モグラは鳥獣保護管理法の対象|家ネズミ3種との違い

鳥獣保護管理法は、鳥類または哺乳類に属する野生動物を「鳥獣」とし、第8条で、許可を受けた場合や狩猟鳥獣を狩猟として捕獲する場合などを除いて、捕獲や殺傷を禁止しています。モグラは哺乳類で、狩猟鳥獣の一覧にも入っていないため、狩猟として捕獲する道もありません。環境省も、鳥獣は狩猟による場合を除いて原則として捕獲・殺傷が禁止され、被害などがあるときに環境大臣または都道府県知事の許可を受けて捕獲できる仕組みだと説明しています。

ネズミ対策の感覚で考えやすい点に、注意が必要です。同法第80条と施行規則第78条は、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣として、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種を、法の適用から外しています。モグラはこの3種に含まれず、法の対象のままです。次の表で、動物ごとの扱いを比べます。

モグラは鳥獣保護管理法の対象|家ネズミ3種との違い:確認項目
動物鳥獣保護管理法での扱い根拠
ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミ(家ネズミ3種)法の適用除外。この法律の捕獲許可は要らない法第80条、施行規則第78条
モグラ(モグラ科)法の対象で、狩猟鳥獣ではない。農業・林業の事業活動に伴う捕獲は、許可不要の例外法第8条・第13条、施行規則第12条
家ネズミ3種以外のねずみ科の種法の対象。モグラと同じく、農業・林業の事業活動に伴う捕獲は許可不要の例外施行規則第12条
ハクビシン・アナグマなどの狩猟鳥獣法の対象。狩猟か、許可を受けた捕獲が必要施行規則別表第二、環境省の狩猟制度の概要
コウモリ法の対象で、狩猟鳥獣でも、許可不要の例外の対象でもない施行規則別表第二、第12条

参考:e-Gov法令検索|鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律

読者の疑問

モグラ駆除に許可は必要ですか?

比較ガイド

モグラは鳥獣保護管理法の対象で、許可なく捕獲することは原則禁止です。農業・林業の事業活動に伴いやむを得ずする捕獲は、省令で許可不要とされていますが、庭や家庭菜園が当たるかは条文から決められないため、自治体の窓口に確認してください。

農業・林業の事業活動に伴う捕獲の例外|条文でどこまで書かれているか

例外の根拠は、法第13条第1項です。農業または林業の事業活動に伴い、捕獲や採取をすることがやむを得ない鳥獣で環境省令で定めるものは、第9条第1項の許可を受けずに、省令の定めるところにより捕獲できます。省令(施行規則第12条)は、対象としてモグラ科の全種と、ねずみ科の全種(ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミを除く)を挙げ、第13条は、許可を要しない捕獲を「農業又は林業の事業活動に伴いやむを得ずする捕獲等」と定めています。

条文が書いているのは、ここまでです。「農業又は林業の事業活動」に家庭菜園や庭の芝生が含まれるか、「やむを得ず」とはどの段階かといった解釈は、条文に出てこないため、窓口で確認します。福井市のQ&Aは、モグラは鳥獣保護管理法の対象で、農業または林業に係る被害を防止する目的に限り捕獲が可能だが、捕獲許可の申請が必要になる場合があるので、担当課に相談するよう案内しています。

なお、モグラ科には、施行規則の別表で希少鳥獣に挙げられている種(エチゴモグラ、センカクモグラ)があります。森林総合研究所の資料によると、エチゴモグラは越後平野、センカクモグラは尖閣諸島の魚釣島に生息します。該当する地域では、生息状況を都道府県に確認してから対応してください。

農業・林業の事業活動に伴う捕獲の例外|条文でどこまで書かれているか:確認項目
状況条文から読める扱い確認すること
農家が、販売する作物の畑や果樹園で、モグラの被害を防ぐ農業の事業活動に伴う捕獲として、許可不要の例外に当たる可能性が高い被害の状況と、やむを得ない理由。福井市は、許可の申請が必要になる場合があると案内している
林業者が、植林地などで被害を防ぐ林業の事業活動に伴う捕獲として、例外に当たる可能性がある事業としての実態と、都道府県の運用
家庭の庭・芝生・花壇・家庭菜園例外は事業活動を要件にしており、当てはまるかは条文から決められない。当てはまらない場合は、第9条の許可が必要市町村か都道府県の鳥獣担当に、捕獲の要否と申請先を確認する
ゴルフ場・公園・墓地など、農業・林業以外条文の文言は「農業又は林業」。それ以外の事業が例外に入るかは確認が必要管理者が窓口に確認する。許可が必要なら、第9条の許可を申請する

