野良猫に噛まれた・引っかかれたとき|公的資料が示す最初の行動
厚生労働省のカプノサイトファーガ感染症に関するQ&Aは、犬や猫に咬まれたり引っ掻かれたりしたときの対処として、傷口を石けんと流水でよく洗うことを挙げています。傷が小さくても感染する可能性があるため、万が一のときに医療機関へ咬掻傷の経緯を伝えられるよう、家族にも猫による傷があったことを伝えておくこと、傷口をなめられないようにすることも案内しています。
動物由来感染症ハンドブック2026は、動物由来感染症は、はじめは風邪やインフルエンザ、ありふれた皮膚病に似た症状のことも多く、発見が遅れがちだと説明しています。体に不調を感じたら早めに受診し、受診するときは、動物との接触状況も医師に伝えるよう案内しています。診断や治療、薬の使い方は医療機関で決めることです。この記事では示しません。
- 傷口を、石けんと流水でよく洗う(厚生労働省のQ&A)。
- 猫に咬まれた・ひっかかれたことを、家族にも伝えておく(同上)。
- 傷口を、猫になめられないようにする(同上)。
- 日付、場所、猫の特徴、傷の位置を、写真と一緒にメモしておく(当サイトの提案)。受診のときに説明しやすくなる。
参考:厚生労働省|カプノサイトファーガ感染症に関するQ&A(2026年10月3日確認)
野良猫に噛まれたら、まず何をすればいいですか?
傷口を石けんと流水でよく洗い、猫に咬まれたことを家族に伝え、傷口をなめられないようにします。傷が小さくても感染する可能性があるため、体に不調を感じたら早めに受診し、猫との接触を医師に伝えます(厚生労働省)。
猫から人にうつる主な感染症|経路・症状・公的資料の記載
厚生労働省の動物由来感染症ハンドブック2026は、犬や猫も人にうつる病原体を持っていることがあり、触れ合うときには注意が必要だと説明しています。次の表は、ハンドブックと厚生労働省のQ&Aに載っている、猫に関係する主な感染症を、経路、資料に書かれた特徴、資料が示す予防の順に整理したものです。診断や治療の説明ではないため、症状の有無を自分で判断せず、気になるときは医療機関に相談してください。
カプノサイトファーガ感染症は「まれ」と「重症化しうる」の両方が書かれている
厚生労働省のQ&Aは、動物による咬傷に対して報告されている患者数は非常に少なく、感染しても稀にしか発症しないと考えられるとしています。一方で、患者のうち基礎疾患がある人は約半数にとどまり、もともと健康な人でも感染・発症することが確認されているとも書いています。「まれだから大丈夫」とも、「咬まれたら重症化する」とも言えない病気です。傷口を洗い、体調の変化に気を付けてください。
猫ひっかき病は、まれにネコノミから感染すると書かれています。ノミの発生源は、野良猫が庭に出入りする家でも確認したい点です。ノミの発生原因とペットがいない家での確認に整理しています。
| 感染症 | 主な経路 | 公的資料に書かれた特徴 | 資料が示す予防 |
|---|---|---|---|
| 猫ひっかき病 | 保菌した猫に咬まれたり、ひっかかれたりして、皮膚から感染する。まれに、保菌猫を吸血したネコノミから感染する | 1週間前後で受傷部に丘疹や水疱ができ、発熱する。その後、傷口に近いリンパ節が痛みを伴って腫れる。通常は経過がよく、自然に治る。子猫の保菌率が高く、西日本に多い | ひっかかれないように気を付ける。猫にノミの駆除や防虫薬を使う |
| パスツレラ症 | 犬や猫などの口の中や気道に普通にいる細菌。主に咬まれて感染し、飛沫を介した感染もある | 咬まれたところの腫れと痛み。急速に、皮下の炎症が深く広い範囲に広がる蜂窩織炎になることがあり、まれに敗血症に進む。症状が出るのが早く、早いときは1時間以内 | 咬まれないよう気を付ける。口移しやキスをしない |
| カプノサイトファーガ感染症 | 犬や猫の口の中に普通にいる細菌。主に咬み傷・かき傷から感染し、傷口をなめられて感染した例もある | 潜伏期間は1〜14日(多くは1〜5日)。発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などから始まり、まれに重症化して敗血症などに進み、死に至ることもある。重症化したときの進行は早い | 動物との過度のふれあいを避け、触れた後は手を洗う。咬まれたり、引っかかれたりしないよう注意する |
| トキソプラズマ症 | 猫は終宿主で、糞便にオーシストを排出する。人は、猫が排出したオーシストを直接、または土いじりなどを介して口にして感染する。加熱不十分な肉からも感染する | 妊婦の初感染では胎児にも感染し、死流産などの可能性がある。健康な成人や小児の初感染は多くが無症状だが、免疫力が低下すると脳炎や肺炎を起こすことがある | 猫の糞便の処理は毎日(24時間以内)行う。猫に生肉を与えない。肉は十分に加熱する |
