ハクビシンは何を食べる?雑食で果実を好む

東京都は、ハクビシンは雑食で、果実や野菜などの植物質から、小型の哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、甲殻類、昆虫類まで幅広く食べ、特に果実を好むと説明しています。国立環境研究所の侵入生物データベースも、果実や種子を好み、昆虫類、魚類、残飯なども食べるとしています。

農林水産省のマニュアルは、農作物ではぶどう、かき、トマトのように甘くて汁気の多いものを好むと書いています。同じマニュアルは、東京都では23区のほぼ全域に分布し、ビルなどが立ち並ぶ環境でも、ギンナンのように実のなる景観樹や生ごみが餌になれば暮らせると説明しています。畑や果樹園がなくても、餌があれば住宅地で暮らせる動物だと考えておくと、点検する範囲を広げやすくなります。

植物質|果実・野菜・木の実

農水省の旧版マニュアル(平成20年版)は、被害に挙がる作物として、モモ、ぶどう、サクランボ、ナシ、ミカン、カキ、リンゴといった果実のほか、トウモロコシ、メロン、スイカ、イチゴ、トマトなどを挙げています。庭木では、東京都がイチジクの食害の写真を載せ、柿やビワの実が食べられることを被害の目安に挙げています。

  • 果実:ぶどう、かき、ナシ、みかん、イチジク、ビワ
  • 野菜:トウモロコシ、トマト、メロン、スイカ、イチゴ
  • 木の実:ギンナンなど、景観樹の実

動物質|小動物・鳥・卵・飼育動物

農水省は、昆虫類や小型げっ歯類、ヒヨドリなどの鳥類、ナメクジまで食べると説明し、飼育している鶏を食べられた被害も報告されているとしています。旧版マニュアルは、鳥類とその卵も食べるとしています。飼育小屋の鳥や、庭の池の魚は、被害の対象になりえます。

人の暮らしから出る物|生ごみ・ペットフード・お供え物

旧版マニュアルは、家庭から出た生ごみや廃果を堆肥代わりに庭先へ置かないこと、糖分を含む缶ジュースの空き缶は洗って処分すること、お墓の果物や菓子のお供え物は参拝後に持ち帰ることを挙げています。軒下の干し柿や干し芋も、ネットに入れて干すなど、食べられない工夫が必要としています。東京都も、ペットの食べ残しやお供え物の屋外放置を、餌になる例として示しています。

参考:東京都環境局|アライグマ・ハクビシンについて

読者の疑問

ハクビシンは何を食べますか?

比較ガイド

雑食で、果実や野菜、昆虫、小型の哺乳類や鳥、その卵まで食べます。特に果実を好み、ぶどう、かき、トマトなど甘く汁気の多い作物が被害に挙がります。生ごみやペットフードも餌になります。

食べ跡の見分け方|ハクビシン・アライグマ・タヌキ・アナグマ・カラスの比較表

食べ跡の見分けは、農研機構の「鳥獣害痕跡図鑑」と農水省のマニュアルが、作物ごとに写真つきで示しています。ここでは、確認した記載を言葉で整理しました。現場には例外があり、複数の動物が同じ畑に来ていることも多いため、1つの特徴だけで決めず、足跡、フン、出没した時間帯と合わせて見ます。

歯型については、農研機構の図鑑のイチジクのページに、果実表面の歯形がハクビシンの頭骨標本の歯と一致した例が載っています。ただし、歯型だけで動物を見分ける基準は、今回確認した公的資料には見当たりませんでした。歯型の有無より、皮を吐き出したか、実のどこが残ったか、茎や周りがどうなったかを先に記録するほうが、公的資料の見分け方に沿っています。

食べ跡の見分け方|ハクビシン・アライグマ・タヌキ・アナグマ・カラスの比較表:確認項目
動物食べ方の特徴残りやすい痕跡見分けの注意点
ハクビシン木や棚に登り、実を口でくわえて食べる。外皮が残る果実は皮だけ吐き出す吐き出した潰れた果皮、枝先に残る実の上部、スイカの大きな穴、トウモロコシの噛みとった痕トウモロコシの茎は斜めになっても倒れにくい。土を掘る行動はしない
アライグマ前肢を手のように使って食べるぶどうの袋の雑な破れと泥、スイカの直径5〜6cmの穴、全周をきれいに食べたトウモロコシと倒れた茎、爪痕や枝折れ前肢で触れた汚れが残るのが目印
タヌキ噛み癖があり、荒っぽく食べる。作物を運んで食べることがある食べ散らかし、地際の枝折れ、引っ張られたツル、散乱した作物。足跡は指4本登るのは得意でない。ためフンを農地に作ることもある
アナグマ土を掘って、ミミズなど地中の餌を探す。いちごなど甘い実も食べる直径5cmほどの小さな穴が点々と並ぶ痕、長い爪による爪痕「登れない」と決めつけず、ぶどう棚に登った報告にも注意する
カラスくちばしで摘み取る、突く、引き裂く果皮のV字の切り裂き、穂の先端から皮を引き裂いたトウモロコシ、もぎ取って持ち去られた果実ぶどうの皮が丸い形のまま残るのは、吐き出して潰れた皮との違い

