タヌキの畑・庭の被害は、食べ跡・足跡・ためフンで見分ける

タヌキは尾まで含めて50〜70cm、体重は平均4kgほどのイヌ科の動物で、目の周りの黒いアイマスクと、背中から前脚にかけての黒い帯が目印です。農林水産省のマニュアルは、活動は主に夜間で昼間も動くこと、夫婦単位で暮らして決まった生活エリアを持つことを紹介しています。加害獣としての認識が低く、アライグマやハクビシン、カラスの被害に紛れて見逃されやすい点も指摘されています。

タヌキの仕業かを見分ける手がかりは、現場の痕跡です。マニュアルは、被害現場が散らかっていること、被害作物をどこかへ運んで食べること、噛み癖があって地際の枝が折れたりつるが引っ張られたりすることを特徴に挙げています。足跡はイヌ科なので指は4本で、爪が目立ちます。マルチや防草シートの上は、足跡が確認しやすい場所です。

庭や畑の一角に同じ場所へ繰り返し落ちているフンは、ためフンの可能性があります。マニュアルによると、ためフンは生活エリアの境界を示すもので、掃除してもすぐに作り直される厄介な被害です。農地では竹林や防草シートの上にもできるとされます。タヌキが庭に来るときのためフンと床下の確認も合わせて読むと、庭での見分けが進めやすくなります。

タヌキの畑・庭の被害は、食べ跡・足跡・ためフンで見分ける:確認項目
見る場所タヌキで見られる跡見分けのヒント
足跡指は4本で爪が目立つ(イヌ科)アライグマ・ハクビシンは5本指。指の数でまず絞る
食べ方食べ散らかす。作物を別の場所へ運んで食べる運ばれた作物が散らばっていれば、タヌキと判断する有力な手がかりとされる
トウモロコシ倒れた株の、地面についた側は食べないアライグマは根本から倒してきれいに食べ、ハクビシンは斜めに倒してきれいに食べる様子が示されている
スイカバラバラにして食べるアライグマは上部に穴を開けて中をくり抜く
枝・つる噛み癖で、地際の枝が折れる、つるが引っ張られる折れ方だけでは決めず、足跡と合わせて見る

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

読者の疑問

タヌキは畑のどんな作物を荒らしますか?

比較ガイド

農林水産省のマニュアルは、トウモロコシやスイカなどの食害写真を示し、食べ散らかして作物を運ぶ、噛み癖で枝やつるが折れる、といった痕跡を挙げています。作物で決めつけず、現場の食べ跡と足跡で確かめます。

柵の基本は、高さ1m以上・目合い5cm以下・裾の固定

タヌキは登ることが得意ではなく、柵に出会うと「掘る」「破く」を優先します。マニュアルは、こうした動物に向く物理柵で最も大切なのは、裾を掘られないように固定することだと述べています。固定の方法は、裾を長めに取って埋めるのが有効で、埋められない場合は鉄筋や直管パイプを裾に巻き込み、一点だけが持ち上がらないようにします。

資材は、通り抜けられない目合い(5cm以下)で、破られにくいものを選びます。高さは1m以上が必要とされ、その分、作業用の出入り口も要ります。同じ畑や庭にアライグマやハクビシンも来る場合、これらは登ることを優先するため、物理柵だけでは効果が期待できないと整理されています。足跡の指の数で相手を確かめてから、柵を選びます。

ネット柵と金網柵の違い

ネット柵は安価で簡易ですが、強度に不安があり、長期の使用には向かないとされています。金属柵は強度に問題がない一方、中型動物が通れない目合いにすると費用がかかります。ネットは噛みつきや農作業でほつれや穴ができやすく、すぐに補修しないと穴を広げられて侵入されるため、定期的な点検が欠かせません。

下端を固定するときの点検項目

下端の固定は、見た目では分かりにくい作業です。次の点を、設置したときと、雨や草刈りのあとに確認します。

  • 地面のでこぼこをならし、裾と地面の間にすき間を残さない
  • 裾は外側へ長めに出して埋めるか、パイプなどを巻き込んで重しにする
  • 出入り口の下と、柵の継ぎ目・角のすき間を見る
  • 噛まれた跡やほつれは、見つけた時点で補修する
柵の基本は、高さ1m以上・目合い5cm以下・裾の固定:確認項目
方式向いている動物の行動タヌキ向けの要点弱点・注意
物理柵(ネット・金網)掘る・破く(タヌキ、キツネ、アナグマ)高さ1m以上、目合い5cm以下、裾を埋めるか重しで固定登る動物(アライグマ、ハクビシン、テン)には効果が期待できない
電気柵(段張り)電気の痛みで近づかせない心理柵中型獣では線の間隔を10cm以下にする(種によっては5cm)草が触れると漏電する。地面のへこみがあると下をくぐられる
複合柵(楽落くん方式など)物理柵で面を作り、上部の電気線で探る行動を利用高さ約40cmのネットの上部に電気さく線を付け、地表のすき間は資材で埋める整地が前提。樹脂ネットはすき間ができやすい

