鳩の感染症は何がある?公的資料に書かれた病気は2つ
厚生労働省の動物由来感染症ハンドブック2026は、動物ごとの主な感染症の一覧で、小鳥・ハトにオウム病とクリプトコッカス症を挙げています。野鳥(ハト・カラス等)の欄にはウエストナイル熱も載っていますが、わが国で病原体が未発見、もしくは長期間発見されていない感染症の印が付いているため、この記事では国内の身近な2つを中心に扱います。
堺市と名古屋市も、ハトの被害を案内するページで同じ2つを挙げています。堺市は、苦情の例として「オーム病やクリプトコッカス症(主に乾燥したふんを吸い込むことによる)などの病気にならないか」を紹介しています。名古屋市は、ハトの体や糞には人にうつる病気(オウム病やクリプトコッカス症など)を持っていることがある、と説明しています。
持っていることがあるのと、すぐ感染するのは別の話です。国立健康危機管理研究機構(JIHS)の解説では、オウム病の国内報告は年間10例前後とされ、保菌は様々な鳥類で報告され、特にオウム・インコ類から感染した報告が多いと書かれています。心配しすぎるより、接触と吸い込みを減らす行動に絞って考えるほうが現実的です。
| 項目 | オウム病 | クリプトコックス症 |
|---|---|---|
| 原因 | オウム病クラミジアという細菌(JIHS) | 土壌など環境中に存在する真菌(厚生労働省) |
| ハトとの関係 | インコ、オウム、ドバト等の糞に含まれる菌を吸い込む場合がある(厚生労働省) | ハトなど鳥類の糞中でよく増え、感染源の一つになる(厚生労働省) |
| 感染経路 | 感染した鳥の排泄物に含まれる菌の吸入が主。口移しの給餌や、鳥に噛まれることでもまれに感染(JIHS) | 吸入や、傷のある皮膚を介して感染(厚生労働省) |
| 症状の記載 | 1〜2週間の潜伏のあと、突然の高熱、頭痛や筋肉痛、咳など。重症化すると多臓器不全などで死亡することもある(JIHS) | 健康な人の肺の例では無症状が多く、発症すると風邪のような症状。免疫力が低下していると慢性の肺疾患に進むことも(厚生労働省) |
| 特に注意を促される人 | 妊婦。鳥を飼っていて治りにくい咳や息苦しさがある人は、受診して鳥を飼っていることを伝える(厚生労働省) | 免疫力の低下している人(厚生労働省) |
| 国内の状況 | 感染症法の四類感染症。国内の報告は年間10例前後(JIHS) | 確認した資料には、報告数の記載がありませんでした |
参考:国立健康危機管理研究機構|感染症情報提供サイト オウム病
鳩のフンで感染症になることはありますか?
公的資料には、ハトなど鳥類のフンに関わる感染症として、オウム病とクリプトコックス症が挙げられています。主な経路はフンなどの吸い込みで、触れない・舞い上げない・手を洗うことで接触を減らせます。心配なときは医療機関に相談してください。
感染経路は乾いたフンの吸い込み|日常でできる予防
公的資料に共通するのは、フンや巣に近づく作業では粉じんを吸い込まないこと、触れたら手を洗うこと、巣を作らせないことです。堺市の案内をもとに、場面ごとの考え方を整理します。
吸い込みを減らす:乾いたまま掃かない
堺市は、ハトのフンの掃除方法として、まず水で流すか、流せない場合でも一度水に濡らして、飛散しないように片付けるよう案内しています。乾いたままほうきで掃く、ブラシで払う、勢いよく吹き飛ばすといった方法は、粉じんを舞い上げるため避けます。厚生労働省のハンドブックも、鳥の世話やケージの掃除ではマスクや手袋を着けるよう書いており、ハトのフンの片付けでも同じ考え方が使えます。なお、室外機の周りでは本体に水を直接かけないようメーカーが案内しているため、鳩が室外機の裏や下に巣を作る前の対策で区別して確認してください。
