ハクビシンは鳥獣保護管理法の対象|捕獲は原則許可が必要
環境省の「捕獲許可制度の概要」は、鳥獣保護管理法では、鳥獣や鳥類の卵を、狩猟による場合を除いて、原則として捕獲・殺傷・採取することが禁止されていると説明しています。生態系や農林水産業への被害などがある場合に、環境大臣または都道府県知事の許可を受けて捕獲できる仕組みです。条文でも、第8条が鳥獣の捕獲等を禁じ、例外として許可を受けた場合や、狩猟鳥獣を狩猟として捕獲する場合などを挙げています。
ハクビシンは、狩猟鳥獣46種のうち獣類20種の一つです。狩猟として捕獲する場合は、狩猟免許と狩猟者登録、法定猟法、狩猟期間(北海道以外は11月15日から2月15日)などの制限があります。許可捕獲は狩猟と違って年間を通して可能ですが、許可された期間と区域に限られます。
ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミは、環境省令で法の適用除外とされており、ここがハクビシンとの違いです。ネズミ対策の感覚で、ハクビシンも自由に捕獲できると考えないようにします。
ハクビシンを箱罠で捕獲するのに、許可は必要ですか?
必要です。環境省は、狩猟による場合を除き、鳥獣の捕獲・殺傷は原則禁止で、被害がある場合に許可を受けて認められると説明しています。自治体の貸出や委託事業を使う場合も、条件に沿って手続きします。
外来種だが特定外来生物ではない|アライグマとの違い
環境省が2026年9月に公表した外来種リスト第2版(動物)では、ハクビシンは総合的に対策が必要な外来種のうち「防除推進外来種」に分類され、「特定外来生物」の欄には記載がありません。同じリストで、アライグマは「特定外来生物」の欄に記載があります。ハクビシンの他法令での位置づけの欄には、鳥獣保護管理法の狩猟鳥獣などが書かれています。
東京都の外来種対策マニュアルは、特定外来生物を選ぶ目安とされている明治期以降の導入かどうかなどの点から、アライグマは特定外来生物に指定され、ハクビシンは指定されていないと説明しています。国立環境研究所のデータベースは、ハクビシンについて、江戸時代に持ち込まれた記録があること、戦時中に毛皮用に持ち込まれたことを記載しています。
リストでの分類が同じでも、法規制は表のように異なります。アライグマの手続きをそのまま当てはめず、窓口で確認してください。見分け方はハクビシンとアライグマの違いにまとめています。
| 項目 | ハクビシン | アライグマ |
|---|---|---|
| 外来生物法の特定外来生物 | 指定なし(環境省リスト第2版の欄に記載がない) | 指定あり(同リストの欄に記載がある) |
| 環境省リスト第2版の分類 | 防除推進外来種 | 防除推進外来種 |
| 鳥獣保護管理法 | 狩猟鳥獣。許可捕獲か、狩猟として捕獲する | 狩猟鳥獣。許可捕獲か、狩猟として捕獲する |
| 外来生物法に基づく防除 | 対象外 | 国・都道府県の公示、市町村の国への確認、民間団体の国の認定により防除できる(農林水産省) |
| 生きたままの運搬・飼養・放獣 | 外来生物法の飼養等の規制はない。自治体は、放獣・譲渡・飼育につながらない処分を求める例がある(盛岡市) | 外来生物法で、飼育・保管・運搬は原則禁止。その場で放すことは規制対象外(環境省) |
| 被害がない場合の捕獲申請 | 自治体で異なる。横浜市は被害の防止が前提、盛岡市は被害の有無にかかわらず許可 | 横浜市:被害がなくても捕獲の申請ができる |
許可なしでできること・できないこと|行為別の表
どの行為に許可が要るかを、条文や自治体の案内から行為別にまとめます。許可の条件は自治体や都道府県で運用が異なるため、表は目安として、居住地の窓口で最新の案内を確認してください。
追い払いと侵入口の封鎖の進め方はハクビシンを屋根裏から追い出す方法に整理しています。捕獲を専門業者に頼む場合は、許可の手続きを誰が行うかも含めて、業者選びの7つの質問で確認します。
| 行為 | 許可などの扱い(資料の記載) | 補足 |
|---|---|---|
| 追い払う、侵入口を直す | 許可を前提にしない対策として、自治体が案内 | 水戸市・相模原市。閉じ込める形にならないよう、不在を確認する |
| 箱わなを自分で買って設置し、捕獲する | 許可が必要。許可なしでは禁止 | 世田谷区:許可なく捕獲することは禁止。自費で買って設置した罠にかかっても、区は引き取らない |
| 自治体から箱わなを借りて捕獲する | 許可証の交付や提示を条件にする例がある | 盛岡市:許可証の交付を受けた人が対象。酒田市:県知事の許可証を提示(狩猟期間中は不要) |
