畑・田んぼのモグラ被害|根が切られる・苗が倒れる、が確認できること
東京都の病害虫防除指針(令和8年版)は、モグラは肉食で直接農作物は加害しないが、採餌のときにトンネルを掘るため、農作物の根が切られたり、植えたばかりの苗が倒されたりすると説明しています。また、モグラが作ったトンネルがネズミの通路として使われる場合があり、その被害が大きいこともあるとしています。農作物の被害に関わるモグラは、関東の平地ではアズマモグラと説明されています。
畑では、被害を「根が切られる」「植えたばかりの苗が倒れる」という地中の掘削による傷みと、作物の地上部や実がかじられる被害とに分けて記録します。田んぼの畦(畦畔)については、モグラの巣室(休息や繁殖のための部屋)は土手などに設けられるとされています。ただし、畦に空いた穴から水が抜けるといった漏水を、モグラの被害として明記した公的資料は今回確認できませんでした。畦の穴は、大きさ・位置・水の動きを記録して、地域の普及指導センターなどに見てもらうのが確実です。
| 被害の見え方 | モグラを考える手がかり | 野ネズミを考える手がかり | 次に確かめること |
|---|---|---|---|
| 苗が倒れる・根が切れる | トンネル掘りで根が切られ、苗が倒される(東京都) | ネズミは農作物を食害する(東京都)。根や茎にかじり跡があれば野ネズミを疑う | 切り口が掘られて切れたのか、かじられたのか |
| 土が盛り上がる | 塚は、トンネルの土を地上へ押し出してできる(森林総研) | 塚の有無だけでは分けられない | 塚の分布と、新しい塚の日付 |
| 地表の穴 | 塚の中心の開口部がトンネルに続く(森林総研) | ハタネズミは畦畔や草地に生息し、坑道状の巣穴を作る(東京都) | 穴の周りの土の盛り上がりの有無と、並び方 |
| 畦や土手の穴 | 巣室は土手などに設けられる(東京都) | ハタネズミの生息地に畦畔が挙がっている(東京都) | 穴の大きさと水の動き。漏水の原因は資料から特定できず、現場で確認 |
参考:東京都産業労働局|病害虫防除指針(令和8年版)野ネズミ・モグラの防除法(PDF)
モグラは畑の作物を食べますか?
東京都の指針は、モグラは肉食で直接農作物は加害しないと説明しています。ただし、トンネルを掘る際に根が切られたり、植えたばかりの苗が倒されたりします。作物のかじり跡は、野ネズミなど別の動物を疑います。
モグラ塚とトンネルの見方|本道と遊び穴、塚の数は個体数ではない
森林総合研究所多摩森林科学園の資料は、モグラ塚を、地下で掘り進んだトンネルの土を地上へ押し出してできるもので、その下でモグラがトンネルを作っている証拠としています。ただし、1頭が何個も塚を作るので、塚の数はモグラの数を示さず、草地に比べて森の中ではトンネルがあっても塚ができにくい傾向があるとされています。塚の中心にある開口部は、トンネルに続いている、とも説明されています。
本道と遊び穴の見分け方
東京都の指針は、トンネルは本道と側道からなり、範囲は20〜50m四方に及ぶと説明しています。巣から採食地に至る本道は頻繁に使われ、トンネルを踏みつぶして、しばらくして元のとおり持ち上がっていれば本道と考えられる、土が盛り上がったところは遊び穴で通路ではない、とされています。1日に掘るトンネルは数十mに達し、ミミズやコガネムシの幼虫などを食べ、1日に体重の半分から同量以上の餌が必要といわれます。
繁殖・活動時間・種類の目安
繁殖について同指針は、3〜5月に交尾し、5〜6月に2〜5頭を産み、寿命は3〜4年としています。活動は朝と夕方が盛んで、嗅覚・触覚・聴覚は鋭いとされます。低地のモグラは、森林総合研究所の資料では、本州中部以南がコウベモグラ、本州中部以北がアズマモグラです。塚の数は個体数と直結しないため、同じ区画で日付つきに数えて、増減を見ます。
