スズメの巣を勝手に撤去できない場合:卵・ヒナの有無で変わる法律上の線引き
大阪府は、野鳥の巣を撤去する前に、必ず巣の中を確認するよう案内しています。卵やヒナがいない場合は撤去できます。卵やヒナがいる場合は撤去できず、撤去によって卵やヒナを損傷・殺傷することが明らかなときは、許可がなければ法に抵触するおそれがあるため、巣立ちまで見守り、巣立ち後に撤去するとしています。
熊本市と京都市も、卵やヒナがない巣は許可なく撤去でき、卵やヒナがある巣は巣立ちを待つよう案内しています。スズメが小さな鳥でも、卵とヒナの扱いは同じです。次の表は、巣の状態ごとに、法律上できること、市役所に相談できること、業者に頼む作業の例を並べたものです。卵やヒナのいる巣を取り除く手順は、この記事では扱いません。
| 巣の状態 | 法律上できること | 市役所に相談できること | 業者に頼む作業の例 |
|---|---|---|---|
| 巣材だけで、卵もヒナもいない(作り始め・空の巣) | 許可なく撤去できる(中を確認できることが前提) | 撤去の可否の確認、ごみの出し方、許可が不要な範囲の確認 | 高所の巣材の撤去、清掃、すき間の補修 |
| 卵やヒナがいる | 無許可での撤去や卵の採取はできない。巣立ちを待つ | 許可が必要かどうか、申請先。許可の基準は自治体で違う | 許可を受けた者による作業、または巣立ち後の作業の見積もり |
| 巣立ち後で、巣が空だと確認できた | 巣の撤去に許可は不要 | 空の巣の処分方法、再び巣を作らせない助言 | 巣材の撤去、清掃、ダニ対策、侵入口の補修 |
| 中が見えない(屋根の奥、換気口の奥) | 空と決めない。確認できるまで作業しない | 確認方法や窓口の相談 | 点検口やカメラなどで、巣の有無を調べる調査 |
スズメの巣は、勝手に撤去してもいいですか?
卵やヒナがいない巣は、許可なく撤去できます。卵やヒナがいる場合は鳥獣保護管理法の許可が必要で、巣立ちを待って撤去するのが自治体の基本的な案内です。巣の中が見えない場合は、空とは判断しません。
撤去できる時期の判断:スズメの繁殖期と巣立ちの確認方法
バードリサーチの生態図鑑によると、スズメの繁殖期は4〜8月で、人家の軒や瓦の間、樹洞のほか、電柱の穴や換気口などにも営巣し、繁殖期の間に2〜3回繁殖します。卵は1日1個ずつ産まれ、一腹卵数は4〜7個、抱卵期間は12日、育雛期間は14日で、巣立ち後も10日ほどは親鳥の給餌を受けるとされています。京都市の相談Q&Aも、卵を抱く期間約12日、ヒナを育てる期間約14日、合計約28日としています。
巣立ちの確認のしかた
確認は、巣の入口から離れた地上から、日を変えて行います。巣材や餌を運ぶ姿、ヒナの声、親鳥の出入りが見られなくなったかを記録します。ただし、声が止まったことや親鳥が見えなくなったことだけでは、巣が空という証拠にはなりません。巣立ち後も給餌が続くため、巣の周りに親子が見えても中は空のことがあり、静かでも中が見えていないだけのこともあります。
- 同じ入口への出入りが、数日続けて見られない
- 巣材や餌を運ぶ姿が見られない
- 中をのぞける巣では、卵もヒナもいないことを、離れた位置から確認できた
- 中が見えない場所は『未確認』として、調査を相談する
日付だけで決めない
「見つけてから28日たったから」と日付で決めず、確認できた事実で判断します。繁殖の進み方には差があり、資料でも数字が少しずつ違います。屋根の奥や換気口の奥など、中が見えない場所は、点検口やカメラで確認できる業者に、確認の方法を相談してください。
| 段階 | 目安 | 撤去の可否の考え方 |
|---|---|---|
| 巣作り | 繁殖期は4〜8月。軒や瓦の間、換気口などを使う | 卵がないと確認できれば撤去できる |
| 産卵 | 1日1個ずつ、4〜7個 | 卵があれば撤去できない |
| 抱卵 | 約12日 | 卵があれば撤去できない |
| 育雛 | 約14日 | ヒナがいれば撤去できない |
| 巣立ち後 | 親鳥の給餌が約10日続く | 巣の周りに親子が見えても、巣の中が空かどうかは別に確認する |
| 次の繁殖 | 繁殖期の間に2〜3回 | 空に見えても、4〜8月は次の産卵の可能性があるため、撤去の直前に再確認する |
スズメの巣の撤去で、市役所に相談できること・できないこと
確認した自治体では、スズメなど野鳥の巣を撤去する作業を行わないと案内する例が目立ちます。大阪府は、生活や業務の支障になる巣について、撤去は行っていないと答えています。浦安市は、私有地内の巣の撤去は市では行えず、所有者が行うか専門業者に依頼するとしています。西東京市は、市では撤去と費用負担を実施していないとしています。
