マダニが媒介する主な感染症|国内で報告されている病気の一覧

ダニ媒介感染症は、病原体を保有するダニに刺されて起こる感染症です。厚生労働省の「ダニ媒介感染症」のページには、クリミア・コンゴ出血熱、回帰熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、ダニ媒介脳炎、つつが虫病、日本紅斑熱が主な感染症として並んでいます。このうち国内で報告が多く、問い合わせの多いSFTS、日本紅斑熱、ライム病を中心に、公的資料の表現を要約したのが次の表です。

ここで言うマダニは、屋外の森林や草地に生息する大型のダニで、家の中のコナダニやヒョウヒダニとは種類が違います。室内のダニは室内のダニが気になるときの確認、刺し跡や環境での見分けはダニ・トコジラミ・ノミの違いを参照してください。つつが虫病はマダニではなくツツガムシが媒介します。

マダニが媒介する主な感染症|国内で報告されている病気の一覧:確認項目
病気病原体と媒介するダニ潜伏期間(公的資料)主な症状(公的資料)国内の傾向
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)SFTSウイルス。マダニ(日本では少なくともフタトゲチマダニとキチマダニが人への感染に関与)6日〜2週間発熱、全身倦怠感、消化器症状(食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)。重症化し死亡することもある西日本に多いが、近年は東日本や北海道でも報告
日本紅斑熱リケッチア(Rickettsia japonica)。マダニ2〜8日発熱、発疹、刺し口が主な徴候で、ほとんどの症例にみられる沖縄から東北南部まで。媒介ダニが活発な4〜11月に発生
ライム病ボレリア(スピロヘータ)。マダニ(日本ではシュルツェマダニが関与)通常3日〜30日程度遊走性紅斑、筋肉痛、関節痛、発熱など。重症例では神経症状や心疾患、関節炎北海道や本州中部以北での報告が多い
つつが虫病ダニの一種のツツガムシ(大きさ約0.5mmで、マダニではない)5日〜14日(大阪府の案内)発熱、赤黒く盛り上がったカサブタ(刺し口)、発疹など主に秋から初冬(東北・北陸は春から初夏も)に注意
ダニ媒介脳炎ウイルス。マダニ今回確認した資料に記載なし今回確認した資料に記載なし北海道で患者が報告されている

参考:大阪府|マダニ等による感染症に注意しましょう!(2026年7月13日更新)

読者の疑問

マダニに刺されたら、何%の確率で感染症にかかりますか?

比較ガイド

刺された人が発症する割合を示した数値は、今回確認した厚生労働省とJIHSの資料にはありません。公的資料は、全てのマダニが病原体を持つわけではなく、SFTSウイルスの保有率は0〜数%と説明しています。

SFTS・日本紅斑熱・ライム病の症状と潜伏期間|公的資料の表現

病気ごとの症状や潜伏期間は、公的資料の表現を要約しています。初期症状が似た病気は多く、症状だけで病名は判断できません。診断は医療機関で行われます。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

SFTSの主な初期症状は発熱、全身倦怠感、消化器症状で、重症化し死亡することもあると厚生労働省は説明しています。潜伏期間はマダニに刺されてから6日〜2週間程度とされ、JIHSのガイドは4〜10月に多く発症するとしています。診断にはウイルス学的な検査が必須で、患者がマダニに刺されたことに気づいていなかったり、刺し口が見つからなかったりする場合も多いと、医療機関向けに書かれています。

日本のSFTS患者の致命率は27%と、厚生労働省はJIHSの研究を引用して説明しています。これは診断され報告された患者のうち亡くなった人の割合で、マダニに刺された人全体の割合ではありません。患者の約90%は60歳以上で、高齢者は重症化しやすいと考えられています。

日本紅斑熱

日本紅斑熱は、紅斑熱群リケッチアの一種であるリケッチア・ジャポニカを保有するマダニを介して感染する病気で、1984年に患者が初めて報告された、日本特有の疾患とされています。潜伏期は2〜8日で、頭痛、発熱、倦怠感を伴い、発熱・発疹・刺し口が主な徴候です。早期に適切な抗菌薬を投与することが重要で、第一選択薬はテトラサイクリン系の抗菌薬とされています。

ライム病

ライム病は、ボレリア属の細菌による感染症で、日本ではシュルツェマダニが関与します。潜伏期間は通常3日から30日程度で、初期に遊走性紅斑という皮疹や筋肉痛、関節痛、発熱が現れ、重症例では神経症状や心疾患、関節炎が起こります。人から人への直接感染はないとされています。

JIHS(旧国立感染症研究所)の報告では、2006年5月から2024年3月までに国内で診断・報告された症例は265例で、そのうち国内で感染した例は216例でした。国内感染例のうち北海道を推定感染地域とするものが161例と半数以上を占めます。一方で、推定感染地域は25都道府県に分布しており、シュルツェマダニの生息域として知られている地域以外でも罹患するリスクがあることが示唆された、と記されています。

参考:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト|ライム病(2026年3月23日更新)

