イノシシの活動時間は夜だけ?公的資料の説明を並べて読む
『イノシシ 夜行性』と『イノシシ 昼行性』の両方で検索されるのは、資料によって書き方が違うためです。環境省のガイドラインは、人の活動等の影響で夜間あるいは朝夕の薄暮期に活動することが多いが、危険がないことが分かれば日中も活発に活動するとしています。農林水産省の実践編は、昼夜を問わずエサを求めて活動し、農作物の被害は夜間に発生するが昼でも動き回ると書いています。
つまり、夜行性か昼行性かの二択ではなく、人との距離で動く時間をずらす動物と読めます。夜に出没が多い地域でも、人を恐れなくなった個体は日中も動きやすくなると読めます。
夜に会いやすい理由
神戸市は、本来イノシシは昼行性の動物だが、警戒心が強く人を避けて行動するため、街中への出没は夜間が多くなると説明しています。昼間は草深いところなどに潜んでいるため、そうした場所へ入り込まないよう呼びかけています。富山県も、人を怖がる地域では夜間にエサを求めて活動することが多いとしています。
昼間に出会うとき
神戸市は、餌付けされたイノシシは人を恐れなくなり、エサを求めて住宅地内を徘徊したり、人を襲って食べ物を奪い取ろうとしたりすることがあると注意しています。昼間の遭遇は、人慣れや餌の問題が背景にある可能性があるため、出没が続くときは庭にイノシシが来たらで、餌になる物の点検を進めてください。
| 資料 | 活動時間の書き方 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 環境省|イノシシ編ガイドライン | 人の活動等の影響で夜間や朝夕の薄暮期に活動することが多いが、危険がないと分かれば日中も活発 | 人の動きに合わせて時間をずらす |
| 農林水産省|実践編(平成26年3月) | 昼夜を問わずエサを求めて活動。被害は夜間に出るが、昼でも動き回る | 時間帯で決めつけない |
| 神戸市(2024年1月15日更新) | 本来は昼行性だが、警戒心が強く人を避けるため、街中への出没は夜間が多い | 市街地では夜に会いやすい |
| 富山県 | 昼夜を問わず状況に応じて活動。人を怖がる地域では夜間にエサを求めて活動することが多い | 地域の人慣れの度合いで差が出る |
参考:環境省|第二種特定鳥獣管理計画作成のためのガイドライン(イノシシ編)改定版(PDF)
イノシシは夜行性ですか、昼行性ですか?
公的資料の書き方は異なりますが、人の活動を避けて夜間や朝夕の薄暮に動くことが多く、危険がないと分かれば日中も活発に動く、という点は共通しています。夜だけと決めず、昼間の出没にも備えてください。
季節ごとの動きと遭遇リスク|出産期・子連れ・発情期の暦
環境省のガイドラインによると、イノシシは基本的に年1回の出産で、交尾期は晩秋から冬、妊娠期間は約120日で、通常は春から初夏に出産します。農林水産省の実践編は、交尾期を12〜2月頃、出産期を4〜6月頃としています。茨城県と愛媛県は、発情期(晩秋〜冬)や分娩後に攻撃的になることがあると注意しています。
発情期(晩秋から冬)
環境省のガイドラインは、発情したメスを見つけたオスはメスに寄り添い、他のオスが近づくとこれを排除しようとすると説明しています。発情期は気が立っている個体がいるため、薄暗い時間の散歩や、草むらの近くを通る外出では、距離を取る行動を意識します。
出産期と子連れの時期
愛媛県は、分娩後(4月から6月は出産時期)に攻撃的になることがあると注意しています。環境省のガイドラインによると、基本の社会単位は成獣メスと1歳以下の子からなる母子グループで、ウリボウの縞模様は生後3か月頃から消え始め、半年から1年で完全に消えます。縞模様が消えた若い個体でも、母子グループで行動している可能性は残ります。
