アライグマが畑で食べるもの|狙われやすい作物と被害の出る時期

環境省の手引きは、アライグマを夜行性で、果実、野菜、穀類、小動物、昆虫などを食べる雑食性の動物と説明しています。夏は動物質、秋は植物質を多く食べる傾向があるとされ、農作物では甘みがあって汁気の多いものを特に好みます。そのため、スイカやブドウなどの果実類とトウモロコシで被害が多く出ます。メロンも被害作物として挙げられています。

被害が出るのは、作物が熟す頃です。環境省の手引きは、アライグマは作物が熟すまでは食べない傾向があるため、電気柵などの対策は、被害が生じる前から収穫の終了までの短い期間で足りるとしています。畜舎や鶏舎に入って飼料を食い荒らしたり、牧草のロールパックを破いたりする被害も、同じ資料に載っています。

アライグマが畑で食べるもの|狙われやすい作物と被害の出る時期:確認項目
作物・場所資料に載っている被害の出方見るときのポイント
スイカ前肢でくりぬくように中身だけを食べ、直径5〜6cmの穴が開く(農林水産省)。丸い穴をあけて中身を掻き出す(環境省)穴の大きさと形、皮が残っているか
トウモロコシ茎を倒し、実は両手で皮をむいてきれいに食べる(環境省)倒れた茎の向きと、皮のむかれ方
ブドウ袋掛けしたものは裂いたように破れ、前肢で触れた跡が汚れとして残る(農林水産省)。袋に泥が付き、皮は残さず食べる(環境省)袋の破れ方と、泥や手の形の汚れ
果樹(ブルーベリー・サクランボなど)木の上での動きが乱暴で枝折れが起き、長期間ダメージが残る(農林水産省)折れた枝の位置と高さ
畜舎・鶏舎・牧草飼料を食い荒らす、牧草のロールパックを破く(環境省)出入りした隙間があるか

参考:環境省|アライグマ防除の手引き(地域から構築する効果的な防除、2025年改訂版)

読者の疑問

アライグマは畑で何を食べますか?

比較ガイド

果実、野菜、穀類、小動物、昆虫などを食べる雑食性です。農作物では甘く汁気の多いものを好み、スイカ、ブドウ、トウモロコシ、メロンで被害が多く出ると環境省の手引きは説明しています。

アライグマの食べ跡の特徴|ハクビシン・タヌキ・カラスとの違い

食べ跡は、作物と食べ方の組み合わせで見ます。農林水産省の中型獣類マニュアルは、被害の様子から動物を見分ける図で、トウモロコシとスイカの食べ方を動物別に並べています。アライグマは前肢を手のように使えるため、皮をむく、中身をくりぬくといった食べ方になり、スイカをくり抜く食べ方ができるのは前肢を手のように使えるアライグマだけだと、同じマニュアルは述べています。

環境省九州地方環境事務所のパンフレットは、ミカンやスイカでアライグマとカラスを比べています。アライグマは皮を器用にむき、スイカには穴を開けて前肢で中身をくり抜きます。カラスの場合は、つつき跡が残り、皮の内側に身が残りやすいとされています。

下の表は、農林水産省の中型獣類マニュアルと環境省九州地方環境事務所のパンフレットから、食べ方の違いを並べたものです。資料に載っていない欄は「記載なし」としています。同じ畑に複数の動物が来ることもあり、栃木県のマニュアルは、アライグマとハクビシンの被害は見分けがつかないこともあるとしています。写真に残すときは、環境省九州地方環境事務所のパンフレットが勧めるように、定規、ボールペン、タバコの箱など、大きさの比較ができる物を横に置きます。足跡の見分け方は、アライグマの足跡の撮り方と見分けの限界にまとめています。

アライグマの食べ跡の特徴|ハクビシン・タヌキ・カラスとの違い:確認項目
見るものアライグマハクビシンタヌキアナグマ・カラス
トウモロコシ根本から倒してきれいに食べる斜めに倒してきれいに食べる地面に着いた方は食べない。作物を運んで食べ、現場が散らかるアナグマは根元を掘って倒す
スイカ上部に穴を開けて中をくり抜く大きな穴を開けて頭を突っ込んで食べるバラバラにして食べるカラスは皮や内側につつき跡が残る
ブドウ・ミカン・ナシなどブドウは袋を裂き、前肢の汚れが付く。ミカンは皮を器用にむくブドウは皮だけ吐き出す。ミカンやナシは枝先近くで、実をお尻の方から食べる記載なしカラスはつつき跡が残り、皮の内側に身が残りやすい
足跡指は5本で長く、前足は子供の手形のような形指は5本で丸く、肉球が分厚く、爪は小さい指は4本で爪が目立つアナグマは長く鋭い5本のかぎ爪を持つ

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

電気柵・防獣ネットの基本構造|登る動物に合わせた3つの型

農林水産省の中型獣類マニュアルは、侵入防止柵の基本は「相手を知る」ことだとして、動物の侵入行動を「掘る」「登る」「破く」に分けています。柵に最初に行う行動が優先行動で、何度でも繰り返すとされます。アライグマは登ることを優先する動物のため、地面近くを囲う物理柵だけでは足りず、柵は物理柵、電気柵、両者を組み合わせた複合柵の3つに分けて考えます。

