畑のカラス被害の特徴と、ムクドリ・ヒヨドリ・獣との見分け方
カラスの被害は、他の鳥より対象や内容が多岐にわたるのが特徴だと、農林水産省のマニュアルは説明しています。穀類ではトウモロコシを好み、播種期には出芽後10日くらいまで苗が引き抜かれて種子の部分が食べられ、登熟期には穂の先端から皮を引き裂くようにむいて実を食べます。野菜では果菜類の被害が多く、すいかや梨には、カラスのくちばしの大きさに合うV字型の切り裂きが残るとされています。
ただし、食べ跡だけでは断定できません。トウモロコシの食害はハクビシンと似ていて区別が難しく、ぶどうの果実袋はハクビシンやアライグマも破ります。同じ資料は、ヒヨドリはキャベツなどの葉茎菜類をくちばしでちぎって食べるため、鋭角の三角形の跡が残ること、ムクドリは果実袋に小さな穴を何度も突いた形になることを挙げています。どの鳥獣か迷うときは、被害の写真と日時を残し、獣の可能性は庭にアライグマらしき動物が来たときの確認も参考にしてください。
| 被害の様子 | 疑われる鳥獣(資料の説明) | 見分けの注意 |
|---|---|---|
| トウモロコシの苗が引き抜かれ、種子の部分だけ食べられる | カラス類(被害同定の早見表ではハト類も挙がる) | 出芽後10日ごろまでの被害が多い |
| トウモロコシの穂の先端から、皮を引き裂くようにむかれる | カラス類 | ハクビシンの食害と似ていて、区別が難しい |
| スイカや梨に、くちばしの大きさのV字型の切り裂きがある | カラス類 | アライグマは前肢で果肉をくり抜くように食べる |
| キャベツなど葉茎菜類の葉がちぎられ、鋭角の三角形の跡が残る | ヒヨドリ | 昆虫の食害は、丸みを帯びた食べ跡になる |
| ぶどうの果実袋に、小さな穴が何度も突かれている | ムクドリ(ヒヨドリも似る) | 複数の鳥獣による被害が重なることもある |
参考:農林水産省|野生鳥獣被害防止マニュアル 鳥類編(令和6年3月版)カラス類
カラス対策にテグスは本当に効きますか?
農林水産省のマニュアルは、カラスには透明なテグスを使う侵入対策が有効としています。ただし絶対的な遮断ではなく、餌が豊富な場所では効果が早く失われるため、網との併用や餌の管理も必要です。
テグスを張る方法:農研機構「畑作テグス君」の設置寸法と手順
畑作テグス君は、農研機構が考案した、畑の作物をカラスから守るためのテグスの張り方です。被害が出る時期だけ張り、終わったら巻き取って次の作付けで使い回せるのが特徴です。マニュアルの資材表では、釣り用の透明なナイロンテグスで0.52mm(10号)〜0.74mm(20号)の太さが挙げられ、農林水産省のマニュアルは、カラス用には0.74mm(20号)前後が適するとしています。農林水産省のマニュアルは、カラスは警戒心が強く、飛行の小回りが利かないため、テグスが飛行の妨げになることを嫌うと説明し、張る間隔は、翼を広げた長さ(約1m)と同じか、それより狭くするとしています。
設置の要点は、次の表のとおりです。基本型の説明なので、畑の形や広さに合わせて応用するよう書かれています。家庭菜園のように面積が小さい場合は、必要な支柱とテグスの量が少なくなりますが、間隔や高さの考え方は同じです。作業は、支柱を打ち込み、天井部を一筆書きで張り、側面を4段で囲み、使い終わったらペットボトルなどに巻き取って回収する流れです。
規模と費用の目安(マニュアルの記載)
マニュアル(2018年1月31日版)の表は、10a(30m×33m)に設置する場合の資材費を約1.7万円、2名での作業時間を設置1時間半〜2時間、撤去1時間〜1時間半としています。価格は当時の記載で、現在の価格ではありません。家庭菜園では、この金額をそのまま当てはめず、畑の面積に合わせて支柱とテグスの数量を数え直します。
野鳥が絡まらないための注意
農林水産省のマニュアルは、細いテグスは柔らかくたわみ、鳥がぶつかったときに羽や足に絡みつきやすいため、少なくとも0.52mm(10号)以上の太さで、張りを強めに保つよう示しています。畑作テグス君は、必要な期間だけ張って回収する設計なので、張りっぱなしにしないことも大切です。
| 部位 | 寸法・間隔 | 要点 |
|---|---|---|
| 天井部 | 地上1mの高さに、1m間隔で平行に張る | 一筆書き方式で張ると作業しやすい。雨で垂れないよう、強めに張る |
| 側面 | 地上25cm・50cm・75cm・1mの4段 | 最下段は25cmを測って張る。目分量だと高くなりがちで、歩いてくぐる行動が見られた |
