ヒアリは日本で今どうなった?環境省が公表する確認状況(2026年10月時点)
日本でヒアリが初めて確認されたのは2017年6月です(環境省「ヒアリの基礎情報」)。それから9年あまりが過ぎた2026年10月3日の時点で、環境省が掲載している「2026年度のヒアリ確認事例一覧」の冒頭には、2017年6月以降の確認事例は21都道府県で211事例と書かれています。2026年度分だけで40事例が並び、公表日は5月26日から10月1日まで続いています。
一覧に載っているのは、多くがコンテナヤードの地面です。個体数は約10から3,100以上まで幅があり、女王アリや羽アリ、卵・幼虫又はサナギが記載された事例もあります。確認されたコンテナの多くは中国(特に南部)を出港したもの、と環境省の「ヒアリの防除に関する基本的考え方」は説明しています。
同じ一覧には別表として「ヒアリ・アカカミアリ以外のヒアリ類確認事例」もあり、2026年度は神戸港で9月14日に発見された1事例(約20,000個体)が載っています。ヒアリ類は4種群23種と種間交雑種がまとめて要緊急対処特定外来生物に指定されており、種の内訳は一覧には書かれていません。
ヒアリは日本にまだいるのですか?いなくなったのですか?
環境省の一覧では2026年度も確認事例が公表されており、いなくなったとは言えません。ただし見つかっているのは主に港湾地域で、環境省は国内に定着には至っていないと考えています。
ヒアリはいなくなった?年度ごとの確認事例数の推移
「最近ニュースで見なくなった」という印象から、いなくなったと受け取られることがあります。環境省は年度ごとに確認事例の一覧ページを作り、各ページの冒頭に2017年6月以降の累計を書いています。その累計を並べ、前の年度との差から各年度に増えた事例数を求めたのが次の表です。
2019年度以降で最も少なかったのは2022年度の8事例で、その後は19、24、36事例と増え、2026年度は10月1日公表分までで40事例です。件数は見つかって公表された数で、調査の範囲や頻度にも左右されるため、数の増減だけで侵入の勢いは断定できません。2019年度の10事例は一覧の行数、2020年度以降は累計の差から求めた値です。
| 年度 | 累計の都道府県数 | 累計の事例数 | その年度の事例数 |
|---|---|---|---|
| 2019年度 | 15 | 48 | 10 |
| 2020年度 | 16 | 64 | 16 |
| 2021年度 | 18 | 84 | 20 |
| 2022年度 | 18 | 92 | 8 |
| 2023年度 | 18 | 111 | 19 |
| 2024年度 | 18 | 135 | 24 |
| 2025年度 | 20 | 171 | 36 |
| 2026年度(10月1日公表分まで) | 21 | 211 | 40 |
「確認」と「定着」はどう違う?環境省が国内未定着とする理由
ニュースで「ヒアリを確認」と報じられても、それは「日本に定着した」という意味ではありません。環境省の「ヒアリの防除に関する基本的考え方 Ver.4.2」(2026年4月)は、2026年3月現在、20都道府県で171事例が確認され、港湾エリアでのみ地中に集団で生息するものが見つかっているが、定着には至っていないものと考えられる、と整理しています。国立環境研究所の侵入生物データベースも、ヒアリの国内移入分布を「国内未定着」としています。
環境省の対策で使う「定着」の意味
一般的な言葉の定義とは別に、日本のヒアリ対策では「総合的に見て同一由来のヒアリの集団の発達を抑えることができなくなった状態」を「定着した」と判断することにしています。例として、発達した集団が確認され、複数年にわたってこれに由来した次世代の集団が形成される場合や、輸送などの人為による侵入が考え難い地点で発達した集団が確認される場合が挙げられています。
