追い出しと捕獲の違い|許可が要るのはどこからか

環境省は、鳥獣保護管理法では、鳥獣の捕獲・殺傷が、狩猟による場合を除いて原則禁止であり、被害がある場合などに、環境大臣または都道府県知事の許可を受けて認められると説明しています。ハクビシンは野生の哺乳類なので、天井裏に棲みついていても、捕まえる、殺すといった行為は、許可の枠組みの中で行うことが前提です。動物を中に残したまま塞いで閉じ込める形も避けます。

一方、水戸市は、家屋に侵入されたら追い払うなどして出入り口をふさぐよう案内し、市が捕獲を許可できるのは、原則として申請者がわな免許を持ち、被害があり、追い払い等でも防げない場合としています。相模原市や横浜市も、追い出しと侵入口の封鎖を自分でできる対策として案内しています。

許可の手続きや罰則はハクビシン駆除の法律に整理しています。ここでは、追い出しの作業がどこまで許可なしの範囲で、どこから別の話になるかを、次の表で確認します。

追い出しと捕獲の違い|許可が要るのはどこからか:確認項目
行為許可などの扱い補足(資料の記載)
追い払う、侵入口を直す許可を前提にしない対策として、自治体が案内水戸市・相模原市・横浜市。効果と安全は、方法や製品ごとに異なる
箱わなや手、網で捕まえる原則として許可が必要環境省:捕獲・殺傷は原則禁止。許可は都道府県知事などが行う
出入り口を塞いで、中に閉じ込める動物が残ると傷つくおそれ。自治体に確認する相模原市・農林水産省:不在を確認してから塞ぐ
毒を仕掛ける条文上、毒薬を使う猟法は禁止鳥獣保護管理法第36条。別記事で整理

参考:環境省|捕獲許可制度の概要

読者の疑問

ハクビシンの追い出しに許可は必要ですか?

比較ガイド

追い払いと侵入口の封鎖は、自治体が自分でできる対策として案内しています。一方、捕まえる・殺傷するのは原則として許可が必要です。閉じ込める形の塞ぎ方は避け、迷うときは自治体に確認してください。

追い出す前の確認|幼獣・頭数・侵入口の数

砺波市は、ハクビシンの子どもがいる場合には追い出しが難しくなると案内し、ふん尿の消毒など捕獲後の対策も考えて、専門業者への依頼を勧めています。世田谷区のQ&Aは、ハクビシンが一か所に棲みつくのは出産と子育てのためで、それ以外は場所を転々と変えると説明しています。毎晩のように同じ場所で音が続く場合は、子育て中の可能性を考えて、判断を急がないようにします。

農林水産省のマニュアルは、出産期を3月から11月と推定し、子は生後1か月くらいからねぐらを出て、母親について出歩くようになると説明しています。季節だけでは子どもがいるかどうかを決められないため、音や高い鳴き声の記録を残します。侵入口は、ハクビシンの侵入口と確認の順番の方法で地上から確認し、写真と略図にします。追い出す前に侵入口が分からないと、封鎖の段になって、どこを塞ぐか決められなくなります。

追い出す前の確認|幼獣・頭数・侵入口の数:確認項目
確認すること見分ける手がかり判断の目安
幼獣がいるか高い鳴き声(区の資料では主に幼獣)、毎晩同じ場所で動く音可能性があるなら、自分で追い出さず、自治体か調査を頼む担当へ確認する
頭数音の場所が複数あるか、足跡やフンの量複数の可能性があれば、侵入口も複数あるものとして確認する
侵入口の数地上から確認できた候補の数と、見えない箇所の有無見えない箇所が残るなら、塞ぐ前に調査を頼む
時期出産期は3月から11月と推定(農林水産省)。一年中繁殖が可能(東京都)季節だけで決めず、音と痕跡の記録で判断する

参考:砺波市|ハクビシンの対策

忌避剤・光・音の位置づけ|自治体の案内と限界

東京都の資料は、屋根裏へ侵入されたときに、くん蒸式・くん煙式の殺虫剤などの忌避剤を使うと、動物をその場から追い出せる可能性があると説明しています。ただし、逃げた個体が別の家で被害を起こすおそれがあり、数を減らす根本解決にはならないとしています。密閉空間でないと煙が行き渡らず、動物が屋根裏に居続けて効果が出ない場合も考えられると書いています。

