ヌートリアは何を食べる?田んぼ・畑で被害を受けやすい作物と時期

農林水産省の中型獣類編は、ヌートリアを水生植物や河岸の植物を中心に食べる草食性の動物と説明しています。そのうえで田畑にも現れ、稲だけでなく各種の野菜を含む50種ほどの作物で被害が報告されているとしています。ピーマンやネギ類のように独特のにおいがある作物は、被害に遭いにくいようだとも書かれています。2009年度作成の同省の特定外来生物編は、ヨシやマコモの茎や根茎、ヒシの実を好み、農作物では水稲の苗、ニンジン、サツマイモをよく食べるとしています。

被害の時期は作物で違います。水田では、田植え直後の柔らかい苗と、出穂の時期に食害されることが多く、夏には休憩場所を作る目的で、かなりの面積の稲を倒すことがあります。鳥取県は、水稲では主に茎の部分が食べられると記載しています。野菜は一年を通じて被害が出ますが、巣穴の近くの植物が枯れる冬に増えると、特定外来生物編は説明しています。ニンジン、ハクサイ、ブロッコリー、ダイコン、サツマイモ、ダイズ、スイカ、メロンなどで被害があり、鳥取県はダイコンの地上部の根と茎が食べられた例を載せています。

活動が活発なのは夕方と明け方で、被害が出るのもこの時間帯が多いとされます。分布について、中型獣類編は静岡県以西の本州に限られるとし、香川県の小豆島にも個体群があると記載しています。家庭菜園での被害は報告されないことも多く、実際はもっと多いと考えられると、特定外来生物編は書いています。

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編 2-5 ヌートリア(令和6年3月版、PDF)

読者の疑問

ヌートリアは何を食べますか?

比較ガイド

水辺の植物を中心に食べる草食性です。田畑では稲の苗のほか、ニンジン、ダイコン、ハクサイ、サツマイモ、スイカなどの被害が資料に挙がります。ピーマンやネギ類は被害に遭いにくいと、農林水産省は記載しています。

ヌートリアの食べ跡・足跡・フン・巣穴の見分け方

ヌートリアかどうかは、食べ跡だけで決めず、足跡、フン、けもの道、巣穴を組み合わせて見ます。公的資料に載っている特徴を次の表にまとめました。資料によって数値に幅があるため、大きさは目安として使い、写真を撮って窓口に見てもらう方が確実です。

巣穴と穴掘りの見分け方

田畑で穴を掘る動物はほかにもいます。手がかりは、水辺に近い土手や畦に、直径20〜30cmほどの横穴が複数並んでいるかどうかです。特定外来生物編は、ヌートリアが土盛りの堤防や畦に横穴を掘って巣穴にし、出入口を複数作ると説明しています。河川に生息する個体は、巣穴を中心に流域1kmほどの行動圏をもつとされます。穴の中に手や棒を入れず、離れて写真を撮ってください。

似た動物との区別(マスクラット・アライグマ)

ヌートリアによく似た外来種にマスクラットがいます。特定外来生物編は、頭胴長が20〜30cmと小さく、尾が縦に平たく、爪が白く、後足に水かきがない点が違うとしています。同編の記載では、分布は東京都・千葉県・埼玉県の江戸川周辺で、ヌートリアの分布とは重なっていませんでした。

水辺の動物をアライグマと取り違えることもあります。鳥取県のマニュアルは、アライグマの足跡は5本指で、手のひらと長い指、爪痕が特徴だとしています。足跡の写真が、窓口で動物を絞り込むときの分かれ目になります。

ヌートリアの食べ跡・足跡・フン・巣穴の見分け方:確認項目
痕跡資料に載っている特徴見るときの注意
足跡前足は親指が短く、通常4本の指と爪の跡。後足は5本の指と爪に、水かきの跡が残ることもある。特定外来生物編は、前足で6cm四方、後足で長さ12cm・幅7cm、歩幅20cmほどとしている田の泥や湿った土で確認しやすい。舗装面では長い尾を引きずった跡が残る
フン特定外来生物編は、濃い緑から黒で長さ3cmほどのソーセージ状。鳥取県は、ラッカセイに似た5cmほどの形で、水中や水際にあり、排泄直後は水に浮くとしている資料で大きさが違うため、形と落ちている場所を合わせて見る
けもの道水路からの上り口に、草が倒れて泥が付いた通り道ができる(鳥取県)。巣穴の周りには複数のけもの道がある(特定外来生物編)食べ跡や巣穴につながっているかを見る
巣穴水辺の土手や畦に掘る横穴。直径20〜30cm、奥行き数mで、複数の穴が密に並ぶことが多い。水面付近以外にも出入口がある場合がある巣穴の周りは食べ尽くされて植物がなくなることがある