一方で、許可の相談や、鳥の種類ごとの扱いは、自治体が窓口になります。許可の基準は自治体で違い、熊本市は、市が捕獲許可できる鳥類にスズメを挙げています。西東京市は、巣にヒナや卵がある場合、カラス・ドバト・ムクドリは東京都の鳥獣捕獲許可が必要とし、それ以外の野鳥は、農業被害を除いて、ヒナが巣立つまで撤去できないと案内しています。同じスズメでも、お住まいの自治体で扱いが変わる可能性があります。
電話するときは、巣の場所(屋根・換気口など)、卵やヒナの有無(不明を含む)、写真、困っている内容(フン・音・ダニ)、管理者を伝えます。「スズメの巣の駆除を頼みたい」と切り出すより、「許可が必要か、巣立ち後はどうするか」を聞く形にすると、話が進みます。卵やヒナのある巣の確認の仕方は、巣に卵やヒナがあるときに管理者と自治体へ確認することにもあります。
| 自治体(確認日 2026年10月3日) | 行わないと案内していること | 相談できること・案内されていること |
|---|---|---|
| 大阪府(2022年1月24日更新) | 巣の撤去は行っていない | 巣の中を確認し、卵やヒナがなければ撤去できる。いる場合は巣立ち後に撤去する。問い合わせ先は地域ごとの農と緑の総合事務所など |
| 熊本市(2026年3月12日更新) | 捕獲した鳥類の処理は個人の責任 | 許可できる鳥類にスズメを含む。許可証の発行まで1週間〜10日程度。捕獲せず追い払うだけなら許可は不要 |
| 西東京市(2024年5月22日更新) | 撤去と費用負担は実施していない | 巣が空なら誰でも撤去できる。ムクドリ・ドバト・カラス以外は、農業被害を除き、ヒナが巣立つまで撤去できない |
| 浦安市(2024年7月2日更新) | 私有地内の巣の撤去は行えない | 空の巣は取り外してごみとして処分できる。卵や幼鳥がいる場合は、許可を受けた事業者などが作業する |
スズメの巣の撤去を業者に頼む作業範囲と、料金表示の読み方
料金を見る前に、作業範囲を分けます。スズメの巣の撤去を頼むと、巣材の撤去、清掃、ダニなどの消毒、侵入口の補修、再発防止の防鳥と、複数の作業が入ることがあります。ここでは独自の相場は示さず、事業者の公式ページに載っている料金表示を、確認日つきで2例だけ、読み方の材料として挙げます。特定の事業者をすすめる意図はありません。
例1:作業項目ごとに単位つきで料金を表示しているページ
小池害虫害獣駆除事務所株式会社の野鳥の巣対策のページ(2026年10月3日確認、ページ上の更新日の表示は2026年5月10日)は、料金表を項目ごとに単位つきで載せています。巣撤去・清掃は1㎡ごとに4,500円、侵入口塞ぎ(10cm×10cm以内)は1か所ごとに1,500円、天井点検口の新設は1個ごとに12,000円と表示され、雑菌消毒やノミ・ダニ消毒は、面積の区分ごとに1㎡あたりの単価が示されています。別に、諸経費として合計金額の10%が表示されています。
同じページは、戸袋鳥対策工事を、1か所の場合は消費税込みで82,500円、2か所の場合は99,000円と表示しています。料金表の各項目は、税込か税抜かが表に書かれていないため、見積書で確認が要ります。また、卵やヒナのある巣の扱いは、確認した料金ページには書かれていませんでした。
例2:撤去のみの価格と、対象外の条件を分けて表示しているページ
「イエコマ」の鳥の巣撤去のページ(2026年10月3日確認)は、定価として1か所8,800円(税込)、2か所目以降は1か所ごとに1,650円を加算し、別に出張料3,300円と表示しています。初めて利用する人向けの初回体験価格として、1か所6,600円(税込)、2か所目以降は1,100円加算、出張料無料とも表示しています。
同じページの注記には、賃貸物件や集合住宅は受け付けない、作業は居住部分に限る、ダニやノミの駆除・消毒は行わない、巣の中に卵やヒナがある場合は受けられない、作業で出たごみは回収しない、開口工事が必要な場合は別途料金、といった条件が並んでいます。価格だけを見ると、含まれる作業と対象の違いが分かりません。二つの表示は、作業範囲も対象も違うため、金額を横に並べて比べることはできません。見積もりの一式を作業ごとに分けて読む方法は、害獣駆除の見積もりの内訳の読み方にまとめています。次の表で見る点をそろえ、そのあとの項目を見積もりで確かめてください。
| 見る点 | 例1:小池害虫害獣駆除事務所のページ | 例2:イエコマのページ |
|---|---|---|