忌避剤だけで解決するかどうかの見方は、害獣の忌避剤の効果を確かめる見方で整理しています。追い出しは、そのあとに不在を確かめ、侵入口を塞ぐ工程とセットで考えます。

くん煙・くん蒸式の殺虫剤を使う前に

横浜市は、天井裏から足音や鳴き声が聞こえるときに、点検口から煙の出るタイプの殺虫剤を使う方法を試すよう案内し、夜行性のため日暮れ後だと効果的としています。ただし、殺虫剤は虫を対象にした製品で、使える場所や使い方は製品の表示で決まります。屋根裏での使用が表示に含まれるか、火災報知器や換気への注意は何かを、使う前に説明書で確認してください。この記事では、使う量や手順は示しません。

においと光の位置づけ

相模原市は、ハクビシンが木酢液や強いミントの臭いを嫌うとも言われていると案内し、世田谷区のQ&Aは、電球などで明るくして嫌がる環境をつくる例を挙げています。町田市の資料は、効果があったという例は相当強い匂いを使ったものだったと紹介し、臭いが強いものは近隣まで臭いが及ぶことがあるため、声をかけてから使うとよいとしています。確実な効果が書かれているわけではないため、補助的な位置づけにとどめます。

忌避剤・光・音の位置づけ|自治体の案内と限界:確認項目
手段自治体の案内(2026年10月時点の掲載)注意
くん煙・くん蒸式の殺虫剤横浜市・相模原市・世田谷区・酒田市が、追い出しの方法として案内東京都:根本解決にならず、密閉されないと効かないこともある。製品の表示に従う
木酢液・強いミントなどのにおい相模原市:嫌うと言われている。世田谷区:木酢液などを撒く例町田市:強い臭いは近隣へ及ぶことがある。確実な効果は書かれていない
明るくする(電球など)世田谷区のQ&A:嫌がる環境をつくる例として挙げる効果の程度は資料に記載なし。配線や熱への配慮は、施工者に確認する
音を出す機器今回確認した自治体・省庁の資料では、案内を確認できず効果が確認できていない機器は、買う前に確かめる

参考:東京都環境局|被害を防ぐために(アライグマ・ハクビシン)

不在の確認と封鎖の順番

相模原市は、建物の周りを調べて侵入口を特定し、動物が建物の中にいないことを確認してから侵入口をふさぐ流れを案内しています。横浜市は、追い出しに成功しても侵入口を残すと再び入られる可能性があるため、足音等が聞こえなくなった後に、通風孔、屋根の重なり、戸袋の底、増築部の空間などを点検するよう案内しています。

不在かどうかは、音が止んだことだけで決めません。音・フン・足跡の変化が止まったことを、一定の期間、記録して確かめます。期間は建物や状況で異なるため、調査を頼む担当者と決めます。確認の方法として、農林水産省のマニュアルは、センサーカメラや足跡トラップを紹介しており、建物の所有者・管理者の承諾の範囲で使います。流れは次の表のとおりです。追い出し・封鎖・清掃の工程表も合わせて見てください。

不在の確認と封鎖の順番:確認項目
段階やること次へ進む条件・止まる条件
1 確認侵入口の候補、幼獣の可能性、頭数の手がかりを記録する幼獣の可能性や、見えない侵入口が残る場合は、追い出さず相談する
2 追い出し自治体が案内する範囲の方法を選ぶ。製品は表示に従う音やフンの変化を、毎日記録する
3 不在の確認音の停止、新しい糞や足跡がないことを、一定期間確かめる変化が続くなら塞がず、再確認か専門業者へ
4 封鎖金属板など丈夫な材料で、通風や換気を残して直す農林水産省:樹脂ネットや薄い合板は、破壊される可能性がある
5 清掃・点検ためフンの清掃、断熱材・天井板の確認、再発の見回り汚れが広い場合は、専門業者に範囲を確認する

