチと見分ける目安を示しています。テンは頭胴長40cm前後、尾長20cm前後で、冬毛では顔が白く体が明るい黄色になるとされます。一方で、フンや足音だけでイタチ類とテンを区別できるという記載は、今回確認した公的資料にありませんでした。シベリアイタチは3cm程の穴からも入るとされ、テンも体重約1kgの個体が5cm角の網目を通った例があるため、隙間の大きさで両者を分けることもできません。

コウモリとヤモリのフンを比べる

東京都ペストコントロール協会は、コウモリのフンは5〜10mmほどで、昆虫しか食べないためネズミのフンよりもろく、夏に軒先や屋根の下に落ちていることが多いと説明しています。ヤモリのフンの特徴を記した公的資料は今回確認できませんでした。見た目だけでどちらかに決めず、定規を添えた写真と落ちていた場所を記録し、フンの比較表の記事の手順で整理してから、調査で確かめてもらいます。

参考:東京都環境局|アライグマ・ハクビシン等の見分け方(PDF)

害獣と間違えやすい生き物:ヤモリ・猫・鳥・虫

天井裏や軒下の音、庭のフンが、害獣ではない生き物によるものだったという例もあります。東京都のねずみ防除指針は、住宅にはネズミ以外の動物が入り、ネズミに似た被害を出す場合があると注意し、例としてノラネコ、イエコウモリ、多摩地区のハクビシンを挙げています。

  • ヤモリやヘビ、トカゲは爬虫類で、鳥獣保護管理法の「鳥獣」(鳥類または哺乳類)には当たりません。京都市はヘビなどについて、行政による捕獲や駆除は行わないと案内しています。ヤモリの音やフンの特徴は、確認できた公的資料に記載がありませんでした。
  • 飼い猫や野良猫は、所有者がいる猫を捕獲すると窃盗や器物破損で訴えられるおそれがあると京都市が案内しています。庭のフンや足跡は、猫の可能性も残します。
  • ハト、ムクドリ、スズメなどの鳥は、ベランダなどに居ついたり巣を作ったりします。卵やヒナがある巣は、巣立つまで見守るのが基本です。
  • 虫が原因の音や汚れは、動物とは別の窓口や記事で扱われます。京都市のQ&Aも、動物、ハチ、虫を別の項目で案内しています。

参考:京都市|野生鳥獣・虫等に関する相談Q&A集 PDF(2026年4月)

屋根裏・天井裏の野生動物は、痕跡だけで決めつけない

屋根裏や天井裏は、人が入れない、見えない、においがこもるといった条件が重なり、同じ痕跡が複数の動物に当てはまります。横浜市は、天井裏に住みつく主な動物としてアライグマ、ハクビシン、ネズミが確認されていると案内しており、地域によって候補の顔ぶれが変わることがうかがえます。東京都の指針も、多摩地区ではハクビシンの例があると記しています。

候補を1つに決めるより、見つけた痕跡を日付と場所つきで残し、調査を担当する人が現地で確かめられる状態にしておく方が、結果として早く解決に近づきます。調べる範囲と順序は天井裏の音から始める最初の確認の記事にまとめています。自分で天井裏に入って確かめる必要はありません。

参考:横浜市|天井裏から動物の足音がする。(よくある質問)

候補を絞ったあとの相談先:自治体・管理会社・業者の分け方

相談先は、動物の種類、住まいの形、自治体の制度で変わります。京都市のQ&Aでは、アライグマは外来生物法に基づいて市が捕獲檻で対応する一方、イタチ・タヌキ・コウモリ、ネズミは行政機関による捕獲や駆除は行わず、自分で対処するか業者に依頼する案内です。同じ内容を他の自治体が行うとは限らないため、お住まいの自治体の担当窓口で確認してください。

横浜市はネズミの相談を各区福祉保健センターの生活衛生課で受け、アライグマとハクビシンは捕獲した個体の回収・処分を市が行うと案内しています。東京都のねずみ防除指針も、集合住宅のねずみ対策は分譲なら管理組合、賃貸なら家主が主体になるとしています。賃貸や集合住宅では、共用部分の調査や工事に管理者の了解が要ることが多いため、先に管理会社や管理組合へ連絡します。連絡文の作り方は賃貸の害獣被害を管理会社へ報告する記事が参考になります。

候補を絞ったあとの相談先:自治体・管理会社・業者の分け方:確認項目
状況最初に連絡する先確認すること
賃貸・集合住宅で音や痕跡がある管理会社・管理組合共用部分の調査や入室の可否、費用の負担者
アライグマが疑われる自治体の外来生物・鳥獣の担当窓口捕獲檻の貸出や設置の条件、屋根裏の場合の扱い
ネズミが疑われる自治体の保健所・生活衛生の担当窓口相談できる範囲、わなや薬剤の貸出の有無
コウモリ・イタチ・タヌキなどが疑われる自治体の野生鳥獣の担当窓口行政が捕獲・駆除を行うか、捕獲許可の申請先
巣に卵やヒナがある自治体の鳥獣の担当窓口・建物の管理者巣立つまで待てるか、許可が必要な作業か
見積もりや契約で不安がある消費生活センター(局番なしの188)見積書の内訳、契約書面、キャンセル条件

参考:京都市|野生鳥獣・虫等に関する相談Q&A集 PDF(2026年4月)