参考:農研機構|鳥獣害痕跡図鑑 とうもろこし(PDF)

食べ跡だけで決めない|足跡・フン・時間帯で補う

農水省のマニュアルには、足跡とフンから動物を絞るフローチャートがあります。足跡は、指の数、指の形、足の裏のパッドの形や大きさで分けます。フンは、形、置かれる場所(ためフンか、天井裏かなど)、種や獣毛が含まれるかで分けます。ただし、フンは時期や食べ物で色や形が変わるため、すべての条件にあてはまるわけではないと注記されています。

東京都の資料の比較表では、被害状況として、ハクビシンは赤系統のぶどうとトウモロコシ、タヌキはイモ類・マメ類・トウモロコシ・カキ、アナグマはイモ類・マメ類・カボチャ・トウモロコシ、アライグマは果樹・トウモロコシ・スイカ・鶏が挙げられています。足跡の欄では、ハクビシンは指が5本で爪跡が不明瞭、タヌキは指が4本で爪痕が明瞭とされています。動物の見分け全般は、ハクビシンとアライグマの見分け方と相談の準備や、アライグマとタヌキの違いも参考になります。

  • 食べ残しの位置(枝先・地面・容器の中)を写真に残す
  • 皮、種、食べかすが落ちている場所を記録する
  • 足跡は、指の数と大きさがわかるよう、定規を添えて撮る
  • 荒らされたのが夜か明け方かを、メモに残す

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編 2-7 獣種の見分け方・足跡と糞のフローチャート(PDF)

サツマイモ・落花生など地中の作物は、別の動物も疑う

サツマイモや落花生の食害をハクビシンの仕業と考える場合は、掘り返しがあるかを先に確認します。農水省のマニュアルは、落花生を食べられたという報告について、ハクビシンは土を掘って餌を食べる行動をしないため、タヌキやアナグマの被害の濡れ衣である可能性が高いと説明しています。旧版マニュアルも、ハクビシンは頭が入れば狭い隙間を通れるが、自分で穴を掘ることはしないと書いています。

農研機構の図鑑と東京都の表が挙げる動物

農研機構の痕跡図鑑では、サツマイモの主な加害種はキジとアライグマで、アライグマは掘り起こして食べ、表面に爪痕が残ることが多いとされています。落花生の主な加害種はカラスで、収穫間近の実を地中から掘り出し、殻を割って食べる例が載っています。一方、東京都の見分けの表では、イモ類・マメ類はタヌキとアナグマの欄に挙がっています。

旧版マニュアルの被害一覧の読み方

旧版マニュアルの作物別の被害一覧には、サツマイモやジャガイモも含まれます。ただし同じ資料は、アライグマ・ハクビシン・タヌキの農作物被害は現地での加害種の判定がほとんどできておらず、実際はタヌキによる被害が多く含まれていると予想されるため、食べ跡や足跡で特定する必要があると述べています。種の確認を伴わない集計だと読み、掘り跡や爪痕の有無を確かめます。

サツマイモ・落花生など地中の作物は、別の動物も疑う:確認項目
見つかる状況疑う動物の例確認する痕跡
地面に直径5cmほどの小さな穴が点々とあるアナグマ穴の大きさと分布。ミミズなどの餌を探した痕
芋の表面に、爪で引っかいた痕が多数あるアライグマ掘り起こした跡と爪痕
地表に出た芋に、くちばしでついばんだ痕があるキジついばんだ痕と、周りの足跡
地中の落花生が掘り出され、殻が割られているカラス割られた殻と、豆の食べ残し
畑が荒らされ、作物が運ばれて散乱しているタヌキ食べ散らかし、指4本の足跡、ためフン
地上の果実やトウモロコシで、皮を吐き出した痕があるハクビシン潰れた果皮、枝先に残る実の上部、茎の向き

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編 2-2 ハクビシン(PDF)

庭や家の周りで餌になる物の点検表|果樹・生ごみ・ペットフード

東京都は、被害を防ぐには、捕獲して数を減らすだけでなく、餌になるものと繁殖場所をなくすことが重要だと説明しています。餌をなくす対策の例として、庭木の果実や放棄した作物を残さない、ペットの食べ残しやお墓の供え物を屋外に放置しない、農地や家の周りに生ごみを置かない、池を金網で覆う、などが挙がっています。船橋市や板橋区も、ペットフードの残り、生ごみ、敷地内の果実を早めに収穫するか網をかけることを案内しています。

次の表は、これらの公開資料を、家の周りの場所別の点検表に組み替えたものです。1回で全部を直す必要はなく、毎晩の食べ跡や音と照らして、疑わしい場所から順に見直します。

