害獣のフンを見つけたら、触らずに観察して撮影する

害獣のフンは、見つけた直後に片付けたくなりますが、先に撮影と観察を済ませると、あとで動物を絞る材料が残ります。厚生労働省の動物由来感染症ハンドブックは、糞尿が乾燥して中の病原体が空気中を漂うことがあるため、直接触れたり病原体を吸い込んだりしないよう注意し、糞を見つけたら速やかに処理するよう案内しています。撮影は短時間で済ませ、触らずに行います。

同じハンドブックは、野生動物がどのような病原体を持っているかは分からないため、安易に触らないこと、動物に触ったら必ず流水で手を洗うことも求めています。観察のために顔を近づける、棒でつつく、手で割って中身を確かめるといったことは避けます。ベランダのフンを管理者へ伝える方法はベランダのフンの位置を記録して管理者へ送る記事にまとめています。

撮影の前に用意するもの

道具は、フンに触れずに大きさと場所を残すためのものです。近づく必要があるときだけ、使い捨て手袋とマスクを着けます。

  • 定規や名刺など、長さの分かるもの(フンの横に置いて撮ります)
  • スマートフォンのライト(暗い場所は斜めから照らすと粒の形が見えます)
  • 使い捨て手袋とマスク(近づく必要があるときだけ)
  • 日付、時刻、場所を書き留めるメモ

撮り方の手順

1か所につき、全体・真上・横の3方向を基本にします。数日後に同じ場所をもう一度撮ると、新しいフンが増えたかどうかが分かります。

  • 全体:フンと周りの壁、配管、出入り口の候補が入る位置から1枚
  • 真上:定規を横に置き、粒の長さと山の広がりが分かる向きで1枚
  • 横:粒が重なっているか、山の高さがどれくらいかが分かる角度で1枚
  • 記録:日付、時刻、部屋名やベランダの位置。数日後の同じ場所の写真も残す

参考:厚生労働省|動物由来感染症ハンドブック2026(PDF)

読者の疑問

害獣のフンの画像だけで、動物の種類は分かりますか?

比較ガイド

画像だけでは決められません。大きさ、形、落ちている場所、まとまり方に、足跡・音・シミを合わせて候補を絞ります。ヤモリやゴキブリのフンの大きさや形は確認できた資料になく、調査での確認が確実です。

フンの見分けは、大きさ・形・落ちる場所・まとまり方の4点で絞る

農水省の中型獣類マニュアルのフローチャートは、糞の形(太め・細め、両端が同じ形か、ソーセージ状か、片側の先端が細くなるか)、落ちている場所(一定の場所にためるか、場所を選ばないか、天井裏か)、内容物(獣毛や種が含まれるか)の順に絞り込む構成です。次の表は、その考え方を、家の中や周りで使いやすいように並べ替えたものです。

同じ資料には、糞は時期や食べ物によって色や形が変わるため、このフローはすべての条件にあてはまるものではないという注意もあります。図による比較は農水省のマニュアル(中型獣類編の「獣種の見分け方」)で確認できますので、表で候補を絞ったあとに、出典の図と見比べてください。全体の一覧は害獣の一覧と痕跡の早見表の記事にあります。

フンの見分けは、大きさ・形・落ちる場所・まとまり方の4点で絞る:確認項目
見る点確認すること絞れること気をつけること
大きさ(長さ・太さ)定規を添えて、粒の長さと太さを測るネズミ類は種類で大きさが違い、コウモリも数値が示されている個体や食べ物で変わるため、1粒でなく複数の粒で見る
形太めか細めか。両端が同じ形か、ソーセージ状か、片側の先端が細いか農水省のフローチャートが使う区分で、候補を絞る時期や食べ物で色や形が変わる
落ちている場所一定の場所にたまるか、場所を選ばずに落ちているか。天井裏か、屋外かため糞をする動物かどうかが見えるため糞でなくても、通り道の近くに落ちることがある
内容物獣毛や植物の種が見えるかフローチャートで、獣毛や種の有無が区分に使われる割って確かめるのは触ることになる。写真で見える範囲にとどめる
新しさ色や湿り気、数日後に増えたか新しいフンは、今も出入りしている可能性を示す(東京都の指針)古いフンは、過去の痕跡や迷い込みの可能性もある