| 自治体の委託事業を使う | 自治体の要件に沿って利用する | 世田谷区・文京区・江東区など。江東区は、利用者に従事者証の携帯を求める |
| 狩猟として捕獲する | 狩猟免許と狩猟者登録が必要。猟期・区域・猟法の制限がある | 環境省:北海道以外は11月15日から2月15日 |
| 捕獲した個体を別の場所に放す、飼う | 自治体は、放獣・譲渡・飼育を認めない例がある | 盛岡市:拡散につながらないよう、捕獲実施者が適切に処分する |
| 毒餌を仕掛ける | 禁止(危険猟法) | 鳥獣保護管理法第36条。次の節で説明 |
毒餌・殺鼠剤を使えない理由
鳥獣保護管理法第36条は、爆発物、劇薬、毒薬を使用する猟法その他環境省令で定める猟法を危険猟法とし、これにより鳥獣の捕獲等をしてはならないと定めています。環境省の狩猟制度の概要も、爆発物・劇薬・毒薬を使う猟法を、人の生命や身体への危害を防ぐ観点で禁止される危険猟法の例に挙げています。
ハクビシンを殺す目的で毒餌や殺鼠剤を置くことは、許可のない殺傷にあたるうえ、使う薬剤によっては、この劇薬・毒薬を使う危険猟法にあたるおそれがあります。条文には、環境大臣が許可する危険猟法の仕組みもありますが、環境大臣に申請する別の制度です。住宅の害獣対策として自治体や業者が案内する手続きには、今回確認した資料では含まれていませんでした。法律以外にも、ペットや子ども、ほかの野生動物が口にするおそれがあり、動物が屋根裏や壁の内側で死ぬと、回収や清掃の問題が残ります。
ネズミの場合は事情が違います。環境省令は、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣として、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミを法の適用除外としており、ハクビシンはこの除外に含まれません。ネズミ用の薬剤は、製品の表示で対象動物や使用場所が決められているため、表示にない動物への使い方はしません。ネズミ対策の薬剤の考え方は殺鼠剤と捕獲器の比較にあります。
捕獲許可の申請先と、自治体が防除計画で対応する例
許可の権限者は、環境省によると、国指定の鳥獣保護区内や希少鳥獣などの場合は環境大臣、それ以外は都道府県知事です。多くの都道府県では、権限の一部を市町村長に移譲しています。許可の基準は、知事が策定する鳥獣保護管理事業計画に定められているため、詳細は都道府県の担当部局に確認することになります。農林水産省のマニュアルも同じ説明をしています。
盛岡市は、住宅内の被害を防ぐために、敷地内で小型のはこわなを使う場合は狩猟免許が不要でも、捕獲許可は必要としています。免許の要否と許可の要否は別の話で、条件は都道府県や市町村ごとに異なります。
許可を受けられる人の分け方(栃木県の例)
栃木県のマニュアル(2021年4月)は、アライグマ・ハクビシンの有害鳥獣捕獲許可を、捕獲場所の市町に申請するものとし、許可を受けられる人を次のように整理しています。
- わな猟免許を持ち、その年度または前年度に県の狩猟者登録を受けた人
- 自己の管理する住宅敷地内で、被害防止のために小型の箱わななどを使う人
- 自らの農業事業地内で小型の箱わななどを使い、1日1回以上見回るなど、錯誤捕獲による支障がないと認められる人
- 県や市町が開催する講習を受け、市町の防除従事者登録を受けて、小型の箱わなを使う人
東京都の防除実施計画の例
東京都は、アライグマ・ハクビシンの対策の基本方針として「東京都アライグマ・ハクビシン防除実施計画」を、令和8年4月に改定しました(令和8年4月1日から令和13年3月31日)。区市町と連携して捕獲を進めており、世田谷区などは、この計画に基づいて委託した専門業者が捕獲器を設置する事業を行っています。計画に参加する自治体の範囲や、対象となる建物の条件は、自治体ごとに異なります。
自治体の箱わな貸出・設置の条件と、他の動物がかかったときの連絡
自治体による箱わなの設置・貸出は、地域によって仕組みが違います。業者が設置して回収する型、箱わなを貸し出して利用者が管理する型、市では行わず専門業者や許可申請の案内にとどまる型があります。次の表は、2026年10月時点で確認した公式ページの記載から、条件と連絡の決まりを抜き出したものです。餌や設置場所などの作業方法は、各自治体や委託業者の説明に従い、この記事では扱いません。
