ヌートリアはどんな動物?大きなネズミのような外来の草食動物

ヌートリアは南米の中部から南部が原産で、ネズミの仲間(齧歯目)に分類される大型の動物です。国立環境研究所の侵入生物データベースは、大きなドブネズミのような体つきで、目や耳は小さく、尾は扁平ではなく円筒状で、後ろ足には水かきがあると説明しています。農林水産省のマニュアルや草津市の案内は、前歯がオレンジ色に見えることも特徴に挙げています。

暮らす場所は、流れの緩やかな河川、湖、沼、ため池などの水辺です。夜行性とされ、夕方や明け方に活動が目立ちます。土手や堤防、田んぼの畦に横穴の巣穴を掘り、草食で、水草などの水辺の植物を中心に、イネや野菜も食べます。

家に出るドブネズミとは大きさが違う

東京都の防除指針によると、ドブネズミの頭胴長は約22〜26センチです。ヌートリアは京都市や農林水産省の旧マニュアルで頭胴長約50〜70センチとされており、体の大きさは2倍以上あります。数値は資料によって幅があります。水辺で大きなネズミのような動物を見たときに、家庭用のネズミ対策を始める前に、ヌートリアの可能性を考えます。

マスクラットとの見分け

ヌートリアによく似た特定外来生物に、北米原産のマスクラットがいます。農林水産省の旧マニュアルは、大きさ、爪の色、尾の形、後ろ足の水かきの有無で見分けられると整理しています。見分けが難しいときは、自治体に写真を送って確認してもらいます。

ヌートリアはどんな動物?大きなネズミのような外来の草食動物:確認項目
比べる点ヌートリアマスクラット
頭胴長約50〜70センチ約20〜30センチ
体重約4.5〜7キログラム約0.3〜1.0キログラム
爪黒い白くて鋭い
尾の形円筒状平たく、オールのような形
後ろ足の水かきあるない

参考:国立環境研究所|侵入生物データベース・ヌートリア

読者の疑問

ヌートリアは危険ですか?噛みますか?

比較ガイド

基本的におとなしいとされますが、追いつめられたり興奮したりすると、噛み付いたり引っ掻いたりすることがあると宇部市は案内しています。近づかず、触らないでください。

ヌートリアはなぜ日本にいるのか、なぜ増えたのか

ヌートリアは、自然に日本へ来た動物ではありません。国立環境研究所によると、1939年に約150頭がフランスから輸入され、第二次世界大戦中から戦後にかけて、軍用などの毛皮用に飼われていた個体が逃げたり放されたりして、野外へ広がりました。山口市の案内も、軍用の毛皮獣として輸入され、終戦後に需要がなくなって放逐され、生き残りが野生化して繁殖したと説明しています。

増えた理由として、公的資料は繁殖力の高さを挙げています。国立環境研究所は、通年繁殖が可能で、年に2〜3回出産し、産仔数は2〜9頭(平均5.87頭)と説明しています。一方、農林水産省のマニュアル(令和6年3月版)は、古くから定着している岡山県では、この約70年間、捕獲数や農業被害額が比較的安定しており、異常増殖した例は観察されていないとも書いています。明石市のように、市内の生息頭数が急激に増加していると案内する自治体もあり、地域によって状況は異なります。

分布は西日本が中心です。国立環境研究所は、福島、埼玉、福井、岐阜、静岡、愛知、三重、奈良、滋賀、京都、大阪、兵庫、岡山、鳥取、広島、島根、山口、香川、愛媛の各府県に定着していると説明しています(2018年更新)。高松市のように、これまで確認されていなかった地域で令和8年5月に生息が確認された例もあります。

参考:国立環境研究所|侵入生物データベース・ヌートリア

ヌートリアを見つけたときにしてはいけないこと

見つけたときにしてはいけないことは、触る、餌を与える、捕まえる、持ち帰る、別の場所へ放す、の5つです。それぞれの理由を、自治体と環境省の案内で確認します。

触らない・近づかない

生駒市は、市内でヌートリアが目撃されているとしたうえで、人に危害を加えた事例は報告されていないものの、野生動物なので見かけても決して触れないよう呼びかけています。京都市も、伝染病を媒介する可能性があるため、不用意に近づかず見守るよう案内しています。写真を撮るときも距離を保ち、ズーム機能を使います。

