鹿の被害の例|庭の花壇・野菜・庭木・田んぼで起きること
農林水産省の実践編マニュアルは、シカを草食性で、アセビなど特定の植物を除けば何でも食べる動物と説明しています。庭では花壇の草花や野菜の葉、庭木の若い枝や樹皮、芝や畦に芽吹いた草までが対象になります。冬は草刈りをした道路脇や畦に芽吹く草を好むとも書かれており、畑や庭の縁が狙われる時期があります。
さつまいも、玉ねぎ、芝、桜など、作物や植物の名前で「鹿に食べられるか」を調べる人は多いのですが、公的資料には安全な作物の一覧は見当たりません。個別の名前で可否を判断するより、食べられる前提で囲うことを考える方が、資料の説明と合います。
畑・田んぼでの被害
兵庫県森林動物研究センターのパンフレットは、農地では稲、豆類、野菜、麦類など多くの作物の被害が報告されていると紹介しています。同じ資料の令和3年度の集計では、シカによる農作物の被害面積125.8haのうち、稲が54%、豆類が28%、野菜が7%、麦類が6%でした。水田では田植え後から稲刈りまでのすべての段階で侵入され、踏み荒らしや食害が起きるとされています。
庭木・花壇・芝での被害
鹿は夜に活動して人の少ない時間に人里へ出てきますが、人に慣れると昼間にも現れます。庭では、夜の間に花や野菜が食べられ、朝に気づくことが多くなります。千葉県や伊豆大島では小型のシカ科のキョンも庭の花木を食べるため、地域によってはキョンの特徴と分布も確認が必要です。
| 場所 | 起きやすい被害 | 資料の記載 |
|---|---|---|
| 水田 | 田植え後の苗から稲刈りまでの食害と踏み荒らし | 兵庫県の資料。稲は令和3年度のシカによる被害面積の54% |
| 畑・菜園 | 豆類・野菜・麦類などの葉や茎の食害 | 兵庫県の資料。農林水産省は、何でも食べる草食性と説明 |
| 畦・道路脇・芝 | 冬に芽吹く草の採食 | 農林水産省の実践編。草刈り後に芽吹く草を好む |
| 庭木・立木 | 若い枝の採食、樹皮はぎ、角こすり | 農林水産省の実践編(角こすり)と環境省のガイドライン(樹皮はぎ) |
参考:兵庫県森林動物研究センター|ニホンジカの被害防止(兵庫の野生鳥獣対策シリーズ2022、PDF)
鹿の被害対策は、まず何から始めればいいですか?
食べ跡・足跡・フンの特徴を記録し、鹿かどうかを確かめます。そのうえで守る範囲を決め、2m以上の柵で囲うか、庭木の幹などを個別に保護します。同時に餌になるものを減らします。
食べ跡・足跡・フンの見分け方|樹皮はぎや角こすりも手がかり
加害動物は一つの痕跡で決めず、足跡・フン・食べ跡・出没の時間帯を組み合わせて確かめます。シカの足跡は、柔らかい地面でも副蹄(足の後ろにある小さなひづめ)の跡が付かないのが特徴です。兵庫県の資料は、シカの足跡を長さ約5cm・幅約4cm、イノシシを長さ約7cm・幅約5cmとして比べ、イノシシは副蹄の跡や、地面の掘り返し・ぬた打ちの跡も残すと説明しています。
足跡とフンの特徴
農林水産省の実践編は、シカのフンを小さな粒状(俵型)としています。足跡は雪の上や傾斜地では副蹄の跡が残ることがあるため、1か所の跡だけで決めず、複数の場所の跡と写真を残します。イノシシが疑われるときは、掘り返しの有無も合わせて庭の掘り返しの記録の仕方を確認してください。
- 足跡:副蹄の跡が付かない。長さ約5cm・幅約4cm(兵庫県の資料)
- フン:小さな粒状で俵のような形(農林水産省の実践編)
- イノシシとの違い:副蹄の跡、掘り返し、ぬた打ちの跡が残る
樹皮はぎと角こすり
農林水産省の実践編は、オスが角をこすり付けた立木の被害を写真つきで紹介しています。環境省のガイドラインは、シカの影響が強まると、剥皮されやすい大径木の樹皮はぎが増え、続いて小径木の樹皮はぎが増え、やがて下層の植物の被度が下がっていくと整理しています。庭木でも、低い位置の枝や葉だけが同じ高さからなくなっていれば、鹿が届く高さまで食べられている可能性があります。