触らない・手洗い:野生動物は病原体を持つ可能性がある
堺市の野生鳥獣のページは、野生動物はダニや病原体を保有している可能性があるため、野生動物やその糞、巣などにはむやみに触れず、清掃などを行ったあとは手洗いを徹底するよう書いています。素手で巣材をつかまない、片付けたあとに顔や食べ物に触れる前に手を洗う、を習慣にしてください。
巣を作らせない:ベランダや換気扇の排気口に注意
厚生労働省のハンドブックは、オウム病の予防として、ベランダや換気扇の排気口などにハトが巣を作らないように注意することを書いています。巣を作らせない工夫は、ハトを近づけないことが目的であり、フンとの接触機会を減らすことにもつながります。
国内で報告された集団感染事例
同じハンドブックは、オウム病について、2002年と2005年に国内の動物展示施設で従業員や来場者に集団感染があったこと、2014年と2021年には事業所でドバトが原因の集団感染があったことを紹介しています。家庭のベランダとは条件が違いますが、フンが多くたまった場所での作業は、予防を丁寧に行う理由の一つです。
| 場面 | 避けたいこと | 代わりにすること |
|---|---|---|
| ベランダのフンを片付ける | 乾いたまま掃く、ブラシで払う、勢いよく吹き飛ばす | 水で流すか、一度水に濡らして飛散を防ぐ(堺市)。マスクと使い捨て手袋を着け、終わったら手を洗う |
| 巣を見つけた | 素手で巣材をつかむ。卵やヒナのいる巣を動かす | 卵・ヒナの有無を離れて確認する。空の巣だけを湿らせて片付ける |
| 換気扇の排気口や室外機の周り | 巣が作られても放置する | 巣を作らせないよう注意する(厚生労働省)。手が届かない場所は管理者へ連絡 |
| 公園や駅の、フンがたまった場所 | 免疫力が低下している人が近づく | 近づかない。避けて通る(厚生労働省) |
| ハトの巣やフンに触れたあと | そのまま飲食や顔の接触をする | 手洗いを徹底する。野生動物やフン・巣にはむやみに触れない(堺市) |
公的資料が特に注意を促している人
厚生労働省のハンドブックには、注意を促す対象が書かれています。クリプトコックス症は、免疫力の低下している人が、公園や駅などの鳥類(ハトなど)の糞が堆積している所に近づかないことです。オウム病は、特に妊婦は注意するよう書かれ、感染した妊婦が重症化し胎児とともに死亡した事例の報告にも触れています。
自分が免疫力の低下に当たるかどうかは、治療中の病気や服用中の薬によって違うため、かかりつけの医師に確認してください。該当する人や妊婦がいる家で巣やフンが見つかったときは、本人が片付けず、ほかの家族や管理者、自治体、業者に任せることも考えます。
- 免疫力の低下している人は、鳥類のフンが堆積した場所に近づかない
- 妊婦は特に注意するよう書かれているため、フンの片付けや巣の確認は家族に任せることを検討する
- 該当するか迷うときは、かかりつけの医師に相談する
ダニやアレルギーなど、感染症以外の健康への影響
鳥の巣やフンの問題は、感染症だけではありません。名古屋市は、ハトの被害として、巣のまわりが糞や羽毛で汚れること、羽毛などがアレルギーの原因になりダニの繁殖を促すことを挙げています。ここでは、ダニと、アレルギー性の肺の病気について、公的な資料で確認できる範囲をまとめます。
巣立ち後の空き巣から出るダニ(トリサシダニ)
豊島区の案内によると、トリサシダニは鳥に寄生するダニで、人の血も吸います。家の軒下や雨戸、換気扇、ベランダ、屋根瓦のすき間などにスズメやムクドリなどの野鳥が巣を作ることがあり、ヒナが巣立って空き巣になるとダニが這い出してきて、5月から7月に人を吸血するとされています。体長は約0.7〜1ミリメートルです。区は、巣の除去と、周辺への殺虫剤の使用を案内しています。薬剤は製品の表示に従ってください。詳しい見分け方はトリサシダニを疑うときの巣と室内の確認にあります。
