害獣対策の補助金は二層|国の交付金と市町村の補助の関係

農林水産省の令和8年度版の資料は、鳥獣被害防止総合対策交付金を、市町村が作成する被害防止計画に基づく農林水産業等への被害対策を総合的に支援するものと説明しています。支援の柱は、鳥獣の捕獲、柵の設置などの被害防除、放任果樹の伐採や刈り払いなどの生息環境管理の三つです。資料は、まず被害防止計画を策定する市町村に相談するよう案内しています。

交付金の流れは、国から都道府県、地域協議会などへ、1/2以内などの補助率で交付されると図示されています。個人の畑の柵が、この交付金を使った事業の対象になるかどうかは、市町村の計画と協議会の事業で決まるため、市町村の農政担当課に聞くのが最初の一歩です。これとは別に、市町村が独自の要綱で、資材購入費の一部を補助する制度を設けている例があります。

害獣対策の補助金は二層|国の交付金と市町村の補助の関係:確認項目
区分主な対象補助の出し方最初の窓口
国の鳥獣被害防止総合対策交付金市町村の被害防止計画に基づく、捕獲、柵の設置、生息環境管理などの事業国から都道府県、地域協議会などへ。1/2以内、定額などの補助率市町村(被害防止計画を作る担当課)
市町村の独自補助個人や団体の畑や田の柵などの資材購入費(自治体の要綱で決まる)申請者へ資材費の一定割合を補助。上限額がある市町村の農政・鳥獣担当課
住宅の害獣被害の補助屋根裏や床下への侵入を防ぐ工事、箱わなの設置など(自治体の例)自治体ごとの制度。農作物の補助とは別に設けられる例がある市区町村ごとに窓口が違う

参考:農林水産省|鳥獣被害防止総合対策交付金の支援内容について(令和8年4月改訂、PDF)

読者の疑問

害獣対策の補助金は、個人でも受けられますか?

比較ガイド

市町村の独自補助には、個人の畑を対象とする例があります。上田市は個人等の畑、太宰府市は家庭菜園を含み、八代市は3アール以上などの条件があります。国の交付金は市町村の計画に基づく事業で、まず市町村に相談します。

国の交付金で柵を整備する条件|受益農家と維持管理

資料によると、侵入防止柵の整備は、新規整備と、既存の柵を一部移設しながら新しい柵を足す再編整備ができます。柵の種類は、金網柵、ワイヤーメッシュ柵、電気柵、ネット柵などで、種類ごとに上限単価が定められています。柵を整備する場合は、わななどの捕獲機材を一体的に設置すること、生息環境管理を行うこと、適切に維持管理することが要件です。

このため、家庭菜園一か所の柵だけを国の交付金の対象と考えるのは現実的ではなく、個人の畑や家庭菜園は市町村の独自補助で確かめるのが基本になります(当サイトの整理)。集落で柵を共同整備する場合は、地域の協議会や市町村の担当課に、計画の有無と手続きを確認します。

直営施工と請負施工の違い

施工の方法は、農家などが自分で行う直営施工と、業者に頼む請負施工の二つです。補助率は、直営施工が資材費のみを対象とする定額、請負施工が事業総額の1/2以内などで、いずれも柵の種類ごとの上限単価の範囲で支援されます。自分で設置するか、業者に頼むかで、補助の対象になる費用が変わります。

受益農家3戸以上の要件

受益農家の戸数は、原則として3戸以上です。受益農家には、柵を設ける農地の耕作者だけでなく、農地の出し手、水路や農道の管理に携わる農家、畜産農家も含まれ、飛び地でも地区全体で3戸以上であれば整備できます。3戸未満でも、地方農政局長等と協議して認められれば、支援できる場合があります。

参考:農林水産省|鳥獣被害防止総合対策交付金の支援内容について(令和8年4月改訂、PDF)

市町村独自の補助の実例|対象者・補助率・上限を読む

市町村独自の補助は、要綱ごとに条件が違います。次の表は、2026年10月3日に確認した4市の公式ページの掲載です。年度や予算によって内容が変わるため、必ず最新のページと窓口で確かめてください。