以前はアリ塚の存在を指標にしていましたが、日本で確認された巣は塚を作らずに発達していたため、2020年3月改訂のVer.3.0以降は判断材料にしていません。
「確認」の中には大きな集団もある
確認事例の中には規模の大きなものもあります。同じ資料は、2019年に東京港青海ふ頭、2020年に名古屋港飛島ふ頭、2021年に大阪港咲洲の事業者敷地内などで、有翅女王アリを多数含む一定規模のコロニーが確認され、対策が強化されたと記しています。2022年には福山港のコンテナ内で70,000匹以上の集団も確認されました。環境省は、見つけて駆除し、次の世代を広げないことを重視しています。
| 比べる点 | 確認(一覧に載る事例) | 定着(環境省の対策上の判断) |
|---|---|---|
| 意味 | 港湾・コンテナ・事業者敷地などでヒアリが見つかり、公表された事例 | 総合的に見て、同一由来の集団の発達を抑えられなくなった状態 |
| 判断の例 | 発見日・公表日・場所・個体数などが1件ずつ公表される | 発達した集団が複数年にわたり次世代を作る、人為による侵入が考え難い地点で見つかる、など |
| アリ塚の扱い | 巣が見つかる事例はあるが、塚を作らない巣も確認された | アリ塚の存在は判断材料にしない(Ver.3.0以降) |
| 2026年3月時点の見立て | 20都道府県で171事例 | 港湾エリアで地中の集団が見つかったが、定着には至っていないと考えられる |
ヒアリは何県で確認された?都道府県別の確認状況
「ヒアリ 何県」と調べる人は多いはずです。環境省の「ヒアリの防除に関する基本的考え方 Ver.4.2」には、2026年3月現在の確認場所を都道府県別にまとめた表があります。載っているのは、北海道、茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、静岡県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、福岡県、佐賀県、大分県の20都道府県です。その後、2026年度の一覧に愛媛県(松山港)が加わり、2026年10月時点では21都道府県になります。
次の表は、主な都道府県について、Ver.4.2の表の「件数」欄を都道府県ごとに足した数と、2026年度の一覧から数えた事例数を並べたものです。件数は確認地点の種別ごとの内訳で、環境省は「1つの案件に複数の発見地点が含まれる場合もあるため、件数の合計は171事例以上になる」と注記しています。全体を足すと187になり、全国の事例数とは一致しません。
東京湾に面した東京港・横浜港・千葉港、名古屋港のある愛知県、大阪港・神戸港のある大阪府・兵庫県が目立ちます。表にない北海道、茨城県、栃木県、埼玉県、新潟県、富山県、静岡県、京都府、佐賀県、大分県は、それぞれ1〜3件です(静岡県は2026年度に清水港で1事例が加わりました)。
| 都道府県 | 2026年3月現在の件数(表の合算) | 主な確認場所(環境省の区分) | 2026年度の事例数(10月1日公表分まで) |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 59 | 東京港の各ふ頭、港湾外の事業者敷地、一般住宅(郵便物内) | 12 |
| 神奈川県 | 37 | 横浜港の各ふ頭、港湾外の事業者敷地 | 6 |
| 愛知県 | 26 | 名古屋港の飛島・鍋田・船見の各ふ頭、港湾外の事業者敷地 | 2 |
| 大阪府 | 20 | 大阪港、港湾外の事業者敷地、個人購入品 | 7 |
| 広島県 | 8 | 広島港、福山港、港湾外の事業者敷地 | 0 |
| 兵庫県 | 6 | 神戸港ポートアイランド、港湾外の事業者敷地 | 4 |
| 福岡県 | 6 | 博多港、北九州港、港湾外の事業者敷地 | 4 |
| 千葉県 | 6 | 千葉港、成田空港、港湾外の事業者敷地 | 0 |
| 岡山県 | 3 | 水島港、港湾外の事業者敷地 | 2 |