| SFTS(重症熱性血小板減少症候群) | 主に感染マダニに刺されて感染する。発症した犬や猫の体液からも感染することが報告されている | 初期症状は発熱、全身倦怠感、消化器症状。重症化し、死亡することもある。特に高齢者で重症化しやすい。猫は感染・発症したときの症状が強いとされる | マダニに刺されない。弱った野生動物にむやみに手を出さない。ペットにマダニの駆除や防虫薬を使い、体調不良なら動物病院を受診させる |
受診を考える状態の目安|公的資料に書かれた症状と時間経過
確認した資料には、受診の時期を一律に示す基準は書かれていませんでした。次の表は、各感染症について資料に書かれた症状と出る時期を並べ、受診を相談するきっかけを整理したものです。表にない症状でも、不安があるときは医療機関に相談してください。咬まれたり引っかかれたりした日から、数日〜数週間は体調の変化に気を付けます。
迷うときは、救急安心センター事業(#7119)が相談先になります。総務省消防庁は、急な病気やけがで、救急車を呼んだほうがいいのか、今すぐ病院に行ったほうがいいのか迷ったときに、医師・看護師・救急救命士から電話でアドバイスを受けられる仕組みで、緊急性が高いと判断された場合は119番通報へ転送されると案内しています。全国42地域で実施されており、未実施の地域もあるため、実施の有無は自治体や消防本部の案内で確認してください。
| 時期の目安(資料の記載) | 出ることがある変化 | 受診相談の考え方 |
|---|---|---|
| 咬まれた直後〜数時間(パスツレラ症は、早いと1時間以内) | 咬まれた部分の腫れと痛み。腫れが急速に深く広い範囲に広がる | 傷の周りの腫れや痛みが強まるときは、医療機関に相談する。咬まれた経緯を伝える |
| 1〜14日(カプノサイトファーガ感染症は、多くが1〜5日) | 発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛 | 傷のあとに発熱やだるさ、消化器の症状が出たら、猫に咬まれたことを伝えて受診を相談する。資料は、重症化したときの進行は早いとしている |
| 1週間前後(猫ひっかき病) | 受傷部の丘疹や水疱、発熱。その後、傷口に近いリンパ節が痛みを伴って腫れる | 傷の近くの腫れや発熱が出たら、猫に引っかかれたことを伝えて受診を相談する |
| 数週間(マダニに吸血された場合) | 発熱などの症状。厚生労働省は、刺された後、数週間程度は体調の変化に注意するとしている | 発熱などが出たらすみやかに受診し、マダニに刺されたことを伝える |
| 時期を問わない | 風邪やインフルエンザ、ありふれた皮膚病に似た症状から始まることが多い | 体に不調を感じたら早めに受診する。受診時は、動物との接触状況も伝える |
子ども・高齢者・妊娠中の人は特に注意|公的資料の記載範囲
ハンドブックは、特に小さな子どもや妊婦、高齢者は、いったん発病すると重症化しやすいので要注意としています。個別の感染症では、トキソプラズマ症で、妊婦の初感染が胎児にも及ぶ可能性があること、SFTSで、高齢者が重症化しやすいことが書かれています。厚生労働省のQ&Aによると、日本で確認されたSFTS患者のうち、約90%が60歳以上です。
持病のある人についても、書かれている範囲を確認しておきます。カプノサイトファーガ感染症のQ&Aは、糖尿病、高血圧、免疫抑制剤の使用、脾臓摘出などの持病がある人と同程度の人数が、健康な人でも報告されているとしています。持病の有無にかかわらず、咬まれたり引っかかれたりしたら洗い、体調の変化に気を付けます。
- 小さな子どもが野良猫を触りたがるときは、触る前に大人へ聞くよう伝える(当サイトの提案)。
- 妊娠中の人、妊娠を考えている人は、猫のフンの処理や庭仕事について、主治医に相談する。
- 咬まれたり引っかかれたりした人が、小さな子ども、妊娠中の人、高齢者のときは、早めに医療機関へ相談する。
野良猫と破傷風|公的資料に猫との関係は書かれていない
「野良猫 破傷風」と調べる人がいますが、国立健康危機管理研究機構の破傷風の解説は、猫を感染源としては挙げていません。同ページは、破傷風菌は土壌などの環境中に広く存在し、主な感染経路は、外傷から土壌中の芽胞が侵入することだと説明しています。猫と破傷風の関係を直接示す記載は、確認したページにはありませんでした。
同ページは、予防には破傷風トキソイドを含むワクチンが有効で、現在は五種混合ワクチンと二種混合ワクチンによる定期接種が行われていること、けがをした場合には土壌などに汚染された傷を洗浄するほか、ワクチンと免疫グロブリンによる曝露後予防も行われることを書いています。予防接種の記録が分からないときや、傷が土で汚れたときは、受診時に医師へ相談してください。
マダニとSFTS|弱った猫に素手で触れない理由
SFTSは、主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺されて感染する病気で、初期症状は発熱、全身倦怠感、消化器症状で、重症化して死亡することもあると、厚生労働省は説明しています。国内で初めて患者が確認されたのは2013年で、2021年以降は毎年100名を超える患者が報告され、2025年は過去最高の183名(2025年11月2日時点)とされています。2025年には関東や北海道で感染した症例も報告され、全国的に注意が必要とされています。
