隣の空き家から害獣が来ているかを確かめる|痕跡と出入りの記録

板橋区のQ&Aは、隣家が空き家になってハクビシンやネズミが出入りしているという相談について、区は連絡を受けた後に現場調査を行うものの、ハクビシンやネズミを確認できない場合が多いと説明し、隣家が原因である旨の根拠となる写真などの用意を求めています。スズメバチの巣でも、区の現地調査は公道等からの外観目視になるため、巣が見えない位置にあると確認できないことがあるとして、写真の用意を勧めています。相談の前に、自分の側で記録を作っておくと、窓口が動きやすくなります。

記録は、自分の敷地と窓から見える範囲に限ります。空き家の敷地に入って撮影したり、夜間に出入りを待ち伏せたりする必要はありません。ネズミの痕跡の見方は壁際の黒い汚れとラットサインで確認できます。

隣の空き家から害獣が来ているかを確かめる|痕跡と出入りの記録:確認項目
記録する項目書き方の例注意
日時と時間帯「◯月◯日 午後10時ごろ、天井で足音。約20分続く」毎回同じ書式でメモする。写真の撮影日時も残す
場所「自宅2階北側の天井。隣の空き家の屋根側」間取り図や敷地図に印を付ける
痕跡の種類フン、かじり跡、足跡、においのメモと写真写真は自分の敷地内から撮る。フンは触らず、離れた位置から撮る
動物の出入り「隣家の軒下のすき間に入るのを、自宅の窓から見た」動物に近づかない。姿を確認できない時は『音のみ』と書く
隣家の状態草木の繁茂、割れた窓、ごみの放置など、道路や自宅から見える範囲の写真敷地には入らない。所有者への文面に推測は書かない

参考:板橋区|空き家や老朽建築物に関するQ&A(2023年10月24日更新)

読者の疑問

隣の空き家からハクビシンが出入りしているとき、市役所は駆除してくれますか?

比較ガイド

空き家側の建物を市町村が代わりに駆除する案内は、確認した自治体の資料にはありません。大田区、板橋区、町田市は被害のある自宅を対象にした捕獲・防除の事業を案内しています。大田区は箱わなの設置を相談者が所有・管理する場所に限って近隣の空家には設置できないとし、町田市も原則として申込者の敷地内に限っています。空き家への連絡や調査は、空き家担当に相談します。

所有者が分かる場合の連絡の仕方と文例

板橋区のQ&Aは、建物の維持管理は原則として所有者が責任をもって行うものであり、連絡先が分かっている場合は、所有者に連絡して対応してもらうよう案内しています。連絡の目的は責任を問うことではなく、状況を知らせて確認を依頼することです。この節の最後の表は、手紙やメッセージの構成と文例です。文面は事実と依頼にとどめ、動物の種類を断定しません。

連絡の際は、掲示板への書き込みや、他の近隣へ所有者の名前や事情を広めることは避けます。所有者が遠方に住んでいる場合や、相続の途中の場合もあるため、家族から連絡する方法が合うこともあります。遠方の家の害獣対策を頼むにはも参考になります。

所有者の連絡先が分からない場合

板橋区のQ&Aは、法務局で不動産登記を有料で誰でも取得できるとしたうえで、故人名義のままだったり、住所の変更登記がされていなかったりして、必ず所有者や居所が分かるとは限らないと注意しています。区が所有者の連絡先を把握していても、個人情報のため本人の同意なしには教えられませんが、相談者の連絡先を、相談者が了承したうえで所有者に伝えることはできるとしています。ただし、連絡が来るかどうかは所有者の意向次第です。

