コウモリの鳴き声はどう聞こえる?「キー・キー」と確認できなかったこと
前橋市は、コウモリによる生活被害として、羽ばたいて飛ぶ音がうるさいこと、天井裏などでキー・キーと鳴く声がすることを挙げています。今回確認した省庁、自治体、研究機関の資料のうち、住宅に出るコウモリの声を擬音で書いていたのは、前橋市のこのページだけでした。検索でよく調べられている「キュッキュッ」と聞こえるかどうかを説明した公的資料は、確認できていません。
擬音は、聞く人や建物の構造で変わります。「キュッキュッ」と聞こえるから、あるいは聞こえないからという理由で、コウモリだと決めたり、除外したりはできません。声は動物に気づくきっかけとして使い、いつ、どこで、どのくらい続いたかを記録して、ほかの手がかりと合わせます。
コウモリの鳴き声は「キュッキュッ」と聞こえますか?
前橋市は、天井裏などでキー・キーと鳴く声を被害の例に挙げていますが、「キュッキュッ」と書いた公的資料は確認できませんでした。擬音は聞く人や建物で変わるため、声だけで決めず、夕方の出入りとフンも確かめます。
人に聞こえる声と超音波の違い|アブラコウモリの超音波は聞こえない
コウモリは、口や鼻から出した超音波が物に当たって返ってくる音を聞いて、虫や障害物の位置を知ります。国土交通省の国土技術政策総合研究所の用語解説は、この音を国産種では10〜120kHzの超音波域が多いと説明しています。1秒間の振動数を表すkHz(キロヘルツ)のうち、20kHz未満を可聴音、それ以上を超音波とし、可聴音から超音波にまたがる音を出すコウモリもいると付け加えています。
なごや生物多様性センターの調査報告は、名古屋市内で録音した音のうち、飛びながら出す探索音の終部周波数が40kHz台のものを、アブラコウモリと判定しています。一方、10kHz台の低い音を出す種類は人の耳でも聞き取れると書かれ、愛知県と周辺では、そのような低い音を出すのはオヒキコウモリだけとされています。住宅の周りを飛ぶ普通のアブラコウモリの、飛行中の声は人に聞こえません。前橋市が挙げる「キー・キー」は、これとは別の、人に聞こえる音を指していると考えられますが、資料は音の種類までは説明していません。
| 音の種類 | どんな音か | 人の耳に聞こえるか | 資料の記載 |
|---|---|---|---|
| 飛びながら出す超音波(探索音) | 虫や障害物の位置を知るために、口や鼻から出す | アブラコウモリは40kHz台で、聞こえない | なごや生物多様性センターは40kHz台をアブラコウモリと判定。国総研は20kHz未満を可聴音、それ以上を超音波とする |
| 羽音 | バタバタと飛ぶ音 | 聞こえる | 前橋市が生活被害の例に挙げている |
| ねぐらでの鳴き声 | 天井裏などでキー・キーと鳴く | 聞こえる | 前橋市が被害の例に挙げている。国総研は、毛づくろい中のコミュニケーション音声でねぐらを確認できる場合があると説明 |
| 低い周波数の探索音を出す種類 | 終部周波数が10kHz台の音 | 人の耳でも聞き取れる | なごや生物多様性センターは、愛知県と周辺ではオヒキコウモリのみとしている |
- 超音波を聞こえる音に変える専用の機器(バットディテクター)は、調査用に使われる機器で、家庭で用意する必要はない
- 聞こえる音と夕方の出入りの記録があれば、相談はできる
参考:環境省 生物多様性センター掲載|なごや生物多様性センター(野呂達哉)都市域名古屋には何種類のコウモリが生息しているのか?音声による種同定の試み(PDF)
鳴き声が聞こえやすい時期と時間帯|活動の時期から整理する
