害獣駆除の「殺処分」は何で決まる?捕獲後の扱いの分かれ道

「害獣駆除」と聞くと、捕まえた動物は処分されるものと考える人が多く、検索でも「殺処分」という言葉が並びます。しかし、捕獲した動物が放されるのか、処分されるのか、自治体が回収するのかは、業者が自由に決めることではありません。環境省は、鳥獣保護管理法の捕獲許可について、鳥獣の種類、員数、期間、区域、方法などの要件を、許可権限者が捕獲の目的ごとに定めていると説明しています。

その後の扱いを分ける要素は、大きく三つです。一つ目は、捕獲の根拠となる法律と許可の内容です。二つ目は、自治体が回収や処分の体制を持っているかどうかです。三つ目は、動物が日本にもともといる在来種か、アライグマのような特定外来生物かです。この記事では、処分の具体的な方法は扱わず、依頼する人が確認できる項目に絞ります。

捕獲後の扱いは、依頼者が決めるものではない

依頼者が決めるのは、被害を止めたいという目的と、費用の範囲です。捕獲後の扱いは、許可を受けた人や、防除を行う自治体の担当者が、許可の条件と制度に従って行います。環境省のアライグマ防除の手引き(令和7年3月改訂版)は、捕獲個体は防除を実施する主体の責任のもとで、動物の愛護及び管理に関する法律の考え方に沿った方法で取り扱い、個人的な持ち帰りや野外への放置がないようにするとしています。

処分の方法をこの記事で扱わない理由

手引きは、殺処分をする場合は、動物の殺処分方法に関する指針に準じて、できる限り苦痛を与えない適切な方法で行う必要があると述べています。地域の体制の例として、獣医師などの専門技術者による処分、都道府県の施設への持ち込み、自治体の職員や捕獲従事者が行う方法、委託された業者が行う方法を紹介しています。処分は、許可を受けた担当者が、地域の体制のもとで行うもので、依頼者が自分で行うものではありません。そのため、この記事では方法そのものには触れません。

参考:環境省|捕獲許可制度の概要

読者の疑問

害獣駆除で捕獲された動物は、殺処分されるのですか?

比較ガイド

一律ではありません。許可の条件、自治体の制度、特定外来生物かどうかで扱いが決まります。放獣される場合、自治体が回収する場合、許可を受けた担当者が処分する場合があり、業者や依頼者が自由に決めることはできません。

捕獲できるのは誰か|許可なく捕まえたり処分したりできない

野生の鳥獣は、卵を含めて、狩猟の場合を除き、原則として捕獲・殺傷・採取が禁止されています(環境省)。例外は、生態系や農林水産業への被害などがあり、環境大臣または都道府県知事の許可を受けた場合です。多くの都道府県では、許可の権限の一部を市町村長に移しているため、窓口は地域で異なります。兵庫県姫路市は、アナグマ、キツネ、タヌキについて、許可の権限が県知事から市長に移されていると案内しています。

京都市の相談Q&A(2026年4月版)は、迷惑を受けている野生鳥獣を自力で捕まえたり殺したりするのは自由かという質問に、原則として法律で保護されており、捕獲や殺傷は禁じられていると答えています。まず野生鳥獣を近寄らせない、追い払うための対策を行い、それでも大きな被害が出ている場合のみ、有害鳥獣捕獲の申請・許可の手続きを経て、狩猟免許などの資格を持つ人が捕獲できるとされています。

東京都文京区も、野生鳥獣の駆除や捕獲は有害鳥獣捕獲の許可が必要で、資格のない人は捕獲できないと案内しています。姫路市は、被害を受けた人が狩猟免許を持つ個人や法人に依頼し、依頼を受けた人が捕獲許可を受けてから捕獲する流れを示し、申請書に被害状況の写真などを添付するとしています。被害の写真や記録を求められることがあるため、依頼前に残しておくと慌てずに済みます。

家ネズミ3種は許可が不要

京都市は、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミについては、申請・許可の手続きは必要なく、誰でも捕獲・殺傷が許されていると説明しています。ただし、ネズミ用の罠にイタチなど他の野生鳥獣が入った場合は、殺傷せずに放すよう求めています。