参考:e-Gov法令検索|鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則

庭・芝生・家庭菜園で捕獲したい場合|許可の申請先と準備

事業ではない庭や芝生で捕獲する場合の入口は、第9条の捕獲許可です。許可は、学術研究、鳥獣の保護または管理などの目的で受けられます。法第2条は、鳥獣の「管理」を、生物の多様性の確保、生活環境の保全または農林水産業の健全な発展を図る観点から、生息数を適正な水準に減らすことなどと定めています。許可の権限者は、環境省によると、大臣許可の対象を除いて都道府県知事で、多くの都道府県では権限の一部を市町村長に移しています。

許可の基準は、都道府県の鳥獣保護管理事業計画に定められています。モグラを家庭の庭で許可の対象にするかどうかは、都道府県の基準と窓口の運用で決まるため、条文だけでは結論が出ません。愛媛県の事業計画は、許可を要するネズミ・モグラ類などの捕獲で、猟具の大きさなどの理由から猟具ごとに標識を付けられない場合は、設置した場所の周辺に立て札などで標識を設ける方法も認めています。都道府県の基準で運用が細かく決まる例です。

許可が出ると許可証が交付されます。許可証は捕獲のときに携帯し、求められたら提示します。わなや網を使うときは、猟具ごとに、住所・氏名、許可の有効期間、許可証の番号、鳥獣の種類を書いた標識を、見やすい場所に付ける決まりがあります(法第9条第12項、施行規則第7条)。許可の有効期間が終わったら、30日以内に捕獲の結果を報告します。

許可を申請するときは、被害の写真など事由を示す書面をそろえておくと、窓口での説明が進みます。申請書に書く主な項目(施行規則第7条)は、次のとおりです。

  • 申請者の住所・氏名・職業・生年月日
  • 捕獲するモグラの種類と数量(種類が分からないときは、窓口に相談する)
  • 捕獲の目的・期間・区域・方法(使う罠の種類と設置位置)
  • 捕獲したあとの処置(捕獲した個体をどう扱うか)
  • 捕獲する場所を示した図面と、罠など方法を示した図面
  • 被害の事由を示す書面(写真など。窓口が求める形式に従う)

参考:愛媛県|第13次鳥獣保護管理事業計画(計画書本文・PDF)

罠を使う前に確認すること|自作の罠・ペットボトルの罠も同じ

モグラの罠は、ホームセンターなどで売られる捕獲器や、自作の罠が話題になりますが、法律の判断は、罠の作り方や買い方では変わりません。許可が必要な場面で許可なく捕獲すれば、第8条違反です。罰則は第83条第1項第1号で、一年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金と定められ、未遂も罰せられます(同条第2項)。罠に使った物や、捕まえた鳥獣で犯人の所有するものは没収されます(同条第3項)。

市販の捕獲器の説明書に使い方が書かれていても、使う人の状況が許可の例外に当たるかどうかは、別の話です。説明書は商品の使い方を示すもので、法律上の判断は、条文と窓口の案内で行います。購入する前に、自治体へ問い合わせるのが確実です。罠を仕掛ける前の確認を、次の項目にまとめます。

  • 自分の捕獲が、農業・林業の事業活動に伴うものか、それ以外か整理した
  • それ以外なら、市町村か都道府県の窓口で、許可の要否と申請先を確認した
  • 許可があれば、許可証に書かれた期間・区域・方法の範囲で設置する
  • 罠ごとの標識(住所・氏名、有効期間、許可証の番号など)を付ける
  • 設置場所が、自分の管理する土地か、所有者の承諾を得た土地か確認した
  • 捕獲したあとの処置を、許可の内容に沿って決めておく
  • ペットや子どもが触れない位置かどうか確認した

参考:e-Gov法令検索|鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律

モグラに毒餌・薬剤は使えるのか|危険猟法と製品表示

毒餌については、法第36条が、爆発物・劇薬・毒薬を使用する猟法その他の危険猟法で、鳥獣の捕獲等をしてはならないと定めています。例外は、第13条第1項に基づく捕獲(農業・林業の事業活動に伴う例外)と、環境大臣の危険猟法の許可(第37条)を受けた場合です。したがって、第13条の例外にあたらない捕獲で、毒薬を使う方法をとることは、条文上は禁止の対象です。環境省も、許可捕獲では方法は問われないが、危険猟法などには制限があると説明しています。

第13条の例外が当てはまる農業・林業の場面でも、薬剤そのものは別のルールで使い方が決まっています。東京都の病害虫防除指針は、野ネズミ用の殺そ剤について、農薬なので容器・ラベルに書かれた使用法に従い、人畜に有害な薬剤が多いので、取り扱いと保管に注意するよう書いています。一方で、同じ指針の「モグラの防除法」に挙がる主な技術は、捕獲器、音や振動で追い払う方法、餌を減らす方法、通路の遮断で、毒餌は含まれていません。ネズミ用の薬剤を、表示にないモグラへ転用することはしません。

