害獣駆除の勘定科目は、科目名の前に支出の中身を分ける

「害獣駆除の勘定科目は何か」と聞かれても、一つの答えは決められません。駆除作業、清掃・消毒、侵入口の封鎖工事、定期契約では、支出の性質が違うからです。国税庁のタックスアンサーは、貸付けや事業に使っている建物などの修繕費で、通常の維持管理や修理のために支出されるものは必要経費になると説明し、使用可能期間を延ばしたり価値を高めたりする部分は資本的支出として区別するとしています。その区別は、名目ではなく実質で判定すると書かれています。

科目名(修繕費、外注費、雑費など)は、会計ソフトの科目表や顧問税理士の運用で決まる部分が大きく、今回確認した国税庁の資料には、害獣駆除の科目名を指定した一覧は見当たりませんでした。大切なのは、どの科目にしたかよりも、同じ種類の支出を毎期同じ考え方で処理しているかと、あとから内容を説明できる証憑が残っているかです。この記事の表は考え方の整理であり、科目名の正解を示すものではありません。害虫駆除でも、考え方は同じです。

参考:国税庁|タックスアンサー No.1379 修繕費とならないものの判定(所得税)

読者の疑問

害獣駆除の勘定科目は、何にすればよいですか?

比較ガイド

今回確認した国税庁の資料に、害獣駆除の科目名を指定したものは見当たりませんでした。性質が維持管理なら修繕費、外注費、衛生費、雑費などが候補で、継続して使っている科目に合わせ、最終判断は税理士に確認してください。

修繕費と資本的支出の区分|国税庁が示す判定の基準

国税庁は、所得税と法人税のそれぞれで、修繕費と資本的支出の判定を案内しています。基本の考え方は共通で、固定資産の維持管理や原状回復のための部分は修繕費、使用可能期間を延ばす部分や価値を高める部分は資本的支出です。資本的支出になると、その年に全額を経費にするのではなく、減価償却を通じて各年に配分されます。

金額の目安として、国税庁は、一つの修理や改良の金額が20万円未満のとき、またはおおむね3年以内の周期で行われる修理であることが明らかなときは、修繕費にできると案内しています。修繕費か資本的支出か明らかでない金額があるときは、その金額が60万円未満のとき、または固定資産の前年末(法人は前事業年度終了時)の取得価額のおおむね10パーセント相当額以下のときに、修繕費とすることができます。2026年10月3日に開いた所得税のページは令和8年4月1日現在、法人税のページは令和7年4月1日現在の法令等に基づく表示でした。

修繕費と資本的支出の区分|国税庁が示す判定の基準:確認項目
判定の場面所得税の案内(修繕費とならないものの判定)法人税の案内(同名のページ)
判定の軸修繕や改良という名目ではなく、実質で判定する修繕費や改良費という名目ではなく、実質で判定する
資本的支出の例物理的に付け加えた部分、用途変更のための改造や改装、部分品を特に高性能なものに替えたときの超過部分同様の三つの例が示されている
修繕費にできる目安一つの修理・改良が20万円未満、またはおおむね3年以内の周期で行われるとき一つの修理・改良が20万円未満、またはおおむね3年以内の周期で行われることが明らかなとき
区分が明らかでない金額があるとき60万円未満、または前年末の取得価額のおおむね10パーセント相当額以下なら、修繕費とできる同じ基準に加え、継続して、支出額の30パーセント相当額と取得価額の10パーセント相当額のいずれか少ない金額を修繕費とする処理も認められる

参考:国税庁|タックスアンサー No.5402 修繕費とならないものの判定(法人税)

駆除・清掃・封鎖・定期契約を仕訳するときの考え方

ここから先は、国税庁の判定の考え方を、害獣駆除の場面に当てはめた整理です。国税庁が害獣駆除そのものを例示した資料は、今回確認した範囲では見つからず、当てはめはこの記事の整理にあたるため、実際の処理は顧問税理士や税務署に確認してください。後ろの表にある「候補になる科目」は、会計ソフトでよく使われる科目名の例で、国税庁が指定した名称ではありません。

駆除作業・清掃・消毒

捕獲や追い出し、薬剤処理、フンや巣材の清掃・消毒は、建物の使用可能期間を延ばしたり価値を高めたりする工事ではなく、被害のあった状態を元に戻し、維持管理するための支出として整理しやすい作業です。科目は、修繕費として処理するか、衛生費・外注費・雑費など店舗や事務所で継続して使っている科目に入れるかを、税理士と決めます。見積書や作業報告書に、作業の内容と場所が書かれていると、あとから性質を説明しやすくなります。