各市の詳細は、太宰府市のイノシシ対策と補助、上田市の防護柵補助、八代市の防護柵・防鳥ネット補助で扱っています。

市町村独自の補助の実例|対象者・補助率・上限を読む:確認項目
自治体(制度名・ページ更新日)対象者補助率・上限申請の条件
松江市(有害鳥獣被害防除施設整備事業補助金・2026年4月1日更新)イノシシ、ニホンジカ、ヌートリアなどから農作物を守る柵の設置や修繕。農業従事者、農業を営む法人、3戸以上の農業従事者の団体資材購入費の2分の1(1,000円未満切捨て)。上限は農業従事者10万円、法人・団体30万円申請期間は4月1日から9月30日(予算に達したら終了)。1人年1回。地図や図面、設置予定地の写真、資材費の見積書を添付
太宰府市(鳥獣被害防止対策事業補助金・2026年4月1日更新)市内の農地等(家庭菜園を含む)で農林産物等を生産している人対象経費の2分の1(経費合計1万円以上)。上限は設置対象地が200平方メートル未満で5万円、以上で10万円。人件費は含まない見積書と設置予定個所の写真を添えて申請。交付決定の前に購入した資材は対象外。同一年度1回
上田市(鳥獣被害防止施設設置補助金・2026年4月1日更新)個人等の畑で、電気柵、防護ネット、トタン板、金網などを設置する場合資材費の10分の3以内。上限7万円。工賃は対象外申請期間は令和8年4月1日から令和9年2月28日(予算終了で受付終了)。補助額が5万円以上は事前申請。令和8年3月31日までの購入・設置は対象外
八代市(農作物有害鳥獣防護柵設置事業補助金・2026年7月23日更新)市内に住所があり市税を完納している人で、農業所得の申告者か、おおむね3アール以上の農地を持つ人購入費(消費税を除く)の2分の1。農地1か所あたり2万円まで(ソーラーパネル式の電気防護柵は4万円)事前の申請が必要で、購入済みのものは対象外。位置図、見積書、設置前の現状写真を添付。予算が無くなり次第終了

参考:松江市|有害鳥獣被害防除施設整備事業補助金

対象者の違い|農業者・団体・個人・家庭菜園

補助の対象者は、誰が柵を設置するかで分かれます。国の交付金は集落や協議会などの地域の取組が中心で、個人の畑は市町村の独自補助で確かめます。太宰府市は、市内の農地等(家庭菜園を含む)で農林産物等を生産している人を対象とし、家庭菜園では作付地に設置するものだけを対象として、家屋や敷地の被害防止のために買った資材は対象外としています。八代市は、農業所得の申告をしている人か、おおむね3アール以上の農地を対象としており、面積の条件が付く例もあります。

対象者の違い|農業者・団体・個人・家庭菜園:確認項目
立場国の交付金市町村の補助で確認した例窓口で聞くこと
農業者(個人)受益農家が原則3戸以上の整備事業の一員として参加する場合がある松江市は農業従事者を対象(上限10万円)。上田市は個人等の畑を対象自分の畑が対象の面積・地目か。農業共済の補助との重なり
集落・団体地域協議会などの事業として、柵の整備が支援される松江市は、農業を営む法人と、3戸以上の農業従事者の団体を対象(上限30万円)団体の代表者名、委任状、取りまとめる担当課
家庭菜園・市民農園受益農家3戸以上の要件があり、一か所の菜園は対象になりにくい(当サイトの整理)太宰府市は家庭菜園を含む(作付地のみ)。八代市は3アール以上などの面積条件家庭菜園が対象か、面積条件、作付地以外が対象外か
住宅の庭・敷地・建物資料は農林水産業等の被害を対象としている家屋や敷地の被害防止のために買った資材は対象外とする例(太宰府市)別の窓口と補助があるかを、環境・衛生系の担当課へ確認

参考:太宰府市|太宰府市鳥獣被害防止対策事業補助金を交付します

対象経費・補助率・上限額の読み方

補助金の表示は、対象経費、補助率と端数処理、上限額、年度内の回数や受付期間の四点に分けて読むと、自治体ごとの違いが見えてきます。次の二つの小見出しで、実例に当てはめながら確認します。

対象経費と補助率|資材費だけか、工賃も含むか

まず、対象が資材費だけか、工賃や人件費も含むかを見ます。上田市は資材費のみで工賃は対象外、太宰府市も設置の人件費は含みません。次に、補助率と端数処理です。松江市と太宰府市は2分の1、上田市は10分の3以内で、千円未満や1円未満を切り捨てる例があります。

上限額・申請回数・ほかの補助との重なり

上限額は、1人あたり、1か所あたり、設置面積の区分など、かけ方が自治体で違います。年度内の申請回数、受付期間、予算がなくなった時点で終了するかどうかも見ます。上田市は、農業共済に加入している農地は共済組合から補助を受けるよう案内しており、ほかの補助との重なりも確認が必要です。

