賃貸でネズミの気配があるとき、管理会社へ連絡する理由
民法606条は、貸主が賃貸物の使用と収益に必要な修繕をする義務を負うと定めています。ただし、借主の責めに帰すべき事由で修繕が必要になった場合は例外です。615条は、賃借物が修繕を要するときは、借主が遅滞なくその旨を貸主へ通知しなければならないとしています(貸主がすでに知っている場合を除く)。害獣の被害が建物の修繕に関わるかどうかは調べてみないと分からないため、気配の段階で伝えておく方が、後の判断がぶれません。
国民生活センターも、賃貸住宅で害虫が出たときに、事業者へ依頼する前に管理会社や大家に相談するのも一法と助言しています。契約書や入居のしおりに管理会社や緊急連絡先が書かれていれば、そこへ連絡します。連絡の時点で費用の結論を求める必要はありません。費用負担の考え方は、賃貸の害獣駆除費用の負担を原因別に整理した記事で確認できます。
連絡の前後の流れは、賃貸で害獣被害が起きたとき業者を呼ぶ前に管理会社へ伝えることにもまとめています。天井にシミが出ている場合は、天井のシミを動物被害と漏水に分けて伝える観察方法で、広がりと天候の関係を記録しておくと、調査の依頼がしやすくなります。
| 気づいたこと | 連絡文に書く内容 | 添える記録 |
|---|---|---|
| 天井や壁の中で音がする | 聞こえる部屋・時間帯・回数、いつから続いているか | 時間を書いた簡単なメモ、部屋の位置図 |
| フンらしきもの・かじり跡 | 見つけた場所、大きさ、増えているか | 定規などを横に置いた写真(触らずに撮る) |
| 天井や壁のシミ・におい | 広がり、雨の日との関係、においの強さ | 日付入りの写真を複数日分 |
| 動物を見かけた | 日時、場所、大きさや動き方 | 見えた状況のメモ(種類は断定しない) |
参考:e-Gov法令検索|民法(賃貸借の規定:第606条・第607条の2・第608条・第611条・第615条)
原因が分からないと連絡しにくいです。
原因を調べてもらうための連絡なので、不明のままで構いません。見聞きしたこと、いつからか、生活への影響を簡潔に伝え、調査を希望すると書きます。
管理会社への連絡文に入れる4つの情報
建物名と部屋番号、最初に気づいた日、現在の症状、希望する対応を冒頭に書きます。天井音なら聞こえる部屋と時間、落下物なら位置と増えているか、シミなら天候との関係と広がりを添えます。原因を確認していなければ「ネズミがいる」ではなく「天井で走るような音。種類不明」と記してください。
生活への影響は大げさにせず具体的に書きます。「寝室で目が覚める」「食品棚を使うのを控えている」「シミの下の机を動かした」など、現在の利用状況が分かる表現が役立ちます。動物やフンらしきものを確認するために、点検口を開けたり収納を壊したりする必要はありません。
国土交通省の相談事例集は、修繕の必要がある場合、状況によって依頼内容を書面で通知することが有効だと説明しています。メールや管理会社のフォームなど、送信日時が残る方法が向いています。
断定せず、責めない書き方にする
動物の種類や原因は、調査で確認されるまで推測にとどめます。「ネズミが入り込んだのは建物の不備のせいだ」「入居者の使い方のせいではない」といった結論は連絡文に書かず、事実と希望だけを伝えます。記録を残すことは相手への非難ではなく、認識の違いを防ぐための作業です。
- 見た・聞いたことと、推測したことを分けて書く
- 費用や責任の結論は、連絡文では求めない
- 確認していない症状は書かない
写真と記録の残し方
写真は、場所が分かる全体の写真と、近づいた写真を1組にして、日付と場所をメモします。壁際の黒い汚れは、壁際の黒い汚れ(ラットサイン)を記録する方法を参考に残します。フンやかじり跡に素手で触れないようにして、触れずに撮影します。天井裏や床下へ入って撮影する必要はありません。
- 全体の写真と近い写真を1組にして残す
- 日付、場所、時間帯を写真のメモへ書き添える
- 音は聞こえた日時と回数を簡単に記録する
| 連絡文の要素 | 書き方の例 |
|---|---|
| 件名 | ○号室 天井の物音に関する調査相談 |
| 観察 | ○月○日から寝室で夜間に音。種類は不明 |
| 添付 | 室内の位置図、音の記録、写真2枚 |
| 依頼 | 調査手配、訪問候補、当面の対応をご案内ください |
| 費用 | 調査のみの費用と負担の確認方法もお願いします |
そのまま使える報告文の例(メール・電話)
次の文例は、実際に確認した事実だけを残して使います。日付や内容は自分の状況へ置き換え、確認していない症状は削除してください。
初回メールの例
「○○マンション○号室の○○です。○月○日の夜から、寝室の廊下側の天井で短い物音が数回あります。動物は目撃しておらず種類は不明です。翌朝、玄関付近に粒状のものを見つけたため、場所の写真を添付します。触ったり穴を塞いだりはしていません。原因調査の手配と、訪問までの対応をご案内ください。」
「在宅可能なのは○月○日の午前と○日の午後です。調査費が発生する場合の金額、負担者を確認する手順、室内や共用部を補修する際の承認方法も教えてください。写真の追加や別の送付方法が必要であればご連絡ください。」
電話で伝えるときの順番