侵入口の封鎖工事

金網やパンチングメタルで穴や隙間を塞ぐ封鎖工事は、元の状態を保つ修理に近い場合もあれば、換気口などに新しい部材を付け加える工事にあたる場合もあります。国税庁は、物理的に付け加えた部分の金額は資本的支出になるとしつつ、一つの修理の金額が20万円未満であれば修繕費にできると案内しています。封鎖が広い範囲に及び金額が大きいときは、見積書で箇所ごとの金額を分けてもらい、税理士に区分を確認します。

定期防除契約(月額・年額)

ネズミやゴキブリなどの定期点検・防除を、毎月または毎年の契約で依頼する場合は、継続的に役務を受ける契約として、支払いの時期と役務を受ける期間の関係を整理します。月ごとに支払うなら、支払いと役務が同じ月に対応しやすくなります。年額を一括で前払いすると、期をまたぐ部分が出ることがあり、その扱いは後の見出しで説明します。契約書の確認項目は、害虫の定期防除契約で比べる項目にまとめています。

駆除・清掃・封鎖・定期契約を仕訳するときの考え方:確認項目
支出の種類性質の見立て候補になる科目(例)確認すること
駆除作業(捕獲・追い出し・薬剤処理)被害の解消と維持管理修繕費、外注費、衛生費、雑費など作業内容と場所が分かる報告書。同種の支出を継続して同じ科目で処理しているか
清掃・消毒・消臭原状回復に近い修繕費、清掃費、雑費など清掃した範囲と数量の内訳
断熱材・内装の交換部分の更新。金額と内容で性質が分かれる修繕費、または資本的支出(固定資産)20万円未満か、3年以内の周期か。使用可能期間を延ばす部分があるか
侵入口の封鎖工事元に戻す修理か、新しい部材の付加かで分かれる修繕費、または資本的支出(固定資産)箇所ごとの金額の内訳と、使った材料
定期防除契約継続的な役務の提供外注費、衛生費、雑費など契約期間、支払日、役務を受ける期間

参考:国税庁|タックスアンサー No.1379 修繕費とならないものの判定(所得税)

賃貸物件オーナー・店舗の事業者|必要経費の考え方

賃貸物件を持つオーナーの駆除費用は、不動産所得の必要経費として考えます。国税庁は、不動産所得の金額を、総収入金額から必要経費を引いて計算すると説明し、必要経費にできるのは、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち、家事上の経費と明確に区分できるものとしています。貸付資産に係る主な例として、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費が挙げられています。

貸している建物の通常の維持管理や修理の支出は、修繕費として必要経費になり、使用可能期間を延ばすなどの部分は資本的支出として減価償却します。空室の消毒、共用部のネズミ対策、駆除後の清掃などは、貸付資産の維持管理にあたるかを、前の表の考え方で見ます。入居者と大家のどちらが費用を負担するかは契約や原因で分かれるため、賃貸の害獣駆除費用は誰が負担するかを先に確認します。

店舗や事務所を営む個人事業主は、自分の事業の経費として整理します。国税庁は、一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわる費用(店舗併用住宅など)は、取引の記録などに基づいて、業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額に限り必要経費になると説明しています。店舗兼住宅では、駆除の範囲が店舗部分か居住部分かを、見積書と報告書で分けて残します。営業を続けながらの調査の進め方は、店舗の害獣調査|営業を続ける時間と立入範囲で確認できます。

賃貸物件オーナー・店舗の事業者|必要経費の考え方:確認項目
立場考える枠組み確認する国税庁の案内ポイント
賃貸物件のオーナー(個人)不動産所得(所得税)不動産収入を受け取ったとき、修繕費とならないものの判定貸付資産の修繕費は必要経費。資本的支出は減価償却
店舗・事務所を営む個人事業主事業所得(所得税)必要経費の知識、修繕費とならないものの判定店舗併用住宅は、業務上必要と明確に区分できる金額のみ必要経費
法人(店舗・賃貸物件の所有や賃借)法人税修繕費とならないものの判定、短期前払費用修繕費と資本的支出の判定。年間契約の前払いの扱い
自宅(居住用)の所有者必要経費ではなく、所得控除災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)雑損控除の対象かを税務署に確認する

参考:国税庁|タックスアンサー No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)

自宅の駆除費用は経費ではなく、雑損控除の検討になる

自宅(居住用)の害獣駆除や害虫駆除の費用は、事業の収入を得るための費用ではなく、家事上の費用にあたるため、必要経費にはなりません。国税庁は、家事上の費用は必要経費にならないと説明しています。代わりに検討するのが、災害や盗難などで資産に損害を受けたときの雑損控除です。

国税庁の雑損控除のページは、損害の原因を、自然現象の異変による災害、火災などの人為による異常な災害、害虫などの生物による異常な災害、盗難、横領に限っています。質疑応答事例では、シロアリの被害を、害虫その他の生物による異常な災害にあたるとして、修繕の費用と駆除の費用を雑損控除の対象としていますが、被害を事前に防止するための費用や、駆除とともに行う予防の費用は、応急的な措置の費用ではないため対象にならないとしています。ネズミやハクビシンなどの害獣について、同様に扱えるかを示した国税庁の資料は、今回確認した範囲では見つからなかったため、税務署への確認が必要です。計算式や必要書類は、害獣駆除の費用は確定申告で控除できるかで詳しく扱っています。