薬剤は、対象動物・使用場所・使用方法が表示されたものを、その範囲で使います。希釈や混合、量を自分で決めることは、この記事では扱いません。ペットや子ども、ほかの野生動物が口にする事故や、土の中で死んだ個体の回収の問題もあるため、庭での毒餌は避けて、窓口に相談してください。

参考:東京都産業労働局|令和7年版 病害虫防除指針 野ネズミ・モグラの防除法(PDF)

捕獲によらない対策|許可がいらない方法の使い分け

許可が必要かどうかで迷うなら、捕獲しない対策を先に試す方法があります。東京都の病害虫防除指針は、モグラの防除技術として、捕獲器(刺殺式、挟式、パイプ式などを、本道のトンネルに設置)、音や振動で追い払う方法(撃退用の発信器や、ペットボトルなどで自作できる風車)、餌を減らす方法、通路を遮断する方法を挙げています。モグラのトンネルは深くても1m程度なので、地中に網を張るか、深さ1mほどの溝を掘って進路を遮断する、とも書かれています。

生駒市のFAQは、ペットボトルで風車を作って地面に差すと、風で振動が地面に伝わってモグラが嫌がること、シナモンの臭いを嫌うので、切りたての枝を1〜2cm間隔で通り道に差し込むこと、消化できないガムを仕掛けることが、「効果があるといわれています」と案内しています。効果の程度までは示されていないため、試す場合は、モグラ塚の増減を日付つきで記録して確かめます。森林総合研究所の資料は、モグラ塚は1個体が何個もつくるため、塚の数がモグラの数を示すわけではないと説明しています。塚が多いからといって、大量にいるとは限りません。

捕獲によらない対策|許可がいらない方法の使い分け:確認項目
対策公的資料の記載許可との関係
風車・振動東京都と生駒市が紹介している。ペットボトルで自作できる捕獲しない方法で、捕獲許可の対象ではない。効果の程度は資料に明記がない
臭い・ガム生駒市が、シナモンの枝やガムを「効果があるといわれている」と紹介している仕組みは資料に説明がない。殺傷を目的とする使い方にならないか、市の窓口に確認する
餌を減らす東京都が、農業向けに土壌消毒や殺虫剤の土壌混和を紹介している農薬は表示に従う。モグラを捕獲する方法ではない
地中の遮断東京都が、深さ1mほどの溝や網を紹介している。トンネルは深くても1m程度捕獲しない方法
捕獲器(刺殺式・挟式・パイプ式)東京都が、本道のトンネルへの設置を紹介している事業の例外に当たるか、許可が要るかを先に確認する

参考:東京都産業労働局|令和7年版 病害虫防除指針 野ネズミ・モグラの防除法(PDF)

迷ったときの相談先|都道府県・市町村の鳥獣担当

許可の要否、申請先、必要な書類は、自治体で異なります。まず、住んでいる市町村の鳥獣被害対策の担当窓口(農林課や環境課など、名称は自治体で異なります)に電話し、「モグラの被害を防ぐために捕獲したい。家庭の庭の場合の扱いを教えてほしい」と聞きます。市町村が許可の権限を持たない場合は、都道府県の担当部署を案内されます。環境省は、権限者が都道府県知事で、多くの都道府県で一部が市町村長に移されていると説明しています。

窓口へ伝える内容は、場所(庭・芝生・畑・果樹園など)、被害の内容、被害を確認した期間、試した対策、捕獲したい理由です。農業者の場合は、農地での被害であることと、事業として栽培していることも伝えます。福井市のように、モグラの捕獲は市では行わず、相談を受けて許可の要否を案内する自治体もあります。モグラ塚かネズミの穴かを先に確かめたいときは、庭の土の盛り上がりがモグラかネズミの穴かの見分け方を使ってください。

個人での対応が難しいときは、専門業者に頼む方法もありますが、許可や例外の扱いを業者任せにせず、誰が許可の手続きをするのかを確認します。依頼先の違いは害獣駆除の依頼先6つの違いで比べられます。

参考:福井市|福井市野生動物に関する相談Q&A集(令和8年8月、PDF)

ハクビシンやコウモリの法律との違い

モグラの扱いは、狩猟鳥獣のハクビシンや、狩猟鳥獣でないコウモリとも違います。ハクビシンは狩猟として捕獲する道がありますが、狩猟免許や登録、期間の条件があり、被害防止の捕獲は許可が必要です。許可の枠組みや毒餌の扱いはハクビシン駆除の法律に整理しています。

コウモリは、施行規則第12条の許可不要の例外に挙がっておらず、狩猟鳥獣でもないため、捕獲には許可が必要です。許可の窓口や、巣の確認の考え方はコウモリ駆除の法律にまとめています。ハトについては鳩の駆除と法律を、畑の被害全般は畑の害獣対策を見てください。

参考:環境省|狩猟制度の概要(狩猟鳥獣)