アライグマ対策グッズの仕分け表|製品表示と公的資料の記載で分ける
忌避剤、蚊取り線香、ラジオ、殺鼠剤など、アライグマ対策として紹介されるものは、「製品の表示がその用途か」と「公的資料に効果の記載があるか」の2点で仕分けると、迷いが減ります。次の表は、今回開いた製品ページと公的資料の記載を並べたものです。製品の表示は2026年10月3日に確認した内容で、変更されることがあります。
農林水産省の鳥獣被害防止マニュアル(総合対策編)のコラムは、ホームセンターなどで売られる、鳥獣が嫌うと考えられるにおいや成分を使った資材は、公的機関で効果を検証したものではなく、置くだけで周辺の野生鳥獣を忌避する資材で明確な効果が得られるものはないと述べています。ただし、このコラムはイノシシとシカを例にした説明で、アライグマだけを対象に検証した結果ではありません。
| 手段 | 製品表示の対象 | 公的資料の記載 | この記事での仕分け |
|---|---|---|---|
| におい系の忌避剤(スプレー・ゲル・粒剤など) | 製品ごとに違う。確認した屋根裏用の製品はネズミ向けで、アライグマを挙げていたのは屋外用の製品 | 東京都は、追い出せる可能性はあるが別の家へ移るだけと説明。農林水産省は、置くだけの資材は公的機関で効果を検証していないとする | 補助として使うなら、表示の対象と使用場所を守る。単独の解決にはならない |
| くん煙剤 | 適用害虫や使用場所が、製品ごとに決まっている | 東京都は、密閉空間でないと煙が行き渡らないとする。横浜市は、屋根裏から追い出す方法として案内している | 表示を確かめ、案内が分かれる点は窓口に確認する |
| 蚊取り線香 | 蚊の成虫の駆除、忌避、侵入阻止(金鳥の渦巻の表示) | アライグマへの効果を述べた資料は、今回確認できなかった | 表示にない用途。火気の面からも、屋根裏や床下には置かない |
| ラジオ・音・光 | 機器ごとに違う | 光や音は慣れが生じ、効果がないか一時的(農林水産省)。アライグマでの検証は、今回確認できなかった | 単独では続きにくい。使う期間を限り、他の対策と組み合わせる |
| 殺鼠剤・毒餌 | ネズミの駆除(製品ページの表示) | 毒薬を使う猟法は、鳥獣保護管理法第36条で禁止 | アライグマには使えない |
参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 総合対策編(令和5年3月版、PDF)
アライグマに蚊取り線香は効きますか?
KINCHO「金鳥の渦巻」の製品ページの効能は、蚊の成虫の駆除、忌避、侵入阻止で、アライグマは含まれません。アライグマへの効果を述べた公的資料は確認できませんでした。燃えやすい物のそばでは使えないため、屋根裏などには置かないでください。
市販の忌避剤は何を見て選ぶ?対象動物・使用場所・効果の目安
製品を選ぶときは、箱や公式ページの表示で、対象動物、使用する場所、効果の目安、人やペットへの注意を確認します。次の表は、公式ページに掲載された表示の例です。製品を比べて勧めるものではなく、表示の読み方を示すための例で、掲載は2026年10月3日に確認しました。
表の例では、屋根裏や床下で使う製品の対象はネズミで、アライグマの記載があったのは屋外用の製品でした。アライグマと書かれていても、使う場所、効果の目安の日数、人やペットが触れない場所かを先に確かめます。表示にない使い方や、混ぜる、薄めるといった独自の使い方はしません。
| 製品の例 | 表示されている用途・対象 | 使用場所と注意の例 |
|---|---|---|
| アース製薬「ネズミのみはり番 追い出しジェット 420mL」 | 用途は「ネズミの忌避(ネズミの追い出し・定着防止)」 | 屋根裏・天井裏、床下・通風口。ニオイに慣れたネズミなど、個体差によっては効果が出にくい場合があると記載 |
| イカリ消毒「ねずみがいやがるスプレー」 | 適用害虫/害獣は「ネズミ」。用途は屋根裏・床下でのネズミの追い出しと侵入防止 | 屋根裏・床下専用で、室内では使用しない。においが強く、周囲に長時間残る場合があると記載 |
| カインズ「まくだけカンタン動物忌避材」(販売ページ) | 屋外の動物忌避材。モグラ、ネズミ、アライグマ、ウサギ、ハクビシン等を、唐辛子エキス(カプサイシン)により寄せ付けない、との表示 | 畑や庭などの屋外。連続使用時間は約1.5カ月。作業時は手袋、マスク、保護メガネを着用するとの記載 |
忌避剤は一時的?東京都・農林水産省・自治体の説明