ネットだけの柵が通用しない理由

物理柵は、障害物の面で侵入を防ぐ柵で、タヌキ、キツネ、アナグマのように掘る、破く動物が対象です。登ることを優先するアライグマ、ハクビシン、テンには効果が期待できないと、農林水産省は明記しています。ネット柵は安価で簡易ですが強度に不安があり、ほつれや穴をすぐ補修しないと広げられて侵入されます。

段張り電気柵|10cm間隔と地面の処理

電気柵は、電気ショックで痛みを記憶させる心理柵です。環境省の手引きは、アライグマが10cm以上の隙間があれば侵入できるため、地上から10cm間隔で4段に張るよう示しています。農林水産省も、中型動物では間隔を10cm以下、種によっては5cmにしなければ物理的な障害にならないとし、イノシシ用の20cmでは広すぎると述べています。地面にくぼみがあると潜られるので、支柱を増やすか、あらかじめ地ならしをします。

電線が低い位置になるため草が触れて漏電しやすく、環境省の手引きは、張ったあとも定期的に草刈りを行うよう求めています。

複合柵|下をふさぎ、上部に電線を張る

複合柵は、物理柵の面と電線を組み合わせ、段張り方式の弱点である空間と漏電のリスクを補う型です。登る種には上部、掘る・噛む種には下部、両方が疑われるときは両方に電線を設置します。環境省の手引きは、アライグマ向けに、金属柵などで下部をふさいで上部(高さ約40cm)に電線を張る複合柵を示しています。農林水産省は、この高さ約40cmの方式について、通電部分が高い位置にあるため漏電のリスクが軽く、収穫時にピンポイントで使えるのも利点としています。

電気柵・防獣ネットの基本構造|登る動物に合わせた3つの型:確認項目
柵の型仕組みアライグマへの向き不向き注意点
物理柵(ネット・金属柵)障害物の面で侵入を防ぐ。掘る動物向けの基準は、目合い5cm以下・高さ1m以上・裾の固定登る動物には効果が期待できない(農林水産省)ネット柵は強度に不安があり、穴はすぐ補修する
段張り電気柵電気ショックで学習させる。地上から電線を数段張る地上から10cm間隔で4段(環境省)草の接触で漏電しやすい。くぼみには支柱を足す
複合柵物理柵で面を作り、登る動物には上部に電線を張る下をふさぎ、高さ約40cmに電線(環境省)。棚上設置方式もある隙間は物理的な資材で埋める。電線は高い位置なので漏電しにくい

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編 3-2 侵入防止対策(PDF)

楽落くん方式の設置の要点|埼玉県の設置マニュアルから

埼玉県農業技術研究センターが開発した「楽落くん」は、アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等の中型獣に加え、イノシシによる被害を防ぐ電気柵の設置方法です。市販のネット、支柱、電気柵の資材で設置でき、スイートコーンやイチゴ、スイカなど被害が集中する収穫期に使う簡易な電気柵と説明されています。中型獣が障害物を飛び越える行動と乗り越える行動の境が35cmの高さにあることを利用し、迷った動物に柵の上の通電線へ鼻先を触れさせて感電させる仕組みです。

下の表は、マニュアルが示す数値と理由です。製品の説明書がある場合は、説明書の指示を優先し、電気の取り扱いに不安があるときは、購入先や市町村の農政担当に確認してください。

楽落くん方式の設置の要点|埼玉県の設置マニュアルから:確認項目
項目マニュアルの記載理由
柵と作物の距離50cm以上離す柵と餌になる作物が近いと、中に入ろうとする行動が強まる
ネットと通電線の間隔5cm。結束バンドで固定する5cmより広いと、隙間にもぐりこまれる
地面から通電線までの高さ38cmが理想飛び越えるか乗り越えるか迷う高さにする
地面とネットの隙間整地して、土寄せで埋める。柵の内外の両方が理想隙間があると潜り込まれる
電気柵本体柵の内側に設置する動物の足場にならないようにする
排水管・排水溝5cm以上の隙間があると侵入のおそれ。裾をUピンで固定する方法もある柵の内側につながる経路ができる

参考:埼玉県農業技術研究センター|楽落くん設置マニュアル Ver3.0(2021年3月改訂、PDF)

電気柵の安全上の決まり|危険表示・電源装置・漏電遮断器

農林水産省は、鳥獣被害防止のために設置された電気さくに起因する死傷事案が発生したとして、電気事業法に基づく技術基準で、感電防止の措置を講じる必要があると注意喚起しています。家庭菜園や小さな畑でも、人や子ども、ペットが触れるおそれがあるため、柵の張り方だけでなく、次の項目を設置前に確認してください。

この注意喚起が挙げているのは、感電を防ぐための設備面の項目です。運用面では、埼玉県の設置マニュアルが、設置した日のうちに通電し、片づける日まで24時間通電するよう求めています。昼夜切り替えにすると、動物の侵入時に通電していないことがあり、電池切れにも注意が必要です。