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 特定外来生物編(アライグマ、ヌートリア、キョン、マングース、タイワンリス、平成21年度作成)

畦・ため池・水路の穴を点検する|見つけたときの管理者への連絡

ヌートリアの被害は、食べられることだけではありません。農林水産省の中型獣類編は、近年、管理者の不在や高齢化によって、用水路やため池の堤体に穴を開けられる被害が出始めていると説明しています。岡山市北区の例として、ヌートリアの掘削が遠因になり、2018年の西日本豪雨のときにため池の堤体が部分的に崩れた事例が写真付きで載っています。堤体の内側の管理が不十分で藪になっていたことが、ヌートリアを呼び込む形になったと書かれています。

自治体の案内にも同じ内容があります。明石市は、川やため池の土手に穴を掘って巣を作り、水田の水が漏水する被害が出ていると案内し、山口市も、畦の破壊による漏水が起きていると説明しています。

ため池や水路は、田の持ち主とは別の人や組織が管理していることがあります。農林水産省は、ため池の権利関係が不明確で複雑になっていることを課題に挙げ、所有者や管理者に適正な管理の努力義務を定める法律を設けたと説明しています。都道府県が指定する特定農業用ため池では、堤体の掘削など形を変える行為が知事の許可制です。ため池の穴は自分で掘ったり埋めたりせず、位置と状態を記録して管理者に伝えてください。管理者が分からないときは、市町村の農政担当に問い合わせます。

畦・ため池・水路の穴を点検する|見つけたときの管理者への連絡:確認項目
場所見るところ見つけたときの動き
田の畦水路側の畦に、直径20〜30cmほどの穴が並んでいないか。水が抜けたり、畦が沈んだりしていないか穴の位置と日付を写真に残し、田の所有者や耕作者に伝える。水の漏れが続くときは、水を管理する人にも連絡する
水路の土手草が倒れて泥が付いたけもの道、水面付近以外の出入口、食べ跡水路を管理する組織や市町村の農政担当に、場所が分かる地図と写真を渡す
ため池の堤体堤体の穴、内側の藪化、水際の草の倒れ、穴の周りの崩れ堤体は自分で掘らず、ため池の管理者または市町村の担当課へ連絡する。崩れそうな状況なら、すぐに伝える
柵の足元柵の下端付近の掘り返し跡、折り曲げた部分のめくれ土を戻して下端を固定し直す。繰り返し掘られる場所は、柵の構造を見直す

参考:農林水産省|農業用ため池の管理及び保全に関する法律(2026年10月3日確認)

ヌートリア対策の柵の作り|農林水産省・鳥取県のマニュアルの要点

侵入防止柵は、設置の仕方で効果が大きく変わると、農林水産省の中型獣類編は述べています。ヌートリアは柵に着くと周りを慎重に確かめ、まず噛み破れそうな場所を探し、見つからなければ柵の上端に手をかけて引き倒そうとします。失敗すると柵の下を潜り抜けようとし、それもできないと乗り越えようとします。この順番に合わせて、一つずつ潰していくのが考え方です。

鳥取県のマニュアル(平成20年策定の指針に沿ったもの)は、下部をワイヤーメッシュやトタン板、上部を電気柵またはネットにした複合柵を勧めています。電気柵を使う場合の安全上の決まりは、畑の害獣対策の記事でも整理しています。

柵の要点|材質・支柱・下端・上端

令和6年3月版の中型獣類編が挙げる要点を、柵の部位ごとに整理します。最も重要なのは噛み破れない材質を使うことで、防鳥ネットなどは簡単に噛み破られると書かれています。次に重要なのは、引き倒しが起きないようにしっかりした支柱を設置することです。

  • 材質:噛み破れないものを使う。防鳥ネットなどは簡単に噛み破られる
  • 支柱:上端に手をかけて引き倒されないよう、しっかり立てる
  • 下端:ヌートリア側から見て、柵の下端を手前に15cmほど折り曲げ、潜り抜けを防ぐ
  • 上端:上の15cmほどを支柱に固定しないでおくと、よじ登ろうとして体重をかけたときに柵が折れ曲がり、落ちることで登るのをやめるようになるとされる。固定しない部分が10cmほどだと足が届いて踏ん張れるため、長さが重要
  • 経路:圃場への侵入経路に、迂回させる障害物をいくつか置くと、侵入をあきらめることが多い