電話で伝える場合も、この文章を手元に置き、建物名と部屋番号、気づいた日、現在の症状、希望する対応の順に話します。担当者名と受付日時をメモし、通話後に「本日の確認事項」として要点をメールで同じ窓口へ送ると、認識の違いを確かめやすくなります。
- 担当者名、受付日時、折り返しの目安を聞く
- 調査の手配と訪問候補日を確認する
- 費用に関する説明の有無をメモする
追加報告の例
「○月○日の続報です。同じ場所で夜間の音が続き、台所の収納内の食品袋に新しい傷を見つけました。写真を追加します。調査の日程が決まりましたらお知らせください。」のように、前回の連絡との関係が分かる件名と書き出しにします。シミの拡大や室内への動物の出現など新しい変化は、すぐに追加で伝えます。
自分で修繕・業者手配をする前に、貸主の承諾を確認する
国土交通省の相談事例集は、借主が自分で修繕するには原則として貸主の承諾が必要で、貸主が相当の期間内に必要な修繕をしない場合や、急迫の事情がある場合には、借主が自ら修繕できると民法607条の2が定めていると説明しています。一方で、必要のない修繕や過度の修繕をすると、費用負担の問題が生じたり、貸主から損害賠償請求を受けたりする可能性があるため、破損の状況、修繕の必要性、緊急性を貸主に通知して相談することが重要としています。
害獣の調査は修繕そのものではない場合もありますが、穴の封鎖、天井材や壁の補修、設備の交換は建物に手を加える作業です。自分で業者へ相談する場合も、出張や調査を申し込むことと、工事を発注することを区別します。管理会社の了承を得た内容が調査だけなら、現地で封鎖や内装の工事まで即決しないようにします。緊急の処置が必要と言われた場合は、その理由と金額を管理会社へ伝え、誰が発注して費用をどう扱うかを記録します。
| 依頼したいこと | 連絡先 | 確認すること |
|---|---|---|
| 原因の調査 | 管理会社(または貸主) | 調査を誰が手配するか、調査のみの費用の負担 |
| 応急対応(食品の保管、立入制限など) | 管理会社、必要に応じて調査業者 | 自分でできること、避けること |
| 穴の封鎖・内装の補修 | 貸主(管理会社経由) | 承認の方法、発注者、費用の扱い |
| 自分で業者へ相談する | 先に管理会社へ了承を得る | 見積もりの内訳、複数社の比較、契約書面 |
費用の話は、原因調査と契約を踏まえて進める
害獣らしい症状が出たというだけで、入居者または貸主の全額負担とは決められません。契約書の設備や修繕の項目を確認し、管理会社からどの根拠で説明されているかを聞いてください。民法606条の貸主の修繕義務は、借主の責めに帰すべき事由で必要になった修繕には及ばないため、原因が何かが費用の分かれ目になります。
国民生活センターの2025年3月の注意喚起は、賃貸アパートで大家に連絡せず、広告の格安料金を見て業者を呼んだところ、作業後に高額な料金を請求されたゴキブリ駆除の事例を紹介しています。同センターは、緊急に駆除する必要が本当にあるかを冷静に考え、賃貸住宅ならば管理会社や大家に相談するのも一法であり、依頼する場合も複数社から見積もりを取って比較・検討する前提で話を聞くよう助言しています。
害獣でも、先に管理会社へ連絡し、調査の費用と負担者を確認してから業者を決める順番にすると、費用の行き違いを避けやすくなります。業者の見積書は、内訳つきで受け取り、管理会社にも見せられる形にしておきます。
- 契約書の修繕・特約の項目を確認する
- 調査のみの費用と、工事費用を分けて聞く
- 口頭で決まった内容は、メールで確認の文面を送る
返事待ちと追加報告の仕方を決める
受付後は担当者、次に連絡をもらう目安、夜間休日の連絡方法を確認します。返信がない場合は送った日時と件名を示して受領を確かめ、同じ内容を別々の窓口へ増やすより、担当が誰かを整理しましょう。記録が足りないままでも、新しい変化は速やかに追加します。
調査後は報告書や写真の共有、補修の要否、次回の予定を確認します。調査で部屋に入る場合の準備は、賃貸の訪問調査に立ち会うときの入室範囲の決め方で、候補日と入る部屋を先に決める方法を整理しています。利用できない場所が続く場合は、その範囲と期間も記録して管理会社へ伝えます。
- 受付日時と担当者名
- 次の連絡をもらう目安
- 夜間・休日の連絡先
管理会社が動かない・費用で折り合わないときの相談先
国土交通省の相談事例集は、賃貸住宅のトラブルで当事者間の交渉が難しい場合の相談先として、まず地方公共団体の消費生活センターや相談窓口を挙げています。消費生活センターでは、助言のほか、必要に応じて解決に向けたあっせんが行われるとされています。国民生活センターは、最寄りの消費生活センター等を案内する全国共通の消費者ホットライン188を案内しています。
それでも解決しない場合は、裁判外紛争解決手続(ADR)や、60万円以下の金銭の支払をめぐる少額訴訟などの手続も紹介されています。家賃や費用に関する判断は個別の事情で変わるため、法的な結論は窓口や専門家に確認してください。どの窓口でも、次の資料がそろっていると、状況を短く伝えられます。
- 賃貸借契約書(修繕・特約の条項)
- 連絡履歴(日時・相手・内容)
- 被害の写真と観察メモ
- 調査報告書・見積書・領収書