参考:相模原市|よくある質問「屋根裏に棲みついたハクビシン等で困っています」

ためフンと断熱材の清掃|自分でしない方がよい範囲

農林水産省のマニュアルは、野生動物は人獣共通感染症の病原体を保有している可能性があるため、糞尿や血液、唾液などに直接触れないよう、手袋を着け、肌が露出しない服装にし、作業に使った衣類や機材は洗浄・消毒するとしています。マダニにも注意が必要で、発熱、倦怠感、消化器症状などの初期症状が出たら医療機関を受診するよう勧めています。

東京都の外来種対策マニュアルには、ハクビシンやアライグマが媒介する可能性のある感染症の一覧があります。体調に不安があるときは、診断を自己判断せず、医療機関や保健所に相談してください。ためフンの場所の確認は同じ場所にたまるフンの確認にまとめています。

板橋区は、区の事業の対象外として、侵入路を塞ぐ施工と、ふん尿の撤去・清掃・消毒を、自己負担で専門業者へ依頼するよう案内しています。断熱材や天井板まで汚れが及ぶ場合は、写真で範囲を決めてから見積もりを取ります。

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

戻ってくる原因と再発防止

東京都の資料は、被害を防ぐには、捕獲して数を減らすことに加えて、餌資源と繁殖場所をなくすことが重要だとしています。板橋区は、ハクビシンのねぐらが複数あり、転々と移動すると説明しています。追い出した個体が近くの別のねぐらを使い、また戻ってくる可能性があるため、侵入口の封鎖は家全体で見直します。

農林水産省のマニュアルは、空き家や管理の行き届かない建物が増え、動物の休息場所の選択肢が広がっていると指摘し、地域で点検して修繕箇所を共有するよう案内しています。自宅の対策と合わせて、物置や空き家、近隣の建物の状態も、気づいた範囲で管理者に伝えます。

  • 庭木の果実は早めに収穫するか、網をかける(東京都・板橋区・文京区)
  • 生ごみやペットフードの食べ残しを、屋外に放置しない(東京都・横浜市)
  • 屋根に届く枝を剪定し、物置や塀から屋根へ移れないか確認する
  • 空き家・物置・倉庫の破損箇所を点検し、管理者に伝える(東京都・農林水産省)

参考:東京都環境局|被害を防ぐために(アライグマ・ハクビシン)

自治体・業者へ頼む目安|役所へ渡すところと、見積もりの見方

東京都は、アライグマ・ハクビシンの被害にあったら、まず各区市町の環境部署や清掃部署などに問い合わせるよう案内し、区市町は防除実施計画に基づいて捕獲を実施しているとしています。世田谷区は、要件を満たす住宅に、委託業者が捕獲器を設置する事業を案内しています。一方、酒田市や水戸市のように、市では駆除や捕獲を行わない地域もあります。

自治体が捕獲を担う区でも、板橋区、江東区、文京区の案内では、侵入口の封鎖や清掃は事業に含まれず、利用者が手配する形です。住んでいる市町村の案内を先に確認し、役所の対応範囲と、専門業者に頼む範囲を分けておきます。

見積もりを取るときは、酒田市が、事前調査や許可手続きの代行、駆除・消毒の内容で料金が変わると案内しているように、何に対する金額かを分けて確認します。町田市も、複数の業者に見積もりをとることを勧めています。比べ方は相見積もりの比べ方にまとめています。

自治体・業者へ頼む目安|役所へ渡すところと、見積もりの見方:確認項目
状況まず相談する先の例渡すとよい情報
自治体が捕獲を行う地域で、音や痕跡が続く市区町村の環境・清掃などの担当課(東京都の案内)音の記録、侵入口の候補の写真、建物の所有者の情報
市では捕獲を行わない(水戸市・酒田市など)市の案内に従い、専門業者への現地調査、または捕獲許可の申請先追い出しを試した日と結果、被害の写真
追い出しから封鎖、清掃までまとめて頼みたい建物の構造に対応できる専門業者(複数に見積もりを依頼)侵入口の候補、断熱材の汚れ、天井のシミの写真
子どもがいる可能性がある、頭数が多そう自治体、または調査を担当する業者高い鳴き声の記録、同じ場所での足音の頻度

参考:世田谷区|ハクビシン・アライグマ対策