ネズミ忌避剤とは?殺鼠剤・殺虫剤との違い

東京都のねずみ防除指針(平成17年2月発行)は、ねずみ対策を環境的防除、化学的防除、物理的防除に分けています。餌や巣材の管理、侵入口の封鎖が環境的防除で、日常的に続けることで効果が長く続くと説明しています。殺そ剤や忌避剤は化学的防除に含まれ、すでにねずみがいるときの緊急時の対策という位置づけです。忌避剤を買う前に、この順序を確認しておくと、選び方がぶれません。

忌避剤の公式ページを見ると、用途は「ネズミの忌避(追い出し・定着防止)」や「侵入防止・被害防止」と書かれています。アース製薬のゲルタイプとくん煙タイプのページには、駆除剤ではないので死がいが出ることはない、という趣旨の説明があります。忌避剤は、ネズミの通り道や巣のある場所を使いにくくするための道具で、数を減らす役割は別の対策が担います。

殺虫剤は、さらに別の分類です。厚生労働省が公表した平成19年7月の資料は、医薬部外品の効能効果の範囲として、殺鼠剤を「ねずみの防除」、殺虫剤を「はえ、蚊、のみ等の衛生害虫の防除」と別の枠で整理しています。アース製薬の不快害虫用くん煙剤「アースレッド イヤな虫用」のページでも、対象害虫にムカデ、クモ、アリなど多くの虫が並ぶ一方、ネズミは含まれていませんでした。メーカーのサイトでは、ネズミ用の忌避剤も「殺虫剤」などの大きな商品分類の中に並ぶことがあります。分類名ではなく、用途と対象の表示で判断します。

殺鼠剤はネズミの殺鼠剤の種類と選び方、捕獲器はネズミの罠の種類と選び方で、別に整理しています。この記事は、忌避剤に絞って確認します。

ネズミ忌避剤とは?殺鼠剤・殺虫剤との違い:確認項目
区分製品の用途表示の例家庭での位置づけ
忌避剤「ネズミの忌避(追い出し・定着防止)」「侵入防止・被害防止」。駆除剤ではなく死がいが出ない旨を書く製品もある追い出しと寄せつけにくくする補助。侵入口の封鎖と食べ物の管理が前提
殺鼠剤(毒餌)「ネズミの駆除」。家庭向けの防除用医薬部外品や、農地・倉庫向けの農薬などに区分される設置、回収、誤食防止まで管理が必要。詳しくは別記事で整理
殺虫剤対象害虫に書かれた虫(ムカデ、クモ、アリなど)。確認したくん煙式殺虫剤の対象にネズミは含まれないネズミ対策には使わない
粘着シート・かご「ネズミの捕獲」捕獲の道具。置き場所の管理と、捕れたあとの処理が必要

参考:東京都保健医療局|東京都ねずみ防除指針 第三部 1) 防除の基本(PDF)

読者の疑問

ネズミ忌避剤は本当に効きますか?

比較ガイド

メーカーのページには追い出しや定着防止を確認したという記載がありますが、東京都のよくある質問集は、嗅覚忌避剤の効果は過信しない方がよく、長く使うと慣れが生じることもあると答えています。餌の管理と侵入口の封鎖を並べ、痕跡が減るかを記録して確かめます。

スプレー・くん煙・ゲル|型別の用途と使う場所

以下は、2026年10月3日に確認したアース製薬、イカリ消毒、フマキラーの公式ページの表示です。製品の改良やパッケージの変更で変わる可能性があるため、購入時は手元の製品の表示を優先してください。順位や優劣はつけず、型ごとの使う場所と持続の目安を並べます。

東京都の指針は、忌避剤を、においでねずみを排除しようとする嗅覚忌避剤と、かじられて困る物に前もって処理する味覚忌避剤に分けています。今回確認した家庭向け製品は、ハッカ油などのハーブ系の香りや、においの成分でネズミを遠ざける嗅覚タイプが中心でした。同指針は、嗅覚忌避剤は現場ごとに状況が異なり、どの現場でも効果的に使うのは難しいとも述べています。なお、シート状の忌避剤は、今回確認したメーカー公式ページの範囲では表示を確かめられなかったため、下の表では扱いません。