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

動物別のフン比較表:ネズミ・コウモリ・ハクビシン・タヌキ・イタチ・ハト

表の数値は、出典に書かれた記載をそのまま写したもので、当サイトが測ったものではありません。実寸が出典で確認できなかった動物は、その旨を書き、落ちている場所やまとまり方で比べています。ネズミは、東京都のねずみ防除指針が、フンの大きさでも種類を推測できるとしており、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミで数値が異なります。

コウモリは、東京都ペストコントロール協会が、フンの大きさは5〜10mmで、昆虫しか食べないためネズミのフンよりもろいと説明しています。ネズミのフンの形は種類や餌で変わり、雑食のため植物や昆虫が検出されるとも書かれています。テンとアナグマは農水省のフローチャートの対象に含まれますが、本文での説明がなく図の分岐を文字で正確に写せないため、表には載せていません。出典の図で確かめてください。

動物別のフン比較表:ネズミ・コウモリ・ハクビシン・タヌキ・イタチ・ハト:確認項目
動物大きさ・形(出典の記載)落ちている場所・まとまり方一緒に見られやすい手がかり
ドブネズミ1〜1.5cm植込みや下水溝、建物の低い階に生息する。ネズミは餌場近くの決まった場所にたくさんフンをするとされる(日本ペストコントロール協会)かじり跡、黒光りするこすり跡、夜の物音
クマネズミ1cm前後高い所、壁の中、天井裏に生息する。雨戸の戸袋の中にフンがあることもある電線や配管を伝う動き、黒い汚れ
ハツカネズミ0.5cm畑や倉庫、都市近郊の建物など。わずかな隙間から入る小さな侵入口、かじり跡
コウモリ5〜10mm。昆虫を食べるため、ネズミのフンより崩れやすい夏は軒先や屋根の下に落ちる。天井裏では糞尿がたまる。糞が落ちている場所の近くが出入り口の目安日没後の出入り、におい、汚れ
ハクビシン実寸は出典で確認できずねぐらの中で排泄し、同じ場所に糞尿がたまる(ため糞)。天井板が変色してシミになり、放置すると腐ることもある5本指で丸い足跡、足音や子の鳴き声
アライグマ実寸は出典で確認できず屋根裏や壁の隙間をねぐらにして、糞尿で汚れる。壁に沿って現れるシミの例が示されている柱や壁の爪痕
タヌキ実寸は出典で確認できず生活エリアの境界に「ため糞」をつくる。掃除してもすぐに作られる指4本の足跡、床下を休息場所にする
シベリアイタチ(旧称チョウセンイタチ)実寸は出典で確認できず天井裏に溜めフンの被害がある。糞尿の悪臭が問題になる3cm程度の穴や隙間からの侵入。給湯器などの配管の引き込み部も侵入口になる
ハト実寸は出典で確認できずベランダや換気扇の排気口などに巣を作ることがある(厚生労働省)。フンが乾燥すると空気中に舞い上がることがある(京都市)巣の有無、卵・ヒナの有無

参考:東京都保健医療局|東京都ねずみ防除指針「窓口対応の実践例」ねずみ被害チェック表(PDF)

ためフンをする動物と、通り道に落とす動物の違い

フンのまとまり方は、動物を絞るうえで最も差が出やすい手がかりの1つです。ただし、ため糞をする動物と、そうでない動物がはっきり二分できるわけではありません。出典に書かれている範囲で整理します。

ため糞をするとされる動物:タヌキ・ハクビシンなど

農水省のマニュアルは、タヌキのため糞は生活エリアの境界を示すもので、掃除してもすぐに作られるやっかいな被害だと説明しています。ハクビシンはねぐらの中で排泄するため、糞尿が堆積して天井板が落ちる被害にまで発展した事例があるとされます。酒田市も、ハクビシンは同じ場所に糞尿をする習性があり、天井板が変色してシミになると案内しています。

農水省のコラムには、シベリアイタチの天井裏での溜めフン被害の写真もあります。同じ場所にたまるフンを見つけたときに、種名と今も使われているかを分けて確かめる手順は、ハクビシンのためフンを確認する記事で扱っています。

通り道や餌場の近くに落とすことが多い動物:ネズミ・コウモリ

ネズミは、日本ペストコントロール協会が、餌場の近くの決まった場所にたくさんフンをすると説明しています。東京都のチェック表は、新しいフンなら今もいる可能性、古いフンなら迷い込みの可能性を示し、大小のフンが同じ場所にあれば繁殖している可能性があるとしています。コウモリは、出入り口の下や軒先に落ちるフンが、侵入口を探す手がかりになります。

