マダニはどこにいる?公的資料が示す生息場所(山・裏庭・河川敷)
国立健康危機管理研究機構の感染症情報提供サイトは、マダニの生息場所を、シカやイノシシ、野ウサギなどの野生動物が出没する環境に多く、民家の裏山、裏庭、畑、あぜ道にも生息していると説明しています。大阪府は、これに河川敷を加えて案内しています。
厚生労働省のSFTSに関するQ&Aは、マダニが主に森林や草地に生息する一方で、郊外や市街地でも生息していると説明しています。名古屋市も、これまでの調査で市内にフタトゲチマダニとキチマダニの生息が確認されているとしています。山に行かない地域だから関係ないと決めず、草地や緑地、畑に接した庭かどうかで考えるのが現実的です。
マダニが活発な時期|春から秋、真夏も含まれる
国立健康危機管理研究機構は、マダニの多くは春から秋(3〜11月)にかけて活動が活発になり、冬季に活動する種類もいると説明しています。真夏もこの期間に含まれます。名古屋市は市内5地点で採集調査を行っており、令和7年度の結果表では、5月から10月まで毎月マダニが採集され、8月の採集数が最も多くなっています。調査地点と年で結果は変わるため、真夏だから少ない、夏だけ多いといった判断の材料にはなりません。
山・庭・マンションの違い|場所より草地や動物との距離で考える
公的資料が生息場所として挙げているのは、山林、草地、野生動物が出没する環境、裏山、裏庭、畑、あぜ道、河川敷で、マンションの室内や共用廊下は含まれていません。集合住宅の室内で見つかった場合も、屋内で増えたというより、屋外で付着したものが持ち込まれた可能性を先に考えます。敷地に草地や植え込みがあれば、そこが生息環境になりうる点は戸建てと同じです。
| 場所 | 公的資料の説明 | 庭・家まわりでの見方 |
|---|---|---|
| 山林・草地 | シカやイノシシ、野ウサギなどが出没する環境に多い | 登山やキャンプだけでなく、草刈りや農作業でも接する |
| 民家の裏山・裏庭 | 裏山や裏庭にも生息している | 敷地の奥や境界にある草むら、藪の位置を確認する |
| 畑・あぜ道 | 畑やあぜ道にも生息している | 作業のあとに服と体を確認する習慣をつける |
| 河川敷 | 大阪府が生息場所として挙げている | 散歩コースにある場合はペットの体表も確認する |
| 家の中 | 家庭内のダニとは種類が異なると説明されている | 見つかったときは、屋外から持ち込まれた経路を振り返る |
参考:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト|マダニ対策、今できること(最終更新2025年8月7日)
マダニは家の中やマンションにもいますか?
公的資料は、マダニは食品のコナダニや寝具のヒョウヒダニなど家庭内のダニとは種類が違い、主に森林や草地に生息すると説明しています。室内やマンションで見つかった場合は、衣服やペット、荷物に付いて屋外から持ち込まれた可能性を先に考え、皮膚に食い込んでいれば医療機関へ相談してください。
マダニの大きさ・体長・色と、家の中のダニとの違い
厚生労働省のQ&Aによると、マダニ類は固い外皮に覆われた比較的大型のダニで、成ダニの大きさは種類にもよりますが、吸血前で3〜8mm、吸血後は10〜20mm程度です。大阪府は、吸血前は約0.5cm、吸血後は約1.5cmと案内しています。厚生労働省は、国内には命名されているものだけで47種のマダニが生息するとしており、公的資料が目安として示しているのは色ではなく大きさです。色だけで判断せず、大きさと外皮の硬さ、皮膚への食い込みで考えます。
家の中で問題になるダニは、食品などに発生するコナダニや、衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなどです。厚生労働省は、これらの家庭内のダニとマダニでは種類が異なり、植物の害虫であるハダニ類とも別だと説明しています。室内のダニの確認は室内のダニが気になるときの記事で整理しています。マダニは動物やヒトに取り付いて皮膚に口器を刺し、数日から長いもので10日以上吸血し、刺されたことに気づかない場合も多いとされています。
