コウモリに噛まれた・引っかかれたときに最初にすること
検疫所の情報サイトFORTHは、狂犬病のおそれのある動物に噛まれたときの対応として、できるだけ早く病院を受診すること、同時に傷口を石鹸と水(できれば流水)でよく洗い、消毒液で消毒することを挙げています。動物は前足をなめるため、ウイルスのついた爪で引っかかれても感染する可能性があると説明しており、噛み傷だけでなく引っかき傷も同じように考えます。傷口を口で吸い出すことは、粘膜から感染する可能性があるため、決してしないよう書かれています。
厚生労働省の狂犬病Q&Aも、海外で狂犬病が疑われる動物や野生動物に噛まれたら、まず傷口を石鹸と水でよく洗い流し、できるだけ早く医療機関を受診するよう案内しています。この洗浄は、受診までの応急の手当てで、ワクチンが必要かどうかは医師が判断します。FORTHは、医師がWHOの基準に沿って判断するため、噛まれたときの状況と、その後の処置の仕方をできるだけ詳しく説明するよう求めています。
受診を急ぐ理由として、厚生労働省は、狂犬病は発症する前に感染の有無を診断できないこと、発症すると効果的な治療法がなくほとんどの人が亡くなることを説明しています。感染した疑いがある場合はできるだけ早く医師に相談する、という趣旨です。症状の有無で様子を見るかどうかを自分で決めず、傷があるなら先延ばしにしないことが、資料に共通する点です。
参考:厚生労働省検疫所 FORTH|狂犬病(Rabies)(2024年3月更新)
コウモリに噛まれたら、まず何をしますか?
傷口を石けんと水(できれば流水)でよく洗い、できるだけ早く医療機関を受診します。検疫所FORTHは、消毒液での消毒と、傷口を口で吸い出さないことも挙げています。ワクチンが必要かどうかは医師が判断するため、接触の状況を詳しく伝えます。
受診・相談先と、伝える内容
相談先は、傷や接触の状況で使い分けます。傷や出血がある、引っかかれた、目や口、傷のある皮膚に触れた可能性がある場合は、医療機関が最初の窓口です。厚生労働省のQ&Aは、感染した疑いがあるとき最寄りの保健所または医療機関に相談するよう案内し、動物由来感染症ハンドブックも、問い合わせは最寄りの保健所へと記載しています。ハンドブックは、体調に不安があるときの早めの受診と、動物との接触状況を医師に伝えることも勧めています。
伝える内容は、思い出せる範囲で次の順に整理しておくと、短い時間で状況が伝わります。日時と場所(屋内か屋外か)、噛まれた、引っかかれた、触れたのどれか、傷の位置と出血の有無、傷口を洗った方法、目や口や傷のある皮膚に触れた可能性、そのコウモリがその後どうなったか(逃げた、見失った、外へ出た)、海外への渡航の有無です。追いかけて捕まえて持参しようとすると触れる機会が増えるため、動物は追わず、いなくなった場所と状況を伝えます。
| 相談先 | 向いている場面 | 伝えること |
|---|---|---|
| 医療機関 | 噛まれた、引っかかれた、出血した、目や口や傷のある皮膚に触れた可能性がある | いつ、どこで、どう接触したか。傷の場所と状態。洗った方法。海外への渡航歴 |
| 最寄りの保健所 | 傷はないが触れて不安、受診先が分からない、動物由来感染症について聞きたい | 接触の状況、コウモリを見つけた場所、人やペットの接触の有無 |
| 市区町村の野生鳥獣や生活環境の窓口 | 室内や敷地に出入りがあり、建物の対策や相談先を知りたい | 発見した場所と時刻、フンの位置、写真。横浜市のように、市は捕獲や駆除を行わない自治体もある |
| 動物病院 | ペットが追いかけた、触れた可能性がある | ペットの種類、接触の様子、現在の様子 |
国内と海外で違う感染症の状況|狂犬病を中心に
厚生労働省のQ&Aによると、日本国内では、人の狂犬病は1956年を最後に発生がなく、動物でも1957年の猫での発生が最後で、現在の日本は狂犬病の発生のない国とされています。一方、狂犬病は日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドなどの一部の国を除いて世界中に分布し、海外ではほとんどの国で感染する可能性があると説明されています。国内で人が発症した例としては、海外で犬に噛まれて感染し、帰国後や入国後に発症した輸入感染例が、1970年、2006年、2020年にあります。
感染源の動物と、国内のコウモリについての記載
