アリは家を食べるのか|クロアリは木材を食害しない
結論から言うと、クロアリ(普通のアリ)は家の木材を食べません。名古屋市衛生研究所の昆虫図鑑は、アリ類には朽木などに営巣するものもあるが、木材を食害することはないと説明しています。日本しろあり対策協会も、クロアリは建物を直接食べることはないとしています。
アリとシロアリは名前が似ていますが、分類学的にはかなり縁遠い関係です。名古屋市の資料によると、アリ類はハチの仲間で、卵、幼虫、蛹、成虫の段階を経て育つ完全変態をします。シロアリはゴキブリに近い昆虫で、蛹の期間がない不完全変態をし、幼虫は成虫と似た外観をしています。木材を食害して家屋に被害を出すのは、シロアリのほうです。
ただし、アリが家の傷みと無関係というわけではありません。日本しろあり対策協会のQ&Aは、壁の中にクロアリが巣を作ると、湿気のせいで木材が腐る場合があり、状況によっては駆除したほうがよいかもしれないとしています。アリで心配すべきことは、木材を食べられることより、巣のある場所の湿気と、別の虫であるシロアリが潜んでいないかという点です。
参考:名古屋市衛生研究所|身の回りの『むし』たち web昆虫図鑑 アリ類
アリが家の柱や木材を食べることはありますか?
クロアリ(アリ類)は木材を食害しません。名古屋市衛生研究所は、アリ類は朽木に営巣するものがあっても食害することはないとしています。柱や木材を食べるのはシロアリです。ただし、アリが壁の中に巣を作って湿気で木材が傷む場合はあります。
クロアリとシロアリの見た目・被害の違い
日本しろあり対策協会は、シロアリとアリを、触角、翅、腰の3点で簡単に見分けられると説明しています。羽アリを見つけたときも、色ではなくこの3点の形で比べます。
シロアリの発見の手がかりとして、協会は、蟻道、蟻土、食痕、空洞音、建物の異常、羽アリの群飛、乾材シロアリの乾燥した砂粒状の糞を挙げています。建物の異常には、柱が下がる、棟や軒の稜線が波を打つ、ふすまや雨戸の立てつけが悪くなるといった状態が含まれます。アリの行列があるだけでは、これらの手がかりには当てはまりません。
| 比べる点 | クロアリ(アリ類) | シロアリ |
|---|---|---|
| 触角 | 「く」の字状に曲がっている | 真珠のネックレスのような数珠状 |
| 翅(羽アリ) | 前翅が後翅より大きい | 4枚ともほぼ同じ大きさ・同じ形 |
| 腰 | 細くくびれている | くびれがなく、ずん胴 |
| 木材との関係 | 食べない。朽木や木部の腐朽部に巣を作る種類がある | 木材を食害する。乾いた木材を加害する乾材シロアリもいる |
| 被害の手がかり | 行列、餌への集まり、巣の入口。湿気で木が傷むことがある | 蟻道、蟻土、食痕、空洞音、柱の沈み、乾いた砂粒状の糞(乾材シロアリ) |
| 分類・育ち方 | ハチの仲間で、卵・幼虫・蛹・成虫の順に育つ(完全変態) | ゴキブリに近い昆虫で、蛹の期間がない(不完全変態) |
木材や壁の中に巣を作るアリと湿気のサイン
木材を食べなくても、湿った木部や壁の内側は、アリの巣になることがあります。巣が見えない場所にあるほど、行列の出口だけでは原因が分かりません。場所ごとに、公的資料や協会の資料に書かれた内容を整理します。
湿った木部・風呂場まわり
東京都ペストコントロール協会によると、トビイロケアリは土中や朽ち木中に巣を作り、家屋の台所や風呂場などの木材の腐朽部や土中にも営巣します。木部にシロアリに似た蟻道を作ったり、風呂場の朽木などから飛び出したりするため、シロアリと混同されやすいと記されています。名古屋市の資料でも、オオハリアリが住宅の木部の腐朽部や、庭に放置した板や植木鉢の下に営巣し、屋内に侵入することがあるとされています。
壁の中・床板の間・家具のすき間