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編 3-2 侵入防止対策(PDF)

電気柵を使う場合の注意|間隔・漏電・人への安全

電気柵は、電気ショックで痛みを覚えさせて侵入を防ぐ「心理柵」です。一般的な段張り方式は、地面をアースにして、地上近くに電気さく線を数段張ります。中型動物は狭いすき間も通れるため、線の間隔を10cm以下(種によっては5cm)にしないと物理的な障害になりません。低い位置に線を張るので、草が触れて漏電しやすく、設置できる場所が限られます。

地面は平らとは限りません。へこみがあると地表面と1段目の線の間が広がり、そこから入られます。支柱を増やして間隔が広がらないようにし、事前に地ならしをしておくと対応しやすくなります。草が伸びる庭や畑では、物理柵の上部に電気さく線を付ける複合柵のほうが、漏電のリスクを抑えられるとされています。

安全面は、農林水産省が同省のページで注意喚起しています。電気さくによる死傷事案を受け、危険である旨の表示、電気用品安全法の適用を受けた電気さく用電源装置などの使用、使用電圧30ボルト以上の電源で人が容易に立ち入る場所に施設するときの漏電遮断器(電流動作型、定格感度電流15ミリアンペア以下、動作時間0.1秒以下)、専用の開閉器の設置などが示されています。

住宅の庭は、子どもやペット、通行人が触れる可能性がある場所です。電気柵を検討するときは、まず物理柵で足りないかを考え、通電する場合は販売店や自治体の窓口で設置条件を確認してください。

参考:農林水産省|鳥獣による農作物等の被害の防止に係る電気さく施設における安全確保について

忌避剤・音・光は補助|慣れと製品表示を前提に使う

農林水産省のマニュアル(総合対策編)のコラムは、光や音や匂いを使った対策は慣れが生じるため、効果がないか、あっても一時的だと述べています。一時的に効果が見えるのは新しいものへの警戒心によるもので、防護柵などと合わせなければ、いずれ光や音のする場所でも餌を食べられると学習してしまうという説明です。コラムはイノシシやシカを例にしており、タヌキに限った検証結果は、今回確認した公的資料に見当たりませんでした。

ホームセンターやインターネットで売られる忌避資材について、同じコラムは、公的機関で効果を検証したものではないと注意しています。農薬として登録された忌避剤は、使える鳥獣の種類や対象、使い方が限られます。置くだけで野生鳥獣が来なくなる資材は見つかっていない、という整理です。同じマニュアルは、鳥類の追い払い道具について、使う期間を防除したい期間に限り、種類や位置を変える工夫を挙げています。タヌキに当てはまると確認した資料はありませんが、慣れを遅らせる考え方として参考になります。

それでも使う場合は、製品の表示を読むことが出発点です。希釈や混ぜ方、使用量は製品の表示に従い、自己流で変えないことが前提です。

製品表示の読み方(一例)

一例として、カインズの商品ページに載る粒状の害獣よけ(2026年10月3日確認)は、対象害獣にハクビシンやイタチ、アナグマなどを挙げていますが、タヌキの記載は見当たりません。使用上の注意では、完全な効果を保証するものではないとして柵やネットなどとの併用を案内し、持続は約60日で気象条件により変わるとしています。購入前に、次の点を表示で確かめます。

  • 対象動物の欄に、タヌキが書かれているか
  • 効果の持続期間と、気象条件で変わるという注記
  • 柵・ネットなどとの併用を求める記載の有無
  • 使用場所(食用の作物、人やペットが触れる場所)に関する注意
忌避剤・音・光は補助|慣れと製品表示を前提に使う:確認項目
手段公的資料などで確認できること使いどころ限界
匂い系(忌避剤、木酢液など)市販の忌避資材は、公的機関で効果を検証したものではないと注意されている柵やネットを整える間の補助。対象動物と使用場所を表示で確認する置くだけで来なくなる資材は見つかっていない。気象で効果が変わる
音・光(ラジオ、ライト、点滅装置など)慣れが生じ、効果がないか一時的とされる収穫直前など短い期間だけ。位置や組み合わせを変える慣れると餌のある場所として学習される。単独では防げない
環境整備(餌と隠れ場所を減らす)食べ物と休息場所が揃うと定着し増える、と整理されている最初に行い、柵と並行して続ける効果が出るまで時間がかかり、地域全体の取り組みが要る

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】令和5年3月版 第3章 鳥獣被害対策の3つの柱(PDF)

トウモロコシなど作物別の守り方

トウモロコシは、タヌキが食べ散らかし、運んで食べる例が写真で示されている作物です。マニュアルの食害写真では、タヌキは倒れた株の地面についた側を食べないと説明され、運ばれたトウモロコシが畑のあちこちに散らばることもあります。作物を食べさせないように柵などで囲うのが基本で、家庭菜園なら畝や区画ごとにまとめて囲うと、出入り口の数を減らせます。