| 支柱 | 径16mm・長さ1200mm。2辺は1m間隔、残る2辺は5m間隔 | 天井部のテグスより上に支柱が出ると、止まり場所になる |
| 展張距離 | 30m以内 | 30mを超えると垂れ下がるため、中継の支柱で支える |
| 出入口 | 幅1mほどを張り残す | 出入りが楽になる |
| 回収 | 使用後にペットボトルなどへ巻き取る | 再利用できる。必要な期間だけ張る |
防鳥網・不織布・トンネル・テグスの比較:家庭菜園の規模での使い分け
農林水産省のマニュアルは、作物を防鳥網で覆って鳥と作物を切り離す方法を最も確実な被害防止策とし、小規模栽培や果樹栽培では基本の技術と位置づけています。弱点は、設置と撤収の手間、作業の邪魔になること、材質や設置方法によるコストです。葉物野菜の小規模栽培では、不織布や寒冷紗のべたがけが、ヒヨドリやカモ類による食害を防ぐために使われます。畝の上にトンネル型のフレームを作って被せる「うきがけ」もあります。
テグスはカラスだけに有効で、畜舎や生ごみ集積所のように、カラスが好む食物が豊富な場所では効果が早く失われるため、網などで完全にふさぐ必要があると、同じ資料は述べています。畑の規模、作物の背丈、収穫の時期、手間をかけられる期間で、方法を選びます。
防鳥網を使うときの注意
農林水産省のマニュアルが示す注意は、次のとおりです。網は、通り抜けられない目合いを選ぶことが必須で、青色の「強力防鳥網」は値段が高いものの、糸が太く耐久性があり、野鳥も絡まりにくいとされています。
- 目合いは、カラス75mm以下、ヒヨドリ・ムクドリ30mm以下、スズメ20mm以下を目安にする
- 網と地面の間にすき間を作らない
- 網越しにつつかれないよう、網と作物の間を十分に空ける
- 45mm程度以上の粗い目や細い糸の網は、野鳥が絡まりやすいので避け、定期的に見回る
果樹には「くぐれんテグス君」(果樹園向け)
農研機構のくぐれんテグス君は、果樹園向けの方法で、天井部にテグスを1m間隔で張り、側面を防鳥網でふさぎます。設置は、冬期(整枝剪定後)が適しているとされます。マニュアル(2018年1月31日版)は、30m×100m(30a)の果樹園で、資材費は13.5万円程度、2〜3名で約3日と記載し、棚仕立てで短辺が30mを超える場合は、農家単独での施工が難しくなるとしています。庭先の数本の果樹とは規模が違うため、考え方の参考にとどめます。
| 方法 | 向く場面・鳥 | 良い点 | 注意(農林水産省・農研機構の説明) |
|---|---|---|---|
| 防鳥網 | 小規模栽培・果樹。カラス75mm以下、ヒヨドリ・ムクドリ30mm以下、スズメ20mm以下 | 最も確実な遮断 | 設置・撤収の手間とコスト。糸が太い強力防鳥網が絡まりにくい。地面とのすき間をなくす |
| 不織布(直がけ・うきがけ・トンネル) | 葉物野菜の小規模栽培。ヒヨドリ・カモ類 | 確実な遮断。寒さ・虫・風除けにもなる | 高温やカビ、作物が押さえつけられて傷むことがある。破れたら張り替える。広い面積は難しい |
| テグス | カラス(畑作はテグス君) | 必要なときだけ張り、回収して再利用できる | 絶対的な遮断ではない。ヒヨドリ・ハト・スズメには効果が低い |
| 追い払い器具 | 被害の直前から、短い期間 | 手軽に始められる | 慣れが生じる。他の対策と組み合わせる |
かかし・目玉風船・CD・爆音機に慣れる問題と、続ける工夫
鳴子やかかし、防鳥テープ、目玉模様、鷹のカイト、爆音機、音声の再生装置などの追い払い器具は、鳥にとって実害がないため、日数がたつと慣れて効果がなくなると、農林水産省のマニュアルは説明しています。新しい物が置かれると、一時的に鳥が離れるのは普通の行動で、それが効いたように見えるだけ、という整理です。カラスは見慣れない物への警戒心が強く、工夫次第で役に立つ場合があるとも書かれています。
慣れを遅らせる工夫として、資料は、被害が出る直前に設置して必要な期間が過ぎたら放置せず片づけること、設置位置や器具の種類を頻繁に変えること、他の被害防止対策と組み合わせることを挙げています。爆音機は半径数十mに効果があっても、大きな音を出すため周囲への影響を考える必要があります。磁石を使った防鳥用品や、人に聞こえない超音波は、鳥に対して追い払い効果がないと、同じ資料に書かれています。東京都のQ&Aも、CDなどきらきら光るものを吊るすと効果がある場合もあるとしていますが、慣れを前提に、短期間の補助として使うのが現実的です。