卵・ヒナ・巣は別に考える

野鳥は、卵の採取やヒナの捕獲も、原則として禁止されています。京都市は、巣に卵やヒナがある場合は巣立つまで見守ること、卵もヒナもない巣を除去するのに許可等は不要だが、再び巣が作られない対策を講じることを案内しています。姫路市も、鳥の巣の除去で卵の採取やヒナの捕獲を伴う場合は、有害鳥獣捕獲の許可が必要としています。ハトの卵を処分したいという相談も、この扱いが基本になります。許可を受けて撤去する流れは、鳩の卵の撤去に許可が必要な理由で確認できます。

参考:京都市|野生鳥獣・虫等に関する相談Q&A集 PDF(2026年4月)

在来種と特定外来生物の違い|ハクビシン・アナグマ・鳩・アライグマの扱い

捕獲後の扱いは、動物が在来種か特定外来生物かで大きく分かれます。特定外来生物は、外来生物法で、飼育・保管・運搬、野外へ放つことなどが原則禁止されています。一方、在来の野生鳥獣は、鳥獣保護管理法の許可の条件に従います。種類の見分けが難しいときは、写真を添えて自治体の担当窓口に相談します。

アライグマなどの特定外来生物

環境省の外来生物法のページは、特定外来生物の飼育、栽培、保管、運搬、輸入、野外へ放つこと、譲渡、販売などを原則禁止し、飼育・保管・運搬を「飼養等」と呼んでいます。西宮市も、アライグマは許可なく飼うことも、放すことも、生きたまま移動させることも、法律で禁止されていると案内しています。そのため、自治体の貸出制度でアライグマを捕獲した場合も、自分で別の場所へ運んで放すことはできません。自治体の制度では、捕獲した人が回収まで保管し、自治体が回収する流れが案内されています。

ハクビシン・アナグマ・鳩などの在来の野生鳥獣

ハクビシンは、環境省の特定外来生物一覧の哺乳類には載っていません。環境省のアライグマ防除の手引きは、アライグマ用のわなにハクビシンやタヌキなどがかかった場合、殺処分などを行うときは、その種に対する鳥獣保護管理法の許可が必要になると説明しています。アナグマも鳥獣保護管理法の対象で、姫路市の例のように、窓口が県か市かは地域で違います。ハトは、捕獲だけでなく卵の採取にも許可が必要です。

在来種と特定外来生物の違い|ハクビシン・アナグマ・鳩・アライグマの扱い:確認項目
区分主な例捕獲の根拠となる制度捕獲後の扱いで押さえる点
特定外来生物アライグマ、ヌートリアなど外来生物法に基づく防除、または鳥獣保護管理法の許可許可なく飼う・放す・生きたまま運ぶことは原則禁止。捕獲個体は防除の実施主体の責任で処分し、個人的な持ち帰りや放置はしない
ハクビシンハクビシン鳥獣保護管理法の許可。自治体が防除事業で捕獲する例もある環境省の特定外来生物一覧の哺乳類には載っていない。市が捕獲する条件は自治体ごとに違う
アナグマ・タヌキなど在来の哺乳類アナグマ、タヌキ、キツネなど鳥獣保護管理法の許可。権限が市長に移されている地域もある許可の条件(種類・員数・期間・区域・方法)に従う。窓口が市区町村か都道府県かを確認する
野鳥(ハト、カラスなど)ドバト、カラスなど鳥獣保護管理法の許可卵・ヒナ・巣は別の扱い。卵やヒナのいる巣は巣立つまで見守り、許可なく卵の採取やヒナの捕獲はしない
家ネズミ3種ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミ申請・許可は不要(京都市の案内)ネズミ用の罠に他の野生鳥獣が入ったら、殺傷せずに放す

参考:環境省|日本の外来種対策・外来生物法「何が禁止されているの?」

追い出しと封鎖で対応できる場合|捕獲を前提にしない

屋根裏や床下に動物が入り込んだ被害でも、最初の対応は、捕獲ではなく、追い出しと侵入口の封鎖です。相模原市のよくある質問は、ハクビシンなどが屋根裏に棲みついた場合、建物の周りを調べて侵入口を特定し、動物が建物の中にいないことを確認してから侵入口をふさぐこと、屋根への経路になる庭木の枝を切ること、生ごみやペットの餌を放置しないことを案内しています。天井裏に入った動物は、食べ物を探すために外へ出る、という説明もあります。