| 見つけた状況 | 考えられる方向 | 最初にすること |
|---|---|---|
| 野外作業や散歩のあと、服に3〜8mmほどの粒が付いている | マダニの可能性がある | 服に付いたものは、ガムテープなどで取り除く方法がある。素手でつぶさない |
| 皮膚に小さなできもののようなものが食い込んでいる | 吸血中のマダニの可能性がある | 無理に引き抜かず、皮膚科など医療機関で除去してもらう |
| 犬や猫の体に膨らんだ粒が付いている | ペットに付いたマダニの可能性がある | 無理に取らず、動物病院で除去を相談する |
| 布団や畳でかゆみがあるが、虫の姿ははっきり見えない | マダニより、家庭内のダニなど別の原因を考える | 室内のダニの確認へ進み、症状が続くときは医療機関に相談する |
| 屋外活動と関係なさそうな小さな虫が室内の床にいる | マダニと決められない | 写真を撮り、触らずに容器へ入れて保管し、相談窓口へ |
庭や家の中にマダニが持ち込まれる経路|野生動物・ペット・衣服
公的資料から読み取れる経路は三つです。野生動物の体に付いて庭に入る、ペットの体に付いて家に入る、人の衣服や荷物に付いて家に入る、の順に見ていきます。
野生動物が運び、庭の草むらに落とす
マダニは、幼ダニ、若ダニ、成ダニの各段階で1回以上、生涯で少なくとも3回吸血します。国立健康危機管理研究機構は、ヒト以外に、野ネズミ、野ウサギ、シカ、イノシシなどの野生動物や、ネコ、散歩中のイヌなどからも吸血すると示しています。厚生労働省に掲載された森林総合研究所の研究者の発表資料では、マダニは自然環境では1.5mほどしか歩けず、吸血中に宿主の動物が移動することで分散すると整理されています。
同じ発表資料には、マダニの生息分布を推定する解析に、森林の連続性や、シカ、イノシシ、タヌキ、アライグマ、ハクビシンの分布が要因として入っています。愛媛県の発表要旨も、マダニの生息密度は野生動物の侵入頻度に依存するため、全ての場所で殺虫剤による駆除をするのは難しいとしています。庭に野生動物が頻繁に出入りする家では、庭の草むらや裏手がマダニの生息環境になりうる、と読めます。
ただし、動物の種類で事情は異なります。発表資料には、アライグマには大量のマダニが付いている一方で、ハクビシンはきれいなことが多いという観察が示され、北米のオポッサムの研究例を引いて、マダニを減らす働きを持つ動物が日本にもいるかという問いも挙げられています。その動物が来たから庭にマダニが増えたと決めつけず、あくまで点検の手がかりにとどめてください。
ペットが運ぶ
散歩や外出をする犬、屋外に出る猫には、森や茂み、河川敷などでマダニが付くことがあります。厚生労働省のQ&Aは、散歩のあとにペットの体表をチェックし、目の細かい櫛をかける方法も効果的だとしています。マダニがしっかり食い込んでいる場合は無理に取らず、獣医師に除去してもらい、駆除剤などは獣医師に相談するよう案内しています。
同じQ&Aは、ペットに付いているマダニに触れただけで感染することはないが、マダニに刺されれば危険性はあるとしています。ペットの体から取り除いたものを素手でつまんだりつぶしたりせず、動物病院に任せるのが安全です。
衣服や荷物が運ぶ
人が運ぶ場合の中心は、草むらや畑から帰った上着、作業着、手袋、靴下です。国立健康危機管理研究機構は、野外活動後は上着や作業着を家の中に持ち込まないこと、シャワーや入浴でダニが付いていないか確認すること、ガムテープや粘着カーペットクリーナーで服に付いたダニを取り除く方法が効果的であることを示しています。厚生労働省のQ&Aは、体では首、耳、わきの下、足の付け根、手首、膝の裏を確認のポイントに挙げています。
| 経路 | 起きやすい場面 | 先に確認すること |
|---|---|---|
| 野生動物 | 庭や裏手に動物が出入りする、畑や裏山に接している | 足跡・掘り跡・フンなどの痕跡と、草むらの位置 |
