タヌキの鳴き声は公的資料でどこまで確認できるか

今回、農林水産省の中型獣類編、環境省のアライグマ防除の手引き、松戸市・市川市・新潟市・福井市のタヌキの案内を開いて確認しましたが、タヌキの鳴き声の種類や、どんな場面で鳴くかを書いた記述は見つかりませんでした。検索でよく見かける「ギャーギャー」などの擬音も、公的資料では裏づけを確認できていません。

これは、タヌキが鳴かないという意味ではありません。資料に載っていないだけで、鳴き声の有無や特徴は分からない、というのが正確なところです。一方で、アライグマとハクビシンについては自治体の資料に擬音の例があり、猫の声は相談窓口で扱われています。次の章で、資料にある範囲だけを並べます。

擬音は、聞く人によって変わります。自治体の事業も、声だけでは対象にならないことがあります。たとえば文京区は、アライグマ・ハクビシンの箱わな設置事業で、庭や道路で見かける、鳴き声が聞こえる、といった状況だけでは対象にならないと案内しています。

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

読者の疑問

タヌキの鳴き声はギャーギャーですか?

比較ガイド

今回確認した公的資料には、タヌキの鳴き声を「ギャーギャー」などと記したものは見つかりませんでした。「ぎゃ〜ぎゃ〜」は、世田谷区がハクビシンの幼獣の声として挙げている例です。擬音は人によって違うため、声だけで動物を決めないでください。

夜に聞こえる声の比較|タヌキ・アライグマ・ハクビシン・猫

次の表は、公的資料に記載があった範囲だけを並べたものです。「確認できず」は、今回開いた資料に記載がなかったという意味で、違いがないという意味ではありません。

表のとおり、擬音の記載があるのはアライグマとハクビシンだけで、いずれも自治体の聞き取りの例です。タヌキの声が同じように聞こえる可能性も、別の声である可能性も、資料からは判断できません。詳しくは、害獣の鳴き声一覧と、アライグマの鳴き声の記事も参照してください。

夜に聞こえる声の比較|タヌキ・アライグマ・ハクビシン・猫:確認項目
動物資料にある声・音の記載声以外の手がかり(資料の記載)出典
タヌキ鳴き声の記載は確認できず。活動は主に夜間だが、昼間も活動する足跡の指は4本で爪が目立つ。尾は短く縞がない(20cm以下)。決まった場所にフンをためる農林水産省、環境省
アライグマ久留米市は、天井裏から「クルルル」「キュッキュッ」など甲高い鳥のような声が聞こえる例を挙げている足跡は5本の指がはっきり分かれて人の手に似る。尾はリング状の縞模様。眉間に黒い筋がある久留米市、環境省
ハクビシン世田谷区は「にゃ〜にゃ〜」「ぎゃ〜ぎゃ〜」と記載し、主に幼獣が発するとされている顔の中央に白い線があり、尾が長く縞がない。足跡の指は5本。同じ場所に繰り返し糞をする世田谷区、環境省、横浜市
猫(飼い猫・野良猫)長野市は、保健所に外にいる猫の糞尿、発情による鳴き声、繁殖などの相談が多く寄せられていると掲載している声の特徴の記載はなし。声が屋外からか、天井や床下の内側からかを記録して判断する長野市
アナグマ・キツネ鳴き声の記載は確認できずタヌキはキツネやアナグマが掘った古い巣穴を休息場所に使うことがあり、巣穴だけでは持ち主を決めにくい(農林水産省)農林水産省

参考:久留米市|特定外来生物「アライグマ」の防除にご協力をお願いします

気配が増える時期の目安|繁殖期と子育て

声の記載はありませんが、タヌキの親子や夫婦が家の近くで動きやすい時期は、資料から読み取れます。農林水産省の中型獣類編によると、タヌキの繁殖は2月頃から始まり、5月から6月が出産のピークで、1回の産仔数は1〜7頭、平均で5頭です。生まれた子は真っ黒で、よくクマの子と間違えられるとも書かれています。

夫婦単位で暮らし、明確な生活エリアをもつことも示されています。親子や夫婦がそろって動く春から初夏は、庭や床下で気配が増える時期と考えられます。ただし、この時期の夜の声がタヌキだと決まるわけではありません。世田谷区は、アライグマは春先に子を産み、秋頃まで家族単位で移動し、ハクビシンも特に春先の出産が多いと記載しています。時期だけでは種類を絞れません。

親子で暮らす時期に床下や物置へ入られているときは、追い出しや封鎖を急がない方が安全です。農林水産省は、侵入口を塞ぐ前に、中に動物がいないことを確認するよう注意しています。子が中に残ったまま塞ぐと、閉じ込めてしまう恐れがあるためです。

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

声がする場所で確認先を分ける|床下・庭・天井

声や物音がしたら、まず「どこから聞こえたか」で確認する場所を分けます。いずれの場合も、動物に近づかず、中をのぞいたり手を入れたりしないことが前提です。

床下から物音や声がするとき

農林水産省は、タヌキの休息場所として、神社仏閣や空き家など建物の床下を挙げています。床下への侵入は通風口からが最も多いとされるため、外から基礎の通風口、基礎と地面のすき間、壊れた網や板を見ます。松戸市は、床下に住み着いた場合は、動物がいなくなってから侵入口を塞ぐよう案内しています。

  • 通風口の網や格子の破れ、ずれ
  • 基礎と地面の間のすき間、掘られた跡
  • 外から見える範囲のフンや足跡
  • 物置や資材置き場の下の掘り返し

庭や畑から声がするとき

庭や畑では、フンの場所と食べ跡が手がかりです。農林水産省は、タヌキは生活エリアの境界に「ため糞」を作り、掃除してもすぐ作られると説明しています。被害現場が散らかる、作物をどこかへ運んで食べる、地際の枝が折れたりツルが引っ張られたりする点も、タヌキの特徴とされています。

