ツバメが来る時期と巣作りにかかる日数

環境省の資料は、ツバメは3月頃に渡来し、人家の軒先などに土を唾液で固めた巣を作ると説明しています。日本野鳥の会のガイドブックも、3〜4月頃に飛来し、泥と草を混ぜて巣を作るとしています。全国で見られる夏鳥ですが、環境省の資料は北海道東部などを除くとし、南西諸島ではおもに旅鳥と書いており、地域によって到着の時期や見られ方は違います。

検索では「巣は何日でできる」という疑問も多く見られますが、今回確認した環境省と日本野鳥の会の資料には、巣作りにかかる日数を示した記述はありませんでした。分かっているのは、渡来から卵を産むまでに通常1か月以上かかるという日本野鳥の会の説明です。巣作りの日数を数えて判断するのではなく、泥や草を運ぶ動きがあるかを見ます。

日本野鳥の会の調査では、親鳥が巣を作っている途中の巣も、親鳥が座っている巣やヒナのいる巣と同じ「使用中の巣」に数えます。反対に、ツバメが利用していることを確認できなかった巣は「古巣」です。巣の形が整って見えるかどうかではなく、親鳥の出入りがあるかで分けています。

参考:環境省生物多様性センター|鳥類の種別解説 ツバメ(PDF)

読者の疑問

ツバメの巣作りは何月から始まりますか?

比較ガイド

環境省の資料では3月頃に渡来し、日本野鳥の会のガイドブックでは3〜4月頃に飛来します。渡来から産卵まで通常1か月以上かかり、繁殖期間は4〜7月とされます。時期は地域や年で前後します。

ツバメの巣作りから渡去までの月別カレンダー

下の表は、環境省の資料、日本野鳥の会のガイドブックとウェブページ、神奈川県の案内にある時期を並べたものです。月は目安で、地域や年によって前後します。巣の見え方の欄は、各資料の内容をもとに、当サイトが確認の目安を添えました。

ツバメの巣作りから渡去までの月別カレンダー:確認項目
時期の目安ツバメの動き巣の見え方と確認すること
3〜4月頃日本に渡来し、泥と草で巣を作る親鳥が泥や草を運ぶ。産卵まで通常1か月以上かかるため、この間に巣作りが続く
4〜7月頃(繁殖期)4〜6個の卵を産み、約2週間抱卵する親鳥が巣に長く座る。外からは卵が見えにくい
抱卵のあと約3週間ヒナが孵り、親鳥が餌を運ぶ。ヒナは17〜22日ほどで巣立つ(資料により幅がある)ヒナの声が増え、巣の下にフンが落ちる。フンが落ちるのは子育て期間のうち2週間程度とされる
巣立ち後の数日若鳥は巣立ったあとも数日間、親から食べ物をもらう巣は空に見えても、周りの電線や枝に親子がいることがある
春から夏(2回目・3回目)同じ年に2回、時には3回子育てをする巣立ち後しばらくして、親鳥が再び出入りする可能性がある
子育て終了後から晩夏川沿いのヨシ原などに、数千〜数万羽が集まってねぐらをとる巣の周りでツバメを見かけなくなる
8月中旬〜10月東南アジアへ渡る巣は空になる。冬は熱帯地域で群れで過ごす(日本野鳥の会のガイドブック)

参考:日本野鳥の会|教員向けガイドブック『ツバメの子育てを観察しよう』(PDF)

産卵から巣立ちまでの流れと日数|資料ごとの表記の違い

巣立ちまでの日数は、資料によって約2週間から約3週間まで幅があります。数え方や対象の巣が違う可能性があるため、表記が1日違うだけで異常と決めつけず、親鳥が餌を運んでいるかを見てください。

1回の子育ての流れ

1回の子育ては、産卵、抱卵、孵化、巣立ちの順に進みます。日本野鳥の会のガイドブックは、卵を温め始めてから約2週間でヒナが孵り、さらに3週間ほどで羽が生えそろって巣立つと説明しています。神奈川県は、抱卵が13〜14日、ヒナは17〜22日で巣立ち、長くとも期間は約1か月とし、東京都の対応事例も抱卵から巣立ちまで約1か月くらいとしています。