餌を与えない

京都市は食べ物などを与えないよう求めています。明石市は、餌を与えるとその場所に棲みつき、さらに繁殖して農作物被害や生態系への影響につながること、国内で餌付けをしようとして噛まれた例もあることを挙げ、決して餌を与えないよう案内しています。

捕まえない・持ち帰らない・別の場所へ放さない

名古屋市のQ&A集は、野生動物は法律により原則として捕獲が禁止されていると案内しています。ヌートリアは特定外来生物なので、飼養、保管、運搬、野外へ放つことも原則禁止です。環境省は、野外で捕まえた特定外来生物を持って帰ることは運搬にあたり禁止だが、その場ですぐに放すことは規制の対象ではない、とも説明しています。生きたまま持ち帰る、別の川へ移す、飼うといった行為は避けてください。許可を受けた捕獲の手続きはヌートリア駆除の許可と報奨金で整理しています。

ヌートリアを見つけたときにしてはいけないこと:確認項目
してはいけない行為公的機関の案内理由・根拠
触る生駒市は決して触れないよう案内。京都市は不用意に近づかず見守るよう案内野生動物であること。伝染病を媒介する可能性(京都市)
餌を与える京都市と明石市が与えないよう案内棲みつく、繁殖する、噛まれた例がある(明石市)
捕まえる名古屋市は原則禁止と案内。許可や従事者証が必要鳥獣保護管理法と外来生物法
持ち帰る・飼う環境省は、飼養・保管・運搬を原則禁止と説明外来生物法第4条
別の場所へ放す環境省は、野外へ放つことを原則禁止と説明外来生物法による放出等の規制

参考:環境省|日本の外来種対策・外来生物法「何が禁止されているの?」

人への危険|噛まれる可能性と感染症について公的機関が述べていること

ヌートリアは基本的におとなしい動物とされますが、追いつめられたり興奮したりすると、噛み付いたり長い爪で引っ掻いたりすることがある、と宇部市は案内しています。農林水産省のマニュアル(令和6年3月版)も、性質は温和で飼育するとよく人になれると述べています。野生の個体でも、人に慣れているように見えて近づくのは危険です。

感染症については、京都市が伝染病を媒介する可能性を挙げているものの、具体的な病名や発生状況までは示していません。厚生労働省の動物由来感染症ハンドブック2026は、野生動物がどのような病原体を保有しているか分からないため安易に触らないこと、家庭での野生動物の飼育は避けることを呼びかけています。ヌートリアに限った注意ではありませんが、同じ考え方が当てはまります。

万一、噛まれたり引っかかれたりしたときは、自分で診断や処置を判断せず、早めに医療機関に相談してください。農林水産省の旧マニュアルも、野生動物に咬まれたり引っ掻かれたりした場合は必ず病院に行き、医師に相談するよう述べています。受診するときは、いつ、どこで、どんな動物に咬まれたかを伝えます。

参考:厚生労働省|動物由来感染症ハンドブック2026(PDF)

連絡先と連絡が必要な場面|自治体の案内を比べる

ヌートリアを見つけたとき、通報が必要かどうかは全国共通ではありません。確認した自治体の案内は、大きく3つに分かれます。1つ目は、目撃情報の連絡を求める、または受け付けるところ(山口市、明石市、高松市)。2つ目は、被害がなく目撃だけなら見守るよう案内するところ(名古屋市、京都市)。3つ目は、生活環境の被害と農作物の被害で窓口を分けて案内するところ(草津市、京都市)です。

目撃だけで連絡が必要か迷うときは、市区町村の農林・環境の担当に、ヌートリアらしい動物を見たが情報提供は必要か、と確認すれば足ります。野外で見つけた外来生物の問い合わせ先として、環境省は地方環境事務所等の連絡先一覧を案内しています。