電気柵の安全上の決まり|危険表示・電源装置・漏電遮断器:確認項目
項目農林水産省の注意喚起の内容
危険表示電気さくを設置した場所に、人が見やすいように適当な間隔で、危険である旨を表示する
電源装置電気用品安全法の適用を受ける電気さく用電源装置。または、出力電流が制限された電気さく用電源装置で、電気用品安全法の適用を受ける直流電源装置や、蓄電池・太陽電池などの直流電源から電気を受けるもの
漏電遮断器使用電圧30ボルト以上の電源から電気を受け、人が容易に立ち入る場所に設置する場合は、電流動作型で、定格感度電流15ミリアンペア以下、動作時間0.1秒以下のものを設置する
開閉器電気を供給する電路に、容易に開閉できる箇所で、専用の開閉器を設置する

参考:農林水産省|鳥獣による農作物等の被害の防止に係る電気さく施設における安全確保について

果樹・ブドウ棚での対策|登る前提で、上部から感電させる

アライグマは前肢を手のように使い、細い枝を垂直に登ることもできます。農林水産省は、この木登りの能力が、果樹の被害や家屋への侵入が広がっている大きな原因だと説明しています。ブドウの袋が裂かれる、枝が折れるといった被害も、その表れです。同省が紹介する棚上設置方式は、金属の棚や組み立てた直管パイプの支柱をアース側にして、侵入するときに通る上部に電線を張り、登らせて感電させる方式です。アライグマ、ハクビシン、テンなど、登ることを優先する動物に対応します。

金属フェンスと、アナグマの注意

金属製のフェンスは全面がアースになるので、上部に電気さく線を足せば対応できると、同じ資料にあります。目合いは抜けられない5cm以下にします。アナグマは、慣れれば金網柵を上り下りでき、ブドウ棚に登って食べた報告もあるため、「登れない動物」という思い込みは危険と書かれています。

樹高のある果樹と庭木

樹高のある果樹全体を囲う具体的な構造は、今回確認した公的資料には載っていませんでした。庭木や果樹園の木の周りの対策は、地域の農業の普及指導機関や市町村の農林担当に、近くで実績のある方法を確認してください。使っていない果樹は、伐採も選択肢になります。庭先で実を食べられるときは、ハクビシンに庭の果実を食べられる場合の手順も参考になります。

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編 3-2 侵入防止対策(PDF)

収穫残さ・放任果樹・廃棄物の管理|畑を餌場にしない

農林水産省の中型獣類マニュアルは、廃棄された野菜や果実、放任果樹、無防備な田畑が、野生動物の餌場になっていると指摘しています。野生動物が身近になった今は、残さの管理までが栽培技術だと述べ、地域全体で共有して行動するよう求めています。収穫しない柿は食べ物を長期間提供し、廃棄したブドウは最高の栄養源になる、スイカは潰さなければ長期間の栄養源になる、と写真の説明に書かれています。

栃木県のマニュアルも、餌付けをしない、くず野菜や生ごみ、ペットの餌、お供えを放置しない、取り残しの果実や野菜は早めに除去する、と案内しています。畑だけでなく、庭先に置いたペットフードも対象です。外置きの餌の扱いは、外置きの餌とアライグマで整理しています。

  • 傷んだ果実や形の悪い野菜を、畑の隅や林に捨てない
  • 収穫しない果樹の実を残さない。使っていない木は伐採を検討する
  • ペットの餌、生ごみ、お供えを屋外に置いたままにしない
  • 物置や空き家など、ねぐらになる建物の通風口や軒の破損を点検する

参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等、令和6年3月版)

柵を張っても被害が続くときの相談先|市町村の農林担当

環境省九州地方環境事務所のパンフレットは、屋外で柵や網だけで農作物をアライグマから守ることは困難で、捕獲と並行した対策が必要だとしています。アライグマは特定外来生物で、環境省の手引きによると、捕獲は鳥獣保護管理法に基づく許可捕獲か、外来生物法に基づく防除のどちらかで進めます。被害が続くときは、柵を足す前に、市町村の農林担当(鳥獣被害対策の担当)へ相談してください。

農林水産省は、市町村が作る被害防止計画の様式と、計画を作成した市町村や、被害対策の実施隊を置く市町村の一覧を案内しています。お住まいの市町村の取り組みと、農林担当の窓口を探す手がかりになります。自分でわなを置く場合は、許可や、防除計画の従事者としての手続きが必要です。捕まえた個体を運ぶ、飼う、別の場所で放すことは、外来生物法で原則禁止されています。アライグマ駆除の法律と許可で線引きを確認できます。和歌山県の例は、農作物支援と住宅の生活被害の窓口の分け方にあります。

  • 被害のあった作物と日付、食べ跡や足跡の写真(定規を横に置く)
  • 柵の構造、設置日、通電の状況
  • 近所の畑や果樹でも被害が出ているか
  • 建物の屋根裏や倉庫にも出入りしている様子があるか

参考:農林水産省|被害防止計画・鳥獣被害防止対策実施隊