| 調べること | 方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| 本道かどうか | 塚と塚の間のトンネルを踏みつぶし、しばらくして持ち上がるかを見る(東京都) | 土が盛り上がっただけの場所は遊び穴で、通路ではない |
| 塚の数 | 10m×10mなど区画を決めて数える(森林総研の調査例) | 数は個体数を示さない。草地より森では塚ができにくい |
| トンネルの広がり | 20〜50m四方に及ぶ(東京都) | 畑の外の畦・草地・土手までつながる可能性を考える |
| 見回りの時間 | 活動は朝と夕方が盛ん(東京都) | 新しい塚は、見回りの日付と一緒に記録する |
野ネズミの食害との見分け|かじり跡・通り道・生息場所
東京都の指針によると、農作物に被害を及ぼす主なネズミはハタネズミやドブネズミなどで、農作物を食害するほか、資材を損傷させる被害ももたらします。ハタネズミは頭胴長106〜125mmほどで尾が短く、畦畔、草地、山林、牧野などに生息し、坑道状の巣穴を作って、主に植物性のものを食べるとされています。被害を受ける場所には、田畑、牧野、河川草地、施設園芸、果樹園、苗圃などが挙がっています。
ハタネズミは巣の周辺で動き、行動半径は15〜20mとされます。そのため指針は、ネズミは移動する動物なので、農地だけでなく住宅、畜舎、原野を含めた広い範囲での一斉の防除が最も効果的としています。切り分けの基本は、モグラは根を切って苗を倒し、野ネズミは作物や資材をかじる、という被害の違いを、写真と日付で残すことです。庭の土の盛り上がりの確認は庭の土の盛り上がりはモグラ?ネズミの穴を参照してください。
| 見る点 | モグラ | 野ネズミ(ハタネズミなど) |
|---|---|---|
| 食べ物 | ミミズ・コガネムシの幼虫などの動物質(肉食) | 主に植物性 |
| 作物への影響 | 直接は加害しない。根を切る、苗を倒す | 作物の食害、資材の損傷 |
| 生息場所 | 地中。トンネルは20〜50m四方に及ぶ | 畦畔・草地・山林・牧野。ハタネズミは坑道状の巣穴 |
| 通り道 | 本道と側道のトンネル | モグラのトンネルを通路に使う場合がある |
| 動く範囲 | 巣から採食地まで、本道で行き来する | ハタネズミは巣の周辺(行動半径15〜20m) |
畦・畑の管理による対策|トンネルを遮断し、野ネズミの隠れ場を減らす
東京都の指針が挙げるモグラの主な防除技術は、本道トンネルへの捕獲器(刺殺式・挟式・パイプ式など)、発信器や風車による音と振動での追い払い、餌になるミミズなどを減らすこと、通路の遮断の4つです。生駒市もペットボトルで作った風車を地面に差す方法を案内していますが、いずれも効果を検証した結果は資料に示されていません。補助として使い、塚の数の変化を日付つきで記録して判断します。
モグラ向け|通路の遮断と餌の抑制
通路の遮断について、指針は、モグラのトンネルは深くても1m程度なので、周囲の地中に深さ50〜60cmの網を張るか、深さ1m程度の溝を掘って進路を断つ、と書いています。畑の外周やあぜ際に配管や水路、隣地との境界がある場合は、掘る前に位置を確認してください。餌を減らす方法として、土壌消毒や殺虫剤の土壌混和も挙げられていますが、農薬は登録と使用基準に従う必要があるため、使うかどうかは地域の指導機関に確認します。
野ネズミ向け|除草・防護・時期
野ネズミは雑草が繁茂した環境を好むため、除草など圃場の整備が重要な被害回避対策とされています。物理的な手段として侵入防止ネットや防護ネット、耕種的な手段として輪作が挙げられています。防除の適期は、秋は巣穴が見つけやすく農閑期でもある11〜12月、春は繁殖に入る前の2〜3月です。畦や圃場のまわりの草を管理し、隠れ場所を減らすことが、野ネズミ対策の出発点になります。
