擬音だけで決めつけない理由と、録音・メモの取り方

鳴き声の聞こえ方は、人によっても、天井や壁の構造によっても違います。甲賀市は、家屋内に侵入された相談で動物が発する音や鳴き声を確認し、聞き取りの目安として、アライグマはゴソゴソ・ガサガサ・ノシノシ(歩く音)、イタチはカリカリ(爪で引っ掻く音)・トントン(走る音)というイメージ音を挙げています。ただし市自身が「イメージ音のため異なる場合もあります」と断っており、擬音はあくまで目安です。

同じ市は、音や鳴き声を携帯などに録音していただくと判断しやすくなる場合があるとも案内しています。録音とメモは、現地調査の前に候補を絞る材料になり、調査の担当者が、どの場所を、どの時間帯に確認するかを決めるためにも使えます。

録音のしかた

録音は、聞こえている最中に、同じ条件で数回とるのが基本です。1回で完璧な音を録る必要はありません。

  • 音が聞こえる部屋で、天井や壁から少し離した位置にスマートフォンを置き、録音の開始時刻をメモする
  • 聞き直しやすいよう、録音ごとに日付と開始時刻を付けて保存する
  • 換気扇や給湯器、エアコンの音と混ざる場合は、設備を無理に止めず、動いている時間と静かな時間の差が分かる時間帯に録る
  • 相談先へ送るときは、住所や家族の会話が入った部分を避け、必要な部分だけを切り出す

メモに残す項目

録音と一緒に、短いメモを残すと、聞き返したときの手がかりが増えます。一晩の記録の取り方は夜間の天井の音を記録する方法の記事で詳しく扱っています。

  • 聞こえた日と時刻、続いた長さ
  • 聞こえた場所(部屋名、天井や壁のどのあたりか)
  • 聞こえ方を自分の言葉で書く(短く繰り返す、引っ掻く、歩くなど)。擬音に無理に当てはめない
  • 同時に気づいたにおい、フンやシミ、天気

参考:甲賀市|鳥獣による田畑での農作物被害や家屋への侵入被害対策

読者の疑問

天井裏からキューキューと聞こえるのは、何の動物ですか?

比較ガイド

擬音だけでは決められません。今回確認した公的資料に、この擬音で書かれた動物はありませんでした。幼獣の声の可能性も含め、時期・時間帯・足音・フンなどの痕跡と合わせて候補を絞ります。

動物別の鳴き声・音の比較表:ネズミ・ハクビシン・アライグマ・イタチ・コウモリ・鳥

次の表は、公的資料に鳴き声や音の記載があった動物だけを載せています。タヌキ、テン、アナグマ、ヤモリについては、今回確認した資料で鳴き声や音の特徴を確認できなかったため、表には含めていません。「載っていない」ことは「鳴かない」という意味ではなく、資料で裏づけられなかったという意味です。

表の擬音は、自治体が相談の聞き取りに使う目安や、資料の記述をそのまま写したものです。録音を聞き比べても、1つに決まらないのは普通のことです。候補を2〜3種残したまま、足音やフン、出入り口の痕跡で絞る流れは、害獣の一覧と痕跡の早見表の記事にまとめています。

動物別の鳴き声・音の比較表:ネズミ・ハクビシン・アライグマ・イタチ・コウモリ・鳥:確認項目
動物公的資料にある聞こえ方鳴く場面・時間帯一緒に出やすい手がかり
ネズミ(ドブネズミ・クマネズミ)捕まえたばかりのドブネズミはよく鳴き、クマネズミは成獣があまり鳴かない。幼獣はよく鳴く(東京都)活動は主に家人が留守のときや夜中かじり跡、黒光りするこすり跡、フン
ハクビシン足音や子の鳴き声が、家屋侵入の被害として報告されている(農水省)夜行性。出産期は3〜11月と推定され、ほぼ年間を通して繁殖する天井裏の糞尿、天井板のシミ
アライグマゴソゴソ・ガサガサ・ノシノシ(歩く音)。子どもの声は、小鳥やカエルの鳴き声のイメージ(甲賀市)夜間中心で昼間も活動。出産は4月中旬がピーク(農水省)柱や壁の爪痕、壁に沿ったシミ
イタチ類カリカリ(爪で引っ掻く音)、トントン(走る音)(甲賀市)資料に時間帯の記載なし糞尿の悪臭、3cm程度の穴からの侵入
コウモリ超音波を出して飛ぶとされる(浜松市)。人に聞こえる鳴き声の記載は確認できなかった日没後に活動する(東京都ペストコントロール協会)。6〜8月は、まだ飛べない幼獣がいる時期とされる(浜松市)軒先や出入り口の下のフン
スズメ「チュンチュン」とよく鳴く(農水省)繁殖期は3〜9月で、年に1〜3回。巣は人家の屋根や壁などの隙間に作る屋根や壁の隙間の巣材
キジバト・ドバトキジバトは「デデーポッポー」と繰り返し鳴く(農水省)繁殖期は4〜10月。ドバトはマンションのベランダなど雨のかからない所に巣を作る巣材、卵・ヒナの有無
ムクドリ戸袋などで繁殖されると、鳴き声・悪臭・ダニが問題になる(農水省)繁殖期は4〜7月。6月末ごろから大きなねぐらを作る戸袋などの隙間の巣、悪臭