東京都ペストコントロール協会は、イエヒメアリが家屋の壁の内面、木製家具の中、押入れの中、床板の間、モルタルの裂け目などに営巣するとしています。同協会は、イエヒメアリが壁面内などに営巣し、すき間から屋内に侵入して食品に群がるとも記しています。巣が壁の内側にあると、外から見える行列だけでは規模が分かりません。
断熱材や新建材はシロアリが好む
日本しろあり対策協会は、シロアリは木材だけでなく、プラスチックや合成ゴム製の新建材も加害し、特に発泡スチロールや発泡ウレタン系の断熱材は木材より好んで加害されると説明しています。断熱材や発泡系の建材に穴や食べ跡があるときは、アリの巣と決めつけず、シロアリの可能性も含めて調べてもらいます。
| 気づいたこと | 考えられる原因の方向 | 確認・相談の方向 |
|---|---|---|
| 風呂場や台所の木部が湿って柔らかく、そこからアリが出る | 湿気で傷んだ木部にアリが巣を作っている、またはシロアリの可能性 | 漏水・結露・換気を確認し、シロアリの調査も含めて相談する |
| 木部に細い土のような通り道(蟻道に似た筋)がある | シロアリの蟻道、またはシロアリに似た通路を作るアリ | 触らずに写真を撮り、専門家に確認する |
| 壁や家具のすき間から小さな行列が出てくる | イエヒメアリなど、屋内に営巣する種類の可能性 | 出入口を記録する。巣の特定は難しく、専門家の調査を考える |
| 断熱材や発泡系の建材に穴や食べ跡がある | シロアリの可能性(発泡系の断熱材も加害される) | 自己判断で薬剤をかけず、調査を依頼する |
| 柱が下がる、木材をたたくと空洞音がする | シロアリ被害の手がかり | 早めに専門業者へ相談する |
家の中でアリに刺される・噛まれる?人を刺すアリと似た虫
家の中でも、アリに刺されたり噛まれたりすることがあります。名古屋市の資料は、イエヒメアリが着衣の下に潜んで人の皮膚を噛み、皮膚炎の原因となることがあるとしています。東京都ペストコントロール協会は、オオハリアリが腹端の毒針で人を刺し、刺されるとアナフィラキシーショックを起こすことがあると記しています。兵庫県の資料は、アルゼンチンアリが夜も活動し、就寝中に体を這ったり咬んだりして睡眠を妨げることがあるとしています。
アリに似た別の虫にも注意が要ります。名古屋市の資料では、アリガタバチ類は外観がアリに似た小型のハチで、鋭い毒針を持ち、人を刺すとかなりの痛みがあるとされています。環境省は、アリグモ類は足が8本の小さなクモですが、前脚を触角に似せているため、見慣れないアリとよく間違われると説明しています。刺された、噛まれたあとに強い痛み、腫れ、息苦しさなどがあるときは、自分で判断せず医療機関に相談してください。環境省も、ヒアリに刺されて症状がある場合は病院に相談するよう案内しています。
| 虫 | 特徴 | 注意 |
|---|---|---|
| イエヒメアリ | 体長約2mm。屋内に営巣し、着衣の下に潜んで皮膚を噛むことがある | 皮膚炎の原因になることがある。巣の特定は難しい |
| オオハリアリ | 体長約4mm。腐朽した木部や植木鉢の下に営巣し、屋内に入ることがある | 毒針で刺し、ハチ刺傷と同様の症状が出ることがある。症状が強いときは受診する |
| アルゼンチンアリ | 体長約2.5mm。屋内に大量に入り、就寝中に体を這ったり咬んだりすることがある | 特定外来生物。自治体の環境担当へ連絡する |
| ヒアリ | 体長2.5〜6mm。刺されると焼けるような痛みがある | 環境省ヒアリ相談ダイヤルまたは市区町村・都道府県へ連絡。症状があれば病院へ |
| アリガタバチ類 | アリに似た小型のハチ。名古屋市の資料に載る種類は体長2〜2.5mmほど。鋭い毒針を持つ | 貯穀害虫やシバンムシなどに寄生する。刺されると痛みが強い |
| アリグモ類 | 体長5〜7mmの小さなクモで、足は8本。前脚を触角に似せる | アリと間違えやすい。写真を撮って足の数を確かめる |
