野良猫への餌やりは違法?国の法律と自治体の案内を分けて読む

大田区は、屋外で猫に餌を与える人向けのページ(2021年12月6日更新)で、猫への給餌行為については法令による定めがなく、禁止されていないと案内しています。そのうえで、屋外で不特定の猫に餌を与えると、猫が地域に居着き、他の地域からも猫を呼び寄せて、繁殖によって数が増えるおそれがあると説明しています。区に寄せられる猫の苦情で最も多いのは、ふん尿の被害だということです。

「禁止されていない」ことは、どんな餌やりも問題ないという意味ではありません。大田区は、他人が所有・管理する土地や建物での無断の給餌は、不法侵入などにあたる違法行為だと注意しています。また、餌やりが原因で周辺の生活環境が損なわれた場合には、次の見出しで説明する動物愛護管理法第25条や、自治体の条例が関係してきます。

餌をやる人にも事情があります。日立市は、野良猫に餌を与える考えには「かわいそう」「野良猫のため」という気持ちがあるかもしれないと述べたうえで、近所に迷惑をかけないための5つの心がけを案内しています。被害を受ける側としても、餌をやる人を一方的に非難するのではなく、被害の事実と困っている点を軸に進めるほうが、解決につながりやすくなります。

参考:大田区|屋外で猫に給餌している(エサを与えている)方へ(2021年12月6日更新)

読者の疑問

野良猫に餌をあげると、罰せられますか?

比較ガイド

大田区は、猫への給餌行為は法令による定めがなく禁止されていないと案内しています。ただし、餌やりで周辺の生活環境が損なわれ、第25条の命令に違反すると50万円以下の罰金(第46条の2)があります。京都市のように条例で過料を定める自治体もあるため、お住まいの自治体の条例を確認してください。

動物愛護管理法第25条|生活環境を損なう給餌への指導・勧告・命令

動物愛護管理法第25条は、動物の飼養、保管または給餌・給水に起因した騒音や悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生などによって、周辺の生活環境が損なわれている事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、都道府県知事が、その事態を生じさせている者に必要な指導や助言をできると定めています。以下は2026年10月3日にe-Gov法令検索で確認した条文です。環境省の概要では、この権限を持つのは都道府県知事または政令指定都市の長とされています。

環境省令(動物の愛護及び管理に関する法律施行規則第12条)が定める「事態」は、動物の鳴き声その他の音、飼料の残さやふん尿などの不適切な処理や放置による臭気、毛や羽毛の飛散、多数のねずみ・はえ・蚊・のみなどの衛生動物の4つです。これらのいずれかが周辺住民の日常生活に著しい支障を及ぼしていると認められ、その支障が複数の周辺住民からの苦情の申出などで共通の認識になっている場合や、特に著しい支障として特別の事情があると認められる場合が対象です。被害の程度と、周辺の人も困っているかどうかが焦点になります。

命令に従わなかった場合は、第46条の2により、50万円以下の罰金が定められています。ただし、実際に行政がどの段階まで進めるかは、自治体が現場の状況を見て判断します。住民ができるのは、被害の記録をそろえて窓口に伝えることで、餌をやる人への対応を自分で決めることではありません。近所の被害状況を確かめる方法は、近所でも被害があるときの情報共有の方法を参考にしてください。

動物愛護管理法第25条|生活環境を損なう給餌への指導・勧告・命令:確認項目
段階法第25条で定められている内容行うことができる者
指導・助言(第1項)事態を生じさせている者に、必要な指導または助言をする都道府県知事(政令指定都市の長)
勧告(第2項)期限を定めて、事態を除去するために必要な措置をとるよう勧告する都道府県知事(政令指定都市の長)
命令(第3項)勧告を受けた者が措置をとらず、特に必要があるとき、期限を定めて措置をとるよう命令する。違反には50万円以下の罰金(第46条の2)都道府県知事(政令指定都市の長)
市町村への協力要請(第7項)勧告・命令・報告の徴収・立入検査に関して、市町村長に必要な協力を求める都道府県知事

