イタチの足跡の特徴|大きさ・指の数・爪痕・並び方
筑波大学山岳科学センターの動物追跡の資料は、イタチの足跡を、テンの足跡に似るがテンよりも小さく、約2.5cm四方、足跡の間隔は約30cmと記載しています。足跡の写真には、足痕が約2.5cmで爪痕が鋭いという説明が付いています。走り方は、シャクトリムシが跳躍して動くようで、前足がそろい、その上に少しかかって後足が残る形になります。
資料に書かれていること
筑波大学の資料は、野外で雪の上の足跡などを整理したもので、家の中のほこりの上の跡と同じとは限りません。国立環境研究所のデータベースでは、ニホンイタチの頭胴長は雄が27〜37cm、雌が16〜25cmで、雄と雌の体の大きさがはっきり違います。足跡の大きさにも個体差があると考え、数値は目安にとどめます。
- 大きさ:約2.5cm×2.5cm(テンの約4.5cm×4.5cmより小さい)
- 爪痕:鋭い
- 並び:前足がそろい、後足が少しかかる跳ねる形。間隔は約30cm
- フン:太さ約0.7cm、長さ約4cm。螺旋状にねじれ、一方の先がとがることが多い
確認できなかったこと
指の数は、農林水産省の中型獣類マニュアルの足跡フローチャートが、4本か5本かで分けています。このフローチャートは5本指の動物にテンを含めますが、イタチは含みません。テンはイタチ科の仲間で、筑波大学の資料も、イタチとテンを走り方が同じ似た足跡として並べています。ただ、イタチ自身の指の数を書いた公的資料は、今回確認できませんでした。跡の深さや走り方で見え方が変わると考えられるため、本数だけで断定しません。
ニホンイタチとシベリアイタチ(旧称チョウセンイタチ)の足跡を比べた資料も確認できませんでした。この2種は、農林水産省のマニュアルによると、尾が頭胴長の半分より長ければシベリアイタチ、という外見で見分けます。種類の見分け方は、ニホンイタチとチョウセンイタチの違いで整理しています。
参考:筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所|アニマルトラッキング(足跡・糞の見分け方、2020年4月初版、PDF)
イタチの足跡の大きさは、どのくらいですか?
筑波大学の資料は、約2.5cm×2.5cm、足跡の間隔は約30cmと記載しています。テンより小さいとされています。野外の記録に基づく例なので、数ミリの差で動物を決めず、爪痕や並びと合わせて見てください。
イタチ・ハクビシン・ネズミ・猫・テンの足跡の違い(比較表)
足跡の違いは、大きさ、指の数と爪痕、並び方の3点を組み合わせて見ます。下の表は、筑波大学、農林水産省、環境省九州地方環境事務所の資料にある記載を並べたものです。資料ごとに測り方や個体が違うため、数値は「資料に載っている例」として読み、数ミリの差で動物を決めないでください。「記載なし」は、今回開いた資料に書かれていなかった項目です。ネズミの数値は野外のハタネズミの例で、家に入るクマネズミなどの数値は確認できていません。
資料の例で並べると、イタチは小さく、爪痕があり、跳ねる並びという組み合わせです。同じイタチ科のテンはより大きく、ネズミはさらに小さく、猫は爪痕が出ません。ハクビシンとアライグマはイタチより大きく、5本の指が丸く見えるか、手形のように長く見えるかが手がかりになります。動物別の早見表は、害獣の足跡の見分け方|指の数・大きさ・歩き方を動物別の早見表で比べるにもあります。
| 動物 | 指と爪(資料の記載) | 大きさ(資料の記載) | 並び方・歩幅 |
|---|---|---|---|
| イタチ | 指の数は記載なし。爪痕が鋭い(筑波大学) | 約2.5cm×2.5cm(筑波大学) | 前足がそろい後足が少しかかる跳ねる形。間隔は約30cm |
| テン | 5本。指が独立して丸く、中心のパッドは半月形(農林水産省) | 4cm以下(農林水産省)。筑波大学は約4.5cm×4.5cm | イタチと同じ跳ねる形で、間隔は約50cm(筑波大学) |
