アリが家のどこから入ってくる?行列は餌と巣をつなぐ道

アリの対策を考えるとき、東京都ペストコントロール協会は、まず問題のアリが家屋内に生息できる種類か、屋外から侵入してくる種類かを判別することが重要で、それによって対処法が変わる場合があると説明しています。同じ家にアリが出るという状況でも、屋外の巣から餌を探しに来る場合と、壁の中などに巣がある場合とでは、侵入口の探し方も塞ぎ方も違います。

アリは餌を巣に持ち帰る途中で、腹の先から道しるべフェロモンと呼ばれる物質を床につけ、後続の働きアリがそれをたどって行列になります。この物質は揮発しやすく、餌がなくなれば消えるとされています。アース製薬の解説では、巣の外に出ているアリはほんの一部で、大部分は巣の中で活動しているとされており、目に入る数だけで巣の大きさは判断できません。

行列には、屋内へ入る点と、屋外の巣へ向かう点の両端があります。この記事では、まず屋内へ入る点を特定し、次に屋外側を確かめる順序で進めます。

参考:東京都ペストコントロール協会|アリ 防除方法の選びかた

読者の疑問

アリは家のどこから入ってくることが多いですか?

比較ガイド

サッシの上枠や可動部、配管やエアコン配管が壁を通る部分、基礎や外壁のひび割れ、玄関まわりなどが候補です。どこが入口かは、室内の行列を入ってきた方向へ逆にたどって決めます。同じ家でも、種類や巣の場所によって入口は変わります。

行列を逆にたどる観察の手順|家の周りを一周して記録する

東京都ペストコントロール協会は、餌を運ぶアリを追跡して巣の入口を見つける方法を、庭先など屋外に巣を作る種類への対処として紹介しています。同じ資料には、建物の内部に巣を作る種類は営巣場所の特定が難しいとも書かれています。追跡で巣まで着けなくても、行列が壁や床のすき間に消えた点を記録するだけで、侵入口を探す大きな手がかりになります。

観察は5つの手順で進める

観察は、アリに触れず、行列を踏み荒らさない範囲で行います。夕方と朝など時間を変えて見ると、通る場所が変わっているかも分かります。

  • 室内で行列を見つけたら、まず写真を撮り、見つけた場所と時刻を書く
  • 行列を室内側から、入ってきた方向へたどり、壁・サッシ・配管などのすき間に消える点を探す
  • その点の外側にあたる位置を、外壁・基礎・窓の外から確認し、屋外の行列やアリの出入りを探す
  • 外の行列を、巣になりやすい場所(石やブロックの下、鉢、枯れ葉、地面のひび割れ)まで追う
  • 家の周りを一周し、アリが動いている場所、土が盛り上がった巣の入口、鉢や資材の位置を略図に残す

外来のアリが疑われるときは観察より相談を先にする

ヒアリやアルゼンチンアリなど特定外来生物が疑われる特徴があるときは、観察を進めるより先に相談窓口へ連絡します。特徴の確認はアルゼンチンアリらしい長い行列の記事も参考にしてください。ヒアリが疑われるアリの集団や巣については、環境省が、刺激せず、つついたり踏んだり、殺虫剤や熱湯をかけたりしないよう案内しています。

参考:東京都ペストコントロール協会|アリ 防除方法の選びかた

侵入口になりやすい部位の一覧|サッシ・配管・基礎・外壁

小型のアリは、見た目には閉まっている部位のすき間も通ることがあります。LIXILは、サッシの引違い窓について、這って進む虫は気密ゴムを押しのけて室内に入るため、完全には防げないと説明しています。屋内への入口は、窓やドアだけでなく、壁を通る配管や、基礎のひび割れも対象です。

環境省のアルゼンチンアリ防除の手引きは、巣になりやすい場所として、地面に置いたコンクリートブロックやレンガの下、石や木・枯れ葉の下、コンクリートのひび割れの中、壁にできたすき間、玄関用マットの下、車のトランクの中を挙げています。住宅など建物への侵入を防ぐには、侵入経路になるすき間をなくすことと、餌になる食品やごみを放置しないことが重要とされています。これはアルゼンチンアリ向けの資料ですが、小型のアリが入る道を考える手がかりとして参考になります。