スプレー(ジェット噴射・すき間用):天井裏や床下、すき間に直接かける型

アース製薬の追い出しジェットは、使用場所を屋根裏・天井裏、床下・通風口とし、使用後すぐに効き、24時間効果は持続すると表示しています。可燃性のガスを使うため、火気を避ける注意があります。イカリ消毒のスプレーは屋根裏・床下専用で、においが強いため室内では使用しない、と案内しています。

すき間用のワンプッシュタイプは、倉庫や物置のすき間が使用場所です。フマキラーのページは、持続を24時間程度とし、ネズミが戻ってきたら繰り返し処理するよう案内しています。1回かけて終わりではなく、続けて使う前提の型です。

くん煙タイプ:天井裏・床下・倉庫の広い空間に使う型

アース製薬のネズミ用くん煙タイプは、天井裏や床下、倉庫など、ネズミを追い出したい場所に置いて使います。火災報知器を覆う、精密機器や食品にカバーをかける、小鳥などのペットや観賞魚は換気するまで外へ出す、天井裏で使うときは煙が室内に入らないようにする、といった注意が長く並びます。ペットや家畜のいる場所では使用しない、とも書かれています。

同じページは、追い出したあとは忌避ゲルなどの忌避剤を、しっかり駆除したいときは殺鼠剤や捕獲器を、という併用の例も示しています。くん煙剤は追い出しの一手段で、これだけでネズミがいなくなる前提の製品ではありません。

ゲル・ゼリーなど容器入りの設置型:通り道に置いてにおいを保つ型

アース製薬の忌避ゲルは、屋根裏・天井裏、床下、物置・納屋が使用場所で、効果期間は約3か月と表示されています。イカリ消毒のゼリーは天井裏、床下、ネズミの通路、侵入口、被害箇所に置く製品で、室内での使用はおすすめしないとされています。フマキラーの容器入りの忌避剤は、ふたを上げた状態で最長2.5か月の表示です。いずれも使用環境で変わるという断り書きがあります。

設置型は、中身が減って香りが弱くなったら取り替える製品です。交換日を決めて記録しないと、効果が切れた状態に気づきにくくなります。アース製薬のゲルは、交換日をスマートフォンのカレンダーに登録できるQRコードを付けています。

スプレー・くん煙・ゲル|型別の用途と使う場所:確認項目
型使用場所の表示の例持続の表示の例注意の表示の例
ジェット噴射スプレー屋根裏・天井裏、床下・通風口(アース製薬)。屋根裏・床下専用(イカリ消毒)24時間(アース製薬)火気を避ける。飲食物、食器、ペット、観賞植物にかけない。塗装面や樹脂への影響に注意
すき間用ワンプッシュ倉庫や物置のすき間(フマキラー)24時間程度。戻ったら繰り返す(フマキラー)ネズミが飛び出して別の場所へ移ることがある。粘着シートと併用するときは、噴射液が粘着面にかからないようにする
くん煙タイプ屋根裏・天井裏、床下、倉庫(アース製薬)持続の記載は確認できず、追い出しが目的火災報知器の覆い、精密機器・食品のカバー、ペットや家畜のいる場所では使用しない
ゲル・ゼリー・容器入り屋根裏・天井裏、床下、物置・納屋、ネズミの通路や侵入口約2か月から約3か月、最長2.5か月など製品で差があるペットや家畜のいる場所では使用しない旨の製品がある。食品の近くはにおい移りに注意

参考:アース製薬|ネズミのみはり番 追い出しジェット 420mL 製品情報・使用上の注意

製品表示で確認する項目|対象・使用場所・使用量・持続・注意

同じ「ネズミ用」でも、書かれている条件は製品ごとに違います。購入前と設置前に、次の6項目を製品ラベルか公式ページで確認します。使用量や個数は、独自に増やさず、表示の目安に従ってください。イカリ消毒の使用上の注意でも、大量に使わず乱用を避けること、違和感があれば直ちに回収できるよう少量ずつ手の届く場所に置くことが示されています。