忌避剤は、使った直後の変化だけでは、効果を判断しにくい対策です。公的資料が何を述べているかを、東京都、農林水産省、自治体の順に確認します。
東京都|追い出せても、数を減らす解決にはならない
東京都環境局は、屋根裏にアライグマ・ハクビシンが侵入したとき、忌避剤(くん蒸式・くん煙式の殺虫剤等)でその場から動物を追い出せる可能性はあるとしています。ただ、逃げた個体が別の家に入って被害を起こすことが考えられ、数を減らす根本的な解決にはつながらないと述べています。密閉空間でないと煙が全体に行き渡らず、動物が屋根裏に居続けて効果がないこともあるとしています。
そのうえで、「捕獲をして数を減らす」「餌資源をなくす」「繁殖場所をなくす」を徹底することが、確実に被害を減らすことにつながると書いています。
農林水産省|光・音・においは、慣れが生じる
農林水産省の総合対策編のコラムは、イノシシとシカを例に、光や音やにおいを使った対策は、効果がないか、あっても一時的だと説明しています。一時的に効くのは新しい物への警戒心によるもので、防護柵などの対策を合わせなければ、いずれは光や音がする場所でも餌を食べることを学習してしまいます。特に、においは効果が得られにくいとされています。
自治体の案内には温度差がある
横浜市は、天井裏から動物の足音や鳴き声がするとき、点検口から煙の出るタイプの殺虫剤で追い出す方法を試すよう案内しています。夜行性のため日暮れ後が効果的で、追い出しても侵入口を放置すると再び侵入されるので、足音が聞こえなくなった後に建物を点検し、必要なら専門業者に修繕を依頼するよう求めています。庭では、木酢液や漂白剤のにおいが効いた例もあると紹介しています。
同じ追い出しでも、東京都は根本的な解決にならないとし、横浜市は試す方法として案内しています。どちらも、追い出しだけで終わらせず、侵入口の修繕や、捕獲・餌の対策を並べている点は共通しています。製品の表示にない使い方を選ぶときは、お住まいの市区町村の窓口に、先に確認してください。
蚊取り線香でアライグマは追い払える?表示上の用途と火気の注意
KINCHO(大日本除虫菊)の「金鳥の渦巻」の製品ページでは、効能は「蚊成虫の駆除、忌避、侵入阻止」、有効成分はピレスロイドと表示されています。アライグマなど動物の追い払いは、表示された効能に含まれていません。アライグマへの効果を述べた公的資料も、今回確認できた範囲にはありませんでした。
使用上の注意には、換気の良い場所の風上に置く、しめ切った部屋で長時間使うと目・鼻・のどに刺激を感じることがある、燃えやすいもののそばで使用しない、付属の線香皿や専用器具以外では使用しない、といった項目があります。屋根裏や床下のように、木材や断熱材が多く換気もしにくい場所での使用は、この表示と合いません。身体に異常を感じたときは使用を中止し、医師の診療を受けるよう表示されています。
同じ疑問は、ネズミでも出ています。ネズミ駆除にバルサンは使える?くん煙剤・蚊取り線香の適用と限界で、製品の表示と照らした考え方を整理しています。
ラジオ・音・光はアライグマに効く?慣れが起きるため置くだけでは続かない
農林水産省の総合対策編は、追い払い道具として、爆発音や警戒声などの音、防鳥テープ、LED、レーザー光などを挙げています。効果は設置当初の一時的なものとされ、野生鳥獣は環境の変化に敏感なため最初は警戒しても、実害がないので日数の経過とともに慣れ、効果がなくなると説明されています。使うなら、防除したい期間だけ設置して終了後は片づける、種類や位置を頻繁に変えるといった工夫が示されています。この章の説明は、サルや鳥の追い払いが中心です。
追い払いが有効なのは、警戒心が強く、学習能力が高く、クマやイノシシに比べて反撃の危険性が低い動物で、同じ資料が例に挙げるのはサルとカラスです。アライグマは挙げられていません。ラジオを夜通し流す、センサーライトを付けるといった方法についても、アライグマで効果を検証した公的資料は、今回確認できませんでした。音や光で一時的に寄りつかなくなっても、食べ物や出入りできる場所が残っていれば、慣れて戻ってくる可能性があります。音や光を出す機器は、近隣への影響も考える必要があります。
殺鼠剤・毒餌がアライグマに使えない理由|製品区分と鳥獣保護管理法
ネズミ用の殺鼠剤や毒餌が手に入るため、アライグマにも使えると考える方がいますが、使えません。理由は、製品の区分と表示がネズミ向けであること、そして毒薬を使う方法が法律で禁止されていることの2つです。
製品の区分と表示はネズミ向け