| ハクビシン | 5本。指が独立して丸く、中心のパッドは円形(農林水産省)。爪は小さい | 前足は長さ約5cm、幅約4cm(筑波大学) | 長い尾の跡がしばしば付く。歩幅は40〜50cm(筑波大学) |
| ネズミ(野外のハタネズミの例) | 後足は5指がはっきり見え、前足は4指に見える(筑波大学) | 前足は長さ・幅とも1cm強。後足は縦長で前足より少し大きい | 歩幅は15〜35cm。尾の跡が残ることがある |
| 猫 | 指の数は記載なし。爪痕がない(筑波大学) | 記載なし | 前後の足跡が重なり、左右はジグザグ。足跡は専ら人家の近く |
| アライグマ | 5本で指が長く、前足は子供の手形のような形(環境省九州地方環境事務所) | 前足は5cm程度まで | 左右の足が横に並ぶ(農林水産省) |
イタチの足跡が残りやすい場所|屋根裏のほこり・壁際・雨どい・庭の土
足跡が残るのは、跡がつく素材のある場所です。環境省九州地方環境事務所のパンフレットは、足跡が残りやすいぬかるみや砂地は、どこにでもあるわけではないと説明しています。この記事では、身近な場所のうち、ほこりや泥、砂ぼこりが薄くたまる面を、足跡を探す候補として挙げます。
建物への出入りの経路も手がかりになります。大阪市西淀川区は、イタチが雨どいの中を登って屋根裏へ入ることがあると案内しています。農林水産省のマニュアルは、シベリアイタチの侵入ポイントの例として、屋根の重なり、入母屋屋根の両隅、床下換気口、給湯器などの配管引き込み部を挙げています。足跡を見つけたら、これらの位置との関係を考えます。
| 場所 | 残りやすい跡 | 見るときの注意 |
|---|---|---|
| 天井裏・点検口の付近 | ほこりの上の足跡(農林水産省のマニュアルに、天井裏に残ったハクビシンの足跡の写真がある) | 点検口から上がらず、のぞいて見える範囲を撮る。奥へ入る確認は専門家に任せる |
| 壁際・巾木の付近 | 足跡や体のこすり跡。ネズミの場合は、脂分と汚れで黒光りした跡になる(東京都) | 黒光りした跡はネズミの可能性もある。イタチと決めず、位置と形を記録する |
| 雨どい・外壁・配管まわり | 泥や砂ぼこりが付いた面の足跡。イタチが雨どいの中を登る場合がある(大阪市西淀川区) | 地上から見える範囲で撮る。雨どいを登ったり、中へ物を詰めたりしない |
| 庭や畑の湿った土、砂地 | ぬかるみや砂地の足跡(環境省九州地方環境事務所) | 崩れやすいので、見つけたらすぐ撮る |
| 車のボンネット・室外機の上 | ほこりや泥が付いた面に、小さな足跡が残ることがある(この記事が挙げる例で、公的資料の記載ではない) | 拭き取る前に、物差しを置いて撮る |
足跡写真の撮り方|物差し・連続した跡・複数の角度
環境省九州地方環境事務所のパンフレットは、痕跡を撮るときは、必ず大きさの比較ができる物(定規、ボールペン、タバコの箱など)を横に置くよう案内しています。疑わしいものを見つけたら、携帯電話のカメラでもよいので撮影し、役所や役場へ連絡するよう勧めています。足跡の写真が相談で役に立つのは、大きさと並びが分かるときです。
撮影の手順
次の順で撮ると、窓口や調査担当者が、場所、並び、大きさを順に確認できます。足跡には触れず、拭き取らず、崩れる前に撮ります。
- 建物のどこで見つけたかが分かる広い写真を、最初に1枚撮る
- 足跡が連なっている部分を、並びと間隔が分かるように撮り、物差しを置く
- いちばんはっきりした足跡を、真上から近づいて撮る。物差しは足跡の横に置き、重ねない
- 日時、場所、天気と、足跡以外に気づいたこと(フン、におい、音)をメモする
足跡トラップやカメラは、先に窓口へ
農林水産省のマニュアルは、痕跡で判断がつかない場合や、今も生息しているかを確認したい場合に、ベニヤ板やトタン板、石灰などを通りそうな場所に置く足跡トラップと、センサーカメラを紹介しています。環境省九州地方環境事務所のパンフレットには、誘引用の餌を使う足跡トラップの例もあり、果物を使うと味をしめて作物を荒らす危険があると注意しています。屋根裏や敷地で餌を置く方法は、野生動物を呼び込むおそれがあるため、始める前に窓口へ相談してください。粉や砂で足跡を取る範囲は、足跡の早見表の記事でも整理しています。
