野生のタヌキは何を食べる?昆虫・果実・小動物までの雑食
タヌキは、昆虫、果実、種子、草、小動物など、多くの種類を食べる雑食性の動物です。東京大学大学院新領域創成科学研究科などの研究チームは、宮城県石巻市で車との事故で死んだタヌキの歯の傷を調べ、同じ地域のため糞の分析結果と比べて、季節ごとの食べ物の変化を2026年5月に発表しました。
それによると、昆虫を多く食べる夏から初秋は歯の表面の傷が浅く、果実・種子や脊椎動物の利用が増える秋から冬は傷が深くなる傾向がありました。一年じゅう同じものを食べているのではなく、その季節に手に入りやすいものへ切り替えている、と読めます。
場所によっても食べ物は変わる
日本哺乳類学会の『哺乳類科学』に載った北海道十勝地域の研究は、38頭の胃の内容物を調べています。イネ科の草と昆虫は年間を通して見つかる割合が高く、そのほかにミミズ類や貝類、カニ類、トカゲ類、鳥類、小型の哺乳類、木の実や液果も確認されました。
同じ論文は、餌が乏しい冬には、畜舎の周りで家畜の濃厚飼料やハエの幼虫を利用している可能性にも触れています。ハエの幼虫は畜舎や堆肥場で一年じゅう発生するとされ、人の暮らしに近い場所では、人が出したものも餌になりえます。
| 食べ物の種類 | 公的資料で確認できた内容 | 出典の範囲 |
|---|---|---|
| 昆虫 | 夏から初秋に多く食べる傾向。北海道十勝の調査では、一年を通して見つかる割合が高かった | 東京大学の発表、哺乳類科学の報告 |
| 果実・種子 | 秋から冬に利用が増える傾向。十勝の調査では、サルナシやヤマブドウなどの液果や堅果が見つかった | 東京大学の発表、哺乳類科学の報告 |
| 小動物(脊椎動物) | 秋から冬に利用が増える傾向。十勝の調査では、トカゲ類、鳥類、トガリネズミ類などが見つかった | 東京大学の発表、哺乳類科学の報告 |
| 草・無脊椎動物 | 十勝の調査では、イネ科の草の出現頻度が特に高く、ミミズ類、貝類、カニ類も見つかった | 哺乳類科学の報告 |
| 人の施設にあるもの | 冬に、畜舎の周りで濃厚飼料やハエの幼虫を利用している可能性が示された | 哺乳類科学の報告 |
参考:東京大学大学院新領域創成科学研究科|歯の小さな傷からタヌキの季節ごとの食性を解明(記者発表、2026年5月28日掲載)
タヌキは野生では何を食べますか?
昆虫、果実、種子、草、小動物などを食べる雑食性です。夏から初秋は昆虫、秋から冬は果実・種子や脊椎動物が増える傾向が大学の研究で示されています。住む場所によっても食べ物は変わります。
住宅地でタヌキの餌になるもの|生ごみ・ペットフード・落果・コンポストの点検表
鹿児島市は、自宅の敷地にアナグマやタヌキが出るときの案内で、餌になる生ごみやペットフードを外に置かないこと、庭で収穫しない柿などの果樹を伐採するか小さく管理して動物の餌にしないことを挙げています。農林水産省の資料も、廃棄された野菜や果実、収穫されない果樹、無防備な田畑が野生動物の餌場になると説明しています。
農林水産省のマニュアルによると、タヌキの活動は主に夜間で、昼間にも活動することがあります。姿を見ていなくても、朝に気づく食べ散らかしや、いつの間にか減っているペットフードが手がかりになります。見かけないから餌がないとは限らないので、家のまわりを一周して、下の表で点検します。
コンポストや堆肥置き場も、生ごみや野菜くずのにおいが出る点は同じです。タヌキが家庭のコンポストで採食すると書かれた公的資料は確認できませんでしたが、北海道十勝の研究は、畜舎や堆肥場に発生するハエの幼虫を冬のタヌキが利用している可能性を挙げています。においの出るものを屋外に出しっぱなしにしない、という考え方は共通です。
