家の中で見る小さいアリの主な種類
名古屋市衛生研究所の昆虫図鑑によると、日本には270種以上のアリ類が分布し、その一部は家の中や住宅周辺に営巣して、刺咬被害や不快害虫、食品への混入の原因になります。同資料は、住宅の内外で見られるアリとして、イエヒメアリ、ヒメアリ、アミメアリ、トビイロシワアリ、オオズアリ、ルリアリ、サクラアリ、トビイロケアリなどを種類別に解説しています。
ここでいう小さいとは、働きアリの体長でおよそ1〜3.5mmのものです。東京都ペストコントロール協会の資料では、イエヒメアリが2〜2.5mm、トビイロケアリが2.5〜3.5mm、アルゼンチンアリが2.5mmとされ、クロヤマアリは4.5〜6mmの黒いアリとして区別されています。1mmの違いは肉眼では分かりにくいため、定規と並べて撮った写真が役立ちます。
黒くて数mmの黒アリ|クロヤマアリ・クロオオアリ
名古屋市の資料では、クロヤマアリは体長5mm前後の黒いアリで、働きアリは屋内にはあまり侵入しないとされています。地面に直接口を開けた大きな巣を草地や低山地などに作ります。クロオオアリは7〜12mmと大きく、住宅地や公園の地中に営巣します。家の中で見たアリが2〜3mmほどなら、これらより、次の小型種を候補に考えます。
褐色から黒褐色で2〜3mmの小型アリ
家の中の小さい黒っぽいアリの候補になるのは、黒褐色のトビイロケアリ、黒色で光沢のあるルリアリ、腹部が黒いヒメアリなど、色の差が小さい種類です。肉眼だけで決めず、写真で体の形や光沢を確かめます。専門家が見分けに使う手がかりの一つに、胸と腹をつなぐ節の数があり、東京都ペストコントロール協会の資料では、イエヒメアリは2節、トビイロケアリとアルゼンチンアリは1節とされています。
1〜1.5mmほどの極小のアリ|サクラアリ
めちゃくちゃ小さいアリとして該当するのが、働きアリの体長が1〜1.5mmで褐色のサクラアリです。乾燥した草地の石の下や落葉層、朽木のすき間に営巣し、羽アリは9〜11月に出ます。名古屋市の資料は、近年、羽アリが屋内で発見されることが増えているとしています。
参考:名古屋市衛生研究所|身の回りの『むし』たち web昆虫図鑑 アリ類
家の中の小さいアリは、何という種類が多いですか?
名古屋市衛生研究所の資料は、家の中や住宅周辺に営巣するアリがいると述べ、イエヒメアリ、ヒメアリ、アミメアリ、トビイロシワアリ、オオズアリ、ルリアリなどを種類別に解説しています。家によって種類は違うため、体長と色、行列の入口を写真に残して確認してください。
体長・色・行列の特徴を比べる確認表
次の表は、名古屋市衛生研究所と東京都ペストコントロール協会、兵庫県の資料に書かれた特徴を、家の中で見分けるための項目に並べ替えたものです。体長は働きアリの値で、写真で確かめるときの目安にします。色や光沢は個体差や光の当たり方でも変わるため、1つの特徴だけで決めず、行列の様子と巣になりそうな場所を合わせて見ます。
| 種類 | 体長の目安 | 色・見た目の特徴 | 巣の場所・行列の様子 |
|---|---|---|---|
| イエヒメアリ | 約2mm | 淡褐色で腹部の後半が黒ずむ | 屋内の畳の下、内装材の下、柱、家具のすき間などに営巣する。皮膚を噛むことがある |
| ヒメアリ | 2mm以下 | 光沢があり、腹部全体が黒色 | 屋内に入ったり営巣したりするが、被害はイエヒメアリほどではない。牛乳ビンや粉ミルクに群がる |
| アミメアリ | 約2.5mm | 赤みがかった褐色で腹部は黒褐色。頭と胸に網目模様がある | 女王を持たず、石の下などを移動しながら大群で生活する |
| トビイロシワアリ | 約2.5mm | 褐色〜黒褐色 | 比較的乾燥した場所に営巣し、巣の入口が掘り出した土で盛り上がることがある |
| オオズアリ | 働きアリ約3mm(兵アリは4.5mm) | 頭部・腹部が黒褐色で、ほかは赤褐色 | 裸地や林内、住宅地で普通に見られ、屋内に入って食品を加害することがある |
| ルリアリ | 約2mm | 黒色で、ルリ色の光沢がある | 草地や朽木などに営巣する。ベランダに営巣したものが屋内に入ることがある |
| サクラアリ | 1〜1.5mm | 褐色 | 乾燥した草地の石の下などに営巣し、羽アリは9〜11月。近年、屋内でも見つかる |
| トビイロケアリ | 2.5〜3.5mm | 全体に黒褐色 | 住宅地の近くに普通で、家屋内に入ることもある。羽アリは7〜8月に灯火に集まる |
| アルゼンチンアリ | 約2.5mm | 褐色〜黒褐色。体の表面はつるつるで、背中にトゲがない | 大規模な行列を作り、動きが速く、1年中活動する。特定外来生物 |
室内に巣を作る種と、屋外から来る種の見分け方