所有者が分かる場合の連絡の仕方と文例:確認項目
構成書く内容文例
名乗りと関係隣の住所と名前、連絡先「隣の◯◯町◯番に住む△△と申します。突然のご連絡で失礼します。」
用件困っていること「お宅の敷地や建物に動物が出入りしているようで、自宅にも影響があり、ご連絡しました。」
事実日時、場所、痕跡(推測は書かない)「◯月◯日の夜、自宅の天井で物音があり、軒のすき間に動物が入るのを自宅の窓から見ました。写真を同封します。」
お願い確認と対応の依頼(期限や強い言葉は避ける)「お手数ですが、建物と敷地の状況をご確認いただけますでしょうか。」
連絡方法返事の方法と時間帯「ご都合のよい連絡方法を教えてください。◯◯(連絡先)までお願いします。」
結び感謝と、自宅側で行う対応「自宅でも侵入口の対策を進めています。何かあればご相談ください。」

参考:板橋区|空き家や老朽建築物に関するQ&A(2023年10月24日更新)

市町村の空き家担当に相談できること|空家法と管理不全空家等

空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)は、空家等の所有者または管理者に、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう空家等の適切な管理に努める責務を課しています(第5条)。国土交通省のガイドラインも、所有者等が適切な管理について第一義的な責任を持ち、住民に最も身近な市町村が、地域の実情に応じた対策の実施主体になると位置づけています。2023年12月13日に施行された改正(令和5年法律第50号)で、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある状態の空家等が「管理不全空家等」とされ、市町村長が所有者等に指導や勧告を行えるようになりました。

国土交通省のガイドラインは、管理不全空家等や特定空家等を判断するときの参考として、害虫等の発生(蚊、ねずみ等)、動物の糞尿等、動物等による騒音、動物等の侵入等を挙げています。管理不全空家等の例には、「駆除等がなされておらず、常態的な動物の棲みつきが敷地等に認められる状態」が書かれています。ただし、ガイドラインは一般的な考え方で、各市町村が地域の実情に応じた独自の判断基準を定めることが適当とされています。害獣が来ているからといって、いつも指導の対象になるとは限りません。

市町村ができること

この節の最後の表は、空家法の条文から、近隣住民の相談に関わる手続きを並べたものです。板橋区は、所有者の連絡先が分からない場合に、区が空家法にもとづく所有者等の調査を行い、所有者に駆除や維持管理の依頼、助言等を行うと案内しています。

市町村が通常は行わないこと

市町村の案内には、行わないことや、できないことも書かれています。相談の前に知っておくと、期待と実際の差が小さくなります。

  • 所有者の建物を、市町村が代わりに撤去・修繕・駆除すること(板橋区は、建物や工作物は所有者の財産で、原則として区でも撤去できず、行政代執行は手続きが厳格で時間のかかる例外だと説明。大田区は、区が剥がれた外壁の修繕や隣地間の樹木の伐採をすることはできないと説明)
  • 所有者の連絡先を、本人の同意なしに相談者へ教えること(板橋区)
  • 指導の経過や調査結果をすべて相談者へ知らせること(板橋区は、守秘義務や個人情報保護の観点から、全てはお答えできないことがあるとしている)
  • 所有者の特定が難しい場合に、すぐ対応すること(板橋区は、特定に半年以上かかる場合や、判明しない場合もあると説明)

民事の手続きは法律の専門家へ

国土交通省のガイドラインは、所有者が不明・不在の空家等について、市町村が財産管理人の選任請求を検討することのほか、利害関係人がこれらの制度を使えるよう制度の周知を行うことが適切だと述べています。裁判所の手続きになるため、弁護士など法律の専門家に相談する分野です。

市町村の空き家担当に相談できること|空家法と管理不全空家等:確認項目
段階根拠市町村ができること近隣住民から見た意味
所有者等の把握法第9条第1項空家等の所在と所有者等を把握するための調査を行う所有者が分からないとき、調査を相談できる(板橋区の案内)
情報提供と助言法第12条所有者等に対し、情報の提供、助言その他必要な援助を行うよう努める駆除や維持管理の依頼・助言を、区が所有者に行う例がある(板橋区)
管理不全空家等への指導・勧告法第13条指導を行い、なお改善されない場合は具体的な措置を勧告できる動物の棲みつきが常態化している状態を例に挙げるガイドラインがある
特定空家等への助言・指導・勧告・命令法第22条助言・指導、勧告、命令、行政代執行などの手続きがある著しく衛生上有害となるおそれのある状態なども対象に含まれる
立入調査法第9条第2項・第3項法第22条第1項から第3項の施行に必要な限度で、所有者等に報告させ、職員が立ち入って調査できる。立ち入る5日前までに通知する(通知が困難な場合を除く)市町村長の権限で、近隣住民に同じ権限はない