雑損控除の対象になる資産は、棚卸資産や事業用固定資産等に当たらないものとされています。そのため、店舗や賃貸用の物件の駆除は、雑損控除ではなく、事業所得や不動産所得の必要経費として整理するのが基本になります。自宅と事業用が混ざる場合の線引きは、税務署か税理士に確認します。

参考:国税庁|タックスアンサー No.1110 雑損控除

年間契約の支払いと、期間の扱い

定期防除を年額で前払いするとき、支払った年と、役務を受ける期間がずれることがあります。たとえば10月に1年分を支払う契約では、役務の一部が翌年にかかります。このずれの扱いは、法人と個人で説明が分かれます。

法人|前払費用と短期前払費用

国税庁は、前払費用を、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、事業年度終了時にまだ提供を受けていない役務に対応するものと説明し、原則として、支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金に算入するとしています。ただし、支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを、継続してその支払った日の属する事業年度の損金に算入しているときは、支払時に損金に算入することが認められます。収益の計上と対応させる必要があるものは、1年以内でも対象外です。条件に「継続して」とあるため、その年だけ処理を変えるのではなく、毎期同じ扱いにします。

個人事業主・賃貸オーナー|債務確定の考え方

国税庁は、所得税の必要経費となる金額は、その年において債務の確定した金額だと説明しています。債務が確定したとは、12月31日までに債務が成立していること、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、金額が合理的に算定できることの三つを満たす場合です。支払った年でも、債務が確定していないものは、その年の必要経費になりません。年をまたぐ定期防除契約は、契約書の期間、支払日、役務を受けた日を並べたうえで、どの年にどの金額が確定するかを税理士に確認します。

参考:国税庁|タックスアンサー No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合

証憑の保存|見積書・作業報告書・写真・領収書を何年残すか

修繕費か資本的支出かは実質で判定されるため、何をどこまで行ったかを示す書類が、判断の材料になります。国税庁は、法人は、帳簿と、取引に関して作成または受領した書類(注文書、契約書、領収書など)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければならないと説明しています。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合などは、10年になります。

個人で不動産所得や事業所得のある方は、収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)を7年、業務に関して作成または受領した請求書、納品書、領収書などの書類を5年、保存する必要があると、国税庁は説明しています。害獣駆除で残す書類は、見積書、契約書、作業報告書、作業前後の写真、請求書、領収書、支払いの記録です。駆除と封鎖と清掃が一つの請求書にまとまっている場合は、作業ごとの内訳が分かる見積書や報告書を一緒に保存します。

保存の仕方は害獣駆除の書類と写真、何を残すか、工事後の確認は工事が終わったら見積書と照合する完了報告の確認で整理しています。

証憑の保存|見積書・作業報告書・写真・領収書を何年残すか:確認項目
書類分かること残すときのポイント
見積書作業項目ごとの金額、材料、数量「一式」の場合は、内訳を書面で頼む
契約書・注文書契約期間、支払条件、対象の範囲定期契約は、期間と更新の条件を確認する
作業報告書・写真実際に行った作業と場所、前後の状態封鎖や清掃の箇所が分かる写真を、日付つきで保存する
請求書・領収書支払先、日付、金額、但し書き宛名と但し書きに、店舗名や物件名を入れてもらう
支払いの記録(振込明細など)実際に支払った日と金額年間契約は、支払日と役務の期間を並べて保管する

参考:国税庁|タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間(法人税)

税理士・税務署に確認するときの伝え方

科目や区分の最終判断は、顧問税理士か、所轄の税務署に確認します。国税庁のタックスアンサーも、国税に関する相談は、税についての相談窓口を利用するよう案内しています。質疑応答事例の注記は、事例が照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、具体的な取引に当てはめるときは異なる課税関係が生ずることがあると明記しています。

相談の前に、見積書、契約書、報告書、写真、領収書をまとめておくと、話が早く進みます。駆除業者に頼む段階から、作業報告書と領収書を発行できるかを確認しておくと、あとの経理が楽になります。次の項目を、そのまま相談メモにしてください。

  • どの種類の支出か(駆除、清掃、封鎖、定期契約)と、それぞれの金額の内訳
  • 建物は所有か賃借か、事業用か居住用か、店舗兼住宅か
  • 一つの修理の金額と、同じ作業を過去にいつ行ったか(3年以内の周期かの確認)
  • 年額契約の契約期間、支払日、更新の条件
  • 継続して使っている科目名と、同種の支出の処理の前例

参考:国税庁|質疑応答事例「シロアリの駆除費用」