鳴き声が増える時期や時間帯を数値で示した公的資料は、確認できませんでした。そこで、活動する時間帯と季節に関する記載を手がかりに整理します。東京都ペストコントロール協会は、アブラコウモリが日没後に活動し、街灯に集まる昆虫を食べると説明しています。前橋市は、活動期間を春から秋の夕暮れとし、冬は11月頃から4月頃まで冬眠するとしています。夕方から夜にかけての羽音や出入りの音が、聞こえやすい時間帯の候補になります。
国総研の用語解説は、コウモリ類が午後に目覚めてから夕方に外へ出るまで、翼の毛づくろいに長い時間を使うものがあり、そのときのコミュニケーション音声でねぐらの存在を確認できる場合もあると説明しています。この説明はコウモリ類一般のもので、住宅のアブラコウモリで同じように聞こえるかは、資料から言えません。夕方の出入りの前後に、天井裏や戸袋から音がしないかを聞いてみる理由にとどめます。
| 時期 | 資料にある記載 | 聞こえる音で意識すること |
|---|---|---|
| 春から秋の夕暮れ | 活動期間は春から秋の夕暮れ(前橋市)。日没後に活動する(東京都ペストコントロール協会) | 夕方から夜の羽音や出入りが中心。夜遅い時間の音とは別に記録する |
| 初夏から夏 | 出産期は初夏、7月頃(前橋市)。子は約30日で巣立つ(東京都ペストコントロール協会)。まだ飛べない幼獣のいる6〜8月は封鎖を避ける(浜松市) | 子のいる時期の音は、閉じ込めを避けるため、音がしても出入口を先に塞がない |
| 秋 | 前橋市は、繁殖期を10月としている。東京都ペストコントロール協会は、11月頃には冬眠するとしている | 活動期の終わり。「繁殖期」が指す時期は資料で異なるため、月だけで判断しない |
| 冬(11月頃から4月頃) | 冬は冬眠する(前橋市)。国内で年間を通じて家屋を休息場所にする唯一の種(国総研) | 音が止まっても、いなくなったとは限らない。春に再び聞こえることがある |
ネズミの鳴き声との聞き分け|比較表
天井裏の音は、ネズミの可能性が常にあります。東京都のねずみ防除指針は、捕獲したばかりの元気なドブネズミはよく鳴くが、クマネズミはあまり鳴かず、ただし幼獣はよく鳴くと説明しています。日本ペストコントロール協会は、ネズミの音の被害として、夜間に天井裏や壁の中をうるさく走り回ることを挙げています。大阪府は、ネズミが最も活発なのは日没後の数時間と夜明け前だとしています。コウモリも日没後に動くため、活動する時間は重なり、鳴き声の聞こえ方だけでなく、音の種類と痕跡を並べて比べる必要があります。
表のどの行も、片方だけで決める材料にはなりません。違いが出やすいのは、夕方に外へ飛び出す出入りと、フンの落ちる場所です。ネズミの鳴き声と音の聞き分けはネズミの鳴き声はどんな音?、天井裏の音全般は天井裏で音がするときの最初の対応に、屋根裏に入る動物の照合表は屋根裏のコウモリの確認と準備にあります。
| 比べる点 | コウモリ | ネズミ | 聞き分けの手がかり |
|---|---|---|---|
| 聞こえる音 | バタバタという羽音、キー・キーという鳴き声(前橋市) | 走り回る音(日本ペストコントロール協会)。幼獣やドブネズミの鳴き声(東京都) | 擬音だけでは区別できない。羽音のような音か、走る音か、鳴き声かを分けて書く |
| 活動する時間 | 日没後に活動(東京都ペストコントロール協会) | 日没後の数時間と夜明け前(大阪府)。留守の時や夜中が多い(東京都) | 夕方の早い時間に始まるか、夜明け前にも続くかを記録する |
| 動き方 | 出入りの穴から外へ出て、夜に飛ぶ(東京都ペストコントロール協会) | 壁際や物陰を通路にし、広い空間をめったに横切らない(大阪府) | 夕方に外へ飛び出す姿が見えるかを確かめる |