| 痕跡 | 見られる特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 足跡 | 副蹄の跡が付かない。長さ約5cm・幅約4cm | 雪の上や傾斜地では副蹄が残ることがある。小型のキョンの足跡はニホンジカの幼獣と見分けにくい |
| フン | 小さな粒状(俵型) | 場所と日付を記録する。素手では触らない |
| 角こすり | オスが角をこすり付けた立木の傷 | 樹皮はぎと混同しやすいため、傷の高さと範囲を写真に残す |
| 食べ跡 | 草花・野菜の葉や茎、低い位置の枝が食べられる | 食べ跡だけでは動物を決められない。足跡・フン・時間帯と合わせる |
鹿に対応する柵の高さと種類|出典ごとの数値を比べる
鹿は助走なしで1.5m以上の障害物を跳び越える、と農林水産省の実践編は説明し、兵庫県の資料は2m以上のジャンプ力があると紹介しています。このため公的資料は、金網柵とネット柵に2m以上の高さを求めています。一方、電気柵は動物に電気ショックを与えて近づけなくする柵で、高さや段数の数値は資料ごとに前提が異なります。数値を一つだけ拾わず、出典と年を確認して読んでください。
金網柵・ネット柵を選ぶとき
農林水産省の実践編は、金網柵について、押し倒されないよう丈夫な支柱を適当な間隔で立て、地際を完全に接地させ、支柱の間に杭などを打って補強するよう説明しています。ネット柵は設置しやすく費用も抑えやすい反面、耐久性が低いと兵庫県の資料は整理しています。庭では見た目や費用だけで選ばず、点検できる頻度に合う方を選びます。
電気柵を使うときの安全確認
電気柵は、触れた動物の体に電気を流して近づけなくする柵ですが、人が触れる事故も起きています。農林水産省は、危険である旨の表示、電気用品安全法の適用を受ける電気さく用の電源装置、条件によっては漏電遮断器、専用の開閉器などを求めています。庭への導入は、販売店や自治体の窓口で安全の要件を確認してからにし、自作や中古電源の流用は避けてください。
| 出典(年) | 金網柵 | ネット柵 | 電気柵 |
|---|---|---|---|
| 農林水産省 実践編(2014年) | 高さ2m以上、目合い15cm以下(イノシシ兼用は10cm以下)。図では高さ2〜2.5m、支柱の間隔7.5m以下 | 高さ2m以上。接地面を杭などで補強し、外側に2mほどの幅でネットを垂らす例 | 6000〜8000ボルト以上の電圧が必要。柵線は20cm刻み、最下段は地上20cm程度 |
| 兵庫県森林動物研究センター(2022年) | 高さ2m以上、編み目15cm以下 | 高さ2m以上、網目10cm以下。耐久性が低く噛み破られやすい | 高さ1.4m以上、4段張り以上、電圧5000V以上。電圧のこまめな確認と漏電防止の草刈りが必要 |
| 農林水産省 総合対策編(2023年) | 多くは2m近い高さ。それでも飛び越される場合は、ノリ網や簡単なワイヤー等で高さを足す | この資料では数値の記載なし | 電線の間隔は20cm以下、段数は3〜5段程度。通電しにくい舗装道とは30cm以上離す |
柵は高さより地際のすき間と点検で破られる|ネットの絡まりと見回り
農林水産省の総合対策編は、イノシシやシカが柵から侵入する場合、多くは地面との隙間(電気柵では地面から1段目の隙間)からだと説明します。実践編も、鹿は障害物を上へ跳び越えるより、隙間や下をくぐり抜けることの方が多いとしています。高さを足す前に、杭や押さえで地際を固定し、地面の凹凸でできたすき間をふさぐ点検が先になります。
斜面に柵を張ると、鹿が斜面側から柵の上を跳び越えやすくなります。実践編は、柵をできるだけ斜面を避けて設置し、やむを得ない場合は柵をかさ上げして「飛べない」と感じさせるよう示しています。高低差のある場所で電線の間隔が広がる失敗例も図で紹介されており、支柱を増やして間隔を保つ工夫が書かれています。
ネットの絡まりと見回りの頻度