| 料金の単位 | 項目ごとに1㎡・1か所・1個。戸袋工事は1か所・2か所の額を表示 | 1か所ごと。2か所目以降は加算 |
| 税の表示 | 戸袋工事は税込額を表示。料金表の項目は税の別が書かれていない | 税込と表示 |
| 含まれる作業 | 巣撤去・清掃、消毒、侵入口塞ぎ、点検口の新設などが別の項目 | 巣の撤去。ダニ・ノミの駆除や消毒は行わないと表示 |
| 追加・別料金 | 諸経費として合計金額の10% | 定価では出張料。開口工事は別途料金 |
| 対象外・受付の条件 | 卵やヒナの扱いは料金ページに記載なし | 賃貸・集合住宅は不可。卵やヒナのある巣は不可 |
- 巣材の撤去・清掃・消毒・補修・ごみの処分が、見積書で別々の項目になっているか
- 卵やヒナがある巣の場合の扱いと、許可を誰が受けるのか
- ダニ対策が含まれるか、含まれないなら誰がするのか
- 再発したときの対応と、保証の条件・期間
賃貸・アパート・マンションでスズメの巣を見つけたときの連絡先
賃貸のアパートやマンションでは、巣を撤去する権限が入居者にあるとは限りません。堺市は、巣の撤去は原則その敷地の管理者が行うと案内しています。国土交通省のマンション管理のQ&Aは、バルコニーなどに専用使用権が設定されることがあるものの、どの部分に設定されているかはマンションごとに異なり、管理規約で確認するよう説明しています。京都市も、ベランダの鳥対策について、集合住宅の場合は管理組合や管理会社に相談するよう案内しています。
イエコマのページが賃貸物件や集合住宅を受け付けないと表示していたように、業者によって、受けられる建物の種類が違います。連絡の順番は、管理会社や管理組合、その承諾を得たうえで業者、許可の相談は市区町村、という流れです。賃貸での連絡の考え方は、賃貸で害獣被害が起きたとき、管理会社へ伝えることも参考になります。立場ごとの連絡先は、次のとおりです。
- 賃貸:管理会社または貸主に、巣の場所・写真・日付を連絡する。撤去や防鳥ネットの設置は、承諾を得てから進める
- 分譲マンション:管理会社と管理組合に連絡し、専用使用権の範囲を管理規約で確認する
- 戸建て:自分が管理者。許可の確認は、市区町村の鳥獣担当に相談する
- 屋根・換気口・外壁など、外から見えにくい部分:建物全体の管理者の判断を求める
スズメの巣の撤去後のダニ対策と掃除
豊島区は、トリサシダニは鳥に寄生し、人も吸血するダニで、スズメやムクドリなどが軒下・雨戸・換気扇・ベランダ・屋根瓦のすき間に巣を作ることがあり、ヒナが巣立って空き巣になると、5〜7月にダニが這い出して人を吸血すると説明しています。体長は約0.7〜1mmで、イエダニに似ているとされています。
同じ区は、駆除の方法として、巣の除去と、周辺へのゴキブリ用エアゾールの散布を挙げています。殺虫剤の濃度や使い方は、製品の表示に従ってください。撤去後に、室内で小さな虫に刺されるときは、虫の種類を確認することが先で、症状は医療機関に相談します。詳しい整理は野鳥の巣の近くから小さなダニにあります。
ダニを疑うときの記録
虫が出た場所と日付が分かると、巣の位置との関係を調べやすくなります。虫を潰すと特徴が分かりにくくなるため、採取できる場合は、形を保ったまま保管して、相談先に見せます。
- 虫が出た部屋・窓・日付
- 巣があった位置(軒下、換気口、屋根のすき間など)
- 虫の写真、または形を保った採取物
スズメに再び巣を作らせないための補修:すき間の確認と侵入口
スズメが巣にしやすい場所は、バードリサーチの資料では、軒や瓦の間、樹洞、電柱の穴、換気口、巣箱などです。補修は、巣材を取り除いたあとに行います。熊本市は、巣の撤去後に、再び巣を作られないよう対処することを求め、大阪府は、巣を造られたくない場所には、野鳥が侵入できないようにあらかじめ対策するよう案内しています。
補修の順序は、スズメが屋根のすき間に巣を作ったときの補修で、侵入口を塞ぐ時期の考え方は害獣の侵入口はいつ塞ぐかで確認できます。補修では、鳥が入れない大きさにすることと、換気や排水に必要な開口を塞がないことの両立が要ります。京都市は、ベランダの防鳥ネットの網目を、スズメなども防ぎたい場合は2.5cm以下としています。穴の大きさや材料は、屋根や換気設備の担当者と一緒に確認してください。
点検する場所の例
次の場所は、小池害虫害獣駆除事務所の料金ページが、野鳥の営巣の施工例として挙げているものです。公的資料の一覧ではありませんが、点検の候補を考えるときの手がかりになります。
- 戸袋、ソーラーパネルの下、エアコンダクトの穴
- 換気扇、天井裏
- 瓦のすき間、軒天、屋根の合わせ目





