イノシシの罠に免許は必要?狩猟と許可捕獲の違いから確認する

鳥獣保護管理法では、野生の鳥獣は狩猟として捕獲する場合を除き、原則として捕獲や殺傷が禁止されています。環境省は、被害が生じている場合などに環境大臣または都道府県知事の許可を受けて捕獲できると説明しており、イノシシをわなで捕獲する場合も、狩猟か許可捕獲のどちらかの枠に入らなければできません。自宅の庭や畑で被害を受けていても、それが免許や許可の代わりになることはありません。

狩猟は、狩猟免許を取り、毎年猟期の前に登録して、決められた猟期に法定猟法で行う仕組みです。許可捕獲は、被害防止などの目的で許可を受けて行い、許可された期間と区域であれば年間を通じて可能です。まず自分が考えているのがどちらなのかを決めると、次に確認する窓口が分かれます。市町村が対応する範囲はイノシシ駆除は市役所に依頼できる?でも整理しています。

イノシシの罠に免許は必要?狩猟と許可捕獲の違いから確認する:確認項目
比べる点狩猟(登録狩猟)許可捕獲(有害鳥獣捕獲など)
捕獲できる時期猟期のみ(北海道以外は原則11月15日から翌年2月15日。都道府県で延長される場合あり)許可された期間(年間を通じて可能)
対象となる鳥獣狩猟鳥獣46種(イノシシを含む)狩猟鳥獣以外も含む鳥獣と卵
必要な手続き狩猟免許の取得と、毎年猟期前の狩猟者登録許可の申請。申請先は都道府県知事等で、地域によっては市町村が窓口
捕獲の目的問わない被害防止、個体数調整、学術研究など、法で定める目的
使える方法法定猟法(網猟・わな猟・銃猟)方法は問わない(危険猟法などには制限あり)

参考:環境省|捕獲許可制度の概要

読者の疑問

イノシシの罠に免許は必要ですか?

比較ガイド

箱わなやくくりわなでイノシシを捕獲する場合は、原則としてわな猟免許が必要で、そのうえで狩猟者登録か捕獲許可の手続きも要ります。農林業者が事業地で使う囲いわななど、免許が不要とされる例外もありますが、条件があるため市町村で確認してください。

わな猟免許とは?箱わな・くくりわなで必要な試験と登録

わな猟免許で使える猟具は、環境省の整理ではくくりわな、はこわな、はこおとし、囲いわなです。農林水産省のマニュアルも、箱わなや囲いわなを設置してイノシシやシカを捕獲するには、一般的にわな猟免許が必要になると説明しています。免許は、住所地の都道府県知事が実施する狩猟免許試験に合格して取得します。

試験の内容と年齢

環境省の案内では、わな猟免許は18歳以上が受験でき、知識試験、適性試験、技能試験の3種類があります。知識試験は30問で制限時間90分、正答率70%以上が合格の基準です。適性試験は視力、聴力、運動能力の基準を満たす必要があり、技能試験は70%以上の得点が求められます。

申請手数料は1種類につき5,200円と標準的な例が示されていますが、日程、必要書類、手数料は都道府県で異なる可能性があります。受験を考える場合は、住所地を管轄する都道府県の担当部署に問い合わせてください。

狩猟者登録と猟期

免許を持っているだけでは狩猟はできず、狩猟をしようとする都道府県にあらかじめ登録し、所定の狩猟税を納める必要があります。登録は毎年度、猟期の前に行います。猟期は北海道以外では原則11月15日から翌年2月15日で、対象の獣種や都道府県によっては期間が延長または短縮される場合があります。

2026年10月3日時点では今年の猟期はまだ始まっていません。ただし、免許と登録は猟期の前に整っている必要があるため、始めたい場合は、試験の日程と受付期間を早めに担当部署で確認しておくと見通しが立ちます。

参考:環境省|狩猟制度の概要(狩猟鳥獣)

