キョンの特徴|大きさ・角と牙・顔の模様と、ニホンジカとの見分け

キョン(学名 Muntiacus reevesi)は、偶蹄目シカ科の小型の動物で、中国南東部と台湾が原産です。千葉県のページは、肩までの高さが40cmほどで、中型犬と同じくらいの大きさと説明しています。茨城県のページには、目の下に大きな臭腺(眼下腺)があり、目が4つに見えることから「ヨツメジカ」と呼ばれることもあると書かれています。

大きさの記載は資料ごとに違う

公的資料の体の大きさの数値は、調べた個体や時期が違うため、少しずつ異なります。数値は目安として読み、実際に見たときは大きさだけでなく、角・牙・顔の模様もあわせて確認してください。

  • 東京都の防除実施計画(第4期):成獣の体重10〜12kg、肩高40〜50cm
  • 茨城県のページ:頭胴長70〜80cm、体高35〜40cm、体重7〜10kg
  • 千葉県の第3次計画:2歳以上の平均で体重はオス10.0kg・メス8.9kg、体高はオス38.8cm・メス36.0cm

ニホンジカの幼獣と間違えやすい場面

茨城県のページは、体が小さく、成獣でもニホンジカの子どものように見えることがあると書いています。千葉県ではニホンジカと同じ地域に生息するため、直接見たときの識別が問題になります。写真を撮るときは、角や牙、額の模様、体全体の大きさが分かるようにしておくと、自治体が判断しやすくなります。ニホンジカ側の被害対策は鹿の被害対策にまとめています。

キョンの特徴|大きさ・角と牙・顔の模様と、ニホンジカとの見分け:確認項目
比べる点キョンニホンジカ(幼獣を含む)
体の大きさ成獣でも中型犬ほど。オス成獣の体重は10kg程度(農林水産省の旧マニュアル)メス成獣の体重は40kg程度。冬ならニホンジカの幼獣もキョンの成獣より大きくなる
角と牙オスだけが12〜15cm程度の短い角と、発達した上顎の犬歯(牙)を持つオスだけが角を持つ点は同じ。キョンの短い角と牙が見分けの目印になる
顔の模様額に黒い模様。オスは目の上から角の基部に2本の黒線、メスは目の上から頭頂部に菱形の黒帯額の黒い模様は、資料ではキョンの特徴として挙げられている
四肢ニホンジカに比べて細く短く、体はややずんぐりしているキョンより四肢が長く太い
行動普段は単独で、群れを作らない。早朝・夕方・夜間に活動し、犬に似た大きな声で鳴く母子の小さな群れで行動し、餌の多い場所では数十頭の群れになることもある

参考:茨城県|キョンについて

読者の疑問

キョンは何科の動物ですか?

比較ガイド

偶蹄目シカ科の小型の動物です。原産は中国南東部と台湾で、オスだけに短い角と牙があります。ニホンジカより小さく、肩までの高さは40cmほどと千葉県が説明しています。

キョンはなぜ日本にいる?定着の経緯と、増えた理由

千葉県の第3次防除実施計画(令和8年3月)は、県内の移入源を、勝浦市にあった私立観光施設(平成13年閉園)と考えられるとし、移入時期は昭和30年代から60年代の間と推定しています。「行川アイランド」と一緒に検索されることがありますが、計画に施設名までは書かれていません。農林水産省の資料も、国内の定着は動物園などの飼育個体が逃げ出して野外に定着したものと説明しています。

メスは1産1子で、早ければ生後半年程度で妊娠し、妊娠期間は約210日です。一年を通して繁殖し、出産のピークは5〜10月とされます。千葉県の計画は、捕獲目標を達成しても生息数が減らなかった理由として、想定より繁殖力が強い可能性を課題に挙げています。「なぜ増えたのか」「繁殖力はどれくらいか」という疑問に対して、公的資料が示しているのは、この繁殖の特徴と、防除を続けても生息数が増え続けてきた経過です。

キョンはなぜ日本にいる?定着の経緯と、増えた理由:確認項目
場所定着の経緯(公式資料の記載)資料
千葉県(房総半島)勝浦市にあった私立観光施設(平成13年閉園)が移入源と考えられる。移入時期は昭和30年代から60年代の間と推定千葉県 第3次防除実施計画(令和8年3月)
東京都(伊豆大島)都立大島公園で飼育されていた10数頭が、昭和45(1970)年に台風で柵の壊れた飼育場から逃げて野生化したと言われ、1973年に野外での繁殖が確認された東京都 第4期防除実施計画(令和8年3月)
制度の面平成17年6月施行の外来生物法で特定外来生物に指定され、飼育・保管・運搬・輸入・販売・野外に放す行為が原則禁止になった東京都 第4期防除実施計画