臭気性の忌避剤は、においが物に移る可能性があります。イカリ消毒のスプレーのページは、物置のお米やイモをかじられている場合、においが移るため使用を控え、収納ケースに入れるなどかじられない対策をしたうえで他の方法を、と案内しています。フマキラーも、倉庫の食品の側に置くとにおい移りの可能性があるので、食品から離して設置するとしています。

製品表示で確認する項目|対象・使用場所・使用量・持続・注意:確認項目
確認項目見る場所表示の例と確認のポイント
対象用途・対象の欄ネズミ用か。フマキラーのページは、効果を確認しているのはイエネズミ3種(ハツカネズミ、クマネズミ、ドブネズミ)で、それ以外は確認していないと書く
使用場所使用場所・使用上の注意屋根裏・床下専用か、すき間用か。イカリ消毒の注意書きは、室内(居室)では使用しないと示す
使用量・個数使用方法・使用の目安製品の目安に従う。独自に増やしたり、ほかの薬剤と混ぜたりしない
持続の目安特長・使用方法24時間から約3か月まで幅がある。交換日を決めて記録する
避けるもの使用上の注意食品、食器、ペット、観賞魚、精密機器、塗装面、合成樹脂、火気など。製品ごとに書き方が違う
保管と廃棄保管・廃棄の欄エアゾールは使い切り、火気のない屋外でガスを抜いてから捨てる表示がある。子どもの手の届かない涼しい場所に保管する

参考:イカリ消毒|使用上の注意(商品全般)

忌避剤を使う順番|追い出しから侵入口の封鎖まで

忌避剤は、使う順番で役割が変わります。東京都の指針と各社のQ&Aを重ねると、先に食べ物と巣材を管理し、通り道を記録し、追い出す場所を決めて忌避剤を使い、最後に侵入口を封鎖する流れになります。下の表は、その流れを資料の記載と対応させたものです。

忌避剤だけを先に増やしても、侵入口が開いたままなら、追い出されたネズミが近くの別の場所に移るだけの場合があります。フマキラーのQ&Aは、追い出されたネズミが設置した場所のすぐ近くの別の場所に移動することがあるとして、食品をしまう、出入り口を遮断するなど、住みにくい環境づくりを一緒に行うよう勧めています。

封鎖の材料や考え方は、防鼠金網ですき間を直す前にで整理しています。東京都の指針は、壁の小さな穴や配管の貫通部には、不燃性のパテ、金属たわし、亀甲金網のような、ネズミが嫌う変形しやすい材料を使うとしています。封鎖は居住空間の内側から、部屋ごとに区切って進め、最後まで出る部屋でネズミを捕獲してから外側を塞ぐ、という順序も示されています。中にネズミが残っていないかの確認が自力で難しいときは、調査を相談してください。

忌避剤を使う順番|追い出しから侵入口の封鎖まで:確認項目
順番やること資料の記載
1食べ物、ペットフード、生ごみ、巣材(紙・布・ビニール)を片付ける東京都の指針:餌の管理と巣材の処理が環境的防除の基本
2音、フン、黒い汚れから、通り道と侵入口の候補を記録する東京都の指針:ラットサインから活動場所と侵入経路を確認する
3追い出したい場所(屋根裏・床下など)に、表示どおり忌避剤を使う各社の公式ページ:使用場所と持続の目安
4居住空間の内側のすき間から、部屋ごとに塞ぐ東京都の指針:内側から塞ぎ、ネズミの出ない部屋を作る
5残った個体の有無を確認し、最後に外側の侵入口を塞ぐ東京都の指針:最後まで出る部屋で捕獲し、最後に外側から塞ぐ
6交換日まで忌避剤を維持し、痕跡が止まったかを記録する各社の公式ページ:持続の目安を過ぎたら交換

参考:東京都保健医療局|東京都ねずみ防除指針 第三部 1) 防除の基本(PDF)

ネズミ忌避剤が効かない・戻ってくるときに見直す点

忌避剤を使っても痕跡が続くときは、製品の良し悪しの前に、使い方と環境の条件を見直します。イカリ消毒の使用上の注意は、においで効かせる忌避剤について、においに慣れた個体、感受性の乏しい個体、繁殖期の個体では効果が出にくい場合があること、営巣場所や餌場、風が強い場所でも出にくい場合があることを挙げています。