| フンの大きさ | 5〜10mm、もろい。夏に軒先や屋根の下に多い(東京都ペストコントロール協会) | ドブネズミ1〜1.5cm、クマネズミ1cm前後、ハツカネズミ0.5cm(東京都) | 大きさは重なる場合がある。落ちる場所と合わせて見る |
| ほかの痕跡 | 出入りに使う穴にフンが堆積し、夜間の出入りが確認できる(東京都ペストコントロール協会) | 音、かじり跡、足跡、体のこすり跡(東京都)。足跡やこすり跡は黒光りする | ラットサインがあるかを探す |
音以外で確かめる方法|夕方の出入りを地上から観察する
鳴き声より確かめやすいのは、日没の前後に外から出入りを見ることです。東京都ペストコントロール協会は、コウモリが出入りしている穴にはフンが堆積し、夜間の出入りが確認できると説明しています。浜松市は、フンが落ちている場所を侵入口の候補とし、コウモリが家にいない時間帯を調べるよう案内しています。見る場所は、フンが落ちている位置の真上と、軒、戸袋、換気口、屋根と壁のすき間などです。
観察の段取りと記録例はコウモリの出入りを記録する観察の段取りにまとめています。数日続けても出入りが見えない場合は、音の原因がコウモリ以外の可能性もあるため、断定せず調査を相談します。
- 地上から見える範囲だけを見る。屋根や脚立には上らない
- ライトを当てたり、音を立てたりして、追い立てない
- 日没の少し前に立ち、飛び出した時刻と、出た場所を記録する
- 出入りが見えた日も、見えなかった日も、同じ書式で残す
音以外で確かめる方法|フンの大きさと落ちる場所
川越市は、屋根裏などから出入りしている場合や、黒くて5mm程度の細長いフンが家の周りにたくさん落ちている場合などを、コウモリが家に棲みついていると考えられる例に挙げています。東京都ペストコントロール協会が示す5〜10mmという大きさや、ネズミのフンより崩れやすいという説明と合わせて、フンの大きさと場所を記録します。コウモリのフンは、出入りに使うすき間の下に落ちるという説明もあります。
京都市の「衛生動物だより」は、イエコウモリのフンは外観がネズミのフンと色や形がよく似ており、保健所には、ガレージや壁面の穴の近くのフンをネズミのものと間違えて相談に来る人が多いと紹介しています。同じ資料は、内容物を調べれば区別できると説明していますが、フンを割ったり潰したりする必要はありません。粉を吸い込まないためにも、落ちる位置と出入りの記録で確かめます。粒の写真を並べた比較はコウモリとネズミのフンの見分け方にあります。
鳴き声を記録して相談するときの伝え方と、相談を考える目安
東京都のねずみ防除指針の聞き取りの項目は、「音がした」「声がした」について、場所、時間、どんな音かを書く形になっています。コウモリの音でも、同じ項目で記録できます。日付、時刻、天井裏か戸袋か換気口か、羽音のような音か鳴き声か、続いた長さ、夕方の出入りが見えたかを書き留め、可能なら録音も残します。
音が数日続き、夕方に外へ出入りする様子やフンの堆積も見つかる場合は、住み着きの可能性が高く、自分で確かめる範囲を超える段階です。東京都ペストコントロール協会は、環境整備を行っても効果が見られない場合は専門業者に依頼するよう案内しています。横浜市は市ではコウモリの捕獲や駆除を行っていないと、浜松市は原則として行っていないと案内し、専門業者への相談は有料としています。捕獲許可の窓口は主に都道府県で、権限の一部を市町村に移している地域もあり、手続きは地域で違うため、住んでいる市区町村に最初の窓口を確認してください。
音がしても、屋根裏へ入って確かめる、音のするすき間を先に塞ぐといった行動は避けます。浜松市が注意するように、中にコウモリが残っていると閉じ込めて死なせ、死体が臭気や害虫の発生源になるおそれがあるためです。