東京都ペストコントロール協会は、まず問題のアリが家屋内に生息できる種類か、屋外から侵入してくる種類かを判別することが重要で、それにより対処法が異なる場合があるとしています。屋内に営巣する例として、イエヒメアリは家屋の壁の内面、木製家具の中、押入れ、床板の間、モルタルの裂け目などに巣を作ります。トビイロケアリは土中や朽ち木中に加え、家屋の台所や風呂場などの木材の腐朽部にも営巣するとされています。
屋外から入る例として、クロヤマアリは乾燥した場所の地中に巣を作ります。東京都ペストコントロール協会は、家屋に徘徊して食品などに集まることがあると記し、名古屋市の資料は屋内にはあまり侵入しないとしています。ルリアリはベランダなどに営巣したものが屋内に入ることがあり、構造物のすき間に潜り込む性質があるとされています。次の表の観察項目を、1週間ほどの記録で見比べると、屋内の巣か屋外の巣かを考える手がかりになります。
| 観察できること | 屋内営巣を疑う | 屋外から来ると考えやすい |
|---|---|---|
| 出る時期 | 羽アリが特定の時期に出ず、季節を問わず同じ部屋で見かける(イエヒメアリの例) | 決まった季節に、庭や外壁から行列で来る |
| 行列の入口 | 壁・家具・押入れ・床板のすき間から出てくる | サッシ、玄関、配管まわりなど、外とつながる点から入ってくる |
| 見かける場所 | 食品のない部屋や、着衣の下でも見かけたり噛まれたりする(イエヒメアリの例) | 台所や食品の近くなど、餌のある場所が中心 |
| 屋外の様子 | 庭に行列がなくても出る | 庭や外壁際に巣の入口、土の盛り上がり、行列がある |
| 相談の目安 | 巣の場所を特定しにくく、専門の調査を考える | 屋外の巣と侵入口の確認から始められる |
- 侵入口の探し方は、アリが家のどこから入るかを調べる記事の観察手順を参照する
- 食品に集まる状況の記録の取り方は、屋内のクロアリが繰り返し出るときの確認に整理している
小さいアリの駆除・対策は種類で変わる|毒餌と市販薬は表示で確認
アース製薬の解説によると、アリには、虫の死骸を好んで食べ餌を運ぶ雑食性のアリと、砂糖や蜜をなめる吸蜜性のアリがいます。同社は、イエヒメアリを近年被害の報告が多い外来種とし、土のない家の中のすき間や壁紙の裏にも巣を作るため駆除が難しいと説明しています。雑食性にはトビイロシワアリ、イエヒメアリ、オオズアリ、ルリアリが、吸蜜性にはアミメアリ、トビイロケアリが挙げられており、吸蜜性は餌を運ぶ習性が弱いとされています。同社のQ&Aでは、雑食性のアリが好む顆粒と、吸蜜性のアリが好むジェルの二つを組み合わせた製品を案内しており、種類によって食いつきが違うことが前提になっています。
東京都ペストコントロール協会は、アリの防除方法として、巣への殺虫剤の直接散布、忌避成分のあるエアゾール剤の吹き付け、毒餌の配置、環境整備を紹介したうえで、いずれも対症療法だと述べています。毒餌については、アリが餌を巣に持ち帰って女王や幼虫と分け合うため、巣の場所が分からなくても巣を全滅させる可能性があるとしています。
使う場合は、製品の表示に従い、対象のアリ、使用場所(屋内か屋外か)、置き場所、子どもやペットの誤食を防ぐ注意を確認します。表示にない量や混ぜ合わせは避け、使った製品名と置いた場所、設置日を記録しておくと、効果の見直しや相談のときに役立ちます。環境省は、ヒアリが疑われる場合は、同定されるまでむやみに毒餌を置かないよう案内しています。
| アリの例 | 餌の好み(アース製薬の分類) | 対策で先に見ること |
|---|---|---|
| イエヒメアリ・オオズアリ・ルリアリ・トビイロシワアリ | 雑食性(虫の死骸などを好み、餌を運ぶ) | 屋内の巣の有無、食品の管理、毒餌の対象と置き場所の表示 |
| アミメアリ・トビイロケアリ | 吸蜜性(砂糖や蜜をなめる。餌を運ぶ習性は弱い) | 庭木のアブラムシやカイガラムシの甘露、甘い飲み残し、製品のタイプの表示 |
| 種類が分からない | 雑食性か吸蜜性か不明 | まず写真と行列の記録を残し、製品の対象の書き方を表示で確かめる |
| アルゼンチンアリ・ヒアリが疑われる | 分類より、特定外来生物かどうかの確認が先 | 窓口へ連絡して指示に従う。ヒアリが疑われるときは、同定まで毒餌を置かない |
外来アリ(アルゼンチンアリ・ヒアリ)を疑う特徴と相談先
外来アリが疑われる特徴が当てはまるときは、自分で判断せず窓口に連絡します。どちらも外来生物法の特定外来生物で、特定外来生物は生きたまま運ぶことが規制されているため、見つけたアリを袋や瓶に生きたまま入れて持ち込むのは避け、窓口の指示に従ってください。
アルゼンチンアリを疑う特徴
