ヌートリアは許可なしに捕獲できない|3つの手続きの違い

ヌートリアは野生の哺乳類で、鳥獣保護管理法では狩猟鳥獣の1つです。同法は、許可を受けた場合や、狩猟期間内に法定猟法で狩猟鳥獣を捕獲する場合などを除いて、鳥獣の捕獲と殺傷を禁止しています。さらにヌートリアは特定外来生物なので、外来生物法の防除という別の枠組みもあります。農林水産省のマニュアル(令和6年3月版)は、特定外来生物の捕獲には、鳥獣保護管理法に基づく捕獲(許可捕獲と狩猟)に加えて、外来生物法に基づく防除が使えるとして、3つを表で比べています。

個人の庭や畑で罠を置いてもよいかは、どの枠組みで行うかで答えが変わります。次の表は、農林水産省と環境省の資料をもとに、3つの違いをまとめたものです。住んでいる市町村が、どの枠組みを案内しているかを先に確認してください。

ヌートリアは許可なしに捕獲できない|3つの手続きの違い:確認項目
比べる点外来生物法の防除鳥獣保護管理法の許可捕獲鳥獣保護管理法の狩猟
目的生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害の防止(予防や根絶を含む)学術研究、鳥獣の管理(農林水産業等の被害防止を含む)など問わない
必要な手続き防除の確認・認定を受けた計画があり、その計画の従事者になる都道府県知事または市町村長の許可狩猟免許と、狩猟者登録
捕獲できる人適切な知識と技術があると認められれば、狩猟免許がなくても従事できる許可を受けた人。狩猟免許がなくても可能な場合がある狩猟免許を取得し、登録した人
捕獲できる期間計画で定める期間(複数年も可)許可された期間狩猟期間(北海道以外は11月15日から翌年2月15日)
生きたままの保管・運搬防除に伴うものは、飼養等の許可なしに可能許可捕獲に伴う一時的なものは、外来生物法の手続きが不要狩猟に伴う一時的なものは、外来生物法の手続きが不要

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】3-3 被害軽減のための捕獲・捕獲に関する法律(令和6年3月版・PDF)

読者の疑問

ヌートリアは許可なしで罠を置けますか?

比較ガイド

原則としてできません。外来生物法の防除の従事者証、鳥獣保護管理法の捕獲許可、狩猟免許(わな猟)のいずれかが必要です。住宅敷地内などの例外もありますが、当てはまるかは市町村に確認してください。

外来生物法の防除|従事者証・防除実施計画で捕獲する

外来生物法の防除は、自治体や団体が防除実施計画を作り、その計画に沿って捕獲する仕組みです。個人が捕獲に関わるときは、計画の従事者として登録され、従事者証を受ける形が主になります。

防除の仕組みと、手続きをとる利点

農林水産省のマニュアル(令和6年3月版)によると、防除は、国や都道府県が公示して行うほか、市町村は国の確認を受けて、民間団体などは国の認定を受けて行うことができます。防除の手続きをとる利点として、環境省は、捕獲した個体を生きたまま運ぶことが外来生物法第4条に違反する規制の適用除外になること、鳥獣保護管理法の捕獲許可を受けずに実施できること、講習会を受けるなどして適切な捕獲と安全の知識・技術があれば免許のない人も従事できることを挙げています。

従事者証の実例|福山市・高松市・加古川市

福山市は、箱わなでの捕獲に、わな猟免許または特定外来生物法に基づく捕獲従事者証が必要で、従事者証は年1回、市の講習会で取得できると案内しています。高松市も、防除従事者を、わな猟免許を持つ人、または県や市などが実施する講習会を受けた人と定めています。加古川市は、農作物に被害をもたらすアライグマとヌートリアの捕獲にかかる従事者証を交付し、有効期間を年度内(3月31日まで)としています。

参考:環境省|日本の外来種対策「防除に関する基本的な事項」

鳥獣保護管理法の許可捕獲|被害がある場合の申請

許可捕獲は、被害防止などの目的で、環境大臣または都道府県知事の許可を受けて捕獲する制度です。環境省は、多くの都道府県で許可の権限の一部を市町村長に移しているとしています。許可の基準は都道府県の鳥獣保護管理事業計画に定められているため、詳細は都道府県や市町村の担当部局に確認します。神奈川県は、ヌートリアを含む獣類と鳥類の37種について、市町村長が許可する場合があると案内しています(都道府県によって異なります)。

名古屋市のQ&A集は、ヌートリアから被害を受けている場合は捕獲許可のもとで捕獲できるが、捕獲は被害を受けている人が自ら管理している敷地内で行う必要があると案内しています。許可には期間があり、神奈川県の例では、許可期間の満了後30日以内に捕獲の結果を許可証に記入して返納します。許可を受けずに、狩猟期間外や狩猟のできない区域でヌートリアを捕獲すると、鳥獣保護管理法第83条の罰則(1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)の対象になりえます。