| 点検する場所 | 餌になりうるもの | 見直しの例 |
|---|---|---|
| 玄関先・勝手口・ごみ置き場 | 収集日より前に出した生ごみ、破れた袋、汁の出るごみ | 自治体の収集ルールに沿って、収集日の朝に出す。容器のふたを閉める |
| ベランダ・物置・庭の隅 | 外に置いたペットフード、物置にしまった袋入りの飼料や餌 | 食事のあとに片づけ、夜は屋内にしまう。物置の戸が開かないようにする |
| 庭の果樹・落果 | 収穫しない柿などの実、落ちた果実 | 収穫するか、実を残さないよう切り詰める。落ちた実は早めに拾って処分する |
| 畑・家庭菜園 | 廃棄した野菜、傷んだ作物、収穫後の残り | 畑の隅や周りに積まず、ごみのルールに沿って処分する |
| コンポスト・堆肥置き場 | 生ごみ、野菜くず、においの出る堆肥 | ふたをして、生ごみを表に出さない。においが強いときは量を見直す |
タヌキに餌を与えてはいけない理由|自治体が案内していること
タヌキを見ると、かわいい、おなかがすいていそうだ、と思って餌を置きたくなる人もいます。しかし自治体は、野生動物のためにも地域のためにも、餌を与えないよう求めています。理由は、おもに次の3つに分けて読めます。
人に慣れて、餌を求めて集まる
藤沢市は、野生鳥獣に餌を与えると人に慣れ、本来の狩りをせず、人が与える餌を求めて集まってしまうと説明しています。集まった結果、フンや騒音などの生活被害や農作物被害が起き、個体同士で感染症が広がるおそれもあるとしています。
かわいそうだから、は理由にならない
鹿児島市は、かわいいから、かわいそうだからといって、餌は絶対に与えないよう求めています。親子連れの姿を見たときの見守り方は、タヌキの親子が庭に来るときの見守りと被害対策で整理しています。
与えるつもりがなくても餌付けになる
農林水産省の資料は、食べ物になるものを放置したまま被害を減らすことはできないと述べ、廃棄した野菜や果実、収穫しない果樹を餌場として挙げています。庭に落ちた果実や畑の残りを放置すると、与えたつもりがなくても、結果は餌付けと同じになります。
畑でサツマイモや野菜が食べられるとき|タヌキの食べ方の特徴
農林水産省のマニュアルは、タヌキは悪さをしないと思われがちで、アライグマやハクビシン、カラスの被害に隠れて見落とされやすいと述べています。畑の被害は、加害する動物によって対策が変わるため、まず痕跡から動物を絞り込みます。
農林水産省の令和6年度(2024年度)の集計では、タヌキによる農作物被害は全国で約1億5,900万円でした。内訳は、野菜が約8,300万円、果樹が約5,400万円、いも類が約650万円です。サツマイモの金額は集計表に別に示されておらず、いも類にどの作物が含まれるかまでは分かりません。
タヌキは登るのが得意ではなく、掘ることと破ることを優先する動物とされています。そのため、対策は地面に近いところから考えます。アライグマやハクビシンも畑を荒らすため、見分けにはアライグマ・タヌキ・ハクビシン・アナグマの4種早見表も役立ちます。
| 畑で見つかる痕跡 | タヌキを疑う手がかり | 見るときの注意 |
|---|---|---|
| 食べ散らかし | 被害の現場が散らかる。噛み癖があり、食べ方が荒っぽい | 一つの痕跡だけで決めず、複数の手がかりを合わせる |
| 作物が運ばれている | 作物がどこかへ運ばれて食べられていれば、決定的な手がかりとされる。運ぶ場所は決まっていない | 畑の外の草むらや、周りの場所も探す |
| 枝やツルの傷み | 地際の枝が折れる、ツルが引っ張られる。噛み癖が原因とされる | 風や作業で折れたものと区別する |