参考:e-Gov法令検索(デジタル庁)|空家等対策の推進に関する特別措置法

害獣の種類で変わる窓口|保健所・環境担当・空き家担当

同じ空き家の相談でも、動物の種類によって窓口と法的な扱いが分かれます。次の表は、大田区の案内(近隣の空家でお困りの方)、板橋区のQ&A、町田市の事業ページ、環境省と農林水産省の資料から、動物別に整理したものです。窓口名や事業の有無は自治体で違うため、お住まいの市町村の案内で確認してください。

最初にどこへ連絡するか迷うときは、空き家の担当窓口に「隣の空き家の動物の件」と伝えます。板橋区は、まず建築安全課の老朽建築物対策係に相談し、相談内容により関係部署へ引き継ぐ場合があると案内しています。鳥獣の捕獲許可は、環境省の説明では都道府県知事が権限者で、多くの都道府県が権限の一部を市町村長に移しており、許可の基準は都道府県の鳥獣保護管理事業計画に定められています。許可が必要な動物の捕獲を考えるときは、都道府県や市町村の鳥獣の担当に確認します。

害獣の種類で変わる窓口|保健所・環境担当・空き家担当:確認項目
動物法的な位置づけ自治体の案内の例近隣の空き家の場合
家ネズミ(ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミ)鳥獣保護管理法の対象外(環境省)板橋区は、連絡先が分かる場合は所有者に連絡し、分からない場合は空家の担当課が所有者等調査と依頼を行うと案内。区は駆除事業者の紹介を行わない。港区は、保健所が個別の相談に実地調査と防除方法の助言を行うと案内所有者への連絡を先にする。自宅は環境的防除と侵入口の封鎖を進める
ハクビシン鳥獣保護管理法の対象。許可なく捕獲できない(板橋区)大田区と板橋区は環境政策課、町田市は環境共生課が、被害のある自宅を対象にした捕獲・防除の事業を案内。町田市は、申込者の所有地か所有者の承諾が条件大田区は、箱わなの設置を相談者が所有・管理する場所に限り、近隣の空家には設置できないとする
アライグマ特定外来生物(農林水産省・環境省)。野外で捕まえた個体を持ち帰ること(運搬)も原則禁止ハクビシンと同じ事業の対象とする自治体がある近隣の空家へのわなの設置は、自治体の事業でもできない例がある
タヌキ鳥獣保護管理法で保護され、原則として自分で捕獲できない(大田区)大田区は専門業者への相談を案内所有者に連絡し、専門業者への相談は所有者側で進める
スズメバチ鳥獣ではなく虫の扱い大田区は、生活衛生課が所有者または管理者の申出で巣を無料撤去し、所有者・管理者が不明な場合は空家の窓口を案内。板橋区は蜂の巣の駆除を行わず、所有者に求めることを案内近づかず、所有者または空家の窓口に連絡する

参考:大田区|事例集(よくあるお問い合わせ)近隣の空家でお困りの方(PDF)

自分の家でできる対策|侵入口の封鎖と誘引物の管理

隣の空き家の動物を自分で駆除することはできませんが、自宅に入らせない対策は、自分の敷地で進められます。東京都のねずみ防除の冊子は、環境的防除の柱として、餌を与えないこと、巣材を与えないこと、住まいへの出入りと建物内部での移動を防ぐことの3つを挙げています。食品や生ごみを蓋つきの容器に入れ、ペットの餌を放置せず、屋外や家の壁沿いを整理して隠れ場所をなくす、という内容です。