参考:環境省|捕獲許可制度の概要

狩猟で捕獲する場合|わな猟免許・登録・期間

ヌートリアは、狩猟鳥獣の獣類20種に含まれます。狩猟で捕獲する場合の手続きと期間を、環境省と神奈川県の案内で確認します。

狩猟免許・狩猟者登録・狩猟期間

環境省は、狩猟を行うには狩猟免許の取得と、狩猟をする都道府県への狩猟者登録が必要だと説明しています。箱わなやくくりわななどのわなを使う場合は、わな猟免許が必要です。狩猟期間は、北海道以外では11月15日から翌年2月15日までです。対象とする獣や都道府県によって、期間の延長や短縮、捕獲数の制限がある場合があるため、登録する都道府県に確認します。

住宅の敷地内で行う場合の例外

鳥獣保護管理法第11条は、垣や柵などで囲まれた住宅の敷地内で、銃器を使わずに狩猟鳥獣を捕獲する場合を、狩猟期間内に限り、許可を受けずにできる場合の1つに挙げています。神奈川県は、この場合、住宅の占有者の承諾があれば、誰でも銃器以外の法定猟法で捕獲できると案内しています。ただし、特定外来生物を捕獲して運搬する場合の外来生物法の扱いや、都道府県ごとの制限もあるため、自分の庭がこの例外に当たるかは、罠を置く前に市町村へ確認してください。

参考:環境省|狩猟制度の概要(狩猟鳥獣)

自治体の箱わな貸出の実例を比べる|関西・中国・東海

箱わなの貸出や設置の仕組みは、市町村ごとに違います。次の表は、各市の公式ページや資料に掲載されていた内容を、2026年10月3日に確認してまとめたものです。条件や期間は変更されることがあるため、申し込む前に最新の案内を確認してください。

自治体の箱わな貸出の実例を比べる|関西・中国・東海:確認項目
自治体(掲載・更新日)使える人・対象の被害期間・費用主な条件・捕獲後の扱い
京都市(ページの日付は2024年10月1日)自宅の敷地へ侵入するなど被害のおそれがある人。農作物被害が甚大な農家は農(林)業振興センターへ記載なし市が業務委託する事業者が檻を設置。檻を置く場所の提供や餌の付け替えに協力できる場合に連絡が来る
生駒市(2026年3月16日更新)被害防止のための貸出(詳細は貸出ページで確認)最長3週間・無償捕獲された場合は市の委託業者が回収
明石市(2026年10月2日更新)農作物被害などがあり、要望フォームで申請した人記載なし申請者の所有地または管理地で、設置の立会い、わなの見回り、捕獲時は設置場所での処分に同意することが必要
加古川市(2025年4月1日更新)農作物被害があり、従事者証の交付を受けた人1か月・数に限りあり従事者証は年度内有効。民家の軒下や屋根裏は農林水産課では対処できない
福山市(2023年10月11日更新)農産物・水産物に被害を受けている市民記載なしわな猟免許、または年1回の講習会で得る捕獲従事者証が必要
名古屋市(2026年5月22日更新)町内会長など地域団体の代表者、近隣3世帯以上の同意を得た人、被害のある農業者(自宅の庭など第三者が自由に入れない場所は同意不要)貸出日から2か月・無償有害鳥獣捕獲許可証の交付が条件。捕獲されたら市が回収
岡崎市(2026年8月28日更新)住宅等の敷地内で被害を受けている市民(農林業被害は対象外)28日間・無料1日1回以上檻を確認。捕獲後3日以内に自分で処分する(難しい場合は猟友会へ有料で代行を依頼)

参考:岡崎市|アライグマ、ハクビシン、ヌートリア用の捕獲檻の貸出

草津市・福山市・高松市・明石市の窓口と、表から分かること

草津市は、一定の要件を満たす場合に市が箱わなを設置して捕獲する仕組みで、住居等の敷地内の生活被害と、田畑の農作物被害で窓口が分かれます。詳しい要件の確認の仕方は草津市でアライグマ・ヌートリア被害を相談するに整理しています。福山市、高松市、明石市の窓口は、それぞれ福山市のアライグマ・ヌートリア対策、高松市のアライグマ・ヌートリア、明石市のアライグマ相談で確認できます。

表から分かるのは、同じヌートリアでも、貸出、市が設置、従事者証が前提、許可証が前提と、入口が自治体で違うことです。農作物被害と住宅の生活被害で対象が分かれる自治体も多くあります。住んでいる市町村の案内を先に確認し、貸出がない場合は、許可の取り方や、民間の業者への依頼を相談します。

参考:草津市|特定外来生物アライグマ・ヌートリアにご注意ください

報奨金・奨励金の制度|岡山市の例と確認の仕方

ヌートリアの駆除に報奨金(奨励金)を出す制度は、市町村が独自に設けるもので、全国共通ではありません。このページを書く際に条件を確認できた例は岡山市です。岡山市は、鳥獣による農林水産物の被害防止のため、捕獲者に捕獲奨励金を交付しており、対象鳥獣にはヌートリア、ハクビシン、アライグマ、アナグマなどが含まれます。