| 時期の目安 | イノシシの状況(資料の記載) | 遭遇時に気をつけること |
|---|---|---|
| 晩秋〜冬(11〜2月頃) | 交尾期。発情期で攻撃的になることがある(茨城県・愛媛県)。オスが発情したメスに寄り添い、他のオスを排除する(環境省) | 薄暗い時間の外出で距離を取る。1頭でも近づかない |
| 春〜初夏(4〜6月頃) | 出産期。分娩後で攻撃的になることがある(愛媛県) | 子育て中の個体に近づかない。うり坊だけが見えても母が近くにいる可能性 |
| 初夏〜秋 | 母イノシシと1歳以下の子からなる母子グループが基本の単位。ウリボウの縞模様は生後3か月頃から消え始める(環境省) | 縞模様が消えた若い個体でも、近づかない |
| 秋(10〜11月) | 市街地に出没しやすい時期とされる(香川県)。秋〜冬は果実、根・塊茎の採食が多い(環境省) | 柿などの放任果樹、落ち果、生ごみを片づける |
| 春の出産に失敗した場合など | 秋頃に出産することがある(環境省) | 季節だけで『この時期は大丈夫』と決めない |
イノシシの繁殖力と寿命|数字は資料ごとに前提が違う
『イノシシ 繁殖力』『イノシシ 寿命』の数字は、資料によって幅があります。農林水産省の令和5年版の総合対策編は、イノシシは大型獣類の中でとりわけ多産で、年1回、平均すると4頭から5頭を出産し、若齢での死亡率が高いため平均寿命は1歳前後とされていると説明しています。環境省のガイドラインは、産子数は兵庫県の捕獲個体の分析で1〜7頭、4頭が最も多いとし、生後1年半でほぼ全ての個体が性成熟に達すると記しています。
農林水産省の総合対策編は、イノシシは一度に複数頭を産み世代交代のサイクルが速いため、ウリ坊を1頭捕獲しても個体数は増えてしまい、捕獲による効果が出にくい動物で、侵入防止柵の設置や生息環境整備などの総合的な対策が他の鳥獣以上に必要だと述べています。
| 項目 | 資料の記載 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 産子数 | 農林水産省(令和5年版):平均4〜5頭。環境省:兵庫県の捕獲個体で1〜7頭、4頭が最も多い | 地域や個体で幅がある |
| 性成熟 | 環境省:生後1年半でほぼ全ての個体。農林水産省の実践編:満2歳で初産 | 資料により年齢の書き方が違う |
| 寿命 | 農林水産省(令和5年版):若齢の死亡率が高く、平均寿命は1歳前後。実践編:野生の寿命はオス約6歳、メス約10歳。富山県:野生での寿命は10歳前後と言われている | 『平均寿命』と『生きられる年数』は別の数字。1つに決めない |
| 出産の時期 | 環境省:通常は春から初夏。農林水産省の実践編:出産期は4〜6月頃 | 春に失敗すると秋に出産することもある |
参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】令和5年3月版 第2章 鳥獣被害対策の基本的な考え方(PDF)
威嚇のサインと音|イノシシの鳴き声と距離の取り方
茨城県は、毛を逆立てて明らかに威嚇している状態でなくても、シュー、カッカッカッ、クチャクチャクチャという音を発していたら威嚇音なので注意が必要としています。神戸市も同じ3つの音を威嚇音として挙げています。『イノシシ 鳴き声』で探しても、今回確認した公的資料に載っていたのは、この威嚇音の説明だけでした。夜に聞こえた声がイノシシかどうかは、音だけでは判断しないでください。
威嚇音が聞こえたとき