「刺されたら感染する?」確率について公的資料が言えること

「マダニ 感染症 確率」「マダニ 発症率」「マダニ 発熱 確率」と調べる人は多いのですが、マダニに刺された人が発症する割合を示した数値は、今回確認した厚生労働省とJIHSの資料にはありませんでした。当サイトも独自の確率は示しません。

届出数は、診断され、検査を経て届け出られた症例の数です。刺された人の総数が分からないため、届出数から発症率を計算することはできません。JIHSは、ライム病の届出数について、医師が鑑別診断として思い浮かべる頻度や行政検査への行きやすさによって、地域差が生じた可能性があると述べています。

確率の代わりに、公的資料から確認できる点を次に並べます。数字を読むときの目安にしてください。

  • 全てのマダニがSFTSウイルスを保有しているわけではない。国内でのウイルス保有率は、地域や季節により違いがあるものの0〜数%と説明されている(厚生労働省)
  • SFTSの致命率27%は、診断・報告された患者に対する割合で、刺された人に対する割合ではない
  • マダニ類の多くは数日から10日以上吸血し、刺されたことに気づかない場合も多い。体調の変化は数週間程度は注意が必要とされている
  • SFTSは、国内で患者発生が確認されていない地域でも、全国的に感染リスクがあると考えられている(2025年に関東や北海道で感染した症例の報告)

参考:厚生労働省|重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A

マダニ感染症の届出数と地域の傾向|SFTSの年次推移の見方

SFTSは2013年3月4日に感染症法の四類感染症(全数把握)に定められました。JIHSの「感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要」(2026年7月31日現在)によると、これまでの届出は1,368症例で、男女比は1対1、届出時点の年齢中央値は75歳でした。前回集計(2026年4月30日現在)から95例増えています。届出時までに死亡した症例は137例ですが、届出後に亡くなった人は含まれず、実際の死亡数や致命率はより高い可能性があると注記されています。

次の表は、同じ資料にある発病年別の症例数です。数字は集計日や定義で変わります。厚生労働省のQ&Aは2025年を過去最高の183名(2025年11月2日時点)としていますが、JIHSの2026年7月31日現在の集計では発病年2025年が192症例です。遅れて届く報告があるため、最新の資料で確認してください。JIHSは次回の掲載を2026年11月末頃と予告しています。

マダニ感染症の届出数と地域の傾向|SFTSの年次推移の見方:確認項目
発病年届出症例数(総計)うち届出時までに死亡
2020年755
2021年1119
2022年11612
2023年1349
2024年12111
2025年19215
2026年(7月31日現在の届出分)1156

参考:国立健康危機管理研究機構|感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要(2026年7月31日現在・PDF)

自分の県の発生状況を調べる手順|届出都道府県と推定感染都道府県

自分の県の状況を調べるには、JIHSのSFTS症例の概要PDFが最も手軽です。このPDFには、症例が届け出られた都道府県と、感染した可能性が高いと推定された都道府県の2つが、別々に示されています。たとえば大阪府は、届出が9症例、推定感染地域が5症例と、両者が一致しません。居住地や受診した医療機関の所在地と、感染した場所は違うことがあるためです。

関西では、2026年7月31日現在の累計で、和歌山県、三重県、兵庫県、京都府の届出が多く、滋賀県、奈良県、大阪府は少なくなっています。ただし、届出数は検査の体制にも左右されるため、数が少ない県が安全とは言えません。庭や畑、散歩道などマダニの生息場所に入る機会があるかどうかが、予防を考える手がかりになります。マダニはどこにいる?庭・家の中に持ち込まれる経路も参考にしてください。

自分の県の発生状況を調べる手順|届出都道府県と推定感染都道府県:確認項目
都道府県届出された症例数推定感染地域が当該県の症例数
東京都3表に記載なし
神奈川県53
愛知県2018
滋賀県13
京都府2222
大阪府95
兵庫県3031
奈良県34
和歌山県4847
三重県4546
宮崎県127124
  • JIHS「感染症発生動向調査で届け出られたSFTS症の動向」のページで、最新の症例概要PDFを開く(年4回程度の更新)
  • PDFの「届出都道府県」と「推定感染都道府県」の2つの表で、自分の県の数字を探す
  • 週ごとの届出は、JIHSの感染症発生動向調査週報(IDWR)や、都道府県の感染症情報センター・保健所のページで確認できる場合がある
  • ライム病は、JIHSの「感染症法に基づくライム病の届出状況」のページで、推定感染地域を確認する

参考:国立健康危機管理研究機構|感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要(2026年7月31日現在・PDF)

ワクチンと治療に関する公的情報の範囲

「マダニ ワクチン」と調べる人も多いのですが、今回確認した公的資料でワクチンについて明記されていたのは、日本紅斑熱とライム病です。いずれもJIHSの疾患ページに、国内で承認されたワクチンはないと書かれています。SFTSについては、厚生労働省のQ&Aにワクチンの記載はなく、予防の中心はマダニに刺されないことです。治療については、病気ごとに次のように説明されています。具体的な治療は医師が判断するもので、自己判断で薬を使うことは勧められません。