免許がいらない場合はある?農林業者の囲いわなと許可申請の条件

免許が要らない例として、環境省は、わな猟免許で扱うわなのうち、農業者または林業者が事業に対する被害を防止する目的で設置する囲いわなを除いています。兵庫県の捕獲許可の案内でも、農林業被害の防止の目的で農林業者が自らの事業地内で囲いわなを使い、イノシシやニホンジカなどを捕獲する場合は、狩猟免許を受けずに許可を申請できる場合として挙げています。

ここで言う囲いわなと箱わなは別のものです。農林水産省のマニュアルは、地面も含めて全面が覆われているものを箱わな、天井部分が1/2以上開放されているものを一般的に囲いわなと呼ぶと説明しています。農林業者、事業地、囲いわなの3つがそろったときの扱いで、箱わなやくくりわなには当てはまりません。

もう一つ気をつけたいのは、免許が不要でも許可が不要とは書かれていない点です。兵庫県の案内は、免許なしで『申請できる』場合を挙げる形で、許可の申請を前提にしています。小型のはこわななどでアライグマ、ハクビシン、ヌートリアなどを捕獲する場合にも免許が不要となる例がありますが、イノシシは挙げられていません。例外は県や市町村の基準で細かく異なるため、自己判断せず窓口で確認してください。庭先に来たときの安全面は庭にイノシシが来たらにまとめています。

免許がいらない場合はある?農林業者の囲いわなと許可申請の条件:確認項目
場面わな猟免許狩猟者登録・許可最初に確認する窓口
猟期に、狩猟として箱わなやくくりわなでイノシシを捕獲する必要狩猟者登録が必要(許可捕獲の許可とは別の手続き)都道府県の狩猟担当部署
被害防止のため、許可捕獲として箱わなやくくりわなを使う原則必要(兵庫県は許可を受けられる人の条件に免許の所持を挙げる)市町村などの捕獲許可が必要市町村の鳥獣担当課
農林業者が被害防止のため、自分の事業地内で囲いわなを使う環境省は、この囲いわなを免許が必要なわなから除いている兵庫県は、免許なしで許可を申請できる場合として案内。申請の条件は市町村などで確認市町村の鳥獣担当課または農林担当課
自宅の庭や家庭菜園に、個人がイノシシ用のわなを仕掛けたい免許も許可もない状態では設置できない農林業者の事業地に当たるかも含め、市町村に相談市町村の鳥獣担当課

参考:兵庫県|鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律第9条における鳥獣の捕獲許可について

許可の申請先と従事者証|イノシシは市町村の窓口で受ける地域がある

有害鳥獣捕獲の許可は、環境大臣または都道府県知事が出し、多くの都道府県で権限の一部を市町村長に移していると環境省は説明しています。兵庫県は、イノシシ、ニホンジカ、アライグマなどの許可権限を市町に委譲し、申請の窓口はいずれも市町としています。大阪府も、被害防止を目的とするイノシシの捕獲許可を市町村長の権限とし、担当窓口を各市町村の鳥獣行政担当課としています。お住まいの都道府県で同じ形とは限らないため、最初に市町村へ電話で確認するのが近道です。

許可を受けられる人の条件

兵庫県の案内では、許可の対象者は、被害を受けた人または市町から依頼された個人や法人で、銃以外の方法ならわな猟免許などを持ち、県猟友会の構成員または実績があり、捕獲に係る損害賠償保険に加入して適切に捕獲に従事できる人などと、複数の条件が示されています。許可証や従事者証は捕獲のときに携帯するよう大阪府が案内しています。兵庫県は、有効期間の満了後30日以内に許可証を返納するとし、捕獲実績の報告書類は各市町に確認するよう求めています。

下の表は、同じ県の案内にある三つの進め方で、依頼書と申請書をだれが出すかの違いです。被害を受けた人が自分でわなを使うのか、市町や捕獲者に頼むのかで、書類の出し手が変わります。