| ペット | 散歩、河川敷や草地への外出、屋外に出る猫 | 帰宅後の体表、動物病院で相談できる駆除・予防薬 |
| 衣服・荷物 | 草刈り、農作業、キャンプ、山歩きのあと | 玄関前で上着を脱ぐ、粘着テープで取る、入浴時に全身を確認 |
| 家の中で発生 | 家庭内のダニとは種類が異なると説明されている | 屋内で見つけたら、持ち込みを疑って経路を振り返る |
参考:厚生労働省掲載|動物由来感染症技術研修会 ワンヘルスの視点からみた感染症ベクター(マダニ、ツツガムシ等)の生態学(森林総合研究所の発表資料・PDF)
野生動物の出入りの痕跡を確認する庭の点検表
庭にマダニがいるかどうかは、目で見ても分かりません。そこで、公的資料が生息環境としている野生動物が出没する環境と草むらや藪に、自分の庭が当てはまるかを点検で確かめます。厚生労働省のQ&Aは、野生動物はどのような病原体を保有しているか分からないため接触を避け、動物の死体にも触れないよう案内しています。点検は、動物に近づかず、遠くから見て記録するだけにします。
庭が掘られている場合は庭が掘られているときの記録の取り方、アライグマが疑われる場合は庭にアライグマらしき動物が来たとき、イノシシが疑われる場合は庭にイノシシが来たときに、確認の進め方をまとめています。床下や物置への出入りが気になるときは床下周辺の物音や痕跡も参考になります。
痕跡が多いからといって、庭にマダニがいると断定できるわけではありません。痕跡がなくても、草むらにマダニがいる可能性はあります。点検の目的は、野生動物が頻繁に来る庭かどうかを把握して、草刈りや庭仕事の服装、作業後の確認、ペットの対策の重さを決めることです。動物の追い払いや捕獲は、種類によって法律や自治体の手続きが関わるため、この記事では手順を扱いません。
| 確認する場所 | 見る痕跡 | 記録すること | 次の一歩 |
|---|---|---|---|
| 敷地の境界、草むら、藪、植え込み | 草が踏まれた通り道、獣道のような筋 | 位置と長さを写真と略図で | 草刈りの前後は、服装と作業後の確認をセットにする |
| 土の地面、花壇、畑 | 掘り返し、足跡、浅い穴 | 日付、穴の数、大きさの目安 | 掘り跡の読み方は別記事で確認する |
| 果樹、菜園、落果 | 食べ跡、落ちた果実、残された皮 | 食べ跡のある木と時期 | 落果や収穫の取り残しを放置しない |
| ごみ置き場、屋外の餌、ペットフード | 荒らされた跡、置きっぱなしの餌 | 置き場所、夜間も出しているか | 餌になる物を屋内か蓋つきの容器に移す |
| 物置、縁の下、床下の出入口 | すき間の周りの汚れ、フン、においの変化 | 場所の写真と気づいた日 | 床下や屋根裏への出入りが疑われれば相談を検討する |
- 動物には近づかず、触らず、追い回さない
- 草むらに入る点検は、長袖・長ズボン・足を覆う靴で行う
- 点検のあとは上着を玄関前で脱ぎ、入浴時に首やわきの下を確認する
家の中でマダニを見つけたときの処理と、殺虫剤の表示確認
室内で見つけたマダニへの対応は、皮膚、ペット、衣類や床のどこにいるかで分かれます。
皮膚に付いているとき
吸血中のマダニを無理に引き抜くと、マダニの一部が皮膚内に残って化膿したり、体液を逆流させて病原体が体内に入りやすくしてしまったりするおそれがあるため、皮膚科などの医療機関で除去してもらうよう、厚生労働省と国立健康危機管理研究機構が案内しています。刺されたあとは数週間ほど体調の変化に注意し、発熱などの症状が出たら受診してください。大阪府は、受診の際に山林や草地に入ったことやダニに刺されたことを医師に伝えるよう案内しています。
衣類・床・寝具で見つけたとき
服や床にいて皮膚に付いていない個体は、国立健康危機管理研究機構の資料にある、ガムテープや粘着カーペットクリーナーで取り除く方法が参考になります。素手でつまんだりつぶしたりせず、取ったあとはテープごと袋に入れて口を閉じます。見つけた日、場所、屋外活動の有無をメモし、写真を撮っておくと、受診や相談のときに役立ちます。同じ場所で何度も見つかる場合は、自治体の保健所や衛生の担当窓口に相談してください。
