アライグマの鳴き声は「キュッキュッ」?公的資料にある記載と確認できなかったこと

久留米市の特定外来生物アライグマのページは、住居や空き家の被害チェック項目として、天井裏で大きな足音がした、柱に5本指の爪痕があった、といった項目と並べて、天井裏から「クルルル」「キュッキュッ」など甲高い鳥のような声が聞こえる、と記載しています。ページには、その声の音声ファイル(mp3形式)も添えられています。今回確認した省庁・自治体の資料のなかで、アライグマの鳴き声を擬音で具体的に書いていたのは、このページだけでした。

一方、検索でよく調べられている「ギャーギャー」や、威嚇の声、けんかの声を、場面ごとに説明した公的資料は確認できませんでした。江東区、世田谷区、足立区は、足音や鳴き声による騒音をハクビシン・アライグマの生活環境被害として挙げていますが、アライグマの声の特徴までは書いていません。農林水産省の特定外来生物編も、屋根裏での糞尿汚染や悪臭と並べて鳴き声の被害を挙げていますが、声の聞こえ方は説明していません。擬音は聞く人で変わるため、「キュッキュッ」と聞こえないからアライグマではない、とも、聞こえたからアライグマだ、とも決められません。

「クルルル」「キュッキュッ」は、記載例の一つ

久留米市の記載は、アライグマが住みついている可能性を考えるチェック項目の一つで、声の種類や出る場面までは説明していません。1つでも該当すれば可能性があるという扱いで、声は動物を特定する決め手ではなく、気づくきっかけとして書かれています。

威嚇や争う声は、公的資料では確認できていない

世田谷区や久留米市は、アライグマは見た目に反して気性が荒く、近づかないよう呼びかけています。ただし、そのことと「威嚇のときにどんな声を出すか」は別の話で、声の説明を公的資料で確認できていない以上、「威嚇の声はこう聞こえる」と書くことはできません。

参考:久留米市|特定外来生物「アライグマ」の防除にご協力をお願いします

読者の疑問

アライグマの鳴き声は「キュッキュッ」ですか?

比較ガイド

久留米市は、天井裏から「クルルル」「キュッキュッ」など甲高い鳥のような声が聞こえることを被害チェック項目に挙げています。ただし擬音は一例で、声だけで種類は決められません。

幼獣の声がする時期の目安|出産から親子で行動するまで

環境省の手引きは、アライグマの交尾期を1月から3月頃、妊娠期間を63日程度、主な出産時期を3月から5月頃とし、通常は年1回、春に3〜6頭を産むと説明しています。農林水産省の中型獣類編は、出産のピークを4月中旬、産仔数を1〜7頭、野外活動を始める時期を6月上旬とし、子別れは遅く、秋遅くまで母親と行動を共にすると述べています。

出産は建物の壁のすき間や木の樹洞で行われ、母親は出産後1か月ほどで、自力で動けない子をくわえて巣穴を移動する、と農林水産省は書いています。環境省は、厳冬期の2月頃にアライグマが家屋に侵入して繁殖場所を確保することが多くなるとも説明します。屋根裏に入られた家では、この流れのなかで足音に子の声が重なる時期がありえます。ただし、地域によっては夏から秋に出産する個体も確認されており、暦だけで子の有無は決められません。

幼獣の声がする時期の目安|出産から親子で行動するまで:確認項目
時期の目安公的資料の記載屋根裏の音で意識すること
1〜2月頃交尾期は1〜3月頃。2月頃の厳冬期に、家屋へ入って繁殖場所を確保することが多くなる(環境省)夜の足音が新しく始まったら、日付と場所を記録する
3〜5月頃主に3〜5月に出産し、ピークは4月中旬。産仔数は3〜6頭(環境省)、1〜7頭(農林水産省)。出産は壁のすき間などでも行われる足音に細い声が混じるかを記録する。出入口は塞がない
出産後1か月ほど母親が子をくわえて巣穴を移動する(農林水産省)音の位置が急に変わったり、聞こえなくなったりしても、「いなくなった」と決めずに記録を続ける
6月上旬〜秋幼獣が野外活動を始め、秋遅くまで母親と行動する。10月ごろに親離れの時期になる(農林水産省)夜に出入りする音が増えることがあるが、頭数は音だけでは決められない
夏〜秋地域によっては、夏から秋に出産する個体も確認されている(環境省)季節だけで「子はいない」と判断しない