ネットは動物が絡まったり噛み切ったりすることがあります。公的資料には、角のあるキョンのオスが網に絡まって柵が壊れる例や、糸の細い防鳥網に野鳥が絡まる例が書かれています。ネットを使うなら、資料の目合いの目安に合わせ、張りっぱなしにせず見回りを習慣にします。絡まった動物を見つけたときは、自分で外そうとせず、市町村へ連絡してください。
柵は設置後の管理で効果が決まる
総合対策編は、柵の設置は対策のスタートラインで、継続的な維持管理が最も重要だとしています。毎日の見回りは大変なため、被害が出る時期の前や農閑期に集中して点検・補修する工夫も紹介されています。鹿の場合、水田では田植え直後から苗の食害が出るので、田植え前に柵を見回る例が挙げられています。庭でも、花や野菜を植え付ける前に柵を点検しておくと安心です。
- 地際に浮きや穴がないか、杭や押さえで固定されているか
- 斜面や段差でできたすき間、支柱の傾き、ネットの破れ
- 電気柵は電圧と、草や枝が触れて漏電していないか
庭木・花壇・苗木を個別に守る|餌になるものを減らす
庭全体を囲えないときは、守りたい物を絞って個別に守る方法があります。環境省のガイドラインは、樹皮はぎで大きな木が枯れるおそれがあり、柵の設置が難しい場所では樹皮保護ネットで木を単独で保護するとしています。森林向けの記載ですが、庭の大切な木の幹を守る考え方は共通します。水稲の苗が田植え直後から食べられる例があるように、苗木や花の植え付け直後は無防備になりやすいため、この時期から囲っておくことが重要です。
兵庫県の資料は、農地を柵で囲っても集落内に餌になるものが多いと、鹿が餌付いて隙を狙うようになると指摘しています。野菜くずを畑の近くに捨てることは、おいしい餌場があると教えることになるため、埋めるなど適切に処理します。稲刈り後のひこばえ(刈り株から出る芽)も餌になり、耕起で発生を防げます。総合対策編は、林縁の草を刈り払い、餌場として使わせないことも挙げています。
幹・苗木・花壇の守り方の考え方
庭木の幹、苗木、花壇のように守る範囲が小さい場合は、ネットや柵で個別に囲う方が、庭全体を囲うより費用と管理の負担を抑えられることがあります。ただし囲う高さの目安は2m以上の資料が多く、低い囲いでは跳び越される可能性があります。植物の種類で選ぶ方法は、アセビなど一部を除いて何でも食べるという資料の説明があるため、頼りすぎないでください。
鹿を寄せない庭の環境づくり
餌と隠れ場所を減らすことは、柵の効果を高める基本として公的資料に共通しています。収穫しない野菜や果実を放置せず、庭の端の藪や伸びすぎた草を刈り、見通しをよくします。近所でも同じ餌を放置していれば効果が薄れるため、地域で足並みをそろえることも、兵庫県の資料は勧めています。
- 野菜くず・落ちた果実は埋める、または持ち出す
- 稲刈り後のひこばえは耕起して発生を防ぐ
- 林縁や庭の端の草を刈り、見通しをよくする
イノシシも来る場所での柵の考え方
イノシシとシカが同じ場所に出るときは、柵を別々に設けず、両方に有効な構造にそろえる考え方が公的資料にあります。農林水産省の総合対策編は、電気柵の電線の間隔がイノシシでもシカでも20cm以下で共通であることから、シカ用の電気柵を設置するだけでイノシシも防げるとしています。庭の被害が地面の掘り返しなら、イノシシも疑います。庭にイノシシが来たときの対応も確認してください。
金網柵は、実践編がシカ用で目合い15cm以下、イノシシ兼用なら10cm以下としています。同じ区画を囲む場合でも、場所に応じて電気柵とワイヤーメッシュ柵を組み合わせてよいと総合対策編は説明しています。草の管理が難しい場所や舗装道の間近はワイヤーメッシュ柵、草の管理が容易で未舗装の場所は電気柵という使い分けの図があります。相談窓口の範囲は自治体で異なるため、イノシシの相談先と対応範囲も参考になります。
| 項目 | イノシシ | シカ | 兼用の考え方 |
|---|---|---|---|