侵入口になりやすい部位の一覧|サッシ・配管・基礎・外壁:確認項目
部位入口・巣になる理由見る方法対処の方向
サッシ(引違い窓)の上枠・召合せ・気密ゴム気密ゴムが押しのけられ、完全には防げないとLIXILが説明している窓の外側と上枠まわりを見て、アリが出入りする点を探す気密ピースの調整や上枠のすき間への貼付は、メーカーの案内を確認する。窓を使えなくなる密閉は慎重に選ぶ
給排水管・エアコン配管・電線が壁を通る部分壁との間のすき間が、屋内外をつなぐ道になる室内側と屋外側の両方から貫通部の周りを見る充填の前に、水漏れ・点検・防火区画を確認する
基礎のひび割れ、外壁との取り合い、モルタルの裂け目ひび割れや壁のすき間は巣や経路になる。イエヒメアリはモルタルの裂け目にも営巣する基礎の表面と外壁の下端を目視するひび割れは、補修方法を施工者に確認する。手引きにはシーリング材で埋める方法がある
玄関まわりのマットの下玄関用マットの下は、巣になりやすい場所として環境省の手引きに挙がっているマットを動かす前に、周りの行列を観察するマットや置き物を直接地面に置かない
外壁の通気層の出入口、床下換気口床下や外壁材の裏の湿気を逃がす空気の通り道網の破れや外れを確認する塞がない。破損は換気を保ったまま補修を相談する
エアコン、パソコンなどの電気機器機器の内部に入って営巣し、故障の原因になるアリがいると、東京都ペストコントロール協会が説明している機器の周りで出入りするアリを記録する機器の内部は触らず、メーカーや専門の業者に相談する
庭の鉢、ブロック、板、枯れ葉の下地面に直接置いた物の下が営巣場所になる動かす前に、周りの行列と土の盛り上がりを観察する直接地面に置かず、立てかけるか台に載せる

参考:環境省|アルゼンチンアリ防除の手引き(平成21年3月作成・平成25年7月改訂)

家のすき間のアリ対策|塞ぐ材料と、塞いではいけない開口

すき間を塞ぐ前に、その開口が何のためにあるかを確かめます。塞ぐ作業が、水漏れや湿気の原因になる場合があるためです。判断に迷う場所は、配管の周りを塞ぐ前の確認や外壁の下の隙間は塞いでよいかの記事も参考にして、施工した会社や管理者に確認してください。

塞いでよいすき間と、材料の考え方

東京都ペストコントロール協会は、壁面内などに営巣するアリや屋外から侵入するアリに対して、這い出るすき間をコーキング剤などで封鎖することも有効としています。環境省の手引きは、コンクリート構造物のすき間や亀裂をシーリング材などで埋めることを挙げています。サッシの上枠には、LIXILが市販のスポンジなどを貼って経路をふさぐ方法を例示しています。

材料は、塞ぐ場所の素材、屋外で雨にさらされるか、あとで点検や交換が必要かによって変わります。製品の適用場所と使用方法の表示を確認し、配管の周りは、水漏れや点検口の確保、防火区画の扱いを先に確かめてください。

塞いではいけない開口

アリの行列を止めたい一心で、すき間に見えるものを全部塞ぐのは避けます。建築基準法施行令第22条は、木造の最下階の居室の床下について、外壁の床下部分に壁の長さ5m以下ごとに面積300平方センチメートル以上の換気孔を設け、これにねずみの侵入を防ぐための設備をするよう定めています(床下をコンクリートなどで覆う場合などは例外があります)。この条文は床の高さと防湿方法を定めたもので、床下換気口は湿気を逃がすための開口です。アリを防ぐ名目で塞がず、網の補修を含めて施工者に相談してください。