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

「キューキュー」「キュッキュッ」と聞こえるときの候補と、幼獣の可能性

検索では「キューキュー」「キュッキュッ」という擬音がよく使われますが、今回開いた公的資料に、この擬音で書かれた動物は見つかりませんでした。そのため、擬音から動物を当てるのではなく、「短い声が繰り返し聞こえる」という聞こえ方を手がかりに、候補を広げて確かめます。

候補に入れたいのは、まず幼獣です。クマネズミは成獣があまり鳴かない一方で、幼獣はよく鳴くとされます。ハクビシンは子の鳴き声が家屋侵入の被害として報告され、アライグマは子どもの声が小鳥やカエルの鳴き声のイメージで案内されています。小鳥の声に近い短い声が屋根裏から続くときは、鳥だけでなく、幼獣がいる可能性も考えます。

聞こえ方から広げる候補

次の組み合わせは、出典に書かれた聞こえ方を、候補を広げるために並べ替えたものです。どれも決め手にはなりません。

  • 短い声が繰り返し続く:ネズミやハクビシン、アライグマの幼獣、または軒先や戸袋の巣にいる野鳥のヒナ
  • 爪で引っ掻く、走る:イタチ(甲賀市の聞き取りの目安)。ネズミも夜間に天井裏や壁の中を走り回るとされる(日本ペストコントロール協会)
  • 歩く音:アライグマ(甲賀市の目安ではノシノシ)、ハクビシン(足音が被害として報告されている)

どの候補でも先に確かめること

候補を絞る前に、時期、時間帯、続いた日数、同じ場所で聞こえるかを揃えて記録します。あわせて、フンやシミ、軒先やベランダの鳥の巣の有無を見ておくと、候補の入れ替えがしやすくなります。

  • 季節と時間帯:次の表の時期と照らします
  • 天井や壁の同じ場所で続くか、移動するか
  • 近くの軒先や戸袋、ベランダに鳥の巣がないか

参考:東京都保健医療局|東京都ねずみ防除指針「防除の基本」(PDF)

鳴き声が聞こえやすい季節と時間帯:繁殖期と夜

幼獣やヒナの声は、動物の繁殖期と重なる時期に聞こえやすくなります。次の表は、出典に書かれた繁殖期や活動の時間帯を、鳴き声を聞く立場で並べ替えたものです。季節だけで動物を決めることはできません。

明け方や昼間については、アライグマやタヌキが昼間も活動すること、アナグマが薄明薄暮に活発になること、ネズミが人の留守の時間帯にも活動することが資料にある程度で、時間帯から動物を決められるほどの記載はありません。昼の音は設備や別の動物の可能性も含めて、昼の天井音を設備とも照合する方法の記事で確認すると、決めつけを避けられます。

鳴き声が聞こえやすい季節と時間帯:繁殖期と夜:確認項目
時期・時間帯出典に書かれた動物の動き聞こえ方への影響
夜ネズミの活動は主に家人が留守のときや夜中。ハクビシンは夜行性。アライグマは夜間中心夜に天井裏で足音や物音が増えると考えられる
2月ごろアライグマは、厳冬期の2月ごろに家屋へ入って繁殖場所を確保することが多くなる(環境省の手引き)出産前でも、屋根裏への出入りが始まる
4〜6月アライグマの出産は4月中旬がピークで、子は6月上旬から野外で動き始める。ムクドリの繁殖期は4〜7月(農水省)幼獣やヒナの声が出やすい時期
6〜8月コウモリは、まだ飛べない幼獣がいる時期とされる(浜松市)幼獣がいるため、出入り口を塞ぐ作業を避ける時期
3〜11月ハクビシンの出産期は3〜11月と推定され、ほぼ年間を通して繁殖する(農水省)季節だけでは絞りにくい
冬ハクビシンは、気温が下がると活動が低下して半休眠状態になる(農水省)静かな冬でも、2月ごろから変化することがある