高さと埋め込みは資料で数値が違う

高さと下側の処理は、資料で数値が違います。令和6年3月版は、頭胴長より高いと一定の効果があり、高さ70cmの柵はほぼ突破されなかったと記載しています。2009年度作成の特定外来生物編は、地上高を40cm以上とし、柵の下は地中に20cmほど埋め込むとよいと書いています。どちらも、乗り越えさせず、下を掘らせないための数値です。資材を揃える前に、市町村の農政担当に、地域で勧めている形を確認すると、買い直しを避けられます。

ヌートリア対策の柵の作り|農林水産省・鳥取県のマニュアルの要点:確認項目
資料高さ下側上側・その他
農林水産省 中型獣類編(令和6年3月版)ヌートリアの頭胴長より高いと一定の効果。高さ70cmの柵はほぼ突破されなかったと記載ヌートリア側から見て下端を15cmほど折り曲げる上端15cmほどを支柱に固定しない。噛み破れない材質としっかりした支柱。迂回させる障害物を置く
農林水産省 特定外来生物編(2009年度作成)地上高40cm以上(別項では40〜50cm)地中に20cmほど埋め込む、または農地の外側へ折り返すネットだけでは破られることがあり、プラスチック製波板と併用。金網などに電気柵を組み合わせるとより効果的
鳥取県 ヌートリア・アライグマ防除マニュアル高さの数値は確認できず(複合柵の例を図示)下部はワイヤーメッシュ、トタン板、畦波板。メッシュの目は5cm程度より狭いもの上部は電気柵またはネット。電気線の上下の間隔は10cm前後(要調整)。集団で設置すると効果が高い

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編 2-5 ヌートリア(令和6年3月版、PDF)

田んぼ・畑で時期別に進める環境管理|草刈りと残さの片づけ

ヌートリアは水辺から離れたがらない性質があるため、水辺から農地までの経路を動きにくい状態に保つことが有効だと、特定外来生物編は述べています。具体的には、田畑のまわりの草を刈って見通しを良くすること、巣穴の周辺の草を刈り払うことの2点で、移動経路を断つとともに餌場を減らす効果があるとされます。

もう一つは、引き寄せる原因を作らないことです。鳥取県のマニュアルは、餌付けをしない、クズ野菜や生ごみを水辺の近くに放置しない、水辺近くの草を刈って隠れ場所と侵入ルートを減らす、と案内しています。農林水産省も、廃棄した野菜や収穫しない作物が餌場になっているとして、残さの管理までが栽培技術だと述べています。

田んぼ・畑で時期別に進める環境管理|草刈りと残さの片づけ:確認項目
時期起こりやすいこと先に済ませておきたいこと
田植えの前から直後柔らかい苗が食べられやすい水路側の畦際の草刈り、柵の破れと下端の確認。植えたばかりの苗を守りたい時期は、捕獲の効果も見込めるとされる
出穂の時期稲が食害されることが多い柵の倒れや隙間の見回り、水路沿いの見通しの確保
収穫のあと〜冬巣穴の近くの植物が枯れ、野菜の被害が増える収穫残さやクズ野菜を水辺に置かない。野菜畑の柵を点検する

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 特定外来生物編(アライグマ、ヌートリア、キョン、マングース、タイワンリス、平成21年度作成)

ヌートリアの捕獲は自治体と連携して|外来生物法と鳥獣保護管理法の線引き

ヌートリアは特定外来生物に指定されています。環境省は、特定外来生物を飼う、保管する、運ぶことを原則禁止とし、野外へ放つことも原則禁止だと案内しています。京都市も、生きたまま持ち運んだり飼育したりすることは規制されていると説明しています。田畑で捕まえた個体を別の場所へ運んで放す、ペットとして飼うといったことはできません。

捕獲の道筋は三つあります。ヌートリアは狩猟鳥獣でもあるため、わな猟免許と毎年の狩猟者登録による狩猟、鳥獣保護管理法に基づく有害鳥獣捕獲の許可、そして外来生物法に基づく防除実施計画です。計画は自治体などが作って国の確認や認定を受けるもので、鳥取県は、市町村が計画を作れば、免許がなくても講習会を受けて捕獲でき、有害捕獲の許可も不要になるとして、詳しくは市町村へ問い合わせるよう案内しています。