文京区は、アライグマやハクビシンを寄せ付けない対策として、縁の下、換気口、軒下などの隙間をふさぐ、屋根に登れる庭木の枝を剪定する、庭の果実を早めに収穫する、ペットフードの残りや生ごみを放置しない、の四点を挙げています。姫路市は、追い払いには捕獲許可等は不要で、捕獲する場合は許可が必要と案内しています。追い出しと封鎖は、許可を受けた捕獲とは別の対策として案内されています。追い出しに薬剤を使う場合は、製品の表示に従い、動物が中にいる状態で入口を塞がないようにします。

追い出し・封鎖・清掃の順番は、害獣の追い出し・封鎖・清掃はどの順番か、封鎖の時期は害獣の侵入口はいつ塞ぐかで確認できます。

追い出しと封鎖から始める場面

次のような状況では、自治体の案内でも、捕獲より先に被害等防除対策が示されています。業者から捕獲を勧められたときも、先にこの対策で足りない理由を聞きます。

  • 屋根裏や床下に入った形跡があり、侵入口を特定できる
  • 庭の果実、生ごみ、ペットの餌などが、動物を引き寄せている
  • 庭木の枝が屋根にかかり、侵入の足場になっている

捕獲を検討する場面

相模原市は、ハクビシンが棲みついていて、被害等防除対策を行っても被害が防止できない場合は、市で捕獲すると案内しています。京都市も、対策を行ってもなお大きな被害が出ている場合のみ、許可の手続きを経て捕獲できるとしています。つまり、捕獲は、追い出しと封鎖を行っても被害が続くときに、許可の手続きを経て検討するものです。

参考:相模原市|よくある質問「屋根裏に棲みついたハクビシン等で困っています」

自治体の制度の例|誰が捕獲し、回収し、処分するか

捕獲を伴う駆除は、捕獲する人、回収する人、処分する人が別々になることがあります。自治体の公式ページを見ると、制度ごとに分担が違うことが分かります。次の表は、2026年10月3日に確認した公式ページの案内の例です。あなたの地域の制度とは限らないため、依頼前に、お住まいの自治体の担当窓口と業者に、同じ点を確認してください。

自治体の制度の例|誰が捕獲し、回収し、処分するか:確認項目
自治体の例公式ページの案内読み取れること
東京都文京区(アライグマ・ハクビシン防除事業)有資格の駆除業者が屋外に箱わなを設置し、捕獲したら業者に連絡すると、業者が箱わなと動物を回収する。それ以外の動物は業者がその場で逃がす。侵入口の遮断や清掃は対象外捕獲と回収は業者が担う。封鎖と清掃は別に手配が必要
兵庫県西宮市(アライグマ・ヌートリア)捕獲箱を貸し出し、捕獲されたら市へ連絡し、市が回収日を連絡する。回収まで借りた人が保管する。それ以外の動物は速やかに放獣する。許可なく移動させることは法律で禁止回収は市。保管と、他の動物への対応は借りた人の責任
大阪府吹田市(アライグマ)捕獲器を貸し出し、捕獲には捕獲者台帳の登録が必要。捕獲したら市へ連絡し、回収までは借りた人が保管する。他の動物は市内の緑地や河川敷で放獣する貸出制度では、保管と放獣の手順まで条件に含まれる
神奈川県相模原市(アライグマ・ハクビシン)アライグマは市が防除計画に基づき捕獲する。ハクビシンは、防除対策でも被害が防げない場合に市が捕獲する。それ以外の野生鳥獣は、市は捕獲せず、被害を受けた人が県や市の許可を受けて捕獲する動物によって、市が捕獲する場合と、被害を受けた人が許可を受ける場合に分かれる
兵庫県姫路市(有害鳥獣捕獲)被害を受けた人が、狩猟免許を持つ個人や法人に依頼し、依頼を受けた人が捕獲許可を受けて捕獲する。申請に被害状況の写真などを添付する。家屋や建物に侵入した鳥獣の追い払いや駆除は、市は行っていない依頼者は被害の記録を求められる。家屋内の対応は、所有者や管理者が手配する

参考:文京区|アライグマやハクビシンの被害を防ぐために

依頼前に業者へ確認する項目|許可・回収・処分・費用

業者に頼むときは、次の項目を、口頭ではなく見積書や契約書の記載で確認します。自治体の制度と同じく、捕獲を伴う作業では、許可の名義、回収の分担、処分の体制が、業者によって違うことがあるためです。業者選びの質問全体は、害獣駆除業者の選び方|相談時の答えで比べる質問にまとめています。