足跡とあわせて見るフン・におい・音・侵入口
足跡は、フン、におい、音、侵入口と合わせて見ると、動物の見当が付きやすくなります。次の表は、資料に目安がある項目と、ない項目を分けたものです。フンの扱いはベランダや屋根裏のフンらしきもの、においはイタチのにおいはどこから来るかで整理しています。
侵入口の大きさは、資料で一致しています。大阪市西淀川区は、イタチが直径3cm(500円玉より少し大きい程度)の穴があれば通過できると言われていると案内し、農林水産省のマニュアルも、体の小さいシベリアイタチは3cmほどの穴や隙間からでも侵入するため、建物内の該当箇所すべてを封鎖する必要があると書いています。足跡や汚れが続く壁や軒と、この大きさの隙間が重なっていないかを見ます。
| 手がかり | 資料に載っている目安 | 足跡との合わせ方 |
|---|---|---|
| フン | イタチのフンは太さ約0.7cm、長さ約4cmで、螺旋状にねじれ、一方の先がとがることが多い。テンは太さ約1cm、長さ約5cm(筑波大学) | 素手で触らず、大きさの分かる物と一緒に撮り、足跡の写真と同じ日に記録する |
| におい | 数値の目安は、今回の資料にはない | 強さと場所、続くかどうかを記録し、足跡のある場所と同じかを見る |
| 音 | 数値の目安は、今回の資料にはない | 足音のする時間帯と場所を、足跡の位置と並べて記録する |
| 侵入口 | 直径3cmの穴を通れるといわれる(大阪市西淀川区)。屋根の重なり、入母屋屋根の両隅、床下換気口、配管の引き込み部が例(農林水産省) | 足跡や汚れが続く壁や軒と、これらの位置を照らす |
足跡だけでイタチと決められない理由|似た動物・生息環境・古い跡
筑波大学の資料は、イタチ科の動物は同じような走り方をするため、似た足跡の候補は大きさ(オコジョ、イタチ、テンの順に大きい)で絞り、さらに生息場所の違いからの推測も重要だとしています。イタチは平地から低山帯、テンは森林帯、オコジョはさらに高い山岳部に生息します。住宅地の足跡の場合は、猫やネズミなどとの区別も必要になり、足跡の大きさだけでは決まりません。
農林水産省のマニュアルは、シベリアイタチが人の生活圏、特に住宅街を好む傾向があり、水辺などの自然環境を好むニホンイタチと異なるとしています。ただ、足跡の大きさや形でこの2種を分ける記載は、確認できませんでした。種類が分からなくても、野生動物として扱いが共通する点はイタチの駆除は違法?鳥獣保護管理法で個人ができることで確認できます。
足跡がいつ付いたかも、写真だけでは分かりません。ほこりの上の足跡が古いものなのか、今も使われている通り道なのかを知るには、同じ場所を日を変えて撮り、新しい跡が増えているかを比べます。
足跡を見つけた後の相談先|自治体と調査の頼み方
環境省によると、鳥獣保護管理法では、鳥獣は狩猟による場合を除き、原則として捕獲、殺傷、採取が禁止されています。被害が生じている場合などには、都道府県知事らの許可を受けて捕獲できます。イタチも野生動物で、大阪市西淀川区は、許可なく捕獲することが禁止されているため、まずは捕獲ではなく追い出しと侵入経路を塞ぐ方法を案内しています。足跡を見つけても、わなを置く前に、手続きを窓口で確認してください。
窓口は自治体で違います。大阪市では区役所の保健福祉課や動物愛護相談室が案内に出てきますが、他の地域では、市区町村の環境担当や農林担当のこともあります。足跡の写真と次の情報を渡すと、相談が進みやすくなります。屋根裏の調査の頼み方は、屋根裏にイタチがいる?音・姿・痕跡を照合する調査の頼み方で確認できます。
- 足跡の写真(建物のどこか分かる広い写真、連なり、1つのアップ、物差し入り)
- 見つけた日時、場所、天気
- フン、におい、音の記録(日付と場所つき)
- 建物の種類(持ち家か賃貸か)と、点検口や屋根・軒の状態