地面とのすき間をつぶす資材として、マニュアルには、融着ネットをトウモロコシに設置した例が載っています。スカート状の部分が地面のでこぼこに対応し、土寄せやアンカーで固定できます。高さ約40cmのネットの上部に電気さく線を付ける「楽落くん方式」は、収穫の時期だけピンポイントで使うこともできるとされています。

初夏のトウモロコシは、アライグマも狙う作物です。環境省の手引きは、アライグマが特に甘味のある作物を好み、トウモロコシやスイカ、メロン、ブドウなどで大きな被害が出ているとしています。相手がタヌキかアライグマかで必要な柵が変わるため、アライグマとタヌキの違いで足跡や尾を確認し、畑の害獣対策の手順も参考にしてください。

トウモロコシなど作物別の守り方:確認項目
作物・場所狙われ方の特徴守り方の例注意
トウモロコシ運んで食べる。倒れた株の地面側は食べない柵で囲う。融着ネットや、低いネット+上部の電気線(楽落くん方式)の例があるアライグマは根本から倒してきれいに食べる様子が示され、必要な柵の要件が違う
スイカバラバラにして食べる実のある区画を柵で囲う。囲えない場合は食べ残しを畑に放置しない廃棄したスイカは、潰さなければ長期間の餌になるとされる
果樹・落果放任果樹や廃棄した果実が餌場になる収穫しない果樹は伐採や早めの収穫、落果は片づける地域で共有しないと、周囲の餌場から集まる
家庭菜園・庭食べ散らかしやフンで気づくことが多い区画ごとに囲う。出入り口の下のすき間をなくす庭木の根元や物置の下が隠れ場所にならないか見る

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

庭の餌と隠れ場所を減らす|放任果樹・床下・物置

マニュアルは、野生動物が定着して増える原因の一つが、地域にあるさまざまな食べ物だと述べます。廃棄した野菜や果実、収穫しない果樹、無防備な田畑が餌場になり、残さの管理までが栽培技術だという考え方です。食べ物を放置したまま被害だけを減らすことはできない、とも書かれています。庭では、落ちた果実、コンポストや生ごみ、屋外に置いたペットの餌が当てはまります。外置きの餌とアライグマの考え方は、タヌキにも通じます。

休息場所について、タヌキは神社仏閣や空き家などの建物の床下や、キツネ・アナグマが掘った古い巣穴を使うと説明されています。家の床下に入られる場合は通風口からの侵入が最も多く、軒の破損部分や瓦のすき間も狙われます。侵入口を塞ぐときは、中に動物がいないことを確かめてから、金属や板などの丈夫な資材を使います。樹脂ネットや薄い合板は破られる可能性があるため使わない、と整理されています。

物置や縁の下は、見えにくい分、休息場所になりやすい場所です。庭の物置の害獣予防で、土台の周りや扉の点検の仕方を確認できます。子ダヌキを連れた親子が来ている場合は、見守りと被害対策を分けて考えるとよいので、タヌキの親子が庭に来るときも参考になります。

  • 収穫しない果樹の実と、落ちた果実を片づける
  • 廃棄する野菜や果物を、庭や畑に捨てない
  • 屋外に置いた餌や、ふたのない生ごみ容器をなくす
  • 床下の通風口と軒の傷みを目視で点検する
  • 物置の下や、使わない廃材の山などの隠れ場所を整理する

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

捕獲や薬は自己判断で始めない|許可と相談の線引き

タヌキは狩猟鳥獣に含まれますが、被害があるからといって、野生の鳥獣を自由に捕獲できるわけではありません。環境省は、鳥獣の捕獲や殺傷は狩猟として行う場合を除いて原則禁止で、生態系や農林水産業への被害などがある場合や学術研究上の必要がある場合などに、許可を受けて捕獲できると説明しています。許可の権限は都道府県知事にあり、多くの都道府県では一部を市町村長に移しています。

「タヌキ 駆除 薬」と調べる人もいますが、爆発物や劇薬、毒薬を使う猟法による捕獲は、鳥獣保護管理法の第36条で禁止されています。毒餌や殺鼠剤をタヌキ対策に使うことは、手順として勧められません。無許可で捕獲した場合の罰則は、条文上、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(自治体や省庁のページには旧表記の「懲役」が残ることがありますが、現在の条文では拘禁刑です)。

自分でできる範囲は、餌と隠れ場所を減らし、柵やネットで入れなくすることです。それでも被害が続くときや、床下に居座られたときは、無許可の捕獲に手を出さず、市区町村の鳥獣担当に相談します。害獣の罠に資格は必要?で、狩猟免許・捕獲許可・講習の違いを整理しています。

参考:環境省|捕獲許可制度の概要