室内で羽アリが出たときの確認|時期・形・殺虫剤の前に
日本しろあり対策協会は、羽アリの群飛期はシロアリが人前に姿を現す唯一の時期で、群飛の時期や時刻に注意すれば種類の判別にも役立つとしています。ヤマトシロアリは4〜5月の昼間(沖縄は2月、東北・北海道は6月頃)、イエシロアリは6〜7月の夜に電灯へ飛来し、アメリカカンザイシロアリは6〜9月の昼間に何度も群飛するとされています。ダイコクシロアリは5〜8月の夜に少数ずつ群飛します。
ただし、アリの羽アリも時期が重なります。名古屋市の資料では、アリ類の羽アリは、5〜6月のクロオオアリから、9〜11月のサクラアリまで、種類ごとに出る時期が違います。時期だけで決めず、触角が「く」の字か数珠状か、前後の翅の大きさが違うか同じか、腰がくびれているかで確かめます。
羽アリが出たとき、殺虫剤をかけてよいかについて、同協会のQ&Aは、虫が逃げてしまうので、できればそのままにしておいたほうがよいと回答しています。殺虫剤を使う場合は、出てきた箇所をメモし、出てきた虫は袋などに入れて保管して、業者が来たときに見せるよう案内されています。羽アリの出た場所や数、時刻の記録は、羽アリが出たら何を残すかの記事にも整理しています。
- 出た場所(窓枠、玄関、床の隙間など)、日時、数をメモする
- 触角・翅・腰が分かる写真を撮る
- 数匹を袋や容器に入れて保管する
- 殺虫剤をかける前に、メモと保管を済ませる
- 窓枠や玄関前の羽や死骸は、掃除する前に写真を撮る
アリが家で大量に出る・やばいと感じたときの優先順位
アリが家の中で大量に出ると不安になりますが、名古屋市の資料によると、日本には270種以上のアリ類がいて、家の中や住宅周辺に好んで営巣するのは、その一部です。同資料がアリの問題として挙げるのは、刺したり噛んだりする被害、不快感、食品への混入などで、アリ類は木材を食害しないと明記されています。慌てて薬剤を広範囲にまくより、次の順に確認します。
行列の入口と餌の場所を記録し、どこからアリが入るかを探す手順は、アリが家のどこから入るかを調べる記事にまとめています。種類の見当をつけたいときは、家の中の小さいアリの種類を見分ける確認表が役立ちます。
- 刺される・噛まれる、赤茶色や動きの速い大行列など、外来アリの特徴がないかを確認する
- 羽のあるものがいれば、シロアリの羽アリかを確認し、数匹を袋に保管する
- 行列の入口と餌の場所を記録し、食品や甘い物を片付ける
- 壁や床の内側に巣がないか、湿った木部やすき間がないかを確認する
- 続く場合は、写真と記録を持って、専門の窓口に相談する
シロアリ調査を頼む目安と相談先
日本しろあり対策協会は、誰でも確かめられる手がかりとして、基礎や束石、土台の蟻道、木材の割れ目の蟻土、特徴的な食痕、たたくと空洞音がする木材、柱が下がるなどの建物の異常、羽アリの群飛を挙げています。これらに当てはまるものがあれば、アリの対策を進める前に、シロアリの調査を頼むことを考えます。
同協会のQ&Aには、風呂場の敷居がぶかぶかになった相談に、単に水分で腐っている場合とシロアリによる場合とがあり、現場を確認しないと分からないという回答があります。協会は希望すれば会員企業を紹介するとしています。羽アリの死骸が玄関前に数匹落ちていた相談にも、念のため業者に建物を点検してもらうよう回答しています。調査の写真の見方はシロアリ調査の写真をどう読むか、傷んだ木部の扱いは害虫被害のある柱や土台は交換するかの記事で確認できます。
床下で蟻の行列を見つけたときの考え方は、床下に蟻の巣があるときのクロアリとシロアリの確認にもあります。調査を頼むときは、見つけた日時と場所、羽アリや虫の写真と保管した個体、木部の湿りや沈みなど気づいた異常、これまでに使った薬剤を伝えてください。