参考:e-Gov法令検索|動物の愛護及び管理に関する法律

条例で野良猫の餌やりのルールを定める自治体の例|京都市・長崎市・和歌山県

国の法律とは別に、条例で餌やりの基準を定める自治体があります。条例の有無、内容、違反したときの扱いは自治体ごとに違い、全国共通のルールではありません。次の表は、公式ページや条文で確認できた範囲を整理したものです。条文は改正されることがあるため、実際に動く前に、お住まいの自治体の最新の条例を確認してください。

京都市の条例は、命令に違反した場合に5万円以下の過料を定めていますが、餌やりをしただけで過料になるわけではありません。まず市長が勧告を行い、従わない場合に命令する順番で、過料は命令違反に対するものです。和歌山県の説明でも、まず十分に指導を重ね、改まらない場合に勧告、次いで命令を行い、従わない場合に限って過料を科すとされています。

条例の有無にかかわらず、啓発で呼びかけている自治体もあります。大田区は餌やりを禁止せず、決まった猫にだけ対面で与える、置きっぱなしにしない、ふん尿の始末をする、不妊去勢手術を受けさせるといった注意を、啓発プレートの配布などで呼びかけています。お住まいの自治体が条例で定めているのか、啓発にとどめているのかは、市区町村と都道府県の動物愛護の担当に確認できます。

条例で野良猫の餌やりのルールを定める自治体の例|京都市・長崎市・和歌山県:確認項目
自治体条例・制度の位置づけ給餌をする人に求められる主なこと従わない場合の扱い
京都市京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例(平成27年公布)。市は野良猫への適切な給餌の活動を支援する周辺住民の生活環境に悪影響を及ぼす給餌をしない。市の説明は、責任者と連絡先の伝達か届出、早朝・深夜を避けた決まった時間、置き餌をしない、ふん尿の始末、手術済みなどの猫に限る、1人5頭以下の目安を示す市長が勧告し、従わなければ命令。命令違反は5万円以下の過料(第14条)
長崎市長崎市動物の愛護及び管理に関する条例(令和4年7月1日施行)周辺の生活環境に支障が生じる給餌等をしない。飼い主のいない猫への給餌等は、要綱の基準を守る。ルールを守る人は届出で届出済証を貸与される公式ページ(2024年11月11日更新)は基準の遵守を求めている。条例本文の罰則(第26条)は飼い犬の係留違反などが対象で、給餌の規定(第11条)の違反に罰則は定められていない
和歌山県和歌山県動物の愛護及び管理に関する条例の改正(平成29年4月1日施行)。県の説明ページで確認飼い猫以外の猫に継続的・反復して給餌する人は、周辺住民への説明に努め、手術済みなどの猫に給餌し、時間を決めて餌を放置せず、トイレの設置と処理を行う。繰り返さない給餌は対象外指導を重ねたうえで勧告、次に命令。従わない場合に限り過料

参考:京都市|京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例(条文、PDF)

無責任な餌やりと地域猫活動の違い|環境省のガイドラインから

環境省の「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」(平成22年2月)は、地域猫を、地域の理解と協力を得て、地域住民の認知と合意が得られている特定の飼い主のいない猫と説明しています。餌やりの場所は決められ、排泄物の処理や周辺の清掃が行われ、不妊去勢手術で数が増えるのを抑えます。野良猫を排除するのではなく、地域住民が飼育管理することで、トラブルをなくそうとする取り組みです。

一方で、長野市は、飼い主のいない猫への餌やりを禁止するだけでは根本的な解決にならないとしています。千葉市も、すでに増えた猫に急に餌やりをやめると、猫が場所を変えてごみあさりなど周辺を不衛生にし、かえって状況が悪化する可能性を指摘しています。餌をやる人をやめさせれば終わりではなく、管理された形に変えていくことが、被害を減らす現実的な道だと両市は示しています。

野良猫にあげていいものといけないもの

ガイドラインは、置き餌は絶対にやめるよう求めています。置き餌は、カラスの飛来や、ハエ・ゴキブリなどの害虫の発生、悪臭の原因になるためです。残飯を与えると、猫のふん尿の悪臭を誘発し、人間の食べ物の味を覚えてごみをあさるようになることがあるため、与える場合はキャットフードにするとしています。餌の置きっぱなしが別の動物を呼ぶ例は、外置きの餌とアライグマでも紹介しています。