天井や屋根から聞こえるとき

農林水産省は、タヌキは登ることが得意ではなく、地上付近の対策が重要としています。一方、アライグマ、ハクビシン、テンは屋根裏や壁のすき間への依存度が高いとされ、天井裏の足音は他の動物の可能性も残ります。ただし市川市は、タヌキが薄暗い屋根裏に入って寝床にする被害も起きていると案内しています。天井で音がするときは、タヌキと決めずに、天井裏で音がするときの最初の確認から進めてください。

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

声と合わせて見る痕跡|フン・足跡・食べ跡・姿

声が決め手にならないので、痕跡と姿を合わせて見ます。アライグマと間違えやすい点は、環境省の手引きに整理されています。タヌキは、尾が短く縞がなく、つま先だけを地面に付けて歩くため花の形に似た足跡になり、体は茶色っぽく足はほぼ全体が黒く、ヒゲは黒くて目立たず、耳は丸いとされています。

声と合わせて見る痕跡|フン・足跡・食べ跡・姿:確認項目
見るものタヌキの特徴(資料の記載)取り違えやすい動物との違い
フン決まった場所にためる「ため糞」。生活エリアの境界に作られ、掃除してもすぐ作られる(農林水産省)ハクビシンも同じ場所に繰り返し糞をする(横浜市)。フンだけでは決まらない
足跡指は4本で爪が目立つ(農林水産省)。つま先だけが付き、花の形に似る(環境省)アライグマは5本指がはっきり分かれ、人の手に似る(環境省)。ハクビシンも5本(世田谷区)
尾短く、縞がない。20cm以下とされる(環境省)アライグマはリング状の縞模様。ハクビシンは尾が長い(環境省)
顔・体目の周りの黒いアイマスクと、背中から前肢にかけての黒いバンド(農林水産省)。ヒゲは黒く、耳は丸い(環境省)アライグマは眉間に黒い筋があり、ヒゲが白い。アナグマは鼻筋が白っぽく、耳が小さい(環境省)
食べ跡荒っぽく食べて散らかし、作物を別の場所へ運ぶ。噛み癖があり、地際の枝が折れる(農林水産省)タヌキは加害獣としての認識が低く、他の鳥獣被害と誤認されることが多いと農林水産省は述べている

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

声を録音して相談へ渡す方法|記録の項目

声を録音するときは、動物に近づかず、自分の敷地の安全な場所から行います。床下や天井裏をのぞいて録音する必要はありません。スマートフォンのボイスメモで十分です。録音の前後に、時刻と、どの方向・高さから聞こえたかを一言入れておくと、後で役立ちます。

夜間の音を一晩分まとめる方法は、夜間の天井の音を記録する手順に項目をまとめています。録音を渡す相手は、持ち家なら市区町村の鳥獣の担当課や、調査を行う業者です。賃貸や集合住宅では、先に管理会社や管理組合へ伝えます。

声を録音して相談へ渡す方法|記録の項目:確認項目
記録する項目書き方の例相談で役立つ点
日時と時間帯10月3日の午後9時40分ごろ、10分間活動する時間帯と、同じ時間に繰り返すかが分かる
聞こえた場所玄関側の床下、2階の天井の北側、庭の物置の裏床下・天井・庭のどこから調べるかが決まる
音の種類鳴き声、足音、引っかく音、争うような声。擬音ではなく自分の言葉で書く擬音は人によって違うため、録音と合わせて渡す
合わせて見た痕跡足跡、フンの場所、食べ跡、においの有無。写真には大きさの分かる物を添える動物を絞る手がかりになる
その後の変化音が毎晩か、数日おきか、止んだ日があるか棲みついているのか、通過しているだけかの目安になる

見守ってよい場合と、相談を考える場合|捕獲に許可が要る理由

タヌキは鳥獣保護管理法の対象で、県の許可なく捕獲することは禁止されていると、市川市や松戸市は案内しています。市川市は、市ではタヌキの捕獲や駆除を行っておらず、侵入を防ぐ、清潔に保つ、餌になる物を放置しないといった対策をしても被害が出る場合は、県の許可を得た専門の業者への依頼を検討するよう案内しています。見かけただけの場合は、近づかず触れずに見守るのが基本です。被害が続いて業者への依頼を考えるときは、タヌキ・アナグマの駆除を業者に頼むときの確認点で許可と作業範囲をまとめています。

許可の仕組みと市役所の対応は、タヌキ駆除は市役所・保健所に頼める?にまとめました。毛が抜けて弱っている個体は、疥癬の可能性があるため、触らずに疥癬のタヌキを見かけたときの接し方を確認してください。

見守ってよい場合と、相談を考える場合|捕獲に許可が要る理由:確認項目
状況まずすること相談を考える目安
庭を通るだけ、遠くで声がするペットフード、生ごみ、落ちた果実を屋外に置かない。姿や足跡を記録する庭や畑の被害が出てきたとき
庭のフンが同じ場所に続くフンの場所を記録し、餌と通り道を見直す。素手で触らないフンが増え続ける、においが強い、畑の被害が続くとき
床下や物置から継続的に音がする外から通風口とすき間を確認する。中には入らない侵入口が見つかった、音が毎晩続く、春から初夏に子の気配があるとき
毛が抜けて弱っている触らず、距離を取って様子を見る自宅の敷地内で動けなくなっているとき

参考:市川市|タヌキについてのご案内です