参考:千葉県|第3次千葉県キョン防除実施計画

分布の現状と拡大|千葉県・伊豆大島・茨城県

千葉県の計画によると、キョンの定着が確認されている市町村は、平成16(2004)年度の5市町から令和2(2020)年の17市町、令和7(2025)年度の18市町へ広がりました。推定生息数は、平成18(2006)年度の中央値約13,300頭から、令和6(2024)年度に約94,100頭へ増えています。県北部への拡大を防ぐため、市原市北部から茂原市北西部、一宮町北部にかけて分布拡大防止ラインが設定されています。

伊豆大島では、東京都環境局のページによると、令和7年末時点の推定生息数は12,707頭(階層ベイズ法による中央値)で、島全域が防除区域です。茨城県のページは、県内で確認されたキョンは6例(2026年6月4日時点)で、いずれもオス1頭ずつ、生活環境被害や農作物被害の報告はなく、侵入の初期段階とみています。

「八丈島」「埼玉」「山梨」などの地名で調べるとき

確認した東京都と千葉県の資料で、野生化している場所として挙がっているのは、千葉県と伊豆大島(東京都大島町)です。八丈島については、東京都の計画や千葉県のページに記載は見当たりませんでした。埼玉県は、千葉県の計画の中で、茨城県などとともに生息状況の情報を共有する近隣県として名前が出てきます。山梨県に関する記載も、確認した資料にはありません。記載がないことは、いないことの証明ではないため、見かけたら通報してください。

分布図(マップ)を見たいとき

地図は、千葉県の第3次防除実施計画の図1(定着市町村の変遷)と図7(防除の区域区分と分布拡大防止ライン)、東京都の第4期計画の防除区域の図で確認できます。農林水産省の全国統計では、キョンは「その他獣類」に含まれ、種別の被害額は示されていません。全国の被害の順位は害獣ごとの被害額をまとめた記事で見られますが、キョンの被害の実態は千葉県や東京都の資料で確認してください。

分布の現状と拡大|千葉県・伊豆大島・茨城県:確認項目
地域公式資料の記載時点・資料
千葉県定着確認は18市町。推定生息数は中央値約94,100頭。分布拡大防止ラインを設定令和7年度・令和6年度。千葉県 第3次防除実施計画
東京都(伊豆大島)島全域が防除区域。推定生息数は12,707頭(階層ベイズ法の中央値)。根絶が目標令和7年末。東京都環境局のページ
茨城県確認個体は6例(すべてオス)。被害の報告はなく、侵入の初期段階とみている2026年6月4日時点。茨城県のページ

参考:東京都環境局|キョン対策

被害の種類|農作物・庭の花木・鳴き声・生態系

千葉県のページは、農作物の被害金額はイノシシ等に比べると少ないものの増加傾向にあり、野菜を中心に水稲、豆類、イモ類、果樹、特用林産物など多岐にわたると説明します。第3次計画は、近年の被害金額を400万円から900万円程度としています。伊豆大島では、東京都の計画によると、大島町のアンケートで被害額は平均で毎年2〜3百万円程度で、アシタバやサツマイモなどの野菜類や園芸植物が食べられています。

庭の被害も報告されています。千葉県の計画は、鳴き声への苦情や、住宅地や別荘地周辺での花壇の花や植木の採食を挙げ、生活環境被害の確認が、令和2年度の4市から令和7年度の市町村アンケートでは9市町に広がったとしています。農林水産省の資料には、パンジーやツバキの花の食害が多く、高密度の地域では玄関の門にまでネットをかけている例も書かれています。痕跡を記録して相談資料にする考え方は、庭の痕跡を相談資料にする記録の考え方も参考になります。

鳴き声・交通事故・ヤマビル

キョンは、濁った大きな声で繰り返し鳴くことがあり、農林水産省の資料は苦しげな人の声にたとえられると紹介しています。東京都の計画には、平成20年度から交通事故の発生報告が始まったと書かれ、茨城県でも車に轢かれて死亡した個体が確認されています。茨城県のページは、房総半島ではキョンやニホンジカなどにヤマビルが寄生して増え、庭仕事中に吸血される例もあると聞いている、とも説明しています。

  • 鳴き声:濁った大きな声で繰り返す。夜間にも聞こえる
  • 交通事故:東京都は平成20年度から報告、茨城県でも死亡個体を確認
  • ヤマビル:房総半島で、庭仕事中に吸血される例があると茨城県が説明

生態系への影響

千葉県のページは、ニホンジカとキョンの分布が重なり、餌をめぐって間接的な競争が起きている可能性や、ニホンジカが食べない植物も食べることが知られていると説明しています。伊豆大島では、キョンの排除柵の内外を比べた調査で、柵の外では多くの植物に食痕があり、植物の種数や被度が低く抑えられていたと東京都の計画に書かれています。

参考:千葉県|特定外来生物 キョン

特定外来生物としての規制|飼う・運ぶ・放すことの禁止

キョンは、外来生物法により特定外来生物に指定されています。環境省は、特定外来生物について、飼育・栽培・保管・運搬(法律では「飼養等」)、輸入、野外へ放つことを原則禁止とし、許可を受けて飼養等している人が許可のない人へ譲渡や引渡しをすること、販売することも禁止されると説明しています。東京都の計画も、キョンについて、飼育、保管または運搬、輸入、販売、野外に放つ行為が原則禁止になったと書いています。