  • 与える場合は、決めた場所で決めた時間に、猫が食べ切れる量だけにする
  • 食べ終わるのを待って、容器を回収し、周辺を清掃する
  • 残飯や人間の食べ物は避け、キャットフードにする
  • 他人の敷地や公共の場所では、管理者の了解なしに与えない

「かわいそう」から始めた餌やりが続くとき

猫の幸せを思って始めた餌やりが、近所の迷惑になり、結果的に猫が厄介者扱いされてしまうことがあると、大田区は注意しています。餌をやる人が地域の理解を得ないまま続けると、被害を受ける人との対立が深まりやすくなります。餌をやる人に向けて、手術費用の助成や地域猫活動の支援を、公式ページで案内している自治体もあります。

無責任な餌やりと地域猫活動の違い|環境省のガイドラインから:確認項目
項目無責任な餌やりで起きがちなことガイドラインが地域猫活動に求めること
餌の与え方置き餌や残り餌が放置され、カラスや害虫、悪臭の原因になる餌やりの場所を地域住民の迷惑にならない場所に固定し、決めた時間に与え、食べ終えたら容器を回収して清掃する
トイレとふん尿他人の敷地や共用部で排泄される周辺住民の理解が得られる場所にトイレを設置し、排泄物を速やかに片付ける
猫の数手術をしないまま子猫が生まれ、数が増える性成熟する前(生後6か月頃)に不妊去勢手術を行い、手術済みの猫を識別する
地域との合意個人の判断で続け、周囲に説明がない自治会としての合意を得て、代表者と連絡先を明確にし、苦情や意見を記録する
猫の把握頭数や健康状態が分からない世話をする猫の数、個体識別、健康状態を把握する

参考:環境省|住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン(平成22年2月、PDF)

餌やりの被害の記録の作り方|日時・場所・置き餌・フン尿・写真

第25条や条例で行政が動くには、被害が続いていることと、その程度が分かる材料が必要です。長野市の保健所には、外にいる猫の糞尿、発情による鳴き声、繁殖などの相談が多く寄せられるとされており、これらが餌やりと結びついているかを、事実で示す記録が役立ちます。次の表の項目を、日付順に書き足してください。

記録は、餌やりをする人を特定したり責めたりするためのものではありません。いつ、どこで、どんな被害が、どれくらい続いているかを、窓口の担当者が把握するためのものです。近づいて撮影したり、他人の敷地に入ったりする必要はありません。人物が写り込む場合は、窓口に渡す写真以外は共有しないなど、取り扱いに注意します。

餌やりの被害の記録の作り方|日時・場所・置き餌・フン尿・写真:確認項目
記録するもの書き方の例避けること
日時「10月5日 夜9時ごろ、容器あり」のように、見つけた時刻と状況を毎回書く1回だけの記録で終わらせない
場所住所、目印になる建物、敷地内の位置(玄関前・花壇・車の下)他人の敷地に入って撮らない
置き餌・容器餌や容器が置かれていた場所、残っていた量、食べ残しに集まった生き物容器を勝手に片付けたり動かしたりしない
フン尿・鳴き声・ごみ被害の種類と場所、片付けた手間、鳴き声がした時間帯触る前に写真を撮り、においの感想だけで済ませない
猫の様子頭数、毛色、耳先のカットの有無、首輪の有無追い払ったり、近づいたりしない
餌を置く様子餌を置く様子を見た日時と場所の事実だけを書く氏名や住所を断定しない。つけ回して確かめない

参考:長野市|猫によるお困りごと対策~地域猫活動のすすめ~(2026年2月14日更新)

自治体への相談先と伝え方|相談文の例

餌やりが原因とみられる被害の相談先は、お住まいの自治体の動物愛護の担当です。保健所、動物愛護センター、動物保護指導センター、環境担当課など名称は様々で、第25条の権限は都道府県知事や政令指定都市の長が持つため、市区町村の窓口から県などの担当へつながる場合があります。市区町村の代表窓口に電話し、猫の餌やりの相談はどの課かを聞いてから、記録を持って連絡します。