窓まわりの水抜き穴も同様です。YKK APの納まり図には、シャッター水切板の下面にある水抜き穴について、ふさぐと漏水の原因になるため、モルタル等でふさがないよう注意書きがあります。水を逃がすための穴を塞ぐと、漏水につながるおそれがあります。外壁材メーカーのニチハは、外壁通気構法について、外壁材の裏に設けた通気層が湿気を外へ逃がし、入り込んだ雨水も排出すると説明しています。外壁の下端などにある通気層の出入口も、すき間に見えても役目があります。

家のすき間のアリ対策|塞ぐ材料と、塞いではいけない開口:確認項目
開口・すき間役目アリ対策での扱い
床下換気口(床下の外壁部分)床下の湿気を逃がす。建築基準法施行令に基準がある塞がない。網の破れや詰まりは、換気を保って補修を相談する
サッシ・シャッター水切まわりの水抜き穴雨水や結露水を外へ出す塞がない。ごみは取り除き、不具合は施工店や管理会社へ
外壁の通気層の出入口(外壁の下端など)外壁材の裏の湿気を逃がし、入り込んだ雨水を排出する塞がない。網の追加や補修は、施工者に確認する
配管・配線が壁を通る穴の周囲穴自体は配管などのため。周囲のすき間は不要周囲のすき間は塞ぐ候補。水漏れ・点検・防火区画を先に確認する
コンクリートや外壁のひび割れ本来の開口ではない塞ぐ候補。補修材は表示を確認し、広がる場合は施工者へ

参考:e-Gov法令検索|建築基準法施行令(第22条 居室の床の高さ及び防湿方法)

家の周りの蟻が大量に出るとき|巣・鉢・落ち葉・餌の管理

家の周りに蟻が大量に出るのは、建物の入口より先に、敷地内の巣や餌の状況が関係していることがあります。アース製薬は、アルゼンチンアリについて、地面の上に直接物を置くとその下が営巣場所になるため、屋外にマット、植木鉢、ブロックなどを置かないよう呼びかけています。環境省の手引きも、地面に置いたブロックやレンガ、石、枯れ葉の下を巣になりやすい場所として挙げています。

餌の側では、アブラムシやカイガラムシが出す甘露がアリの餌になります。環境省の手引きは、雑草が茂った場所にもアブラムシ類が生息していることがあるとして、その有無の確認を挙げています。庭木や鉢植えに甘露が付いていないか、アリが枝を上り下りしていないかも見ます。名古屋市の資料では、オオハリアリが庭に放置した板や植木鉢の下に営巣し、働きアリや羽アリが屋内に侵入することがあるとされています。

屋外の餌も確認します。ペットの餌、飲み残しの甘い飲料、生ごみは、アリを家の近くへ引き寄せます。食べ終えた餌はすぐに片付け、ごみは蓋つきの容器に入れて管理してください。

  • 鉢・ブロック・板・資材は、地面に直接置かず、立てかけるか台に載せる
  • 枯れ葉や刈り草を、基礎のきわや外壁沿いにためない
  • ペットの餌や甘い飲み残しを、屋外に置いたままにしない

参考:アース製薬|アース害虫駆除なんでも事典 アリを知る

蟻が毎年同じ時期に家に出る原因|年ごとの点検メモ

毎年同じ時期にアリが家に出る場合は、季節の動きと、巣の場所が毎年同じであることの両方が考えられます。名古屋市衛生研究所の資料は、アリ類の羽アリが出る時期を種類別に示しています。クロオオアリは5〜6月、クロヤマアリは6〜7月、トビイロケアリとオオハリアリは7〜8月、キイロシリアゲアリは9〜10月、サクラアリは9〜11月とされ、サクラアリは近年、屋内で羽アリが見つかることが増えているとされています。

一方、東京都ペストコントロール協会によると、屋内で営巣するイエヒメアリは、特定の時期に羽アリが出るのではなく、巣が大きくなると一部の女王アリと働きアリが離れて新しい巣を作ります。羽アリの出る季節だけ現れるのか、季節に関係なく同じ部屋で見かけるのかは、屋外の巣か屋内の巣かを考える手がかりになります。羽のあるものを見たときは、シロアリの羽アリとの区別が必要です。羽アリが出たら何を残すかの記事で、記録の残し方を確認できます。