参考:環境省|アライグマ防除の手引き(地域から構築する効果的な防除、2025年改訂版)

屋根裏の足音の特徴と時間帯|夜行性だが昼間も動く

環境省と農林水産省は、アライグマを夜行性としつつ、昼間も活動すると説明しています。農林水産省の旧マニュアルは、昼間は樹洞や巣穴、屋根裏、作業小屋、廃屋などで休息するとし、久留米市も、夜行性で昼間は巣穴などで休息するとしています。夜に足音が目立つ一方、昼にも動くことがあるため、「夜だけ」と決めて記録すると見落とします。

足音の特徴を、他の動物と数値で比べた公的資料は確認できませんでした。東京都は「屋根裏で大きな音がする」を住みつきの可能性がある項目に挙げ、横浜市は「天井裏から毎晩のように動物が歩き回る音がする」を、相談する被害の例に挙げています。音の大きさの主観よりも、時間帯、続いた長さ、場所、日ごとの変化の方が、相談の場では役に立ちます。記録の取り方は夜間の天井の音を記録する方法と天井裏で音がするときの最初の対応が参考になります。

足音の記録で見る点

足音は、聞こえた日時、続いた長さ、音の位置、数日の変化を残します。体の大きさは公的資料で、アライグマ4〜10kg程度、ハクビシン3〜4kg程度とされますが、天井の構造や素材でも音は変わるため、重さの印象だけで種類を決めないでください。

  • 聞こえた日時と、どのくらい続いたか(例:22時ごろから約15分)
  • 音の位置(部屋、天井のどの辺りか)と、日ごとに場所が変わるか
  • 夜だけか、昼にも聞こえるか。昼は建物の設備の音とも照合する
  • 声が混じるか、足音だけか。声は録音できれば残す

参考:横浜市|野生動物による生活被害について

アライグマとハクビシン・タヌキ・猫の比べ方

声だけで決められない以上、複数の手がかりを並べて見ることになります。次の表は、確認できた公的資料の記載を整理したものです。「確認できず」と書いた欄は、今回確認した資料に記載がなかったことを示し、違いがないという意味ではありません。

屋根裏や天井裏に入る動物としては、アライグマとハクビシンが挙がる例が多く、タヌキは農林水産省が、休息場所を床下や古巣などとし、登るのは得意でないと説明しています。町田市の資料には、タヌキやネコも天井裏に住みつくことがあるようだが、市の防除事業では事例がなかったとの記載があります。見分けの基本はハクビシンとアライグマの見分け方とアライグマとタヌキの違いで整理しています。

アライグマとハクビシン・タヌキ・猫の比べ方:確認項目
比べる点アライグマハクビシンタヌキ猫
声の公的な記載久留米市:天井裏から「クルルル」「キュッキュッ」と甲高い鳥のような声世田谷区Q&A:「にゃ〜」「ぎゃ〜」。主に幼獣が発するとされる確認できず確認できず
活動時間夜行性で、昼間も活動(農林水産省・環境省)活動は夜間に偏る(農林水産省)主に夜間だが昼間も活動(農林水産省)比較する記載を確認していない
屋根裏・天井裏の使い方休息や子育てを、屋根裏や壁のすき間で行う(農林水産省)夏は床下、気温が下がると天井裏を日中の休憩場所にする(農林水産省)休息は床下、空き家、古巣が中心。登るのは得意でない(農林水産省)町田市:天井裏に住みつくことがあるようだが、市の事業では事例なし
体重の目安4〜10kg程度(農林水産省・旧マニュアル)3〜4kg程度(農林水産省)平均4kg程度(農林水産省)比較する記載を確認していない
足跡の指と爪あと指は5本、爪が長く爪あとは明瞭(東京都)指は5本、爪あとは不明瞭(東京都)指は4本、爪あとは明瞭(東京都)爪の跡は付かない(農林水産省)

参考:東京都環境局|アライグマ・ハクビシン等の見分け方(PDF)