  • 捕獲の許可は、どの制度に基づくものですか(有害鳥獣捕獲の許可、外来生物法の防除など)。許可の名義は誰ですか
  • 追い出しと侵入口の封鎖だけで、被害が止まる可能性はありますか。捕獲が必要な理由を説明してもらえますか
  • 動物が捕獲された場合、誰が回収し、どこへ運び、誰が処分しますか。回収までの保管は誰が行いますか
  • 対象以外の動物がかかったときは、どう扱いますか
  • わなに、許可番号や設置者の連絡先を記した鑑札を付けますか。捕獲の報告書や写真を出してもらえますか

参考:姫路市「鳥獣対策事業」(捕獲檻・家屋侵入時の対応)

自分で捕まえたり処分したりできないこと|やってはいけない行為

許可を受けていない人が、野生の鳥獣を捕まえる、傷つける、殺す、卵を取るといった行為は、環境省が示すとおり原則として禁止されています。「被害に困っているから」という事情は、許可の代わりにはなりません。捕獲器が手に入ることと、許可なく使えることは別です。

特定外来生物のアライグマには、さらに外来生物法が重なります。許可なく飼うこと、野外へ放つこと、生きたまま運ぶことが原則として禁止されているため、捕獲した個体を山に放す、知人に譲る、自宅で飼うといった扱いはできません。環境省の手引きは、捕獲個体を学術研究、展示、教育その他公益上の理由で引き渡す場合でも、譲り受ける人が事前に飼養等の許可を受けている必要があるとしています。

在来の鳥獣でも、捕獲した個体を別の場所で放すかどうかは、許可の条件や自治体の制度で決められています。吹田市は市内の緑地や河川敷で放獣するよう求め、西宮市は速やかに放獣するよう求め、文京区は業者がその場で逃がすとしています。放す場所や方法は制度ごとに違うため、自分の判断で決めてはいけません。無許可で捕獲した場合の罰則と申請先は、害獣駆除の法律|鳥獣保護管理法と外来生物法で個人ができることで確認できます。

参考:環境省|アライグマ防除の手引き(地域から構築する効果的な防除、2025年改訂版)

見積もりで確認する回収・処分の費用

捕獲を伴う見積もりでは、「捕獲一式」「処分費」とだけ書かれていることがあります。費用は、捕獲器の設置と見回り、捕獲個体の回収と運搬、処分、死体の処分、捕獲器の洗浄、許可の手続きなどに分かれます。環境省のアライグマ防除の手引きは、委託された業者が、捕獲個体の回収から処分、死体の処分、箱わなの洗浄までを担う例を紹介し、委託では、捕獲頭数が増えると委託費も増える点が課題になっていると述べています。

このことから、見積もりでは、回収や処分が頭数に応じて増える費用なのか、固定の費用なのかを確認します。追い出しと封鎖で済む場合は、処分の費用自体が発生しません。封鎖工事、清掃、フンや巣材の搬出は、別の項目です。搬出と処分の契約は、害獣駆除で出たフン・巣材・断熱材の搬出と処分は誰がするかで整理しています。

見積もりで確認する回収・処分の費用:確認項目
見積書の項目含まれる作業の例業者に聞くこと
調査・追い出し・封鎖侵入口の特定、動物がいないことの確認、封鎖捕獲なしで完了する範囲か。封鎖の箇所と材料の内訳
捕獲器の設置・見回り箱わなの設置、餌の交換、期間中の見回り設置期間と見回りの回数。捕獲できなかったときの費用
捕獲個体の回収・運搬捕獲後の回収、運搬、保管誰が回収するか。回収までの保管は誰か。出張の回数
処分・死体の処分許可を受けた担当者による処分、廃棄物の処理費用は頭数ごとか、一式か。委託先はどこか
許可の手続き捕獲許可の申請、報告許可の名義は誰か。申請の費用が含まれるか
清掃・消毒・搬出フンや巣材の除去、搬出捕獲・処分とは別の項目になっているか

参考:環境省|アライグマ防除の手引き(地域から構築する効果的な防除、2025年改訂版)