  • 対象が資材費だけか、消費税や工賃を含むか
  • 補助率(1/2、3/10など)と、端数の切り捨て方
  • 上限額(1人あたり、1か所あたり、面積区分)
  • 申請は年度に何回までか、受付期間、予算がなくなった時点で終了するか
  • 農業共済などほかの補助と、重ねて受けられるか

参考:上田市|鳥獣被害防止施設設置補助金

購入・設置前の申請が条件になる点|申請から実績報告までの流れ

条件の中で見落としやすいのが、購入の時期です。八代市は事前の申請が必要で、購入済みのものは対象外としています。太宰府市は、申請後に市から交付決定通知書が届くより前に購入した資材には補助金が交付されないとしています。上田市は、令和8年3月31日までに購入・設置した施設を対象外とし、補助額が5万円以上になる場合は事前の申請が必要です。

年度ごとに要綱が改正されるため、前の年に使えた方法が今年も使えるとは限りません。次の表の流れは、各市の公式ページの掲載を並べたもので、実際の手順は市の窓口の案内が優先します。

購入・設置前の申請が条件になる点|申請から実績報告までの流れ:確認項目
ステップ出す書類・やること(掲載の例)つまずきやすい点
1 窓口に相談対象かどうか、予算の残り、資材が対象かを聞く(上田市は資材購入前の連絡を依頼)予算がなくなり次第終了する例が多い(松江市、上田市、八代市)
2 交付申請申請書、位置図や設置場所の図、見積書、設置前の現状写真(松江市、太宰府市、八代市)写真は設置前に撮る。見積書は購入予定の資材のもの
3 交付決定市からの交付決定通知を待つ通知前の購入は対象外になる例(太宰府市)。八代市は購入済みのものが対象外
4 購入・設置対象の資材を購入し、設置する設置の人件費や工賃は対象外の例(太宰府市、上田市)
5 実績報告・請求実績報告書兼交付請求書、領収書の写し、完了写真(太宰府市)提出期限がある。太宰府市は令和9年1月29日

参考:八代市|八代市農作物有害鳥獣防護柵設置事業補助金について

被害防止計画と相談窓口|農政担当課に伝えること

農林水産省の調査結果の概要によると、令和7年4月末時点で、被害防止計画を作成している市町村は1,525、鳥獣被害対策実施隊を設置している市町村は1,266で、実施隊の隊員数は42,950人です。計画の有無や内容は、市町村ごとに公表されています。相談するときは、市町村の農政や鳥獣被害担当の課に、次のことを伝えると話が早く進みます。

動物の見分けや、庭が掘られたときの記録のしかたは、庭が掘られているときの記録のしかたと庭にイノシシが来たときの対応で扱っています。

  • 被害を受けている作物と時期、被害の写真
  • 畑の場所と面積、耕作者や受益者の人数
  • すでに設置している柵の種類と、傷み方
  • どの動物による被害か(足跡、掘り跡、食べ跡の写真)
  • 設置したい柵の種類と、購入予定の資材の見積書

参考:農林水産省|被害防止計画の作成及び実施隊の設置状況に関する調査結果の概要(令和7年4月末時点、PDF)

電気柵を使うときの安全確認

電気柵は補助の対象になる柵の一つですが、農林水産省は、電気さくに起因する死傷事案が発生したとして、安全の確保を求めています。電気さくを施設した場所には、人が見やすい間隔で危険であることを表示すること、電気さく用電源装置は電気用品安全法の適用を受けるものなど所定のものを使うことが挙げられています。

さらに、人が容易に立ち入る場所では、電源が使用電圧30ボルト以上の場合に、電流動作型で定格感度電流15ミリアンペア以下、動作時間0.1秒以下の漏電遮断器を設けること、容易に開閉できる箇所に専用の開閉器を設けることも求められています。購入前の相談で、補助の対象になる電気柵の仕様と設置の方法を市町村に聞いておくと、買い直しを避けられます。

参考:農林水産省|鳥獣による農作物等の被害の防止に係る電気さく施設における安全確保について

住宅の害獣被害は別の窓口になる

国の交付金の資料は、農林水産業等の被害を対象としており、住宅の屋根裏や床下の被害を対象とする記載は、確認した範囲では見当たりませんでした。住宅の被害は、市区町村ごとに窓口と補助の有無が違います。害獣駆除全般の補助の探し方は害獣駆除の補助金・助成金の探し方にまとめています。

同じ動物が、畑と住宅の両方に被害を出すことも少なくありません。畑の柵の補助は農政担当課、屋根裏の侵入口の封鎖や箱わなは環境や衛生の担当課や業者、と分けて相談先を考えると、話がかみ合いやすくなります。