主な感染源の動物は、アジアとアフリカでは犬と猫、アメリカとヨーロッパではキツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ、猫、犬、中南米では犬、コウモリ、猫、マングースと、同じ資料に整理されています。
国内のコウモリについて、前橋市は、国内ではコウモリを直接の原因として発症した事例は現在のところないが、海外ではフンに含まれるカビ菌を吸い込んで感染した例が報告されていると、令和4年3月作成のページで説明しています。厚生労働省の動物由来感染症ハンドブック2026は、コウモリの項目に、狂犬病、リッサウイルス感染症、ニパウイルス感染症、ヘンドラウイルス感染症を挙げ、いずれも、国内で病原体が見つかっていない、または長期間見つかっていない感染症を示す印を付けています。
「国内なら大丈夫」とは書かない理由
これらは、国内で確認された例がない、長期間見つかっていないという意味で、国内のコウモリに触れても心配ないという保証ではありません。厚生労働省のQ&Aに、国内では狂犬病が発生していないため感染の心配はないという趣旨の回答がありますが、それは犬に噛まれた場合の質問への答えで、コウモリについて同じ内容の記載は確認できませんでした。そのため、この記事は「国内なら大丈夫」とは書かず、接触したら洗浄して相談する、という立場を取ります。
| 比べる点 | 国内 | 海外(狂犬病が発生している国・地域) |
|---|---|---|
| 狂犬病の発生 | 人は1956年、動物は1957年(猫)が最後で、現在は発生のない国(厚生労働省) | 日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドなどを除き、世界中に分布(厚生労働省) |
| コウモリの位置づけ | コウモリの感染症として表に挙がるが、狂犬病などの病原体は、未発見か長期間発見されていないとされる(動物由来感染症ハンドブック2026) | アメリカ、ヨーロッパ、中南米で、主な感染源の動物にコウモリが挙がる(厚生労働省) |
| 噛まれたときの案内 | 傷口を石鹸と水でよく洗い、早めに医療機関や保健所へ相談する(厚生労働省、FORTH) | 傷口を洗い、現地の医療機関を受診し、帰国時に検疫所へ申し出る(厚生労働省) |
| 予防のための行動 | 野生動物には安易に触らない。触ったら流水で手を洗う(動物由来感染症ハンドブック) | むやみに動物に手を出さない。医療機関のない地域などでは、渡航前の予防接種を検討する(厚生労働省) |
触ってしまっただけの場合の対応
傷がなく、素手で触れただけの場合でも、動物由来感染症ハンドブックは、動物やその唾液や粘液に触れた手で、気づかないうちに自分の目や口や傷口を触ってしまうことがあるため、動物に触ったら必ず流水で手を洗うよう呼びかけています。野生動物はどんな病原体を持っているか分からないため、安易に触らないようにとも書かれています。まず流水で手を洗い、洗う前に顔や口、傷のある皮膚に触れていないかを思い出します。
コウモリとの接触は、WHOの区分で別に扱われる
次に、コウモリの場合の扱いを確認します。厚生労働省のQ&Aが紹介するWHOの区分では、動物に触れる、餌をやる、傷のない皮膚をなめられるといった接触は接種が不要とされる区分、皮膚を貫通する噛み傷や引っかき傷、粘膜や傷のある皮膚をなめられること、コウモリとの直接的な接触は深刻な接触とされる区分に分けられています。
FORTHも、コウモリとの接触を、危険性が高い区分に含めています。ただし、これは狂犬病が発生している地域で、疑いのある動物との接触を想定した基準です。国内でコウモリに触れたときに当てはめるかどうかは、資料からは判断できないため、状況を保健所か医療機関に伝えて相談します。
状況別の最初の対応と相談先
次の表は、判断を代わりに行うものではなく、状況ごとに最初にすることと相談先を整理したものです。どの場合も、治療や薬の判断は医師に任せます。
| 状況 | 最初にすること | 相談先 |
|---|---|---|
| 噛まれた、引っかかれた(出血の有無を問わない) | 傷口を石鹸と水(できれば流水)でよく洗い、消毒液で消毒する。口で吸い出さない(FORTH) | できるだけ早く医療機関へ。保健所にも相談できる |
| 素手で触れた。傷はない | 流水で手を洗う。洗う前に顔や口に触れていないか思い出す | 保健所か医療機関に、接触の状況を伝えて相談する |
| 目や口、傷のある皮膚に触れた、またはなめられたかもしれない | 手や皮膚は流水で洗い、いつ何に触れたかを書き留める | 医療機関へ。分からない点も含めて伝える |