庭や家の周りで餌になる物の点検表|果樹・生ごみ・ペットフード:確認項目
場所餌になりうる物点検と見直しの例根拠にした資料
庭木・果樹熟した実、落果、収穫しない柿・ビワ・イチジク食べ頃の前に収穫する。落果を回収する。使わない木は縮伐や伐採を考える東京都、福島県、農水省
畑・菜園収穫後の残さ、傷んだ野菜や果実、捨てた廃果すぐ片づける。畑のすみや堆肥の表面に積まない農水省、愛知県
ごみ置き場・生ごみ夜間に出した生ごみ、屋外に放置した生ごみごみ出しを夜間に行わない。ごみを屋外に放置しない板橋区、東京都
ペット用品屋外のペットフード、食べ残し食事のあとは屋内に片づける東京都、船橋市、板橋区
お墓の供え物供えた果物や菓子参拝後に持ち帰る農水省(旧版)、東京都
軒下・ベランダ干し柿、干し芋、糖分の残る空き缶ネットに入れて干す。空き缶は洗って処分する農水省(旧版)
池・飼育小屋池の魚、飼育している鶏池は金網で覆う。鶏などを飼う小屋は、入れるすき間がないか点検する東京都(池の金網)、農水省(鶏の被害)

参考:東京都環境局|被害を防ぐために(アライグマ・ハクビシン)

餌を減らす管理の進め方|食べさせない・寄せない

農水省のマニュアルは、野生動物は食べ物がないと生きていけないため、廃棄した野菜や果実、放任された果樹、無防備な田畑が餌場になっていると指摘しています。食べ物になるものを放置しながら、被害だけを減らすことはできないとも書いています。個人の庭でも同じで、柵やネットは「食べさせない」対策の一部であり、餌になる物を増やさない管理と組み合わせます。

愛知県の資料は、ハクビシンの餌が豊富で栄養状態がよいと、子どもをたくさん産んで育てられるため、残渣を食べさせないことは非常に重要だと説明しています。熟す前の収穫、落果の回収、残さの処分、生ごみとペットフードの管理を、日々の習慣にすると続けやすくなります。畑や果樹の囲い方はハクビシンの畑対策、庭の果実の確認はハクビシンに庭の果実を食べられるときで手順を確認できます。

  • 収穫の回数を増やし、熟しすぎる前に取る
  • 落ちた実は、見つけたときに回収する
  • 生ごみは屋外に放置せず、ごみ出しを夜間に行わない
  • ペットフードは、食事のあとに片づける

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編 3-1 環境整備(生息環境管理)(PDF)

食害と屋根裏の音が同時にあるとき|餌場と寝場所をセットで考える

埼玉県の研究機関の資料は、ハクビシンには明確な縄張りがなく、餌場と寝場所を共有し、行動域に複数の寝場所を持ち、寝場所は餌場に近い所を選ぶと説明しています。被害が多発する地域では近くに寝場所があると考えてよく、寝場所を撤去したところ被害が著しく軽減したと報告しています。庭の食害と屋根裏の音が同じ時期にあるなら、食べ跡の確認と、建物の点検を別々でなく一緒に考えます。

農水省のマニュアルは、ハクビシンが6cm×12cmのすき間があれば侵入でき、夏は涼しい床下、気温が下がると暖かい天井裏を、日中の休憩場所に使うと説明しています。埼玉県の資料には、侵入されやすい家は1頭を追い出しても複数の個体に入られることが多い、という記載もあります。場所の見当はハクビシンは屋根裏にどこから入るか、追い出しと封鎖の順番はハクビシンを屋根裏から追い出す方法で確認できます。軒下やベランダにまとまったフンがある場合は、同じ場所にたまるフンはハクビシンかも見てください。

食害と屋根裏の音が同時にあるとき|餌場と寝場所をセットで考える:確認項目
見つかっている状況考えられること次の一歩
庭の果実や菜園の食害だけがある餌場として使われている。寝場所は近くの別の建物のこともある餌を減らし、食べ跡と足跡を記録する
食害に加えて、夜の足音や天井のシミがある自宅の屋根裏や床下が寝場所になっている可能性音の時刻と場所を記録し、侵入口の候補を地上から見る
食害に加えて、軒下やベランダにまとまったフンがあるためフンの場所が近くにある可能性触らず、位置と範囲を写真で残す
隣家や空き家の周りでも被害が出ている地域で共有された寝場所がある可能性市区町村の窓口に、状況を伝える

参考:埼玉県農林総合研究センター|新技術情報「ハクビシンの生態解明と被害対策技術の開発」(PDF)

食害の記録を相談につなぐ|伝える項目

餌を減らしても食害が続くときや、屋根裏の音も重なるときは、記録を持って窓口や事業者に相談します。食べ跡の写真(全体と接写)、足跡、フンの位置、荒らされた日時、これまでに行った対策を一枚にまとめると、現地調査で見てほしい場所を伝えやすくなります。

調査を頼むときの準備は害獣の現地調査を頼む前に伝えること、無料の範囲の確認は「現地調査・見積もり無料」はどこまでかで整理しています。調査のあとの見積もりで、屋根裏の清掃や封鎖の費用がどう分かれるかは、ハクビシン駆除の費用・相場にまとめています。

  • 食べ跡の写真(全体の位置と、接写の2枚)
  • 足跡やフンの位置と、写した日
  • 荒らされた日時と、被害が増えた時期
  • これまでに行った対策と、その後の変化