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

鳴き声がしないのに足音だけがするとき:候補と確かめ方

鳴き声がしないことは、動物がいない証拠にはなりません。クマネズミの成獣はあまり鳴かないとされ、ハクビシンの被害でも、足音と子の鳴き声が並べて報告されています。足音だけが続くときは、ネズミやハクビシン、アライグマなどを候補に残し、フンやシミ、出入り口の汚れと合わせて確かめます。

動物以外の候補もあります。ヘビなど爬虫類は鳥獣保護管理法の「鳥獣」に当たらず、京都市は行政による捕獲や駆除を行わないと案内しています。また、設備や建物に由来する音の可能性もあります。昼間にも同じ音がする、季節や時刻が決まっているといった場合は、設備の可能性も候補に入れ、無理に止めて試さず、記録を続けます。

  • 歩く(一定の間隔)のか、走る(細かく速い)のか
  • 天井の同じ場所を往復するのか、広い範囲を移動するのか
  • 音の始まりと終わりの時刻(毎晩ほぼ同じ時刻かどうか)
  • 壁の中を上下する音か、天井裏を水平に移動する音か

参考:京都市|野生鳥獣・虫等に関する相談Q&A集 PDF(2026年4月)

幼獣がいそうなときに封鎖を急がない理由と相談先

幼獣の声がするときに、親が出かけた隙に出入り口を塞ぐと、中に子が取り残され、閉じ込められて死んでしまうおそれがあります。浜松市は、コウモリについて、家にいない時間帯を確かめてから封鎖し、中に取り残されないよう注意すること、閉じ込めて死なせると死体がにおいや害虫の発生源になることを案内しています。封鎖は、まだ飛べない幼獣のいる6〜8月や、冬眠の前後を避けるともしています。農水省のマニュアルも、侵入口を塞ぐ前に、中に動物がいないことを確かめるよう注意しています。

法律の面でも、野生の鳥獣は原則として捕獲・殺傷が禁止され、鳥の卵の採取やヒナの捕獲も禁止されています(京都市のQ&A)。巣に卵やヒナがあるときは巣立つまで見守るのが基本で、ほとんどが30〜50日ほどで巣立つとされています。詳しくは巣に卵やヒナがあるときの確認事項の記事と、コウモリ対策の時期を暦だけで決めない記事にあります。アライグマは特定外来生物で、生きたままの運搬や飼養が外来生物法で規制されるため、幼獣でも自分で動かさず、自治体の担当窓口へ相談してください。

幼獣がいそうなときに封鎖を急がない理由と相談先:確認項目
状況してよいこと避けること相談先の例
屋根裏から子どもらしい声が続く音や声を録音し、時期と時間帯を記録する出入り口を急いで塞ぐ、自分で天井を開けて探す、幼獣を持ち出す自治体の担当窓口。賃貸は管理会社
コウモリの出入りがあり、6〜8月出入りする時間帯と場所を観察して記録する出入り口の封鎖(幼獣が取り残される)自治体の担当窓口、調査を行う業者
外壁や軒先の巣から鳥のヒナの声巣立つまで見守る(30〜50日ほど)巣の撤去、ヒナの捕獲自治体の鳥獣の担当窓口、建物の管理者
アライグマの可能性がある幼獣の声録音と場所の記録生きたまま捕まえて運ぶ、放す自治体の外来生物の担当窓口

参考:浜松市|家にコウモリが住み着いて困っている

鳴き声の記録を調査につなぐ:相談のときに伝えること

調査を頼むときは、録音と日時のメモ、聞こえた場所、建物の構造、これまでに見つけたフンやシミを伝えます。甲賀市も、相談の際に被害の場所(屋根裏、1階と2階の間、床下など)と建物の構造(木造、鉄骨造、プレハブ造、階数)を確認するとしており、これらは調査する場所や侵入経路を決めるために使われます。種類が分からないまま業者に調査を頼むときに比べる項目は、屋根裏の動物駆除を業者に頼むときにまとめています。

最初の連絡先は、動物の種類より、誰が建物や敷地を管理しているかで決まります。賃貸や集合住宅では管理会社や管理組合が先です。連絡前の整理は、現地調査を頼む前に伝えること・用意するものの記事にまとまっています。動物が分からない段階の調査や見積もりの費用の考え方は、屋根裏の害獣駆除費用で整理しています。

  • 録音データ(日付と開始時刻つき)と、聞こえた時間帯のメモ
  • 聞こえた場所(部屋名、天井や壁のどのあたりか)
  • 建物の種類と構造(戸建てか集合住宅か、木造・鉄骨造・プレハブ造、階数)
  • 音以外の痕跡(フン、シミ、においの写真と日付)
  • 賃貸・集合住宅の場合は、管理会社や管理組合への連絡状況

参考:甲賀市|鳥獣による田畑での農作物被害や家屋への侵入被害対策