つまり、見かけたキョンを保護して連れ帰ること、他の場所へ運んで放すことは、規制に触れるおそれがあります。一般の人が捕獲を試みる必要はなく、通報が基本です。

防除(捕獲)は誰が行うのか

千葉県の計画は、キョンの防除を、外来生物法に基づく捕獲と、鳥獣保護管理法に基づく許可捕獲を併用して行うとしています。外来生物法に基づく捕獲では、県または市町村が従事者証を発行し、原則として狩猟免許を持つ人が従事し、免許のない人は講習会を受けるとされています。東京都は令和7年9月8日からキョン捕獲報奨金制度を、茨城県は目撃情報提供と捕獲の褒賞金制度を設けています。対象や条件は都県ごとに違うため、各都県の案内で確認してください。

特定外来生物としての規制|飼う・運ぶ・放すことの禁止:確認項目
行為規制の内容補足
飼育・保管・運搬(飼養等)原則禁止研究目的などで、逃げ出さない施設を持つ場合に許可される例がある
輸入原則禁止飼養等の許可を受けた者は輸入できる
野外へ放つ原則禁止放出等の許可を受けた者に限られる
譲渡し・引渡し・販売禁止許可を受けて飼養等する者が、許可のない人へ渡すことも禁止

参考:環境省|日本の外来種対策・外来生物法「何が禁止されているの?」

足跡・フンなどの痕跡|ニホンジカと見分けにくい理由

農林水産省の旧マニュアル(特定外来生物編)は、食べ跡でのニホンジカとの識別は不可能と書いています。足跡やフンも、ニホンジカの幼獣と見分けるのは難しいとされます。冬であれば、キョンのフンは短径が7mm以下で、より大きいシカのフンと区別できる目安がありますが、季節や個体で幅があるため、フンだけで断定するのは避けた方がよい情報です。

正体の分からない動物は、痕跡の種類ごとに、分かることと分からないことを分けて記録します。庭で見つけた足跡やフンの写真は、場所と日付をそろえて残しておくと、自治体への相談の材料になります。カメラで特定を試みる自治体の例は彦根市の正体不明の動物の相談が参考になります。

写真・動画の残し方

見かけたときは、近づいたり追いかけたりせず、離れた場所から撮影します。キョンかどうかの判断は自治体が行うため、判断材料を残すことが目的です。フンや死体には素手で触らないでください。

  • 全身が分かる写真と、角・牙・顔の正面が分かる写真
  • 日時と場所(地図や目印)
  • 足跡は、定規など大きさが分かる物を添えて撮影する
  • 鳴き声は、可能なら動画で記録する
足跡・フンなどの痕跡|ニホンジカと見分けにくい理由:確認項目
痕跡分かること分からないこと
食べ跡葉・花・植木が食べられたキョンとニホンジカは食べ跡では区別できない
足跡偶蹄類(シカ科)の足跡であるニホンジカの幼獣の足跡と見分けるのは難しい
フン冬は、短径7mm以下ならニホンジカの成獣のフンより小さい目安になる季節や個体で幅があり、フンだけでは断定しにくい
鳴き声犬に似た濁った大きな声で、長く鳴き続けることがある鳴く理由は分かっていない
姿角・牙・額の模様・大きさで識別しやすい遠くや暗い場所では誤りやすい。写真や動画を残す

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 特定外来生物編(アライグマ、ヌートリア、キョン、マングース、タイワンリス、平成21年度作成)

見かけたときの通報先|千葉県・伊豆大島の外で見た場合を中心に

千葉県と伊豆大島の外でキョンらしい動物を見たときは、近づかず、捕まえず、写真と場所を記録して、自治体の外来種担当へ連絡します。茨城県は、キョンを発見・捕獲したら、茨城県生物多様性センター、各県民センター、発見場所の市町村の特定外来生物担当課へ連絡するよう案内し、写真や動画を添えた目撃情報に褒賞金制度を設けています。環境省は、野外で見つけた外来生物に関する問い合わせは地方環境局などへとしています。県の窓口が分からないときは、市町村か、環境省の地方環境局などに問い合わせてください。

千葉県内では、県の自然保護課鳥獣対策班がキョン対策の窓口として案内されています。東京都の伊豆大島では、大島キョン目撃報告LINEアプリで目撃情報を報告でき、情報はわなの設置などの取り組み強化に使われます。同じ特定外来生物のアライグマについて、大阪での相談の流れと記録の取り方をアライグマを庭や家で見かけたときの記録と相談に整理しています。

  • 近づかない・追いかけない・餌を与えない・捕まえて運ばない
  • 見かけた日時と場所(地図や目印)
  • 頭数と様子(単独か、生きているか、死体か)
  • 角・牙・顔の模様が分かる写真や動画

参考:茨城県|キョンについて