同市の交付要綱によると、有害鳥獣捕獲奨励金の上限単価は、ヌートリア、ハクビシン、アライグマ、アナグマで1頭あたり2,000円、狩猟による捕獲促進奨励金は1,000円です。いずれも上限で、実際の額は予算の範囲内で市長が定めます。対象は、市内で鳥獣保護管理法に基づく捕獲をした個人または団体で、同じ年度内に申請できる回数にも制限があります。金額や条件は2026年10月3日に確認した掲載で、年度で変更されることがあります。検索では、岐阜、岡山、愛知県の名前を付けて報奨金を調べる人が多く見られます。このうち岡山市以外の自治体の公式な掲載は、今回確認できておらず、金額は載せていません。

報奨金・奨励金の制度|岡山市の例と確認の仕方:確認項目
区分対象・条件ヌートリアの上限単価と申請時期
有害鳥獣捕獲奨励金許可を受けて市内で捕獲した鳥獣の捕獲者(個人または団体)1頭あたり2,000円まで。交付要綱では年2回(8月31日、2月28日まで)
捕獲促進奨励金市内で猟期に狩猟で捕獲した鳥獣の捕獲者1頭あたり1,000円まで。3月21日まで
申請窓口・書類各区役所の農林水産振興課(一部の支所でも受付)。捕獲確認マニュアルあり様式は窓口で確認する
  • 制度があるか(市町村の農林担当に確認)
  • 対象者は誰か(許可、免許、従事者証のどれを持つ人か)
  • 捕獲の確認方法(写真や提出書類の決まり)
  • 申請の期限と、1年度内に申請できる回数

参考:岡山市|鳥獣被害対策関係事業補助金等交付要綱(捕獲奨励金ページ掲載・PDF)

捕獲後は生きたまま運べない|別の動物がかかったときの対応

捕獲後の扱いは、外来生物法と、貸出元のルールの両方に関わります。生きたまま運べない理由、処置の考え方、別の動物がかかったときの対応を分けて見ます。

生きたまま運べない理由

外来生物法第4条は、特定外来生物の飼養等を原則として禁止しており、環境省は、飼養等に保管と運搬が含まれると説明しています。野外で捕まえて持ち帰ることは運搬にあたります。違反した場合の罰則は、第33条で1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方と定められています。

許可や防除の手続きの枠内で行う運搬は別扱いなので、貸出元が回収や処分の流れを決めています。名古屋市は捕獲されたら市が回収し、生駒市は委託業者が回収し、岡崎市は借りた人が3日以内に処分して難しければ猟友会へ有料で代行を依頼でき、明石市は設置場所での処分に同意することを条件にしています。自己判断で川や山へ放したり、車で運んだりしないでください。

処置の考え方

環境省の特定外来生物被害防止基本方針は、捕獲した個体をやむを得ず殺処分する場合は、できる限り苦痛を与えない適切な方法で行うと定めており、農林水産省の旧マニュアルがこれを引用しています。名古屋市の手引きは、動物愛護法などにも留意し、捕獲から捕獲後の処置まで、許可を受けた人の責任で行うことを求めています。具体的な方法は、貸出元の説明や講習で確認します。

別の動物がかかったとき

許可や貸出の対象外の動物がかかったときは、放します。名古屋市の手引きは、捕獲許可以外の動物がかかったら対象外となるので放すよう求めています。農林水産省の旧マニュアルも、錯誤捕獲された動物は速やかに放獣する必要があると述べ、クマやシカなどの大型動物は放獣に人身への危険が伴うため、自治体の鳥獣担当部局に連絡して相談するよう勧めています。農林水産省のマニュアル(令和6年3月版)は、住宅地付近の捕獲では飼いネコや地域ネコの錯誤捕獲に注意が必要としています。岡崎市のように、1日1回以上の見回りを条件にする自治体もあります。

参考:環境省|日本の外来種対策・外来生物法「何が禁止されているの?」

相談先と、申し込む前に整える情報

相談先は、市町村の農林の担当(農作物被害)と環境の担当(生活環境の被害)に分かれている自治体があり、京都市や草津市は窓口を分けています。屋根裏など建物の中に住み着いた場合は、自治体が対応せず、民間の害獣駆除業者や、環境省のページに掲載された認定鳥獣捕獲等事業者への相談を案内する自治体もあります。依頼先の違いは害獣駆除はどこに頼む?依頼先6つの違いで比べられます。費用や補助の探し方は害獣駆除の補助金・助成金の探し方にまとめています。

電話をかける前に、次の情報を用意しておくと話が進みます。手続きや貸出の可否は自治体ごとに違うため、このページの表は目安にとどまります。住んでいる市町村の最新の案内を確認してください。

  • 被害の種類と場所(農地、庭、水路、建物)
  • 最初に気づいた日と、見かけた日時と頭数
  • 被害の写真と、足跡、巣穴、食べ跡の位置
  • 罠を置きたい場所の所有者や管理者が誰か
  • 罠の見回りを毎日できるか、留守にする日があるか

参考:京都市|特定外来生物ヌートリアについて