| 足跡 | 指の跡が4本で、爪が目立つ。マルチや除草シートの上だと確認しやすい | 指が4本でない足跡なら、別の動物を疑う |
| ため糞 | 生活エリアの境界に作られ、農地に作られることもある。掃除してもすぐ作られる | 場所と数を写真に残す |
ごみ・ペットフード・落果を管理する順番
餌の管理は、全部を一度に完璧にしようとすると続きません。農林水産省は、野生動物が増え続ける原因のひとつが地域にある食べ物だと述べ、無意識に食べ物を放置して餌場になっている事実を、地域全体で共有して動くことが必要だとしています。まず、家の周りでいちばん手に入りやすい餌から片づけます。
毎日:屋外の食べ物
ペットフードの食べ残し、生ごみ、食べ物の入った袋を屋外に置いたままにしないことが最初の一歩です。収集日の前の夜に出していないか、容器のふたが開いたままになっていないかも確認します。ごみの出し方は自治体のルールに従います。
- ペットの食事は短時間で片づけ、夜は屋内にしまう
- 生ごみは収集日の朝に出し、容器のふたが閉まっているか確かめる
季節ごと:果樹と落果
収穫しない柿などの果樹は、実を残さない、または切り詰めて管理します。管理しきれない木は、伐採も選択肢だと鹿児島市は案内しています。落ちた果実は、拾って処分します。
- 実が熟す時期は、落ちた果実をこまめに拾う
- 収穫しない木は、実を残さないか、切り詰めを検討する
作業のたび:畑の残さ
廃棄する野菜や傷んだ作物、収穫後の残りを、畑の隅や周りに積んだままにしません。農林水産省は、野生動物が身近になった今は、残さの管理までが栽培技術だと述べています。
- 収穫後の残さは、畑に放置せず処分する
- 傷んだ作物を畑の外に捨てない
餌を断っても居着くとき|床下や物置の下を確認する
餌を片づけたのに、フンや足音、においが続くときは、休む場所に居着いている可能性があります。農林水産省のマニュアルによると、タヌキの休息場所は、神社仏閣や空き家など建物の床下や、キツネやアナグマが掘った古い巣穴です。鹿児島市も、床下や物置の下など住み着きそうな場所と、侵入できる穴をしっかりふさぐよう案内しています。
農林水産省は、中型の動物の侵入は床下の通風口からが最も多く、軒の破損や瓦屋根のすき間、増築部分の継ぎ目も狙われると説明しています。侵入口を見つけても、すぐに塞ぐのではなく、中にいないことを確認してから、金属や板など丈夫な資材で塞ぎます。樹脂ネットや薄い合板は壊されるおそれがあるとされています。床下や物置の侵入防止で業者を比べる項目は、タヌキ・アナグマの駆除を業者に頼むときの確認点で整理しています。
床下は狭く暗い場所で、無理に潜ると転倒や接触の危険があります。物音や痕跡は、床下周辺の物音や痕跡を調査へ渡す方法を参考に、位置と時間帯を記録して伝えると相談が進みやすくなります。ためフンや床下への出入りの考え方は、タヌキが庭に来るときにまとめています。
自分でできる範囲|捕獲は許可が必要で、餌でおびき寄せない
鹿児島市は、アナグマやタヌキなどの野生動物は鳥獣保護管理法で保護されており、許可なく捕獲できず、市でも捕獲や駆除は行っていないと案内しています。自治体によって窓口や制度は違うため、被害が続くときは、お住まいの自治体の鳥獣担当に、許可の手続きや相談先を確認してください。許可や免許の違いは、害獣の罠に資格は必要かで整理しています。
- 自分でできる:餌の片づけ、侵入口の確認、足跡や食べ跡の記録、自治体への相談
- 許可や専門知識が必要:捕獲、床下に入っての作業、侵入口をふさぐ工事
- 避ける:餌を与える、素手で触る、毒餌や薬剤を独自に混ぜて使う