- 被害が出る直前に設置し、収穫が終わったら片づける
- 設置位置や器具の種類を、頻繁に変える
- かかしや模型は本物に似せ、動きをつける
- テグスや網など、物理的な対策と組み合わせる
カラス・ムクドリ・ヒヨドリなど鳥種別の注意:効きやすい方法が違う
畑の鳥害は、カラスだけとは限りません。農林水産省のマニュアルによると、ヒヨドリは被害の大半が果樹と野菜で、関東以西では冬に大きな群れになり、真冬から初春にかけてかんきつ類やキャベツなどを食害します。ヒヨドリが身を隠せる林が近い場所で被害が出やすいとも書かれています。ムクドリは果樹が被害の中心で、サクランボ、もも、なし、ぶどう、かきなどを食べ、群れで来るため被害が集中しがちです。ムクドリはショ糖を好まないため、ショ糖濃度の高いかんきつ類をほぼ加害しないとされます。
このため、方法は鳥種に合わせます。テグスはカラスに有効ですが、カモ類・ハト類・ヒヨドリ・スズメなどでは、警戒心が少なく接触しても行動を変えない、小回りが利いて直前で避けるといった理由で、効果がほとんどなく勧められないと、資料は述べています。ヒヨドリやムクドリには、目合い30mm以下の防鳥網や、葉物なら不織布で覆う方法が基本になります。夕方に集まるムクドリへの対応は、ムクドリが夕方に集まるときのねぐらの記録と相談方法も参考になります。
| 鳥 | 被害が出やすい作物・時期(資料の説明) | 効きやすい方法 | 効きにくい方法 |
|---|---|---|---|
| カラス | トウモロコシ(播種期・登熟期)、果菜類、果樹 | テグス、75mm以下の防鳥網 | 追い払い器具の単独使用(慣れる) |
| ヒヨドリ | 果樹・野菜。関東以西では、冬から初春にキャベツ・かんきつ類 | 30mm以下の防鳥網、不織布(葉物) | テグス |
| ムクドリ | 果樹(サクランボ、もも、なし、ぶどう、かき)。群れで集中する | 30mm以下の防鳥網 | テグス |
収穫残さ・生ごみなど餌になるものの管理で、カラスを集めない
カラスは雑食で、生ごみ、墓地の供物、作物の収穫残さ、家畜飼料など、人の活動に由来する餌を見つけて食べると、農林水産省のマニュアルのコラムは説明しています。こうした餌は、カラスの食物のかなりの割合を占めるとされ、冬から春は自然の食物が不足する時期のため、人由来の餌があると、本来は生き残れなかった個体が生き延びると考えられています。
コラムが挙げる対策は、生ごみ用の素掘り穴にふたをする、コンポスト容器を使う、供物を置いたままにしない、くず野菜や廃果を野積みにしない、畜舎や飼料庫への侵入を防ぐ、といったものです。家庭菜園では、収穫後の傷んだ野菜や果実を畑の隅に置かない、生ごみ用のコンポストにふたをすることが、同じ考え方にあたります。また、見渡せる高木や電柱などの止まり場、すぐ逃げ込めるやぶなどの潜み場を減らすと、鳥が安心して採食しにくい環境になるとされています。集積所のごみ対策はカラスのゴミ対策|集積所のネット・ボックスと自治体制度で扱っています。
被害が続くときの相談先:市町村の農政・環境担当と捕獲許可の考え方
農林水産省は、鳥獣被害対策を、現場に最も近い行政機関である市町村が中心となって実施する総合的な取組として支援しています。そのため、被害が続くときは、まず市町村の農政・農林担当や環境担当に、被害の場所・作物・時期を伝えて相談します。窓口は自治体で違い、川崎市は、農作物の被害への対応を農業技術支援センター、ごみ集積所の被害を生活環境事業所としています。
捕獲については、被害が出ていて、追い払いや防除対策でも収まらない場合に、許可を受けて行う手続きがあります。川崎市は、農作物に被害を及ぼしている場合を許可の例に挙げる一方、鳴き声がうるさい、見かけて不快といった理由は不許可の例としています。農林水産省のマニュアルは、鳥は移動能力と繁殖力が高く、捕獲で個体数を減らすのは難しいとしているため、物理的な防除と餌の管理を先に進めます。許可の考え方や、罠・毒餌が違法になる点はカラスの駆除と法律に、窓口の分け方はカラスの駆除は市役所に頼める?巣の場所別の連絡先と対応範囲にまとめています。
- 被害のあった作物、場所、時期と、食べ跡の写真
- すでに行った対策(テグス、網、追い払い器具)と、その効果
- 見かけた鳥の種類と数(分からなければ「分からない」と伝える)
- 畑の所有者か、借りている土地かの区別