環境省関東地方環境事務所の資料は、殺鼠剤の法的区分を整理しています。農作物等を害するねずみなどの防除に使う農薬(農薬取締法)、人または動物の保健のためにねずみ、はえ、蚊、のみなどの防除に使う医薬部外品(医薬品医療機器等法)、畜舎・鶏舎などで使う動物用医薬部外品の3つです。いずれも、ねずみなどを防除する薬剤としての区分です。
製品の例として、アース製薬の「デスモアプロ 最後の晩餐 トレータイプ」は、防除用医薬部外品で、効果・効能は「ネズミの駆除」と表示され、ペットなどの動物が容易に近づける場所では使用しないよう注意しています。アライグマに使うことは、表示にありません。
毒薬を使う方法は、鳥獣保護管理法で禁止
アライグマは野生の哺乳類のため、鳥獣保護管理法の対象です。第8条は、鳥獣を許可なく捕獲等してはならないと定め、第36条は、爆発物、劇薬、毒薬を使用する猟法を危険猟法として禁止しています。違反には、第83条で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています。
ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種は、同法の第80条と施行規則第78条により、この法律の適用除外とされています。家ネズミの駆除に、この法律上の許可は要りません。アライグマはこの3種に含まれません。ネズミ用の殺鼠剤の選び方は、ネズミの殺鼠剤の種類と選び方にまとめています。
| 比べる点 | 家ネズミ(ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミ) | アライグマ |
|---|---|---|
| 鳥獣保護管理法の扱い | 第80条と施行規則第78条で、法の適用除外 | 野生の哺乳類として法の対象。許可なく捕獲・殺傷できない |
| 殺鼠剤の製品表示 | ネズミの駆除として表示された製品がある | 確認した殺鼠剤の表示は、対象がネズミ |
| 毒薬を使う方法 | 製品の表示と用法を守って使う | 第36条が禁止(許可を受けた場合などを除く) |
| 捕獲の枠組み | 法の適用外のため、この法律上の許可は要らない | 鳥獣保護管理法に基づく許可捕獲か、外来生物法に基づく防除(環境省の手引き) |
忌避が効かないときに見直す点|餌・ねぐら・侵入口
東京都は、忌避剤による追い出しよりも、捕獲して数を減らすこと、餌資源をなくすこと、繁殖場所をなくすことを徹底するほうが、確実に被害を減らすとしています。農林水産省の中型獣類マニュアルも、野生動物には食べ物と、安心して休息や繁殖ができる場所が必要で、屋根裏や壁の隙間を使うアライグマ、ハクビシン、テンは建物への依存度が高いと説明しています。忌避剤を足す前に、次の3点を見直します。庭や畑では、においや音で遠ざけるより、食べ物を出さず、柵で入れないようにするほうが、公的資料の中心です。外に置いたペットの餌は外置きの餌とアライグマ、畑の柵はアライグマの畑対策で整理しています。
- 食べ物:生ごみ、ペットの餌、くず野菜、取り残しの果実や野菜を屋外に置かない(栃木県)。使っていない果樹は伐採も検討する(農林水産省)
- ねぐら:空き家、寺社、倉庫などの点検と清掃。家屋への入口になる木の枝は切る(東京都)
- 侵入口:床下の通風口が最も多く、ほかに軒の破損部分、瓦屋根の隙間、増築の継ぎ目がある。塞ぐ資材は金属や板など丈夫な物にし、樹脂ネットや薄い合板は壊されるので避ける。塞ぐ前に、中に居ないことを確認する(農林水産省)
家屋への侵入があるときは、忌避剤より先に自治体へ
屋根裏で大きな音がする、天井にシミができた、庭の池の魚がいなくなったといった様子は、東京都がアライグマ・ハクビシンの被害の目安として挙げているものです。東京都は、こうした被害にあったら、まずお住まいの区市町の環境部署や清掃部署などに問い合わせるよう案内しています。窓口の名前は自治体ごとに違うので、市区町村の環境担当や農林担当に、アライグマの相談窓口を確認します。
アライグマは特定外来生物のため、環境省は、飼育、保管、運搬を原則禁止し、野外へ放つことも原則禁止しています。屋根裏で捕まえた個体を車で運んで、遠くで放すことはできません。捕獲は、許可や防除実施計画の枠組みの中で進みます。
春は出産の時期でもあります。農林水産省は、4月中旬が出産のピークで、子はまだ自力では動けず、母親がくわえて巣穴を移すと説明しています。親だけを追い出したり、出入り口をふさいだりすると子が残るおそれがあるため、時期の注意はアライグマの親子を見かけたときで確認してください。法律と許可の線引きは、アライグマ駆除の法律と許可にあります。