| 対策 | 狙い | 資料での扱い | 注意 |
|---|---|---|---|
| 本道への捕獲器 | トンネル内での捕獲 | 刺殺式・挟式・パイプ式を例示(東京都) | 許可の要否は法律の章で確認する |
| 音・振動(風車・発信器) | モグラの追い払い | 東京都が例示。生駒市はペットボトルの風車を案内 | 効果を検証した結果は資料に示されていない |
| 通路の遮断 | 畑への進路を断つ | 深さ50〜60cmの網、または深さ1m程度の溝(東京都) | 配管・水路・境界を事前に確認する |
| 餌の抑制 | モグラの餌(ミミズなど)を減らす | 土壌消毒や殺虫剤の土壌混和を例示(東京都) | 農薬は登録と使用基準に従う |
| 除草・圃場の整備 | 野ネズミの隠れ場を減らす | 重要な被害回避対策(東京都) | 周辺の草地や畦も含めて、地域でそろえて行う |
農業での捕獲の法律上の扱い|許可が不要な場合と、必要な場合
鳥獣保護管理法では、モグラやネズミも野生の鳥獣にあたり、狩猟鳥獣以外の捕獲は原則として許可が必要です。ただし、農業又は林業の事業活動に伴い捕獲等をすることがやむを得ない鳥獣で環境省令で定めるものは、許可を受けずに捕獲できると第13条が定めています。施行規則第12条は、その対象を、もぐら科全種と、ねずみ科全種(ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミを除く)としています。野ネズミの個々の種がこの分類に入るかは、条文だけでは判断しにくいため、市区町村に確認してください。
施行規則第13条は、許可を要しない捕獲を、農業又は林業の事業活動に伴いやむを得ずする捕獲等としています。浜松市は、農林業を営む個人がこれらを敷地内で捕獲するには許可を得る必要はない一方、営業している施設(主にゴルフ場の芝生の被害)では、イノシシやカラスなどと同じく有害鳥獣捕獲許可が必要と案内しています。家ネズミ3種は法の適用除外で、許可は不要です。
条文には、家庭の庭や家庭菜園が「農業又は林業の事業活動」にあたるかどうかの記載がありません。自家用の菜園や庭、営業用の施設でどう扱われるかは、市区町村の鳥獣担当に確認してください。許可が必要なのに許可なく捕獲すると、第83条第1号で1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になります(許可不要者を除く)。第36条は、爆発物、劇薬、毒薬を使う猟法を原則禁止し、第13条第1項により捕獲する場合を除外していますが、農薬の殺そ剤は登録と使用基準があるため、ラベルの対象にモグラがあるかを確かめ、ネズミ用を別の動物に流用しないでください。
| 場面 | 許可の要否 | 根拠 |
|---|---|---|
| 農林業を営む個人が、自分の敷地でモグラ(または対象のネズミ)を捕獲 | 許可は不要(事業活動に伴いやむを得ない捕獲) | 法第13条、施行規則第12・13条、浜松市 |
| 営業している施設(ゴルフ場の芝生など) | 有害鳥獣捕獲許可が必要 | 浜松市 |
| 家庭の庭・家庭菜園 | 条文に記載がないため、自治体に確認 | 条文、市区町村への確認 |
| ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミ | 法の適用除外で、許可は不要 | 施行規則第78条、浜松市 |
| 毒薬・劇薬を使う猟法 | 原則禁止。農薬の殺そ剤は登録と使用基準に従う | 法第36条、農林水産省 |
忌避剤・資材は製品表示で確認する|農薬か、農作物に使えるか