| 眠っているときなどで、触れたかどうか分からない | 触れた可能性のある部位を思い出して記録し、傷や赤みがないか見る | 保健所か医療機関に、分からない点も含めて相談する |
| 見ただけで触れていない | フンや周りの物に触れた手を、流水で洗う | 建物の出入りやフンの相談は、自治体や業者へ |
コウモリを素手で触ってはいけない理由
理由は三つあります。一つ目は、野生動物がどんな病原体を持っているか分からないことです。動物由来感染症ハンドブックは、のら猫やのら犬、野生動物はどんな病原体を保有しているか分からないので、安易に触らないようにと呼びかけ、野生動物の家庭での飼育や野外での接触を避けるよう勧めています。宮城県も、野生の鳥獣は何らかの病原体を持っていることがあり、過度な心配は無用としたうえで、素手で触ることは極力避け、触った後は手洗いとうがいをするよう案内しています。
二つ目は、咬傷や引っかき傷から感染する病気があることです。FORTHは、狂犬病は噛まれたり、傷口や目や口の粘膜をなめられたり、爪で引っかかれたりして感染しうると説明しています。三つ目は、コウモリが鳥獣保護管理法の対象の野生動物で、許可なく捕獲や殺傷ができないことです。環境省は、鳥獣は原則として捕獲や殺傷が禁止されていると説明しています。救護が必要なコウモリについては、宮城県のように手袋などを使う手順を案内する窓口もありますが、手順は地域で異なるため、自己判断でつかまえず、担当窓口の指示を受けます。
室内・屋外で触らずに対応する方法
コウモリに触れずに済ませる基本は、追わない、つかまない、近づかないことです。場所ごとの対応を整理します。
室内に入ったとき
前橋市は、コウモリが部屋に入った場合の対処として、自然に出ていくのを待つこと、窓やドアを開けて放つことを案内しています。ほうきで追い回す、手でつかむ、物を投げるといった行動は避けます。具体的な手順と、見失ったときの記録は室内にコウモリが入ったときの手順にまとめています。
- 窓やドアを開けて、自然に出ていくのを待つ(前橋市)
- 人とペットを別の部屋へ移し、近づかない
- 追い回さない、手でつかまない、物を投げない
- 出たかどうかの時刻と、触れた人の有無を記録する
屋外の地面で動かないとき
宮城県は、春から秋の寒い日に、コウモリが地面に落ちて動かないことがあり、外傷や翼の異常がなければ体温が下がって動けない状態も考えられると説明しています。ただし、見た目で生死や原因は決められません。触る前に、離れて確認する点と連絡事項を地面で動かないコウモリを見つけたらで確認してください。
フンや建物の出入りがあるとき
フンも素手で触らず、乾いた粉を吸い込まないようにします。掃除の方法はコウモリのフンの特徴と掃除方法にあります。建物へ出入りしている場合の対策はコウモリが軒や換気口に出入りしているときの対策に、屋根裏の場合は屋根裏のコウモリに、法律の線引きはコウモリ駆除の法律にまとめています。
コウモリは危ない・やばいと言われる理由を、事実で整理する
「コウモリ 危ない」「コウモリ やばい」と検索される背景には、感染症への不安があります。公的資料から言えることを、被害の種類ごとに分けると、慌てずに対応しやすくなります。受傷については、咬傷や引っかき傷から感染する病気があり、傷があれば洗浄と受診が基本です。感染症の状況は、国内では狂犬病などが未発見か長期間発見されていない一方、海外ではコウモリが感染源に挙がる地域があります。
フンについては、前橋市が、海外ではフンに含まれるカビ菌を吸い込んで感染した例があると紹介し、厚生労働省のハンドブックは、乾いたフン尿を吸い込まないよう注意を呼びかけています。建物への被害では、東京都ペストコントロール協会が、天井裏に糞尿がたまると臭いや汚損の原因になり、糞がカツオブシムシ類などの発生源になる可能性があると説明しています。過度に恐れる必要はありませんが、素手で触らず、傷があれば相談する、という基本は変わりません。フンや感染症の危険性を強調して契約を急がせる説明への備え方は、コウモリ駆除の悪徳業者を避ける確認点にまとめています。
- 受傷:噛まれた、引っかかれたら、傷口を洗って早めに受診する
- 感染症:国内の状況と海外の状況は分けて考え、「国内なら大丈夫」と決めない
- フン:乾いた粉を吸い込まない。素手で触らず、掃除は別の記事の手順で行う
- 建物:臭い、汚損、害虫の発生源になるため、出入りの対策は別に進める