相談先の選び方

迷ったときは、次の順で問い合わせます。条例がある自治体では、条例を所管する課も窓口になり得るため、公式ページで条例名と担当課を確認します。ガイドラインも、困ったときは、都道府県、政令指定都市、中核市の動物愛護管理担当部署や、最寄りの動物愛護センター、保健所、獣医師会に相談するよう案内しています。

  • 市区町村の代表窓口に、野良猫の餌やりによる被害の担当課を聞く
  • 都道府県、政令指定都市、中核市の動物愛護管理担当(保健所・動物愛護センター)に、第25条や条例の対応を確認する
  • 集合住宅や借家の敷地内なら、先に管理組合・管理会社・大家へ連絡する

相談文の例

電話やメールでは、事実と、知りたいことを分けて伝えます。たとえば次のように話します。「〇〇町〇丁目の〇〇付近で、10月に入ってから約3週間、早朝に置き餌と容器が見つかり、猫が集まってフン尿が敷地に残る状況が続いています。日付と写真を記録しています。餌を置いている方を責める意図はなく、地域猫活動や条例の案内など、利用できる制度を教えていただけますか。」

参考:環境省|動物愛護管理法の概要

餌やりをする人と直接争わずに進める|当事者間のトラブルを避ける順番

日立市は、野良猫に餌を与える人に、ご近所の方に餌やりの理解を得る、迷惑にならない場所で行う、置き餌をせず必ず片付ける、餌場の近くにトイレを設置して清掃する、不妊去勢手術を行う、という5点を案内しています。被害を受ける側も、この5点を基準に、何が足りないのかを整理しておくと、話し合いが感情的になりにくくなります。

張り紙で相手を責めるような方法は、対立を深めやすいため避けます。大田区は、注意喚起のプレートを配布していますが、自宅の塀や柵など自分が所有する土地や建物に掲示するものとし、他人の所有地や管理する建物、道路上の電柱やガードレールなどへの無断掲示は厳禁としています。鳥への餌やりでも同じ進め方が参考になるため、ハトが集まる庭やベランダの置き餌・こぼれ餌の見直しも併せて確認してください。

  • 被害の記録をそろえ、近所にも同じ被害が出ていないか事実を中心に確認する
  • 管理組合、管理会社、自治会など、第三者を通して餌をやる人に伝えてもらう
  • 自治体の窓口に、条例や地域猫活動の案内を確認し、話し合いに同席してもらえるかを相談する
  • 直接話すときは、被害の事実と、お願いしたい点(置き餌をしない、トイレを設ける、手術を受けさせる)だけを穏やかに伝える

参考:日立市|野良猫に餌を与えていませんか

集合住宅・駐車場・空き地の管理者への相談|餌やりの場所別の連絡先

餌やりが行われている場所によって、連絡する先が変わります。大田区は、給餌の場所や時間は、その土地や建物の管理者の了解のもとに行うよう求めています。管理者が把握していない餌やりは、管理者から注意してもらえる可能性があるため、被害の記録と一緒に連絡します。

連絡文の書き方は、賃貸の害獣被害を管理会社へ報告する連絡文や、マンション共用部で被害を見つけたときの連絡の形に準じて、場所、日時、写真を添えて書きます。管理者が分からない場所は、市区町村の窓口に問い合わせて、管理者を教えてもらえるか確認します。

集合住宅・駐車場・空き地の管理者への相談|餌やりの場所別の連絡先:確認項目
餌やりの場所連絡先の目安伝えること
マンション・アパートの敷地、共用部管理組合、管理会社、大家場所の番号や位置、日時、置き餌や容器の写真、フン尿の被害
月極駐車場駐車場の管理会社、オーナー餌の容器の位置、車への被害、フン尿の場所と日時
空き地・空き家・私有地土地や建物の所有者、管理者場所、日時、置き餌の様子。所有者が不明なら市区町村の窓口へ相談
公園・道路・河川などの公共の場所管理する自治体の窓口。迷ったときは市区町村の代表窓口場所、日時、餌や容器の様子、フン尿の被害

参考:大田区|飼い主のいない猫対策(2022年4月1日更新)