殺虫剤を使う前に表示を確認する
屋内でマダニ用の殺虫剤を使えばよい、とは言えません。たとえばアース製薬の「ヤブ蚊マダニジェット 屋外用」は、庭木周り、茂み、地面などに使う製品として案内され、食用植物には使用しないよう注意書きがあります。マダニの駆除をうたう製品でも、対象害虫、使用場所、使用方法、人やペット・植物への注意は製品ごとに違うため、購入前と使用前に表示を読み、表示にない場所には使いません。
愛媛県の発表要旨は、植生マダニの駆除で殺虫剤が高い効果を示した一方、全ての場所での散布は難しく、最も重要なのはマダニから身を守る服装や方法を実践することだと述べています。庭全体を薬剤で処理するより、作業時の服装、作業後の確認、ペットの対策を優先してください。薬剤の希釈や混ぜ合わせを自分で調整することも避けます。
地域のマダニ・SFTS発生情報の調べ方|マップの代わりになる資料
厚生労働省のQ&Aは、SFTSの患者は西日本を中心に報告されてきたものの、2025年に関東や北海道で感染した症例が報告され、全国的に感染リスクがあると考えられるため、患者の発生が確認されていない地域でも注意が必要だとしています。自分の県で届出がないことは、マダニがいないことを意味しません。
全国の届出の状況は、国立健康危機管理研究機構の「感染症発生動向調査で届け出られたSFTS症の動向について」のページで確認できます。2026年7月31日現在の概要では、2013年3月以降に届け出られた累計1,368例が届出地域の都道府県別に示されており、宮崎県、広島県、長崎県、高知県の4県が100例を超える一方、和歌山県は48例、愛知県は20例、東京都は3例でした。届出は診断されて報告された症例の数で、マダニの数や分布そのものではありません。更新は年に数回で、次回は2026年11月末頃の掲載予定と書かれています。
名古屋市は、市内5地点でのマダニの採集結果とウイルス検査結果を月別に掲載しています。このように、自治体が調査結果を公開している例もあるため、お住まいの県や市の名前とマダニまたはSFTSで検索し、保健所や衛生研究所のページを確認すると、地域の注意喚起を見つけやすくなります。
| 知りたいこと | 調べる場所 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 全国のSFTS届出の概況 | 国立健康危機管理研究機構の感染症サイトにあるSFTS症の動向のページ | 届出は症例の数であり、マダニの生息数ではない。更新は年に数回 |
| お住まいの県・市の注意喚起 | 都道府県や市区町村の感染症情報、保健所、衛生研究所のページ | 自治体ごとに、啓発のみか調査結果の掲載まであるかが違う |
| 市内でのマダニ採集結果の例 | 名古屋市の「マダニに咬まれないように注意しましょう」のページ | 令和7年度は市内5地点で5〜10月に採集され、月別の結果が載っている |
| ペットの予防と体表チェック | かかりつけの動物病院 | 駆除・予防薬の種類や時期は獣医師に相談する |
参考:国立健康危機管理研究機構|感染症発生動向調査で届け出られたSFTS症の動向について(2026年7月31日現在の概要を掲載)
庭の野生動物とマダニが気になるときの相談先と目安
マダニそのものの相談と、庭に出入りする動物の相談は、窓口が分かれます。刺された、体調が悪いといった健康の相談は医療機関や保健所、ペットの予防は動物病院、庭への動物の出入りや被害は自治体の鳥獣や環境の担当、あるいは害獣の調査を行う事業者が窓口になります。
自分でできるのは、餌になる物の片付け、果実の取り残しの整理、草刈りの服装、作業後の確認、ペットの体表チェックまでです。床下や屋根裏への出入りが疑われる場合は、触らずに確認できる範囲の写真と日付をそろえ、害獣の現地調査を頼む前に伝えることを整理してから相談してください。