侵入口の封鎖

町田市の資料は、ハクビシンは直径8センチくらいの穴から侵入できること、ネズミは1〜2センチくらいのすき間でも侵入すること、アライグマは小さな穴をこじ開けることがあるため、すき間をできるだけ作らない・塞ぐことが重要だと説明しています。封鎖の考え方は害獣の侵入口はいつ塞ぐ?、部位別の点検は害獣の侵入経路にあります。動物が中にいるかもしれない状態での封鎖は、先に調査を相談します。

誘引物の管理

町田市の資料は、アライグマとハクビシンが雨どいを伝って登り降りでき、庭木が伸びて屋根やベランダにかかっていると、それを伝って侵入してくると説明しています。庭の草木が生い茂ると動物が隠れやすくなるため手入れし、庭に果物がなっている場合は、できるだけ早めに収穫するよう案内しています。

  • 屋根やベランダにかかる庭木の枝をこまめに切る
  • 庭の果実は、熟したらできるだけ早く収穫する
  • 食品、ペットの餌、生ごみは、蓋つきの容器に入れる
  • 家の壁沿いに物を置かず、草木や物置の周りを整理する

参考:東京都福祉保健局|都民のためのねずみ防除読本(平成24年4月発行、PDF)

してはいけないこと|無断の立ち入り・無許可の捕獲・毒餌

環境省は、鳥獣保護管理法では、鳥獣または鳥類の卵を狩猟以外で捕獲・殺傷・採取することを原則禁止し、被害がある場合などに環境大臣または都道府県知事の許可を受けて捕獲できる仕組みだと説明しています。ハクビシンやタヌキは、許可なく捕獲できません。家ネズミ3種は法の対象外ですが、他人の敷地や建物に立ち入って捕獲器や薬剤を置いてよいという意味にはなりません。

自治体の事業の条件も同じ方向です。大田区は箱わなの設置を相談者が所有・管理する場所に限り、町田市も、原則として箱わなの設置を申込者の指定する敷地内に限り、申込者が自分で所有しているか、所有者から承諾を得ていることを条件にしています。アライグマは特定外来生物で、環境省は、野外で捕まえた個体を持ち帰ること(運搬)も原則禁止だと説明しています。生きたまま運んだり、別の場所で放したりしてはいけません。野生動物は寄生虫や細菌を持つことがあるため、板橋区は触らないよう案内しています。体調に不安があるときは、自己判断せず、医療機関や保健所に相談してください。

  • 空き家の敷地や建物に、所有者の承諾なく立ち入る(確認や撮影のためでも)
  • 隣の空き家へ、許可なく捕獲器やわなを置く
  • 空き家の敷地や建物へ、毒餌や殺そ剤を置く
  • 野生動物を追い回したり、素手で触ったりする
  • 所有者の名前や事情を、掲示板などで他の人に広める

参考:環境省|捕獲許可制度の概要

自宅に被害が及んだときの記録と業者への相談

自宅の天井裏や壁の中に被害が出たときは、自宅の範囲について、記録を持って市町村の事業や防除業者に相談できます。町田市は、被害宅を対象にしたアライグマ・ハクビシンの防除事業のほか、民間業者による駆除を希望する場合は自費になると案内し、事業とは別の作業を頼むときは、複数社から見積もりを取り、内容に納得したうえで契約することを勧めています。板橋区は、区として駆除事業者の紹介は行わないとしています。

業者に渡す情報は、自宅の痕跡の記録、隣の空き家の外から見える状態、これまでの連絡の経過、自宅で行った侵入口の対策です。調査は自宅の範囲が基本で、隣の建物の中の調査や工事は、所有者の同意が前提になります。整理の仕方は害獣の現地調査を頼む前に伝えることと、近所でも被害があるときの情報共有にあります。

所有者に連絡が取れず被害が続く場合は、記録と連絡の経過を持って、空き家担当へ再度相談します。板橋区は、所有者の特定に半年以上かかる場合もあると説明しているため、短期間での解決を見込めないときは、自宅の対策を先に進めます。

参考:町田市|アライグマ・ハクビシン防除事業