幼獣の声が聞こえるときの対策の進め方|近づかず、塞ぐ前に確認する

子の声が聞こえる時期は、自分で追い出したり、出入口を塞いだりせず、自治体の窓口へ連絡して進め方を決めます。環境省の手引きによれば、2023年に外来生物法が改正され、市町村には特定外来生物による被害の防止に必要な措置を講じるよう努める責務が生じています。お住まいの市町村が防除の窓口を設けているかを確かめる根拠にもなります。

農林水産省は、侵入口を塞ぐ前に、中に動物がいないことの確認を求めています。子がいる状態で塞ぐと、親子が出られなくなったり、無理に壊して別の場所から出たりするおそれがあります。冬は、雌が住宅地へ移動する傾向があり、家屋侵入などの被害報告が多くなるとも書かれています。冬から春の屋根裏の音は特に、記録を取ってから窓口へ連絡してください。自治体の窓口の違いはハクビシン駆除を市役所・区役所に頼めるかで比べています。

声がしている間にしないこと

子の声が聞こえる屋根裏へ入って確かめたり、子を探して触ったりしないでください。アライグマは凶暴な一面があり、感染症のおそれもあるため、世田谷区は決して近づかず、万が一噛まれたり引っかかれたりしたら、速やかに病院で処置を受けるよう呼びかけています。親子への対応はアライグマの親子を見かけたらにまとめています。

  • 屋根裏や床下へ入って、巣や子を確かめない
  • くん煙剤などで追い出す前に、窓口へ相談する
  • 侵入口を、中の確認なしに塞がない
  • 許可なく捕獲器を置いたり、動物に触ったりしない

窓口へ連絡して決めること

窓口では、現地調査の有無、捕獲器の設置の可否と期間、封鎖をいつ行うか、清掃を誰が行うかを確認します。自治体が捕獲まで行っても、封鎖と清掃は住宅側に残ることが多いため、見通しを立てるために最初に聞いておくと、あとの段取りが決めやすくなります。

参考:世田谷区|ハクビシン・アライグマ対策

録音・記録を自治体や業者へ渡す方法

自治体の扱いは分かれます。江東区は、足音などの騒音被害だけの場合、被害状況の記載で写真を省けるとしています。文京区は、鳴き声が聞こえるだけでは対象にならないとしています。録音は、窓口で状況を伝える補助資料と考え、「録音があれば対象になる」とは考えないでください。

録音は、屋根裏へ入らず、室内の安全な場所から行います。1回は30秒から1分ほどの短いものを日を分けて数回残し、日付と時刻が分かる名前で保存すると、聞き取りで再生しやすくなります。これは公的資料にある方法ではなく、当記事の提案です。録音だけでなく、天井のシミ、フン、爪痕、足跡などの写真をそろえて渡します。

  • 日時、時間帯、続いた長さ(例:23時ごろから約10分)
  • 聞こえた場所(部屋、天井のどの辺りか)と、声か足音か
  • 録音は短くして日付入りで保存し、聞き取りの場ですぐ再生できるようにする
  • 天井のシミ、フン、爪痕、足跡の写真(定規など大きさの分かるものを添える)
  • 聞こえ始めた日と、その後の変化、すでに行った対策

参考:江東区|ハクビシン・アライグマ対策事業について

声がしても近づかない・捕まえない理由|外来生物法と鳥獣保護管理法

アライグマは特定外来生物で、環境省の外来生物法のページによると、飼育、栽培、保管、運搬が原則として禁止されています。野外で捕まえた特定外来生物を持ち帰ることは運搬にあたるため、屋根裏や庭で見つけても、自分で捕まえて別の場所へ運ぶことはできません。

鳥獣保護管理法でも、野生鳥獣の捕獲や殺傷は原則禁止で、許可を受けた場合などに限り認められます。農林水産省の中型獣類編は、特定外来生物の防除では、国や都道府県の公示、市町村の確認、民間団体の認定を受ければ、外来生物法に基づいて防除ができると説明しています。個人が許可なく捕獲器を置いて捕獲することは認められていません。

感染症の面でも、厚生労働省のハンドブックは、野生動物はどのような病原体を持っているか不明なことが多く、人にとって重篤な感染症の病原体を持っていることもあると説明しています。声が聞こえる屋根裏へ入って確かめるのではなく、室内から記録できる範囲にとどめます。

参考:環境省|日本の外来種対策・外来生物法「何が禁止されているの?」