茨城県は、イノシシが興奮している場合は、後ろを向くと襲ってくることもあるため、なるべく背中を見せずにゆっくり後退するよう案内しています。追いかけたり石を投げたりすると、興奮して突進されたり、噛みつかれたりすることがあります。けがをしている個体や住宅地に迷い込んだ個体は興奮している可能性が高いとして、ブロック塀の裏や家の中など、イノシシから見えない場所へ避難するよう案内しています。
犬を連れているとき
香川県は、イノシシは犬と飼い主を即座に敵と判断して攻撃してくる可能性があると注意しています。不意に襲われたり遭遇したりした場合は、できるだけ高い場所か遮蔽物の中に隠れ、犬を連れているときは即座にリードを手放して犬と分かれて避難するよう案内しています。
ウリ坊だけに見えても近づかない理由
茨城県は、うり坊を見かけても、近くに母イノシシがいる可能性があるため、近づいたり追いかけたりしてはいけないと案内しています。環境省のガイドラインによると、生まれたばかりのウリボウには白又はベージュ色の縞模様があり、基本の社会単位は成獣メスと1歳以下の子からなる母子グループです。1頭だけに見えても、周囲の草むらに親がいることを前提にしてください。
うり坊に食べ物を与えることも避けます。茨城県は、餌付けが人への警戒心を低下させ、人が食べ物の供給源だと学習させると説明しています。神戸市は、条例に基づく区域でイノシシへの餌付けを禁止し、餌になるごみをみだりに放置することも禁止しています。住宅地での出会い方は兵庫の住宅地でイノシシに出会ったらに詳しくまとまっています。
散歩・通学・ごみ出しの時間帯の工夫
時間帯の工夫は、『夜は危ない、昼は安全』という切り分けではなく、見通しと餌の2点で考えます。大阪府は、人間の存在を知らせるために鈴などで音を出し、夜などの外出には懐中電灯など光で知らせる工夫を案内しています。香川県は、10月から11月は市街地に出没しやすい時期とし、イノシシの多い地域や山際、海岸の草むらの近くで犬を散歩するときは、リードをしっかり持つよう注意しています。
ごみ出しについて、神戸市は、指定日と指定時間(午前5時から8時)を守り、前夜からごみやペットの餌を出しっぱなしにすると餌付けと同じ結果になると案内しています。大阪府も、ごみは収集日の朝に指定場所へ出し、袋の口を結んでネットをかけるなどの基本を挙げています。通学や通勤の動線に茂みや堤防の草むらがあるときは、家族や学校と、会っても近づかず離れるルールを共有しておきます。
| 場面 | 時間帯の考え方 | 工夫(出典) |
|---|---|---|
| 犬の散歩 | 薄暗い早朝や夕方は見通しが悪い | リードをしっかり持つ。堤防沿いや草むらの近くは特に注意する(香川県) |
| 夜の外出 | 夜間や朝夕の薄暮は活動が多い | 鈴などで音を、懐中電灯などで光を使って存在を知らせる(大阪府) |
| ごみ出し | 前夜から出すと餌になる | 指定日・指定時間を守り、袋の口を結んでネットをかける(神戸市・大阪府) |
| 通学・通勤 | 茂みや草むらの近くを通る | 会っても近づかず離れる。慌てて走らない(茨城県) |
参考:神戸市|イノシシ被害対策
出没が続くときの連絡先と、夜の物音の記録
市街地でイノシシを見かけたとき、香川県は地元の市役所、町役場または県の担当課への連絡を案内し、緊急時は直ちに110番通報するよう求めています。神戸市は、街中での目撃や被害を鳥獣相談ダイヤル(078-333-4408、午前8時から午後9時、年中無休)で受け付け、情報を捕獲活動などの被害対策に活用するとしています。けがをした場合は、警察(110番)や救急(119番)への連絡です。
出没が続くときは、日時、場所、頭数、子連れかどうか、被害の様子をメモして市町村へ伝えます。夜間に物音がするだけで姿が見えない場合は、時間帯を記録する方法が夜間の天井の音を記録するにまとまっています。駆除を依頼できるかは、イノシシ駆除は市役所に依頼できる?で整理しています。