鳥類の排泄物のたんぱく質と、過敏性肺炎
日本呼吸器学会の一般向け解説は、過敏性肺炎を、病原体が原因ではなく、有機物の粉じんなどを繰り返し吸い込んだことによるアレルギー反応が原因の肺の炎症と説明しています。抗原の例に、カビ、細菌の一種、鳥類の排泄物に含まれるたんぱく質などが挙げられ、症状は乾いたせき、息切れ、発熱で、抗原を避けると改善するが、長期間さらされると慢性化することもあるとされています。巣やフンのある場所にいるときに咳や息切れが出る、離れると楽になる、といった心当たりがあれば、医療機関に相談してください。
ムクドリやツバメの巣でアレルギーは起こる?公的資料で確認できたこと
「ムクドリ アレルギー」「ツバメの巣 アレルギー」と検索する人は多いのですが、今回確認した公的資料には、ムクドリやツバメ固有のアレルギーを説明したものは見つかりませんでした。確認できたのは、野鳥の巣一般にダニが関わること、鳥類の排泄物のたんぱく質がアレルギー性の肺の病気の抗原になり得ることの2点です。
ムクドリについては、豊島区が、ムクドリなどの野鳥の巣が巣立ち後に空き巣になった場合のトリサシダニの吸血を紹介しています。ムクドリの集まり方への対応はムクドリが夕方に集まるときの相談にあり、巣の撤去は、卵やヒナの有無の確認が先です(名古屋市も、卵やヒナのいる野鳥の巣はむやみに除去できないと案内しています)。かゆみが出たときは虫の確認と医療機関への相談を分けて進め、症状の判断は医師に任せます。
体調が気になるときの受診先と、医師に伝えること
厚生労働省のハンドブックは、鳥を飼っている人が治りにくい咳や息苦しさなどを感じたらオウム病を疑って受診し、鳥を飼っていることを医師に伝えるよう書いています。ハトの巣やフンの掃除をした心当たりがあるときも、同じ考え方で、鳥との接触を医師に伝えると、診察の手がかりになります。診断や治療は医療機関が行うもので、この記事から病名を判断することはできません。
強い息苦しさなど、早く診てもらう必要を感じるときは、迷わず医療機関や救急の相談窓口を利用してください。巣やフンの環境そのものは、医療機関ではなく自治体の鳥獣担当課や管理者に相談します。
| 伝えること | 伝え方の例 |
|---|---|
| いつから、どんな症状か | 発熱、咳、息苦しさ、頭痛や筋肉痛など。始まった日と経過 |
| 鳥との接触 | ベランダにハトが巣を作っていた、フンを掃除した、鳥を飼っている、公園でハトに近づいた など |
| 接触した時期と回数 | 巣やフンを片付けた日と頻度。マスクや手袋を使ったか |
| 持病・妊娠・服薬 | 免疫力に関わる治療を受けている、妊娠中である など |
| 症状が出る場所 | 巣やフンのある場所にいるときに咳や息切れが出るか。離れると楽になるか |
フンの清掃と防鳥で接触を減らす方法
感染症への不安は、フンや巣との接触を減らすことで小さくできます。まず、フンの片付けは、湿らせてから、マスクと使い捨て手袋で行い、終わったら手を洗います。具体的な手順と、大量にたまったときの考え方は害獣のフン処理と消毒の手順にまとめています。
次に、ハトを寄せ付けない対策です。ベランダの手すりへのテグス法、巣を作りそうな場所の整理、えさを与えないことが自治体の案内の中心です。ベランダに防鳥ネットを付ける前の確認と、ハトが集まる庭とベランダの餌の見直しも参考にしてください。マンションや賃貸では、管理者の承諾が先なので、鳩被害をマンション管理会社に相談する方法で順番を確認します。