点検メモは、日付、場所(部屋と壁面)、行列か羽アリか、数、前年の同じ時期の記録を1枚にまとめます。3年分が並ぶと、同じ場所から出ているか、季節で動いているかが分かり、調査を頼むときの説明にも使えます。食品と行列の記録の取り方は、屋内のクロアリが繰り返し出るときの確認で整理しています。下の表は、名古屋市の資料にある羽アリの時期に、東京都ペストコントロール協会の資料にあるイエヒメアリを加えて並べたものです。

蟻が毎年同じ時期に家に出る原因|年ごとの点検メモ:確認項目
時期(羽アリが出る月の目安)出るアリの例点検するところ
5〜6月クロオオアリ庭や公園など開けた場所の地中の巣。窓や玄関まわりに羽アリが入っていないか
6〜7月クロヤマアリ地面に直接口を開けた大きな巣。働きアリは屋内にはあまり入らないとされる
7〜8月トビイロケアリ、オオハリアリ灯火に集まる羽アリ。台所や風呂場の木部の腐朽部、庭の板や鉢の下
9〜10月キイロシリアゲアリ石の下や土中に営巣し、羽アリは灯火によく飛来する
9〜11月サクラアリ小型のアリ。近年、屋内で羽アリが見つかることが増えている
特定の時期なしイエヒメアリ壁の内側、家具、押入れ、床板の間、モルタルの裂け目

参考:名古屋市衛生研究所|身の回りの『むし』たち web昆虫図鑑 アリ類

壁の中にアリの巣があるかもしれないときの調査の目安|断熱材の傷みはシロアリも疑う

東京都ペストコントロール協会は、アリ類の防除は難しく困難な場合が多いため、専門家への相談をすすめています。また、屋内に生息できる種類としてイエヒメアリを挙げ、家屋の壁の内面、木製家具の中、押入れ、床板の間、モルタルの裂け目などに営巣するとしています。同協会は、建物内に営巣する種類は巣の場所を特定するのが難しいとしており、壁や床の内側に巣がある場合は、外から見えるすき間を塞いでも別のすき間から出てくることが考えられます。

日本しろあり対策協会のQ&Aは、クロアリは建物を直接食べないが、壁の中に巣を作ると湿気のせいで木材が腐る場合があり、状況によっては駆除したほうがよいかもしれないとしています。また、シロアリは木材だけでなく、発泡スチロールや発泡ウレタン系の断熱材を木材より好んで加害すると説明しています。壁や天井の内側で、湿気や虫の気配があるときは、アリと決めず、シロアリの可能性も含めて調べてもらいます。

相談先として、日本ペストコントロール協会は各都道府県の協会に害虫相談所を設け、電話での相談を無料で受け付けているとしています。現場調査や防除施工は原則有料で、相談内容に応じた事業者を紹介できる場合もあるとされています。床下で見つけた場合は、床下に蟻の巣があるときのクロアリとシロアリの確認も参考になります。

壁の中にアリの巣があるかもしれないときの調査の目安|断熱材の傷みはシロアリも疑う:確認項目
状況自分で続けられること専門の調査を考える目安
食品や屋外の餌に集まる行列が、玄関やサッシから来る餌の片付け、入口の記録、屋外の巣の確認対策後も同じ場所から繰り返し出る
寝室や食品のない部屋でも、昼夜を問わず出る出た場所と時刻の記録壁の内側や床下に巣がある可能性があるため、早めに相談する
壁や家具のすき間から行列が出てくる、羽アリが室内で見つかる羽アリは袋に入れて保管し、写真を撮る羽の形が分からない、木材の傷みや湿気がある場合は、シロアリも含めて調べてもらう
浴室や台所の木部が湿って柔らかい漏水や換気の確認湿気と木材の傷みの確認を含めて調査を依頼する

参考:日本ペストコントロール協会|都道府県協会