農林水産省は、農薬取締法により、登録されていない農薬は使用できず、登録の際に使用できる作物、時期、量などの使用基準が決められ、登録されていても使用基準以外の方法では使用してはいけないと説明しています。東京都の指針も、殺そ剤は農薬なので、容器やラベルの使用法に従うよう求めています。畑や田んぼで資材を選ぶときは、まず「農薬か」「対象の動物は何か」「使える場所はどこか」をラベルで確認します。
例として、イカリ消毒のモグラ・コウモリクリン(公式商品ページ、2026年10月3日確認)は、錠剤の忌避剤で、適用はモグラとコウモリ、モグラへの持続は約3か月(使用状況で変わる)と表示しています。一方で、本品は農薬ではないので農作物を対象としたところでは使用しないこと、強いナフタリンのにおいが移るため畑の中での使用は控えること、花壇の中では枯れるおそれがあることも案内しています。モグラの忌避をうたう製品でも、畑の作物を守る用途には使えない場合がある、という例です。
生駒市は、ペットボトルの風車、シナモンの枝、消化できないガムを、効果があるといわれる方法として案内していますが、効果を確かめた結果は示されていません。定番の方法の位置づけは害獣の忌避剤だけで解決する?も参考になります。
| 表示で見る項目 | モグラ・コウモリクリンの表示例 | 畑・田んぼでの見方 |
|---|---|---|
| 区分 | 農薬ではない | 農作物を対象にした場所では使えない。登録農薬かどうかは、農林水産省の登録情報で確認する |
| 対象の動物 | モグラ、コウモリ | 野ネズミ用ではない。対象の動物をラベルで確認する |
| 使えない場所 | 畑の中(においが移る)、花壇の中(枯れるおそれ) | 作物に近い場所で使えるかを、表示で読む |
| 持続期間 | モグラは約3か月(使用状況で変わる) | 雨や土の条件で変わる前提で、効果を記録して判断する |
| 取り扱い | 使用時は手袋とマスクを着用 | 表示どおりに使い、保管場所も決める |
地域の普及指導センター・自治体に相談する
農林水産省によると、普及事業は、都道府県の専門の職員が直接農業者に接して農業技術や経営の支援を行う事業で、全国の普及指導センター等に約7,200人の普及指導員等が配置されています。モグラや野ネズミの被害は、地域の土質、作物、周辺の草地や畦の状況で出方が違うため、被害の写真と場所を持って、お住まいの地域の普及指導センターに見てもらうと、地域で使われている対策が分かります。
許可や法律の確認は、まず市区町村の鳥獣担当(農林担当)に問い合わせます。窓口や権限は自治体で異なります。浜松市の例のように、農林業を営む個人の捕獲と営業施設の捕獲では扱いが違うため、自分の場合がどちらにあたるかを伝えて確認します。ほかの動物も疑うときは畑の害獣対策の手順、建物まわりの調査や施工は害獣駆除はどこに頼む?も参考になります。相談に持っていく情報は、次のとおりです。
| 相談先 | 向く相談 | 持っていく情報 |
|---|---|---|
| 普及指導センター(都道府県) | 地域の被害の出方、対策技術 | 被害の写真、作物、圃場の周辺環境 |
| 市区町村の鳥獣担当(農林担当) | 捕獲許可の要否、事業活動にあたるかの確認 | 営農の形(農家か、家庭菜園か、営業施設か) |
| 調査や施工ができる専門業者 | 建物まわりへの侵入や、敷地の調査が必要なとき | 見積もりの内訳(調査・施工・処分) |
- 被害のある圃場の場所と作物、被害に気づいた日
- 根や苗の傷み、かじり跡、塚の写真(全景と接写、大きさが分かる物を添える)
- 畦・土手・草地・用水路など、周辺の環境
- これまでに使った資材や農薬の名前(ラベルの写真)
参考:農林水産省|普及事業とは