日本野鳥の会の全国調査では、1回目の繁殖で1巣あたりに巣立ったヒナは1羽から9羽の幅があり、4羽を巣立たせた巣が最も多く、平均は約4羽でした。卵は4〜6個とされるため、「巣には何匹いるのか」という疑問には、巣立つヒナが4羽前後というのが一つの目安になります。1羽や2羽の例には、巣から落ちるなどして最後に残ったヒナが巣立った報告が多いとされています。

日数の幅をどう読むか

「予定の日を過ぎても巣立たない」と心配になるときは、日数に幅があること自体が答えの一つです。親鳥が餌を運んでいるなら、見守ります。巣から落ちたヒナや動けないヒナを見つけたときの基本の考え方は、鳥の種類を問わず共通する部分が多く、巣から落ちたスズメのヒナを見つけたときの判断フローが参考になります。

  • 親鳥が餌を運んでいるかを、離れた場所から確認する
  • ヒナが巣の外に落ちていないか、動けなくなっていないかを見る
  • 日数だけで判断せず、様子の変化を日付つきで記録する
産卵から巣立ちまでの流れと日数|資料ごとの表記の違い:確認項目
資料抱卵孵化から巣立ちまで
環境省生物多様性センター(鳥類の種別解説)約2週間約20日
日本野鳥の会(教員向けガイドブック)約2週間(抱卵開始から孵化まで)さらに3週間ほど
神奈川県(ツバメを見守ってください)13〜14日17〜22日
大阪府(野鳥が巣を作ったときの対応)記載なしヒナは約2週間で巣立つ
東京都環境局(都民の声への対応事例)抱卵から巣立ちまで合わせて約1か月くらい(合計の表記)

参考:神奈川県|ツバメを見守ってください

年に何回子育てするか|2回目・3回目と巣の再利用

日本野鳥の会のガイドブックは、ツバメは春から夏にかけて2回、時には3回子育てを繰り返すと説明しています。環境省の資料も、1繁殖期に2回繁殖するものも多いとしています。日本野鳥の会の全国調査では、2回目以降の繁殖を巣立ちまで報告した例が少なかったため、集計は1回目の繁殖成績に絞られました。2回目以降は観察記録が少なく、時期の幅が大きい部分だということです。

「同じ巣を再利用するのか」「毎年同じ場所に来るのか」について、今回確認した資料には、再利用の割合や年ごとの戻りやすさを示した数字はありませんでした。自治体の案内では、富山県が、一度巣を作った場所は再び巣作りをする可能性が高いと注意しています。香川県は、巣を作られたあとではなく作られる前に撤去すれば別の場所に移るので、軒下や車庫を日常的に点検するよう案内しています。

実務としては、「去年巣があった場所は、今年も候補になる」と考えて、渡来前から確認する形が無理のない備えです。来てほしい場合も来てほしくない場合も、3月までに状況を確認しておけば、卵が産まれる前に動けます。

参考:環境省生物多様性センター|鳥類の種別解説 ツバメ(PDF)

巣を放棄する・途中でいなくなる理由

ツバメが途中でいなくなる理由は、一つに決められません。日本野鳥の会のガイドブックは、観察のときに近づきすぎて子育て中の親鳥を怖がらせると、卵があっても巣を放棄してしまうことがあると注意しています。巣の近くで長く立ち止まったり、のぞき込んだりしないことが基本です。

全国調査(2013〜2022年)の失敗要因の集計では、カラスやヘビなどの天敵によるものが約36%で最も多く、そのうち60%がカラスによると疑われていました。次いでスズメによる巣の乗っ取りが14%、巣の撤去など人に起因する失敗が12%です。巣が壊れる例には、巣材の泥が少ない、壁が新建材などの理由もあり、原因の区別は観察者の主観に左右されるとされています。

親鳥が来ない、巣が崩れているといった様子だけでは、放棄、天敵による被害、2回目に向けた作り直しを区別できません。放棄したと思い込んで取り除く前に、数日分の観察記録を残し、撤去の可否に迷う場合は卵やヒナがある巣の撤去前に確認したいことの考え方で確認してください。

参考:日本野鳥の会|全国ツバメ繁殖状況調査(2013~2022年)報告

巣が空いたように見える場面の見分け方

巣が空いて見える場面は、大きく5つに分けられます。いずれも見た目は似ていますが、その後の動きが違います。撤去してよいかどうかの判断は別の記事に譲り、ここでは「いま巣の中で何が起きていそうか」を見分ける確認項目に絞ります。