餌や巣が近くにあると、忌避効果が下がる

フマキラーのQ&Aは、周りに餌が多くあると忌避効果が低くなると説明しています。台所や物置、ペットの餌場に食べ物が出たままだと、においで追い出そうとしても、餌のほうが強く引きつけます。食品やペットフードは、ふた付きの容器にしまい、出しっぱなしにしないことが先です。

においに慣れたら、交換や方法の見直しを

東京都のよくある質問集は、嗅覚忌避剤について、効果を過信しない方がよいが効く場合もあり、長期間使うと「慣れ」が生じることもある、と答えています。持続の目安を過ぎた設置型を置き続けても、においが弱くなっていれば役割を果たしていないかもしれません。交換の時期を守ることと、同じ方法で痕跡が減らないときに方法を変えることが、見直しの基本です。

超音波などの機器へ切り替える前に

超音波については、東京都のよくある質問集が、実験では一定以上の音圧で忌避行動が見られたものの、実用面の評価はまちまちで、否定的な意見のほうが多いようだとまとめています。機器を買う前の確かめ方は、ネズミ用の超音波などの機器に整理しています。

  • 食品、ペットフード、生ごみが出たままになっていないか
  • 設置型の持続の目安を過ぎていないか
  • 侵入口が開いたままで、追い出された個体が戻っていないか
  • 忌避剤をかけた同じ場所に、殺鼠剤や粘着シートも置いていないか
  • 痕跡の場所が、忌避剤を置いた場所から少しずれていないか

参考:東京都保健医療局|行政担当者のためのねずみについてよくある質問&回答集(PDF)

子ども・ペット・食品がある場所での使い方

忌避剤は薬剤を使う製品なので、人や動物が触れる場所では、製品ごとの禁止事項を確認します。アース製薬の忌避ゲルとくん煙タイプは、ペットや家畜のいる場所では使用しないでください、と書いています。追い出しジェットは、飲食物、食器、子どものおもちゃ、観賞魚、小鳥などのペット類、飼料、観賞植物にかからないようにすることを求めています。

一方、フマキラーの強力忌避剤は、使用方法に従えばペットに影響が出る可能性は低いが、念のためペットが口にしないよう注意する、としています。同じ種類の製品でも表示が違うため、家にいる動物の種類(犬猫、小鳥、爬虫類、観賞魚)と製品の表示を照らし合わせます。判断がつかなければ、メーカーのお客様相談室や獣医師に確認してください。

ペットがいる家の対策全体は、ペットがいる家のネズミ対策で、餌場や作業範囲の分け方を整理しています。

  • 食品、食器、おもちゃ、飼料、観賞植物にかからない位置か
  • 小鳥、観賞魚、爬虫類を飼っている部屋の近くではないか
  • 手や皮膚についたときの洗い方が表示に書いてあるか
  • 保管場所が、子どもの手の届かない涼しい場所か
  • 使い切れなかったエアゾールの廃棄方法が決まっているか

参考:アース製薬|ネズミ一発退場 くん煙タイプ 製品情報・使用上の注意

忌避剤だけで解決しないときの相談の目安

忌避剤は、追い出しと寄せつけにくくするための補助です。使用後も、天井裏の音、フン、食品の傷が続くときは、住みついている場所か侵入口が残っている可能性があります。痕跡の場所と、使った製品の名前、設置日を記録して、相談に持っていきます。再発の見直し方は、対策後もネズミの痕跡が続くときにまとめています。

日本ペストコントロール協会は、全国47都道府県の協会に「害虫相談所」があり、電話などでの相談受付は無料としています。現場調査や防除施工が必要な場合は原則有料で、相談内容に応じた事業者の紹介も可能とされています。自治体の保健所や衛生担当の窓口で、助言を受けられる場合もあります。対応は自治体ごとに違うため、お住まいの窓口に確認してください。

参考:日本ペストコントロール協会|都道府県協会(害虫相談所)