申請書に添える書類

申請書には、捕獲する場所を示す縮尺5万分の1以上の地形図、猟具の大きさが分かる資料、被害状況の写真、狩猟免状の写しなどを添えるよう案内されています。原則として鳥獣保護区、公道、社寺境内、墓地などでの捕獲は認められません。

小型の動物の例ですが、丹波市の小型鳥獣の捕獲相談や奈良市のイタチ等の捕獲器を読むと、従事者証や捕獲後の扱いなど、申請の前に決めておく内容のイメージがつかめます。

許可の申請先と従事者証|イノシシは市町村の窓口で受ける地域がある:確認項目
申請の進め方(兵庫県の案内)依頼書申請書
被害を受けた人が市町に相談し、市町が捕獲者に依頼する被害を受けた人が市町に提出捕獲者が市町に提出
被害を受けた人が自分で捕獲する不要申請する人が市町に提出
被害を受けた人が直接、捕獲者に依頼する被害を受けた人が捕獲者に提出捕獲者が市町に提出

参考:大阪府|野生鳥獣(有害鳥獣)の捕獲

わなの規制|標識、禁止されるくくりわな、毎日の見回り

わなには、設置の手順より前に守る規制があります。標識を付けること、禁止された猟法を使わないこと、見回りを続けられる体制があることの3点です。それぞれの内容を、公的資料の記載の範囲で確認します。

標識と許可証の携帯

大阪府は、許可を受けた人や従事者が猟具を使うとき、許可証または従事者証を携帯し、わなや網ごとに見やすい場所へ住所や氏名などを表示するよう案内しています。建物の敷地内で捕獲する場合も必要で、表示しないで猟具を使うと30万円以下の罰金になると明記しています。農林水産省のマニュアルも、わなの管理者や設置根拠が分かる標識の設置と、日々の見回りを適正管理として挙げています。

禁止されるわなと危険猟法

環境省は、爆発物、劇薬、毒薬を使う猟法や、人の生命・身体に重大な危害を及ぼすおそれがあるわなを、危険猟法として禁止しています。毒餌でイノシシを駆除する方法は選べません。また、狩猟で禁止する猟法として、イノシシとニホンジカ向けのくくりわなのうち、輪の直径が12cmを超えるもの、締付け防止金具やよりもどしが付いていないもの、ワイヤーの直径が4mm未満のものを使う方法や、とらばさみを使う方法を挙げています。

農林水産省のマニュアルによると、12cmの制限はクマ類などの錯誤捕獲を抑えるために設けられ、都道府県の計画に緩和の記載がある場合は扱いが変わります。許可捕獲は方法を問わないとされる一方で危険猟法などには制限があり、許可の条件は窓口で決まります。購入したわなや自作のわなが基準に合うかは、個人では判断が難しいため、使う前に担当窓口と免許を持つ人に確認してください。

見回りと事故の実態

わなは仕掛けたら終わりではなく、日々の見回りが前提です。兵庫県は、免許なしで申請できる小型のはこわななどの例で、1日1回以上の見回りを実施するなど、錯誤捕獲で鳥獣の保護に重大な支障を生じないと認められることを条件に挙げています。

環境省のクマ類の出没対応マニュアルは、クマ類による人身被害の整理の中で、クマ類以外を対象にした狩猟などの最中の事故35件のうち19件がわなの見回り中に起き、その多くがクマ類の錯誤捕獲に起因すると記しています(2016〜2020年度の環境省資料から作成した図に基づく記述)。見回りは、天候や体調にかかわらず続けられる人がいて初めて成り立つ作業です。

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】令和5年3月版 第3章 鳥獣被害対策の3つの柱(PDF)

止め刺しと捕獲後の対応は個人で抱えない|実施隊・猟友会・市町村

農林水産省のマニュアルは、捕獲時のけがや事故の多くが止め刺し(殺処分)の際に起こるとしたうえで、銃やナイフ、電気止め刺し器などを使う作業には技術と安全管理が必要だと説明しています。『イノシシ 駆除 電気止め刺し』のような検索があっても、機器の扱いは免許と許可を持ち、研修を受けた捕獲従事者の仕事で、この記事では方法を扱いません。わなにかかった個体を見つけても、近づいて確かめたり、逃がそうとしたりしないでください。