SFTSと猫の関係|体液に触れない、素手で触れない
猫との関係では、SFTSウイルスに感染した猫や犬との接触により感染したと考えられる症例が報告されています。国内では、感染して発症した猫は、発熱、元気消失、嘔吐、黄疸などの症状を示し、約6割が死亡するとされています。Q&Aは、発症している動物の血液や唾液などの体液に直接触れると感染する可能性があり、実際に猫に咬まれたことが原因とされる事例も報告されているとしています。一方で、発症していない猫や、屋内のみで飼育されている猫から人がSFTSウイルスに感染した事例は、これまでに報告されていないとしています。
弱っている野良猫を見つけたときについて、Q&Aは、動物が体調不良のときは、マスクや手袋を着用し、咬まれたり舐められたりしないよう注意して動物病院で診てもらうこと、野生動物との接触を避け、動物の死体等に接触することも控えることを案内しています。野良猫は飼い主が分からず、病気の有無も分かりません。弱った猫を見つけたら、素手で触れず、自治体の動物愛護担当などへ相談してください。
マダニに刺されたときの対応
マダニに吸血された場合は、無理に引き抜こうとせず、皮膚科などを受診して除去してもらうよう、厚生労働省は案内しています。無理に引き抜くと、マダニの一部が皮膚内に残って化膿したり、体液が逆流して病原体が入りやすくなったりするおそれがあるためです。庭や草むらでのマダニの注意は、マダニはどこにいる?庭・家の中に持ち込まれる経路にまとめています。
フンの清掃・庭仕事での手袋と手洗い|トキソプラズマ症を含む
ハンドブックは、糞は中で病原体が増えたり、糞尿が乾燥して中の病原体が空気中を漂ったりすることがあるため、直接触れたり吸い込んだりしないよう気を付け、早くこまめに処理するよう案内しています。トキソプラズマ症については、猫が排出したオーシストが感染する力を持つまでに約24時間かかるため、糞便の処理は毎日(24時間以内)行うとされ、人は、猫が排出したオーシストを、直接、または土いじりなどを介して口に入れて感染するとされています。
フンの種類が分からないときは、触る前に確認します。見分け方は害獣のフンの見分け方の早見表に、触る前の確認はベランダや屋根裏にフンらしきものを見つけたときにまとめています。
| 場面 | 公的資料の注意 | 行動の例(当サイトの整理) |
|---|---|---|
| 庭や花壇でフンを見つけた | 糞を見つけたら速やかに処理する。直接触れたり、吸い込んだりしない | 使い捨て手袋と袋で回収し、手を洗う。乾いたフンを掃き散らさない。捨て方は自治体のごみの分別に従う |
| 草むしり・土いじり | ガーデニングで草むしりや土いじりをした後は、十分に手を洗う | 手袋を着け、作業後は流水で手を洗う。猫のフンが混ざった土には特に注意する |
| 家庭菜園 | トキソプラズマ症の経路として、土いじりを介して口に入ることが挙げられている | 作業後の手洗いに加え、猫が菜園に入らない対策を進める。庭での対策は別の記事で整理している |
| 野良猫に触れた後 | 動物に触ったら、必ず流水で手を洗う。動物や唾液に触れた手で、目や口、傷口を触ってしまうことがある | 触った後、食事の前に手を洗う。洗う前に目や口、傷口を触らない |
| 咬まれた・ひっかかれた傷口 | 咬まれたり、ひっかかれたり、特に傷口をなめられたりしないよう気を付ける | 傷口を石けんと流水で洗い、猫になめさせない |
触らない・餌付けしないことが予防になる理由|相談先
ハンドブックは、のら猫やのら犬、野生動物は、どのような病原体を保有しているか分からないため、安易に触らないよう案内しています。野良猫がなついてくる、足にすりすりしてくるといった場面でも、触ってよいかどうかを見た目で判断することはできません。「野良猫 甘噛み」のような軽い噛みつきについて、厚生労働省は咬傷や掻傷から感染し、傷が小さくても感染する可能性があるとしており、甘噛みを区別した記載は確認できませんでした。
餌付けは、猫が集まりやすくなり、接触の機会や被害を増やすおそれがあります。環境省のガイドラインは、飼い主のいない動物への無責任な餌やりが、みだりな繁殖やふん尿による被害の増加を引き起こす場合があると指摘しています。長野市も、餌を出したままにすると、他の地域から猫を呼び寄せたり、野生動物が集まったりして、トラブルの原因になると案内しています。近所の餌やりが原因のときの進め方は、野良猫への餌やりで被害が出たときの法律と相談にまとめています。
相談先は、咬まれた後の体調は医療機関、猫の被害や弱った猫は、環境省のガイドラインが挙げる動物愛護管理担当部署、動物愛護センター、保健所です。動物由来感染症ハンドブックも、お問い合わせは最寄りの保健所へと案内しています。