巣が空いたように見える場面の見分け方:確認項目
場面見えること確認すること読み取れること
巣立ち直後ヒナの声が止み、巣が空に見える周囲の電線や枝に、若鳥や親鳥がいないか巣は空でも、親子が近くで過ごしている可能性がある
2回目の準備巣立ち後しばらくして、親鳥が再び出入りする泥や草を運ぶ動き、巣の補修の様子使用中の巣。外見が空でも自己判断で触らない
抱卵中親鳥が巣に座る時間が長く、ヒナの声はない親鳥が交代で出入りしているか。巣の中は外から見えにくい卵がある可能性が高く、巣は使用中
放棄・失敗親鳥が来なくなる、巣が壊れて落ちている数日間、朝夕に離れた場所から記録する放棄か天敵の被害かは、外見だけでは決められない
前年の古巣春になる前で、親鳥の出入りがない渡来の時期に入って、親鳥が来るかどうか利用が確認できない巣は、日本野鳥の会の調査で古巣として分けられる

参考:日本野鳥の会|ツバメの子育てを観察しよう-Ⅱ 調査のまとめ 解説(PDF)

巣立った後も巣の周りにいる期間と、確認の進め方

巣立ちの後に若鳥がどのくらい巣の周りで過ごすかは、空いて見える巣を見分ける大事な手がかりです。ここでは、確認できた範囲と、離れて見るときの進め方を分けて書きます。

巣立ち後に巣の周りにいる期間

巣立ったあとの若鳥が巣に戻って過ごす期間や日数について、今回確認した公的資料には具体的な記述がありませんでした。日本野鳥の会のガイドブックにあるのは、巣立ったあとも数日間は若鳥が親から食べ物をもらう、という点です。巣が空に見えても、その数日は周囲に親子がいると考え、巣や周辺に近づかないのが無理のない見方です。

離れて見るときの確認項目

確認は、巣に近づかず、離れた場所から行います。親鳥を怖がらせると、卵があっても巣を放棄することがあると、日本野鳥の会のガイドブックは注意しています。数日分の記録があれば、相談するときにも状況を伝えやすくなります。

  • 離れた場所から、朝と夕方に数日間、親鳥や若鳥の出入りを記録する
  • 巣の縁に親鳥が座っていないか、泥や草を運ぶ動きがないかを見る
  • 巣をのぞき込んだり、近づいたりしない(放棄の原因になる)
  • 動きが確認できない場合も、卵やヒナの有無を自分で断定しない

参考:日本野鳥の会|教員向けガイドブック『ツバメの子育てを観察しよう』(PDF)

翌年も来てほしい場合・来てほしくない場合の準備

翌年に向けた準備は、来てほしいか、来てほしくないかで分かれます。どちらの場合も、渡来が3〜4月頃なので、その前の時期に点検しておくのが共通点です。作らせない方法とフン受けの置き方はツバメの巣対策の選び方に、巣の中の状態の確認は卵やヒナがある巣の撤去前に確認したいことに整理しています。

日本野鳥の会の調査では、都市部で巣が人の手によって壊される割合が、郊外や農村部より高いと報告されています。ツバメは減少傾向にあるとされ、神奈川県は減少している種として見守りを呼びかけています。巣を片付けるか残すかにかかわらず、卵やヒナのある巣は許可なく壊せないという線引きだけは守ります。

翌年も来てほしい場合・来てほしくない場合の準備:確認項目
翌年の方針渡来前(3月まで)渡来後〜巣作りの前後注意
来てほしい巣台の設置を検討し、フン受けを置く場所を決めておくフン受けはヒナが孵化してから、カラス除けは抱卵が始まってから設置する巣作り中や抱卵中のフン受けは、親鳥の警戒心を強める
来てほしくない巣立ち後に、卵やヒナがないことを確かめてから古巣を取り除き、壁面やすき間を作りにくくする巣材の運び込みを毎日点検し、卵を産む前に対応を決める卵が入ったあとは、作らせない対策が使えない
決めきれない去年の巣の位置と、困った点を写真とメモに残す判断に迷う場合は、都道府県や市区町村の鳥獣担当に相談する巣の中の様子が分からないまま、撤去しない

参考:日本野鳥の会|ツバメをまもろう(フン対策・カラス対策・法律)