| 三重県 | 2 | 四日市港 | 1 |
| 愛媛県 | 0 | 表になし(2026年度に松山港) | 1 |
関西のヒアリ確認事例|大阪港・神戸港・四日市港の2026年度公表分
近畿では、大阪府、兵庫県、京都府が環境省の都道府県別の表に載っています。京都府は港湾外の事業者敷地内で1件、大阪府と兵庫県は港湾での確認が中心で、2026年度の一覧にも大阪港と神戸港が何度も登場します。滋賀県、奈良県、和歌山県は、今回確認した環境省の表と2026年度の一覧のどちらにも出てきません。隣接する三重県では、四日市港が2026年度の一覧に1事例あります。
次の表は、2026年度の一覧から近畿の港の事例をまとめたものです。一覧が示すのは港湾の中や事業者の敷地での発見で、住宅地での定着を示すものではありません。
愛媛県の松山港で確認された事例については、松山市のヒアリ・セアカゴケグモの連絡先で自治体の案内をまとめています。
| 港(都道府県) | 2026年度の事例数 | 発見日の範囲 | 確認状況と個体数の記載 | 女王アリ・卵などの記載 |
|---|---|---|---|---|
| 大阪港(大阪府) | 7 | 5月29日〜9月17日 | コンテナヤードの地面が中心。約10〜約2,500個体。1事例は空コンテナ内外で約370個体、出港地は中国・蛇口港 | 6月の事例に羽アリ約20個体、幼虫又はサナギ約200個体。7月の事例に幼虫又はサナギ50個体程度 |
| 神戸港(兵庫県) | 4 | 5月29日〜9月16日 | コンテナヤードの地面。約20〜約300個体 | 7月31日の追加確認に無翅女王1 |
| 四日市港(三重県) | 1 | 6月19日 | コンテナヤードの地面。約300個体 | 記載なし |
ヒアリの水際対策|要緊急対処特定外来生物の指定と港湾での調査
日本で確認されたヒアリは、輸入されたコンテナや貨物に付着して侵入しています。そのため国の対策は、港や空港、物流の現場で見つけて止めることが中心です。環境省の基礎情報ページには、ヒアリが定着した国々では莫大な費用をかけて駆除しても、ニュージーランドを除いて根絶に至っていないこと、日本では侵入を減らして定着を阻止することが大切だと書かれています。
2023年4月に要緊急対処特定外来生物へ指定
2022年5月に公布された改正外来生物法で「要緊急対処特定外来生物」という区分が新設され、ヒアリ類を指定する政令は2023年4月1日に施行されました。この区分では、通常の特定外来生物への措置に加えて、移動制限命令や通関後の検査などの強い措置をとれます。環境大臣と国土交通大臣が定めた「ヒアリ類に係る対処指針」は2023年6月1日に施行され、港や飛行場の管理者、荷下ろしや荷受けをする事業者に、発見時に速やかに通報される体制づくり、逃げ出さないための措置、発見後のモニタリングなどを求めています。
港湾での確認調査と、見つかった後の駆除
環境省の「港湾におけるヒアリ類確認調査の実施状況(2025年度)」によると、ヒアリが分布する国や地域と定期コンテナ航路を持つ全国の65港湾で確認調査が行われました。特に侵入の可能性が高い15港湾(外貨コンテナ取扱量の上位10港と、過去にヒアリが確認された5港)では、春から秋にかけて月1回程度の頻度で調査しています。見つかった場合は、環境省が関係機関と連携して緊急駆除と継続的な監視を行います。
「日本のアリに負けた」説は本当?公的資料で確認する
ヒアリが定着していない理由として、「日本のアリに負けた」という説明を目にすることがあります。環境省のヒアリ情報、「ヒアリの防除に関する基本的考え方」、国立環境研究所の侵入生物データベースを確認しましたが、この説を裏づける記述は見つかりませんでした。
確認できたのは、むしろ逆向きの注意です。環境省は、ヒアリの侵入が確認されていない場所で予防的にベイト剤を使っても効果は期待されず、在来のアリなどを駆除して、侵入時の定着を容易にするリスクがあるとしています。国立環境研究所のデータベースも、影響を受ける在来生物として在来アリ類を挙げています。