兵庫県の資料は、アルゼンチンアリの特徴として、体長約2.5mmで褐色、体の表面にシワや模様がなくつるつるしていること、背中にトゲがないこと、胸と腹をつなぐ節が1つで小さいことを挙げています。毒性はなく、大規模な行列を作り、非常に動きが速く、冬眠せずに1年中活動し、雑食性だとされています。国立環境研究所のデータベースは、体長約2.5mmで黒褐色と記し、国内の移入分布として愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県などの都府県を挙げています。
疑わしいときは、自治体の窓口に、見つけた日、場所、状況を伝え、可能であれば写真を送ります。掲載された都府県でも、分布は一部の地域に限られます。自宅の周辺で確認されているかは、市区町村の環境担当に問い合わせると分かります。
ヒアリを疑う特徴
環境省は、ヒアリの働きアリの体長を2.5〜6mm程度とし、一番数が多く刺すアリだと説明しています。アース製薬の解説では、赤茶色で、腹部は濃く黒っぽい赤色、土でアリ塚を作り、刺されると火傷のような激しい痛みがあるとされています。環境省は、アカカミアリもヒアリの仲間として、同じく要緊急対処特定外来生物に指定されていると説明しています。
間違えやすいものとして、環境省は、9月頃に出てくるキイロシリアゲアリのオレンジ色の女王や、アリに似た小さなクモであるアリグモ類を挙げています。判別に迷うときは、写真を撮って窓口に相談してください。
| 疑う特徴 | 考えられる種類 | 最初の相談先 |
|---|---|---|
| 体長約2.5mmの褐色のアリが、動きが速く、屋内外で大きな行列を作る | アルゼンチンアリなど | 市区町村や都道府県の環境担当。発見日、場所、状況、写真を伝える |
| 体長2.5〜6mmで赤茶色、刺されて焼けるように痛い、集団や土の盛り上がった巣がある | ヒアリ類 | 環境省ヒアリ相談ダイヤル、または最寄りの市区町村・都道府県の環境部局。巣や集団は刺激しない |
| 9月頃に出てきた、オレンジ色のアリ | キイロシリアゲアリの女王の可能性(ヒアリと間違えやすい) | 写真を撮り、迷うときは環境省や自治体の窓口に画像で相談する |
| 体長2〜3mmの小さなアリが食品に集まり、外来の特徴は当てはまらない | イエヒメアリやヒメアリなど、特定外来生物ではない小型のアリ | 自分で対策を始め、続くなら都道府県ペストコントロール協会の害虫相談所へ |
写真の撮り方と、同定を頼める窓口
環境省は、ヒアリの判別を相談するときの写真の撮り方を示しています。外来アリ向けの手順ですが、小さな虫を撮るときの基本として使えます。生きているアリは、アリにピントを合わせ、明るい状態で撮影し、群れの場合は1個体だけでなく集団の様子も撮ります。死んでいるアリは、アリの横に定規を置くか、方眼紙の上に載せて撮り、可能なら画質を最高レベルにして、角度やピントの位置を変えた写真を何枚か撮ります。死んだアリでも針が出て刺さることがあるため、素手で触らないよう案内されています。
窓口は目的で使い分けます。さいたま市は、保健所で屋内の衛生害虫の簡易的な鑑別や駆除方法の相談を受け付けており、調査や駆除は行わないため専門業者に相談するよう案内しています。対応は自治体で違うため、お住まいの市区町村の生活衛生や環境の担当に確認してください。日本ペストコントロール協会は、各都道府県の協会に害虫相談所を設け、電話での相談を無料で受け付けています。現場調査や防除施工は原則有料です。
標本を送って同定してもらう場合について、日本ペストコントロール協会は、現在同定サービスは行っておらず、関連の団体として、一般財団法人日本環境衛生センター(昆虫・ネズミ同定)と、公益財団法人文化財虫菌害研究所(昆虫・カビ同定)を紹介しています。内容や料金は各団体に直接問い合わせる必要があります。
- 明るい場所で、アリにピントを合わせて撮る
- 定規や方眼紙を横に置き、大きさが分かるようにする
- 上から、横からと角度を変えて数枚撮る
- 行列は、1匹を拡大した写真と、行列が見える全体の写真の両方を撮る
小さい羽アリが室内にいたときの確認
小さい羽アリを室内で見つけた場合は、アリの羽アリか、シロアリの羽アリかを分けます。名古屋市の資料は、アリ類の翅は前翅と後翅の大きさが異なり、胸部と腹部の間が明らかにくびれているのに対し、シロアリの翅は前翅と後翅の形や大きさがほとんど同じで、胸部と腹部の間がはっきりしないと説明しています。
シロアリが疑われる場合は、アリが家を食べるのかを整理した記事と、羽アリが出たら何を残すかの記事で、見分け方と記録の残し方を確認してください。サクラアリのように、小型のアリでも羽アリが屋内で見つかる種類があるため、羽があるというだけでシロアリと決めないことも大切です。