共通して見られるのは、所有者・管理者の依頼であること、毎日の見回りができること、捕獲時に速やかに連絡することです。他の動物がかかった場合の扱いは、文京区のように業者がその場で逃がす型、盛岡市や酒田市のように直ちに放獣する決まりなど、条件に明記されています。岩手県は、猫など他の動物を誤って捕獲した場合や、捕獲物の処理に適切に対処する必要があることを、狩猟免許や保険を求める理由に挙げています。申し込む前に、窓口で条件を確認してください。現地調査を頼む前に伝えることも参考になります。
| 自治体(2026年10月時点の掲載) | 仕組みと主な条件 | 他の動物がかかったとき・捕獲されたときの連絡 |
|---|---|---|
| 世田谷区 | 区が委託した業者が捕獲器を設置。所有者・管理者の依頼、立会い、毎日の見回り、捕獲時の連絡に同意が必要。設置期間は原則1週間(希望で最大3週間延長)、同一年度内1回。公立施設や店舗・事業所などは対象外 | ハクビシン・アライグマがかかったら速やかに連絡。自費で買って設置した罠にかかった場合は、区の事業では引き取れない |
| 文京区 | 有資格の駆除業者が箱わなを設置(庭など屋外のみ)。家屋に侵入され糞尿被害がある、または庭の果樹に被害があることが要件。設置期間は原則2週間、年度内1回 | かかったら速やかに業者へ連絡し、業者が回収。他の動物がかかった場合も業者へ連絡し、業者がその場で逃がす |
| 江東区 | 区の委託業者が現地調査を行い、侵入の痕跡を確認できた場合に捕獲器を設置。利用者は従事者証を携帯し、毎日の見回りなどを行う。設置から2週間(延長で最大3週間) | 捕獲されたら委託業者へ速やかに連絡し、業者が捕獲器ごと引き取る |
| 盛岡市 | 市が箱わなを貸し出す。市から捕獲許可証の交付を受けた人が対象。設置、見回り、給餌、処分の費用は使用者の負担 | 捕獲が許可されていない獣類がかかったら、直ちに放獣。錯誤捕獲を防ぐため、定期的に見回る |
| 酒田市 | 市は駆除を行わず、小型箱わなを貸し出す。貸出申請書と県知事の許可証の提示が必要(狩猟期間中は不要)。貸出期間は90日以内または許可された期間、1日1回以上の点検 | 錯誤捕獲が生じたら、ただちに放す。捕獲した小動物は、殺処分したうえで焼却または埋設により処分 |
捕獲後の処置について自治体が定めていること
栃木県のマニュアルは、捕獲個体の運搬や処分は、原則として市町と捕獲従事者が連携して行うとしています。殺処分は、動物福祉と公衆衛生に配慮し、「動物の殺処分に関する指針」に基づき、できる限り苦痛を与えない方法で行い、一般廃棄物処理施設での焼却などで生活環境の汚染を防ぐよう求めています。農林水産省のマニュアルも、捕獲後は速やかに、できる限り苦痛を与えない方法で処分するとしています。
盛岡市は、捕獲した個体を放獣、譲渡、飼育などの拡散につながることのないよう、捕獲実施者自身で適切に処分するよう案内しています。砺波市も、捕獲した個体は捕獲実施者による処分をお願いするとしています。一方、横浜市は、許可証・従事者証を持つ個人が捕獲した個体を、市が契約した専門業者が回収し、文京区や江東区では委託業者が回収します。
個人が処分の方法を決める必要はなく、また決めるべきでもありません。許可を受けた方法の範囲で、自治体や業者の決まりに沿って進めます。農林水産省は、野生動物には人獣共通感染症の病原体やマダニがいる可能性があるとして、直接触れないよう案内しています。体調に不安があるときは、診断を自己判断せず、医療機関や保健所に相談してください。
参考:砺波市|ハクビシンの対策
違反したときの罰則|条文で確認
鳥獣保護管理法第83条は、許可を受けずに狩猟鳥獣以外の鳥獣を捕獲した場合(第8条違反)、狩猟可能区域以外または狩猟期間外に狩猟鳥獣を捕獲した場合(許可を受けた場合を除く)、危険猟法で捕獲した場合(第36条違反)、登録を受けずに狩猟をした場合などについて、一年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金と定めています。ハクビシンは狩猟鳥獣のため、許可も狩猟の要件もない捕獲は、狩猟期間外の捕獲などとして、この罰則の対象になりえます。
これらは未遂も罰せられ、犯罪行為に使った物や、捕獲した鳥獣で犯人の所有に係るものは没収されます。許可を受けた後も、許可証や従事者証の携帯、猟具への表示などの義務があり、違反には三十万円以下の罰金が定められています(第86条)。許可の条件に違反した場合は、六月以下の拘禁刑または五十万円以下の罰金です(第84条)。
罰則の適用は個別の事案ごとに判断されます。迷う行為は、始める前に自治体の窓口や専門業者へ確認してください。