公表資料から言えるのは、定着を認めた公表はないことと、水際で見つけて駆除する取り組みが続いていることです。理由を在来アリとの勝敗に結びつける説明は、一次情報では裏づけられません。
| よく聞く説明 | 公的資料で確認できたこと | 確認できなかったこと |
|---|---|---|
| ヒアリはもう日本にいない | 環境省の一覧で2026年度も事例が公表されている(累計211事例、2026年度は40事例) | 確認がなくなったことを示す資料 |
| 日本のアリに負けて定着しなかった | 環境省・国立環境研究所とも国内未定着と整理し、水際の調査と発見時の緊急駆除・監視で定着阻止を図っている | 在来アリとの競争で定着が阻まれたと説明する公的資料 |
| すでに日本に定着してしまった | 環境省は「定着には至っていないものと考えられる」としている | 定着を認めた公表 |
| 殺虫剤を広くまけば防げる | 確認されていない場所での予防的なベイト剤の使用は効果が期待されず、在来アリを減らす恐れがあるとされている | 予防的な散布を勧める記述 |
住宅地・家庭で注意する場面と、見つけたときの連絡先
国内の確認事例の多くは港湾やコンテナの周りですが、家庭に近い場面の記録もあります。環境省の資料には、一般住宅に届いた郵便物の中から2個体が見つかった事例や、個人購入品から見つかった事例が載っています。海外から届いた荷物を開けるときや、港・物流施設の近くで赤褐色のアリを見たときは、念のため疑ってみる価値があります。
ただし、家で見かけるアリの大半はヒアリではありません。長い行列を作るアルゼンチンアリ、屋内で繰り返し出る小さなアリの種類、季節ごとに現れる羽アリの発生時期など、紛らわしい相手は多くあります。環境省は、問い合わせの多い間違えやすい種類として、9月頃に巣づくりのため外に出てくるキイロシリアゲアリの女王(オレンジ色)と、アリに似たアリグモ類を挙げています。見分けの手がかりはヒアリの見分け方と連絡先、種類の一覧はヒアリなどの外来アリで確認できます。
疑わしいアリを見つけたときの対応(環境省の案内)
環境省は、アリの数が少ない場合はスプレー式殺虫剤などで殺虫し、正確に判別したいときは、ヒアリ相談ダイヤルまたは最寄りの市区町村・都道府県の環境部局に連絡して写真を送り、相談のうえで実物を郵送または持参するよう案内しています。近畿の府県の担当部局は、環境省の案内ページに次の表のとおり載っています。死骸でも素手でさわらず、判別用のアリはセロハンテープに貼らず綿などに包みます。
アリの集団や巣を見つけたときは、絶対に刺激せず、すぐに相談してください。つついたり踏んだり、殺虫剤や熱湯をかけたりしないよう求められています。ヒアリと同定されるまで、むやみに毒餌を置かないことも勧められています。在来のアリなどを殺し、かえってヒアリが定着しやすい環境をつくるおそれがあるためです。
刺されたときの注意
刺された場合は、体調に変化がなくても20〜30分程度は刺された部位を冷やしながら安静にし、その間はなるべく一人にならないよう、環境省は案内しています。じんましんや体調不良があればすぐに医療機関を受診し、息苦しさ、声がれ、激しい動悸やめまい、腹痛などが現れた場合は救急車を呼ぶ必要があるとされています。ハチ毒アレルギーのある人は特に注意が必要です。
| 府県 | 担当部局(環境省の案内ページに掲載・2026年10月3日確認) |
|---|---|
| 滋賀県 | 琵琶湖環境部自然環境保全課 |
| 京都府 | 環境部自然環境保全課 |
| 大阪府 | 環境農林水産部みどり推進室みどり企画課 |
| 兵庫県 | 農政環境部環境創造局自然環境課 |
| 奈良県 | くらし創造部景観・環境局景観・自然環境課 |
| 和歌山県 | 環境生活部環境生活総務課 |
| 三重県 | 農林水産部みどり共生推進課 |