鳥獣被害対策実施隊は市町村の計画で動く

農林水産省と環境省の令和8年のリーフレットによると、鳥獣被害対策実施隊は市町村の被害防止計画に基づいて活動し、隊員は市町村職員、狩猟者、農業者、地域住民などです。個人が捕獲を依頼する場合も、実施隊や猟友会など、すでに免許と許可の体制がある人につなぐのが現実的です。

見回りの体制と免許取得の支援

同じリーフレットは、国の交付金の支援に、わな等の購入費のほか、地域で協力してわなの見回りなどを行う捕獲者サポートの体制整備が含まれると紹介しています。免許の取得費やわなの購入費への補助の有無は市町村で異なります。補助の見つけ方と金額の例はイノシシ駆除の補助金と報奨金で比べています。

市町村へ相談するときは、次の4つの情報を整理して伝えると、窓口での確認が早く進み、必要な免許や許可の話に入りやすくなります。

  • 被害の場所と日付、被害の写真
  • 設置を考えている土地が自己所有か借地か、農林業を営む場所かどうか
  • すでに試した対策(柵、餌の片づけなど)
  • 連絡が取れる時間帯と連絡先

参考:農林水産省・環境省|野生鳥獣の被害対策を通じた地域貢献について(令和8年、PDF)

クマなど別の動物がかかったとき|錯誤捕獲の連絡と対応

イノシシ用の箱わなやくくりわなに、クマ類、ニホンジカ、アライグマなど別の動物がかかることを錯誤捕獲といいます。環境省のクマ類の出没対応マニュアルは、錯誤捕獲個体の放獣作業は危険を伴い、さまざまな立場の関係者が関わるため、あらかじめ役割を決めて共有することが重要だとしています。個人が自力で逃がしたり、近づいて様子を見たりする場面ではありません。

連絡の流れの例

同マニュアルが紹介する京都府の例では、錯誤捕獲が起きると捕獲者から役場に通報が入り、役場が振興局に連絡し、振興局から委託事業者に対応を要請しています。兵庫県の例では、捕獲者は情報提供、市町は住民の安全確保(交通規制を含む)、農林事務所は安全管理の指導と記録を担い、センターまたは委託事業者が放獣などを行うと整理されています。

どちらも、まず捕獲者が自治体へ知らせることが出発点です。設置を考える前に、許可を出した市町村の連絡先と、夜間や休日の連絡方法を控えておきます。

クマや特定外来生物の場合

クマ類が見えたときは、わなに近づかずその場を離れ、市町村へ連絡します。クマ出没への備えはクマ出没への対策で確認できます。アライグマなどの特定外来生物は、外来生物法で生きたままの運搬や飼養、野外への放出が原則禁止されているため、自己判断で車に積んだり、離れた場所で放したりしないでください。人が危険な状況にあるときは110番です。

参考:環境省|クマ類の出没対応マニュアル 改定版 第2章 出没時の対応(PDF)

罠だけでは被害が止まりにくい理由|餌・柵・捕獲の組み合わせ

農林水産省のマニュアルは、箱わなや囲いわなは、構築物を警戒するイノシシを誘引エサで慣らしながら捕獲する手法で、設置後は警戒心の低い幼獣や若齢個体から捕獲が始まりやすいと説明しています。被害を減らすには加害個体を優先して捕獲する必要があり、防護柵でイノシシの動きをわなへ導くなど、複合的な対策が必要とされています。

つまり、罠の免許を取っても、庭の放任果樹や生ごみなど餌になる物が残っていたり、柵の裾に隙間があったりすれば、被害の入口は閉じません。罠を考える前に、餌の片づけと侵入口の点検を済ませる順番にすると、無駄な設置や事故を減らせます。

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】令和5年3月版 第3章 鳥獣被害対策の3つの柱(PDF)