| 足跡 | 副蹄の跡が残る。長さ約7cm・幅約5cm | 副蹄の跡が付かない。長さ約5cm・幅約4cm | 足跡で区別し、どちらも出る場所では兼用の柵にする |
| 電気柵の段数 | 20cm間隔で2段の例 | 20cm間隔で3〜5段程度 | シカ用を設置すればイノシシも防げる(総合対策編) |
| 金網柵の目合い | 10cm以下 | 15cm以下 | 兼用は10cm以下(実践編) |
| 侵入の仕方 | 地際から鼻で持ち上げて入る例がある | 下のすき間が多いが、高さも跳ぶ | 地際の固定と高さの両方をそろえる |
被害額・県別の状況を調べる公的統計
鹿の被害額や都道府県別の状況を知りたいときは、農林水産省の「農作物被害状況」のページが出発点になります。2026年10月時点の掲載では、令和6年度の全国の野生鳥獣による農作物被害は188億円で、このうちシカは約79億円(前年度より9.0億円増)、イノシシは約45億円でした。別添1ではシカの被害面積が約3万5千haと示されています。
このページには、都道府県別の被害状況の資料(参考2)や、各都道府県のホームページへのリンク集も掲載されています。ただし集計は農作物の被害で、市町村の報告を都道府県がまとめたものです。個人の庭木や花壇の被害をそのまま示す統計ではないため、庭の被害を伝えるときは、写真と日付つきの記録を添えて市町村に相談してください。全国のどの動物の被害が大きいかを広く見たいときは、害獣ごとの被害額をまとめた記事も使えます。
| 知りたいこと | 見る場所 | 読み方の注意 |
|---|---|---|
| 全国のシカの被害額 | 農林水産省「農作物被害状況」の別添1 | 令和6年度の数字。年度ごとに更新される |
| 都道府県別の状況 | 同ページの参考2と、都道府県HPのリンク集 | 農作物の被害。県の集計方法は各県のページで確認 |
| 身近な地域の状況 | 市町村の鳥獣被害防止計画や農林担当課 | 計画の有無や公開の仕方は市町村で異なる |
| 庭木・花壇の被害 | 市町村の環境・農林担当課へ相談 | 統計の対象外のことが多い。記録を残して相談する |
住宅地や道路で鹿を見かけたとき|行動・相談先・捕獲の扱い
住宅地で鹿を見かけたら、近づかず、目を合わせず、大声を出さないのが自治体の案内に共通します。徳島県阿南市は、不用意に近づかない、餌を与えない、威嚇されたら目をそらして後ずさりし、走って逃げないよう案内し、接触事故は110番通報とします。京都府向日市は、近づかない、目を合わせない、戸締りで住居への侵入を防ぐことを呼びかけています。どちらも農政の担当課が窓口で、2026年10月時点の掲載です。
奈良公園周辺では、鹿は国の天然記念物で、鹿せんべい以外の餌やりを禁じるなどの独自の案内があります。これは奈良公園の特別な取り決めで、全国共通ではありません。奈良公園周辺の暮らしは奈良公園周辺でシカと暮らすときの注意、向日市の例は向日市のシカ目撃時の連絡で詳しく扱っています。
相談先と伝える情報
目撃や庭の食害の相談先は、まず市町村の農林・環境担当課です。窓口の名前は自治体で異なるため、市町村のホームページで「鳥獣」「有害鳥獣」などの語で探します。伝えるときは、見かけた日時と場所、頭数、鹿の様子、食べられた植物や足跡の写真をそろえると、担当者が状況を判断しやすくなります。
- 日時と場所(地図やおおよその住所)
- 頭数と、親子・オスなどの様子
- 食べ跡・足跡・フンの写真と、被害の範囲
捕獲や駆除は許可と免許の話になる
環境省の資料によれば、鳥獣は狩猟で捕る場合を除き、原則として捕獲や殺傷が禁止されています。被害防止などの目的では、許可を受けて捕獲できる制度があり、許可は都道府県知事、権限が移された場合は市町村長が出します。ニホンジカは狩猟鳥獣ですが、狩猟には狩猟免許と登録が必要で、庭先で個人が見様見真似で捕まえることは勧められません。捕獲を考えるときは、まず市町村の窓口で許可の枠組みを確認します。