連絡するときは、見た日時、場所、頭数、大きさ、行動、被害の有無を伝えます。位置が分かる写真があると役立ちますが、撮影のために近づく必要はありません。

連絡先と連絡が必要な場面|自治体の案内を比べる:確認項目
自治体(掲載・更新日)目撃しただけのとき被害・敷地への侵入があるとき
山口市(2022年4月更新)目撃した場合は農業政策課の有害鳥獣対策室へ連絡するよう案内このページに記載なし
高松市(2026年5月更新)目撃した場合や農作物被害は農林水産課へ連絡。令和8年5月に市内で生息を確認屋根裏など建物内に住み着いた場合は民間の害獣駆除業者に相談
明石市(2026年10月2日更新)農業政策課の申請フォームで、目撃情報も受け付ける農作物被害などは防除の要望をフォームで申請。許可なく捕まえない
京都市(ページの日付は2024年10月1日)見かけても不用意に近づかず見守る。食べ物は与えない自宅の敷地へ侵入するなどの場合は環境保全創造課。農作物被害が甚大な農家は農(林)業振興センター
名古屋市(2026年4月のQ&A集)目撃だけなら、そのまま見守る被害がある場合は、都市農業課で捕獲許可と捕獲箱の貸出を相談
草津市(2026年6月更新)市内の目撃情報が多いと案内住居等の敷地内の生活被害は環境政策課、田畑の農作物被害(家庭菜園を除く)は農林水産課

参考:京都市|特定外来生物ヌートリアについて

ヌートリアの被害の種類|農作物と、畦や堤防の穴

被害の中心は農業です。農林水産省のマニュアル(令和6年3月版)は、ヌートリアの被害はほぼ農業被害に限られ、用水路周辺の田畑で大きいと説明しています。水田では、田植え直後の苗や出穂時期に食害され、夏には休憩場所を作るために稲を倒すことがあります。畑では様々な作物が被害を受けますが、ピーマンやネギ類など独特のにおいがある作物は比較的被害に遭いにくいとされています。

巣穴の被害もあります。同マニュアルは、管理者の不在や高齢化により、用水路やため池の堤体に穴を開けられる被害が出始めていると述べ、岡山市で西日本豪雨のときに、掘削が遠因となってため池の堤体が部分的に崩れた事例を写真つきで紹介しています。明石市も、川やため池の土手に掘られた巣穴で、水田の水が漏れる被害を挙げています。

金額では、農林水産省の令和6年度の全国の農作物被害状況で、ヌートリアの被害金額は79百万円、約7,900万円とされ、前年度の50百万円から増えています。シカやイノシシと比べると小さな額ですが、用水路やため池に近い農地では、巣穴による水の漏れや堤体の傷みにも注意が必要です。

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】2-5 ヌートリア(令和6年3月版・PDF)

庭や敷地に入ってきたとき|追い払わず、入りにくくする

庭や敷地に入ってきたときの対応を、庭にいるとき、繰り返し来るとき、建物の中に入ったときに分けて整理します。

庭にいるときは静かに離れるのを待つ

明石市の案内は、大きな声を出して驚かせたり触ったりせず、庭にいるときは出ていくのを静かに待つよう求めています。室内に入ってしまった場合は、刺激せず、窓やドアをゆっくり開けて出られる道をつくります。追い回すと、噛まれるおそれが高まります。

繰り返し来るときは柵と環境管理

農林水産省のマニュアル(令和6年3月版)は、侵入防止柵では、噛み破れない材質を使うことが最も重要で、防鳥ネットは簡単に噛み破られると説明しています。柵の下端を手前に15センチほど折り曲げて潜り込みを防ぎ、柵の高さが頭胴長より高いと一定の効果があり、高さ70センチの柵はほぼ突破されないとされています。庭や畑の周りの草を刈って見通しをよくし、収穫しない作物や落ちた果実を水辺の近くに放置しないことも、被害を減らす工夫です。畑の被害全般は畑の害獣対策にまとめています。

建物の中に入ったときは民間の窓口も

屋根裏や軒下など建物の中に住み着いた場合は、自治体が対応しない例があります。高松市は、建物内に住み着いている場合は民間の害獣駆除業者に相談するよう案内し、環境省のホームページに認定鳥獣捕獲等事業者が掲載されているとしています。依頼先の違いは害獣駆除はどこに頼む?依頼先6つの違いで比べられます。滋賀県の自治体の例は草津市でアライグマ・ヌートリア被害を相談する、香川県の例は高松市のアライグマ・ヌートリアで確認できます。

参考:明石市|アライグマ・ヌートリア(特定外来生物)の防除