ただし、捕獲だけで被害を抑えるのは難しいと、中型獣類編は述べています。岡山県の例では2年間に約5,000頭を駆除しましたが、効果が半年も続かない地域が大半でした。柵や環境管理と合わせ、植えたばかりの苗を守る時期のように、期間を絞って捕獲する考え方が示されています。従事者が箱わなを使うときの注意として、鳥取県のマニュアルは、原則1日1回以上の巡視と、感染症の可能性があるため革手袋を使うことを挙げています。

ヌートリアの捕獲は自治体と連携して|外来生物法と鳥獣保護管理法の線引き:確認項目
道筋要件の例確認する窓口
狩猟(鳥獣保護管理法)わな猟免許と狩猟者登録が必要。法令で定められた猟期と猟法で行う。北海道以外の猟期は11月15日から翌年2月15日都道府県(登録先)
有害鳥獣捕獲の許可(鳥獣保護管理法)農林水産業などの被害防止が目的。特定外来生物編(2009年度作成)は、原則として都道府県知事または市町村長の許可が必要で、通常1年以内、原則として狩猟免許所持者と整理している市町村の農政担当、都道府県
防除実施計画(外来生物法)自治体などが計画を作り、国の確認・認定を受ける。計画に定めがあれば鳥獣保護管理法の許可が不要で、免許をもたない人も従事できる(特定外来生物編)市町村の農政担当

参考:環境省|日本の外来種対策・外来生物法「何が禁止されているの?」

自治体の対応例|2026年10月3日時点の掲載を比べる

ヌートリアへの対応は、自治体ごとに窓口も条件も違います。次の表は、各自治体の公式ページに掲載されている内容を、2026年10月3日に確認してまとめたものです。掲載は更新されることがあるため、申し込む前に最新のページと窓口で確認してください。

お住まいの市区町村のページが見つからないときは、農政担当または環境担当に、ヌートリアの捕獲に関する制度があるかを電話で聞くと早く進みます。窓口が分かれる実例は、高松市のアライグマ・ヌートリアの相談先、福山市の箱わな貸出、草津市の箱わなの要件も参考になります。

自治体の対応例|2026年10月3日時点の掲載を比べる:確認項目
自治体掲載されている対応窓口の表示
京都市自宅の敷地に侵入するなど被害を受けている、またはそのおそれがある場合に、外来生物法に基づき市が捕獲を実施。檻を置く場所の提供や餌の付け替えへの協力が前提。農家は被害が甚大な場合に農(林)業振興センターへ環境政策局環境企画部環境保全創造課。農家は農(林)業振興センター
明石市2011年に防除実施計画を策定し、猟友会の協力で箱わなにより捕獲。申請には、所有地または管理地であること、設置の立会い、わなの見回り、設置場所での処分への同意が必要農業政策課
生駒市捕獲用の檻を最長3週間、無償で貸出し。捕まった場合は市の委託業者が回収地域活力創生部農林課
山口市目撃した場合は連絡するよう案内。特定外来生物は飼育・運搬が原則禁止と注意農業政策課有害鳥獣対策室

参考:京都市|特定外来生物ヌートリアについて

地域ぐるみで進める対策と相談先

公的マニュアルは、柵や環境管理を個人で終わらせず、地域で進めるよう勧めています。鳥取県のマニュアルは、柵を集団で設置する方が侵入防止効果が高く、かつ経済的だとしています。農林水産省も、食べ物になる物の放置を地域全体で共有して行動することが求められるとしています。

相談先は、まず市町村の農政担当または環境担当です。京都市の例のように、農作物の被害は農林系の窓口、家の敷地への侵入などは環境系の窓口と分かれていることがあります。相談のときは、次の情報を揃えておくと話が早く進みます。

  • 被害のある田・畑・水路・ため池の場所(地図に印を付ける)
  • 被害の時期と作物、水の漏れや畦の沈みの有無
  • 足跡・フン・食べ跡・巣穴の写真(大きさが分かる物を一緒に写す)
  • 柵の有無と、いつ破られたか
  • 水路やため池の管理者が分かる場合は、その連絡先

参考:鳥取県|ヌートリア・アライグマ防除マニュアル(PDF)