  • SFTS:治療は対症療法が主体。国内では抗ウイルス薬(ファビピラビル)が2024年6月に承認され、病状の進行が予期される場合に使用が検討される
  • 日本紅斑熱:早期に適切な抗菌薬を投与することが重要で、第一選択薬はテトラサイクリン系の抗菌薬。国内で承認されたワクチンはない
  • ライム病:抗菌薬による治療が行われる。国内で承認されたワクチンはない
  • つつが虫病・ダニ媒介脳炎など:今回は治療やワクチンの記載を確認していないため、詳しくは厚生労働省やJIHSの各疾患ページを参照する

参考:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト|日本紅斑熱(2025年7月24日更新)

マダニ感染症の予防の基本|服装・忌避剤の有効成分・帰宅後の確認

予防の基本は、マダニに刺されないことです。JIHSの「マダニ対策、今できること」と厚生労働省の案内に沿って、服装、忌避剤、帰宅後の確認に分けて整理します。特定の衣料品や製品名の効果を比べた公的資料はないため、着方の原則と有効成分を中心に紹介します。

マダニは、シカやイノシシ、野ウサギなどの野生動物が出没する環境に多く、民家の裏山、裏庭、畑、あぜ道にも生息しています。春から秋にかけて活動が活発になります。虫よけ剤の中には服の上から使うタイプがあり、補助的な効果があると言われています。

服装・靴・露出を減らす着方

草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入るときは、長袖・長ズボン、足を完全に覆う靴(サンダルは避ける)、帽子、手袋を身に着け、首にタオルを巻くか、ハイネックのシャツを着ることが勧められています。シャツの袖口は軍手や手袋の中に、裾はズボンの中に入れ、ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れるか、登山用スパッツを使います。半ズボンやサンダル履きは適当ではないとされています。

明るい色の服は、付いたマダニを見つけやすくなります。大阪府の案内には、レインウェアのようななめらかな生地にはマダニがつきにくく、白っぽい服装のほうが服に付いたマダニを発見しやすいと書かれています。タイツやレギンスなど個別の衣類の効果は、公的資料では扱われていません。

帰宅後の確認と持ち込まない工夫

野外活動の後は、上着や作業着を家の中に持ち込まず、シャワーや入浴でマダニが付いていないかを確認します。確認するポイントは、首、耳、わきの下、足の付け根、手首、膝の裏、胸の下、頭部(髪の毛の中)などです。マダニが付着しているときは、できもののように見えることがあります。服に付いたマダニは、ガムテープや粘着カーペットクリーナーで取り除く方法も効果的とされています。ペットがいる家は犬や猫のマダニ対策も確認してください。

マダニ感染症の予防の基本|服装・忌避剤の有効成分・帰宅後の確認:確認項目
確認する点ディートイカリジン
国内の市販品の有効成分濃度(JIHS)5〜30%の製品5〜15%の製品
濃度と効力の関係高濃度の製品ほど効力持続時間が長い高濃度の製品ほど効力持続時間が長い
資料に書かれた使用上の注意30%の製品は12歳未満に使用しないなど年齢制限がある。高濃度では、プラスチック・化学繊維・皮革を腐食することがあるこのページには個別の注意は書かれていない。製品の表示に従う
共通する注意付着数は減るが、完全には防がない。他の防護手段と組み合わせる付着数は減るが、完全には防がない。他の防護手段と組み合わせる

参考:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト|マダニ対策、今できること(最終更新2025年8月7日)

体調が悪いときの受診と、医師に伝えること

吸血中のマダニに気づいたときは、無理に引き抜かないでください。一部が皮膚の中に残って化膿したり、マダニの体液が逆流して病原体が体内に入りやすくなったりするおそれがあるため、皮膚科などの医療機関で除去や洗浄をしてもらうよう、厚生労働省は案内しています。

刺された後は、数週間程度は体調の変化に注意し、発熱などの症状が出たら、医療機関で診察を受けてください。大阪府は、山林や草地に入ってから1〜2週間して発熱などが出た場合にも、念のため受診し、山林や草地に入ったことを医師に伝えるよう案内しています。刺されたことに気づかない場合も多いと、厚生労働省は説明しています。SFTSの診断にはウイルス学的な検査が必須で、疑われる場合は医師が最寄りの保健所に報告して検査を依頼する、と医療機関向けに書かれています。

  • マダニに刺されたこと、気づいた日、刺された場所(山林・草地・庭・畑・河川敷など)と活動した日付
  • 発熱、頭痛、発疹、食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が出た日と経過
  • ペットを飼っている場合は、ペットの飼育状況、健康状態、動物との接触状況(体調の悪い動物の世話をしたかなど)
  • 皮膚に付いていたマダニの様子(受診前に除去した場合は、いつ、どのように取ったか)

参考:大阪府|マダニ等による感染症に注意しましょう!(2026年7月13日更新)