ため糞は動物がまだ出入りしている間は繰り返し作られやすいため、片付けと、出入り口を確認する作業は分けて考えます。

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

見分けが難しい組み合わせ:コウモリとネズミ、イタチとテン、ヤモリなど

フンの見た目が近く、写真だけでは決めにくい組み合わせがあります。次の表は、出典から比べられる点と、決め手にならない点を分けて示したものです。「確認できなかった」と書いた組み合わせは、特徴が分からないという意味ではなく、今回開いた公的資料で裏づけられなかったという意味です。

見分けが難しい組み合わせ:コウモリとネズミ、イタチとテン、ヤモリなど:確認項目
組み合わせ出典から比べられる点決め手にならない点次の確認
コウモリとネズミコウモリは5〜10mmで崩れやすく、ネズミ類は0.5〜1.5cm。コウモリは軒先や出入り口の下に落ちる大きさが重なる。ネズミのフンの形は種類や餌で変わる落ちている場所、かじり跡の有無、出入りの時間帯
イタチとテン侵入できる隙間の目安が、イタチ類は3〜4cm前後、テンは5cm角の網を通った例フンの違いは、今回の公的資料では確認できなかった出入り口の寸法と汚れ、足跡、音の出方
ハクビシンとタヌキどちらも同じ場所にためる。ハクビシンはねぐらの中、タヌキは生活エリアの境界に作るため糞の有無だけでは分けられない屋内の天井裏か、屋外の境界か。足跡の指の数(5本・4本)
コウモリとヤモリヤモリのフンの特徴は、確認できた公的資料に記載がない大きさや色で断定できない定規つきの写真を調査担当者に見てもらう
ネズミと虫虫のフンの特徴は、確認できた公的資料に記載がない粒の大きさや色だけで区別できないかじり跡、黒い汚れ、夜の音など、ネズミの他の手がかりの有無

参考:東京都ペストコントロール協会|コウモリとネズミの糞の違い

フン以外の手がかりと組み合わせる:シミ・におい・足跡・音

フンの見分けに自信が持てないときは、シミ、におい、足跡、音を組み合わせます。農水省は、家屋の被害で、壁に沿って現れる糞尿のシミをアライグマ、ポツンと現れるシミをハクビシンの例として示しています。ハクビシンは同じ場所に糞尿をためるため、天井板が変色してシミになると酒田市が案内しています。

  • 足跡:ハクビシンは丸い5本指、タヌキは指4本とされます。粉や泥に残った跡は、種類を決めずに写真に残します。
  • シミとにおい:シベリアイタチは糞尿の悪臭が問題とされ、ハクビシンやコウモリは天井裏に糞尿がたまるとされます。
  • ネズミのサイン:体の脂分と汚れでできる黒光りしたこすり跡や足跡、かじり跡が、フンの近くにあるかを見ます。
  • 音:夜の足音や走る音の時刻と長さを、フンの場所と一緒に記録します。

参考:酒田市|ハクビシンにご注意ください

調査を頼むときに渡す写真と、片付け・消毒の次の一歩

調査を頼むときは、フンの写真は全体・真上・横の3枚を基本にして、場所と日付、気づいた音やにおいを添えます。現地調査を頼む前に伝えること・用意するものの整理と合わせると、担当者が現地で確認する順序を決めやすくなります。

撮影が済んだら、片付けと消毒に進みます。少量のフンを自分で片付ける手順と、任せる目安はフン処理と消毒の記事で整理しました。量が多い、天井裏の奥にある、体調に不安があるときは、自分で触らず調査や清掃の相談に進みます。

フンの片付けや動物との接触のあとに体調の変化があったときは、動物由来感染症ハンドブックが、はじめは風邪などに似た症状のことも多く発見が遅れがちだとして、早めに医療機関へ相談し、動物との接触状況を医師に伝えるよう案内しています。症状の判断は医療機関に任せてください。

  • 写真3枚(全体・真上・横)と、撮影した日付と時刻
  • 落ちている場所(部屋名、ベランダ、点検口からの位置)と、周りの出入り口の候補
  • 定規つきの写真と、数日後に増えたかどうかの記録
  • 同時に気づいた音・においの時間帯と、足跡やシミの写真

参考:厚生労働省|動物由来感染症ハンドブック2026(PDF)